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【新宿私塾】 第27期修了生:本末英樹さんから「ローマ大文字の原点・トラヤヌスの碑文訪問記録」をいただきました

私塾烏兎匆匆、光陰矢の如しでしょうか。ときのたつのがあまりにはやく感じられます。

2015年09月29日開講、2016年03月15日修了した<新宿私塾第27期>の塾生、本末英樹さん(下掲写真:新宿私塾第27期修了式 前列右からふたりめ)が、ことしの夏にローマのフォロ・ロマーノ地区「トラヤヌスの碑文」を訪問され、その記録写真を提供していただきました。
27期終了_01-1024x724[1]新宿私塾では木村雅彦さんの担当で「ローマ大文字の原点:トラヤヌスの碑文」をまなぶ講座が常設され、本末さんももちろんその講座を受講されています。
1999年05月10日に木村雅彦・春田(木村)ゆかり夫妻が拓本取材を実行され、その記録図書『トラヤヌス帝の碑文がかたる』(木村雅彦 朗文堂)をのこされています。
また本講座は、その原寸大の碑文拓本の迫力に直接触れる機会となります。

本末さんの報告では、トラヤヌスの碑文の周辺ではいまなお発掘・復元・修復作業が進行中で、碑の直近まではおりることができず、周辺回廊部からの撮影となったそうです。

小生がここにはじめて立ってから30余年が経過し、木村夫妻の取材からも17年ほどの時間がたったことになりますが、「トラヤヌスの碑文」の建立は西暦114年とされていますので、その千余年におよぶ悠久の時から較べたらほんのわずかなときでしかありません。
本末英樹さんのうれしそうなローマでの報告を聞きながら、記録し、かたり伝える――タイポグラフィの神妙にして、摩訶不思議な側面をみるおもいがしたひとときでした。
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【好評図書紹介】 トラヤヌス帝の碑文がかたる 木村雅彦著

9784947613592ヴィネット01号
トラヤヌス帝の碑文がかたる
木 村 雅 彦 著
B5判 76頁 並製本
増 刷 出 来
定 価 : 本体 2,
600円+税

ローマのトラヤヌスの碑文は西暦114年に建立されて、すべてのローマ大文字の
淵源とされるものです。
ここからアイデアを得て、製作された欧文活字書体は数えきれないほどあります。
本書では18世紀のナポレオン3 世による複製以来の原寸拓本採取に成功して
その写真と拓本、大判折り込み 2 点を含む豊富な写真と図版によって
トラヤヌスの碑文の魅力をくまなく紹介しました。
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『 トラヤヌス帝の碑文がかたる』 はイタリア政府との事前のながい交渉の末
木村雅彦、春田(木村)ゆかり夫妻の「 遅くなった新婚旅行 」 として
1999年05月10日、ローマ、フォロロマーノ地区にある「トラヤヌス帝大円柱」での
原寸拓本採取と、撮影が完了したものです。

『 トラヤヌス帝の碑文がかたる』のテキストは日本語だけですが、欧米でもやはり
関心がつよく、外国向け販売もすくなくありません。

ここにあらためて、故ヘルマン・ツァップ氏がのこされたエッセイとともに
トラヤヌス帝の碑文がかたる 』(木村 雅彦著、朗文堂) をご案内いたします。
ご愛読のほど、よろしくお願いいたします。
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< トラヤヌス帝の碑文のおもいで >  ヘルマン・ツァップ

朗文堂未刊書 『ヘルマン・ツァップ 活字と夢と』より。
Zapf 型押し用亜鉛凸版uuツァップ夫妻
左) Gudrun Zapf von Hesse グドゥルン・ツァップ・フォン・ヘッセ

       1918年01月02日 ドイツ、メクレンブルクうまれ
右) Hermann Zapf ヘルマン・ツァップ
        1918年11月08日-2015年06月04日 ドイツ、ニュルンベルクうまれ

1950年の秋、わたしたちは活字書体のインスピレーションをもとめてイタリアへでかけました。この旅ではもっぱらスケッチブックとカメラを手に、フィレンツェ、ピサ、ローマをおとづれて、ふるいローマ時代の碑文を探しました。
 
ここでの数数の碑文との出会いと、フィレンツェとバチカンの図書館で見たすばらしい書物が、その後のわたしたちの活字設計におおきな影響をあたえました。とりわけ刺激がおおきかったのはトラヤヌス帝の碑文との出会いでした。
文字の美しさを理解するひとならだれでも、西暦114年にローマのフォロ・ロマーノ地区に建造されたトラヤヌス帝の大円柱にしるされた碑文をみて、わたしがいかに有頂天になったかを理解していただけるでしょう。
 
ところが残念なことに、この碑文の位置がたかすぎて、歪みのない、まともな写真を撮ることができませんでした。それでも諦めきれずに奮闘するうちに、どうやらわたしはだれの眼にも明らかなほど夢中になっていたようです。
たまたまそばを通りかかった警備員は、メジャーをもって大円柱に詰め寄るわたしを見て、碑文をはぎ取って地面に引きずりおろそうとしているとおもったのでしょうか、あわてて制止されたことが懐かしくおもいだされます。

Zapf_80-1プリントミケランジェロ・タイトリング(Michelangelo Titling)。この大文字だけの活字書体は、ヘルマン・ツァップによってデザインされた、碑文系書体とされるもののひとつです。朗文堂ホームページのメインタイトルは1999年以来ミケランジェロ・タイトリングがもちいられていjます。
D. Stempel AG /フランクフルト 1950年。

【 詳細情報 : 朗文堂ブックコスミイク トラヤヌス帝の碑文がかたる 】
【 関連情報 : 朗文堂ニュース ご冥福をお祈りいたします。ヘルマン・ツァップ氏を偲ぶ 】