【朗文堂ブックコスミイク】好評既刊書|『評伝 活字とエリックギル』(河野三男 訳・著)

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産業としての印刷と、文化としての文字活字、すなわち文明と文化の狭間で
もがきくるしんだエリック・ギルの
『AN ESSAY ON TYPOGRAPHY』の全訳を中心に

近代思想と産業主義に、つよい疑念を表明した
エリック・ギルとその活字にせまります。
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原著:ERIC GILL   An Essay On Typography(撮影:青葉水竜)
An Essay On Typography は自主製作活字 Joanna の完成をまって、ハンドセットで1931年初版、1936年第二版が刊行された。第二版からはファンドリー・タイプで 12 points, 左右 19 picas, 3 points leading(行間)の活字組版であった。1941年第三版、1954年第四版と刊行され、1988年には第五版が Linotron 202 13 機によって 13 points で組版された。本書『活字とエリック・ギル』は第二版と第五版を比較検討しながら翻訳され、第四章「エリック・ギル設計の活字」pp 279-356 には「パペチュア書体/ギル・サン書体/ジョアンナ書体」が詳細に紹介されている。 

主な内容 ── 目次より

  まえがき
Ⅰ エリック・ギルを読むために
Ⅱ エッセイ・オン・タイポラフィ (全訳)
Ⅲ エッセイ・オン・タイポラフィ (解説にかえて)
Ⅳ エリック・ギル設計の活字

『評伝 活字とエリック・ギル』
河野三男 訳・著

四六上製本 360ページ 図版多数
発 行:1999年12月14日

定 価:本体2900円+税
ISBN4-947613-49-1

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{関連:朗文堂ブックコスミイク 『詳伝 活字とエリック・ギル』

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【編著者:まえがきより 部分】

¶ 二〇世紀がおわろうとするこの時期に、そしてデジタル技術が産業構造をはげしくかえつつあり、わたしたちの生活様式がますます抽象性をおびてゆくこの時期に、エリック・ギルの思想を紹介することは、わたしたちが享受しておしすすめている、文明のありかたを鋭く問いなおす契機となるとおもいます。

日々の労働のありかたへの疑問から、文明を照射しているギルの平易なことばは、高邁な哲学というおもむきはなく、皮肉を混じえながらも、世界から忘れ去られてゆく、大切な視点を呼びおこす力をもっています。そのことばは、工芸家やデザイナーに共通の課題でありつづけている、基本の問いと解答を用意しています。

ギルが多用することばは「合理性」です。文明における合理性というと、ひとびとは便利と効率をおもい浮べますが、ギルの頭にはこの概念はまったくありません。効率とはつねに「時間の尺度」の上に成立するものだというとらえかたがあり、そしてその時間の観念は、近代思想(モダニズム)と産業主義が、ひとびとの共通項として設定したものだ、というつよい疑念がギルにはあったからです。

この呪縛から解放されたとき、ひとは生きること、すなわちはたらくことのたのしさや、さらにはくるしみまでもが価値あるものと感じるはずだと、考えていたふしがあるからです。
合理的であることの基本はなにか、そんなことをギルはいつもかたっているのです。そしてさらにその裏には、ギルの宗教観が野太い根を大地に張っているのです。

ヨーロッパではモダニズム思想が一八世紀にうまれたとき、それは中世以来の封建制や宗教や、そのほかの強固な因習の呪縛からの解放として歓迎されました。それが一九-二〇世紀にかけてひとびとに浸透し、地上のおおくの場で文明の繁栄と軋轢をもたらしてからは、「あらたな呪縛」にとらわれていたことに気づいたのです。ギルはその辺をどのように解決しようとしたのでしょうか。それはエッセイのなかで、うなりながら立ち現われるかれのことばの響きにみいだせるはずです。