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Bunkamura 25周年記念 ヤン・リーピン<孔雀>春夏秋冬を演じきる。

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ひさしぶりにライブにでかけた。渋谷のオーチャードホールでの公演、Bunkamura 25周年記念 ヤン・リーピン<孔雀>である。
ヤン・リーピンは中国雲南省の少数民族「白族」の出身で、「白族」の守護神は孔雀であり、孔雀を精霊としてあがめることが多いという。したがってこれまでの公演でも孔雀をテーマとしたものが多かったが、今回はそのものずばり、<孔雀>をタイトルとした公演だった。

ともかくいたく感動したが、舞踏やバレエについてかたる資格はない。そもそもこの公演が、バレエかというとそうでもないようでもある。
またカーテンコールをのぞいて撮影禁止であり、紹介できる資料がすくないが、公演パンフレット、公式 WebSite などから、わずかでもヤン・リーピン<孔雀>の魅力を紹介したい。

公演パンフレット<孔雀> ヤン・リーピンと山本寛斎氏の対談より。
山本寛斎 : ヤンさんの出身地の中国雲南一帯は、民族衣装の宝庫なんですね。わたしは美しいものに出会うと、海賊が宝物をみつけたみたいなかんじになっちゃうんですよ。はしりまわっちゃうんです。
ヤン・リーピン : 中国の舞踏界においては、西洋のバレエの要素を借りてきて、作品に取り入れたり、バレエの影響を受けすぎたりというひとがすごく多いんですね。でもわたしはそうではなくて、あくまでも中国の特色ある踊りをする。それが西洋のものとの違いになる。この違いをうむことによって<自分の踊り>の特色を出していくというかんがえかたは、ずっとかわったことがありません。

東京公演/2014年05月23日[金]-06月01日[日] オーチャードホール

関連情報 : Bunkamura25周年記念 ヤン・リーピン「孔雀」
関連情報 : ヤン・リーピン画像集
YouTube : 美しい孔雀ダンス 雀之恋- ヤン・リーピン
【 関連情報 : 花筏 朗文堂好日録-036 台湾春節:林昆範さ んの年賀状 2014年02月14日
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2014年05月、世界が認めた中国の至宝/ヤン・リーピンが、長年見る者を魅了してきた<孔雀の舞>を、いままでの集大成として、壮大なスケールの舞踊劇にして来日した。
これまで『シャングリラ』(1908年、2010年)や、『クラナゾ』(2011年)で見せたような圧巻の群舞に加えて、今回の公演はデュエットやソロを中心に構成されていて、本編中の大半にヤン・リーピンが出演しており、その踊りを堪能できる。

《 愛のものがたりこそ、孔雀にはふさわしい 》
これまで日本で上演されてきたヤン・リーピンの孔雀の舞は、孔雀の生態を舞踊へと変換し、芸術に高めたものであった。本作<孔雀>では、技術と芸術性の高さはそのままに、移り変わる四季を背景にして、深遠なるラブストーリーに創りあげられている。
豊かな自然の中で生命が生まれ、運命的な出あいを経て恋が生まれ、その愛が豊かに育ち、繁栄をもたらす──。

おごそかで祝祭的な愛の物語には、ヤン・リーピンが磨き上げてきた孔雀の舞のテクニックが、存分に発揮されている。 いっぽうヤン・リーピンは、孔雀の愛がカラスの邪悪な欲望の犠牲になるというストーリーラインも用意している。
それも、カラスを一方的に悪者にするのではなく、美しさと愛に強く憧れる、孤独で不器用な存在としてカラス描き、物語を苦く深遠なものにしたのだ。
輝き、喜び、希望、美、清純と共に、渇きや陰影、寂しさや激しさなど、愛の全容を舞踊に込め、全身で踊り尽くす。それによって孔雀の舞は、観る人の記憶に刻まれるものになった。

ヤン・リーピン「孔雀」 舞台写真

《 四季の移り変わりと、いのちの循環 》
この作品のストーリーの流れを支える重要な役割を担うのが、四季の流れ、ときの移ろいである。 舞台上で変わってゆく「春、夏、秋、冬」という季節は、孔雀たちの住む森の時間をあらわし、孔雀たちの愛の形が変化していく様子に伴走する。

「ものごとはすべて変化し、命は繰り返します。仏教には輪廻リンネという考え方がありますが、春 夏 秋 冬 という季節の変化のなかで、それを表現したいとおもいました」
――ヤン・リーピン

このように、「神」、「時間」といった、抽象的な概念が配役として設定され、ヤン・リーピン独特の哲学的な世界観を、舞踊劇の形でイメージ豊かに構築している。

ヤン・リーピン「孔雀」 舞台写真

《 驚異の能力をもった、「後継者」に注目の視線が 》
四季の歩みを刻み、決して止まることのない時の経過は、この作品の重要なポイントである。
それを体現する「時間」の役に抜擢された美少女パフォーマーは、ヤン・リーピンの実の姪であり、幼い頃からカンパニーの中で育って来た、若干14歳のツァイー・チー(彩旗)である。
ツァイー・チーは2時間余におよぶ上演時間中ずっと、一瞬も止まることなく、舞台下手にあって体を一方向に回転し続けている。

「訓練してこれができるようになったのではなく、わたしは子供の頃から目が回るということがないんです。 ただ、今のように長く回転していられるようになったのは、叔母(ヤン・リーピン)から、<ほかのひとが稽古している間、あなたは体力をつけるために回っていなさい>といわれて、毎日練習していたからです。ですからわたしが 回転していた稽古場の場所は、ほかと比べて床がくぼんでいるんです(笑)」
――ツァイ・チー

彼女はこともなげに笑顔で話すが、驚異的な身体能力とずば抜けた存在感を持つツァイー・チーが、いまや「ヤン・リーピンの後継者」と目されるのも納得できる。
ストーリーの内容に合わせて、自在に緩急をつけ、回転する姿は、血筋を感じさせると同時に、血のつながりがなくても、きっとヤン・リーピンに見つけ出されたであろうゆたかな才能を感じさる。

《 世界一流のクリエイターが参加 》
本作の美術総監督と衣裳デザインを手がけるのは、ハリウッドでも活躍し、映画『グリーン・デスティニー』で2001年のアカデミー賞最優秀美術デザイン賞を受賞したデザイナーのティム・イップ(葉錦添)である。
前からヤン・リーピンの仕事に注目していたというティム・イップは、プロジェクトのスタート当初からヤン・リーピンと綿密な打ち合わせを繰り返し、稽古場にも通い詰めたという。
「孔雀の動きを模倣するダンサーたちを目の前で見て、話を聞き、どんな素材を使い、どれだけの長さや重さの衣裳にすれば、彼らの動きが活かせるのかを丹念に調べてプランを練りました」
――ティム・イップ
こうしてビジュアル面での充実を図り、ヤン・リーピンの最高傑作にふさわしい美的世界を完成させた。