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【The Guardian】 アルゼンチン Buenos Aires の書店と図書情報を報道

この南米アルゼンチンの書店情報は会員の I 氏よりご提供いただきました。
アルゼンチンの大港湾都市にして、首都の ブエノスアイレス(Buenos Aires) では、1919年に開設され、天井にフレスコ画が描かれたふるい劇場を、2000年に書店として改装して、年間100万人以上の来店者をむかえて盛況を呈しているようです。
I 氏からは、このほかにも中国における<合字>情報など、英字紙を中心にたくさんの情報をご提供いただいておりますが、忙しさにかまけてご紹介が遅滞しております。申しわけない次第です。しばしのご容赦を。

本情報の元記事は英字紙 <The Guardian> によります。詳細は元記事をご参照ください。
【 The Guardian : A novel oasis: why Argentina is the bookshop capital of the world 2015.06.20 】


世界都市文化フォーラム(the World Cities Culture Forum)の最近の調査によると、アルゼンチンの首都ブエノスアイレスは、世界のほかの都市にくらべると、住民ひとりあたりではもっとも多くの書店を持っている。
ブエノスアイレスはおよそ280万の人口であるが、この街には734軒の書店がある。それは100,000人の住民ごとに約25軒の書店があることになる。
世界的にみると、香港は100,000人あたり22軒の書店がありこれにつぎ、三番目はスペインのマドリッドが続いて16軒、英国のロンドンは100,000人あたり10軒の書店をかぞえる。

いっぽうわが国では大都市圏での書店数のいちじるしい減少がめだつ。
2010年時点でのタウンページには、全国で14,609軒の書店が掲載されていて、人口10万人あたりの書店数は11.46軒となっている。
全国でもっとも書店が多いのは福井県で人口10万人あたり19.55軒。以下、徳島県、新潟県、石川県、高知県と続いている。日本海側と四国に書店が多く、上位10県のほとんどを占めている。逆に九州と太平洋岸では書店が少ないとする調査結果もある。
タウンページの掲載数による書店数ランキング

また国立国会図書館の資料では、わが国の出版産業の急激な衰退ぶりが顕著になる。あたらしくもたらされるデジタルメディアに狂奔していた間に、いつの間にかわが国は文化国というにはあまりにさびしい姿となっている。
【 国立国会図書館 : 出版産業に関する主要統計資料

19世紀のブエノスアイレスは、世界で最も裕福な都市のひとつであり、アルゼンチンの輝く首都であった。 ヨーロッパ諸国からの移民は競ってブエノスアイレスに押し寄せ、文化と芸術が混淆して多様な文化環境を形成した。
しかしながらその後のアルゼンチンは、軍部による独裁政治があり、それにつづいて経済の崩壊と再建も経験してきた国でもあった。

アルゼンチンはまた印刷業も盛んで、ラテンアメリカでもっとも多くの出版社があり、出版タイトル数は、2014年の統計では28,010タイトルと着実に増加しており、印刷された図書の全体数は1億2,300万冊であった。

bookshops books Argentina東京も古書店がおおい街のひとつであるが、ブエノスアイレスには新刊書の書店だけでなく、102軒の希少本や二次循環のための古書店があり、ロンドンの68軒、または、ほんの06軒のベルリンをうわまわっていることも報告されている。
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これまで、アルゼンチンの出版事情や、書店状況の情報はすくなかった。
ブエノスアイレスはおおくの移民が近世に渡来したという歴史的な背景もあって、多民族が居住している。そのため、おおくのスペイン語表記による新聞に加え、英字新聞、ドイツ語新聞なども一定の読者をもつようである。
またアルゼンチンでの図書は、標準的な売上税(わが国の消費税にちかいらしい)を免除されており、外国資本によるネット・ブックショップも政府によって大幅な規制があるようである。

近年フランスで、外国資本によるネット・ブックショップ企業との紛争が話題となった。
中国では、大都市に24時間営業の大型書店がつぎつぎと誕生している現状もある。
いっぽうわが国では、ながらく活字離れが標榜され、近年になると書店の閉鎖が相次ぎ、それが影響して、出版社は不振をきわめ、転廃業や統合があいついでいる。
また、取材・執筆・撮影・デザイン・組版・製版などのプリプレス業からはじまり、印刷関連機器資材製造業・印刷業・製本業・紙工業・輸送業・書籍取次・書店といった、プリプレス、プレス、ポストプレスといった、図書製造と流通・販売の基盤をささえるすべての産業が苦境に陥っている。

したがって、いまのところは<電子出版>などという、実相も流動的で明確でない分野に生きのこりを懸けるしか、人材の離散をふせぐためには対策が無いようでもあるし、それが万がいつ成功してくれたらうれしくおもう。
ただ個人的には、ついつい便利だからと利用していた、外国資本によるネット・ブックショップの利用を、この報道を読んでからはすこし抑制しようとおもうにいたった。

そして、定期的に購読していた月刊誌を取り置きしておいてくれ、やつがれの愛読している作家の新刊を、さりげなく取りだしてくれていた、小田急沿線の、急行がとまらない、ちいさな商店街の、ほとんど家族だけで営業していた書店の閉鎖をさびしくおもう。
さりとてここで<The Guardian>が紹介したオペラ・ハウスのような書店では、あまりに宏大すぎと目眩症状が発生しそうでもある。
また、歳のせいだけだろうか、近年のわが国の洋モノ雑貨店のような、あるいは喫茶店の亜流ような<コンセプチュアル・ブックショップ>なるものにはなじめないいまである。