朗文堂-好日録023 気がつけばカレンダーが1枚だけ!

《2012年11月15日 GK デザイングループ  創立60周年祝賀会》
秋晴れの15日[木]、「GK デザイングループ 創立60周年祝賀会」に出かけた。会場は椿山荘。招待客は600名余におよび、グループ各社の社員も加わって、さしもの椿山荘の大ホールも人混みでいぱいだった。

GK デザイングループは 1952年、戦後の荒廃の中から、ふるい工芸にかえ、生活の復元と進展を求めて、インダストリアルデザインを中心に創立された。
代表を  栄久庵憲司氏  として、東京藝術大学出身者を中心とした Group of Koike = GK として出発したのを最初とする。

会場にはGKデザイングループ最初期の作品である、ヤマハ発動機 YA-1 と キッコーマン卓上醤油瓶などが展示され、同社の60年にわたる数数のデザイン製品群が、いまなお鮮度を失わないことにあらためて驚いた。
記念品にお饅頭をいただいた。お祝いの大福かとおもったが、カットすると意外な趣向がかくされていて、鮮やかな紅白の紋様があらわれた。
栄久庵さんもお元気だったし、心のこもった、すばらしい祝賀会だった。

《2012年11月18日[日] 新宿御苑遊歩道を散歩》
すぐ近く、あるいて 2 分とかからないところに新宿御苑正門がある。ところが燈台もと暗しというか、あまりに近きが故に、めったに訪れることがないのが新宿御苑でもある。
イチョウの黄葉が見事なので、外周路ともいえる遊歩道に出かけた。有料の苑内にはいると、なにかと規制(芝生立ち入り禁止、禁酒・禁煙 ! )が煩わしいが、遊歩道には最近、ちいさなせせらぎがもうけられ、また無料で解放されていて、散歩にはとても良い環境になった。

平日の昼間でも、ウォーキングにいそしむ高齢者や、ちいさな犬をつれた近在のひとがゆったりと歩いている。ようやく樹木も成長して、良い環境がもどってきた。これならわざわざ遠出して、人混みにもなれながら「もみじ狩り」になどにいく必要がなさそうである。

遊歩道にはギンナンの実がたくさん落ちていた。
10年ほど前まで、この季節になると、酒好きの某編集者が、袋いっぱいのギンナンの実をひろってきて、帰りがけに来社して自慢していた。左党のかれは晩酌のつまみにギンナンを煎ったものは好適だといっていた。
いまはそうしたひとも減ったとみえて、ギンナンの実は踏まれるままになって、独特の異臭をはなっていた。
そんな小径を歩きながら、最近うわさもきかなくなった、いいささか酒乱の某氏をおもった。

《2012年12月08日[日] 神田神保町の咸亨酒店に行く》
家人が週末に書芸塾に通っているので、神保町三省堂本店で待ち合わせ。
会社のすぐ近くにあった「あおい書店」が閉鎖され、三越百貨店のあとにできた「ジュンク堂書店」も移転したので、気軽に書物を買える書店がちかくに無くて不便である。
だから神保町まででかけた。そこで北原謙三『岳飛伝』ほか数冊の書物を購入し、塾帰りの家人と落ち合って、近くの「咸亨 カンキョウ 酒店」で夕食。

同名の中国料理店「咸亨 カンキョウ 酒店」は紹興酒(黄酒)の提供で知られ、また魯迅が好んだ酒店として著名である。たまたま今年の7月に、本場の中国・紹興の魯迅の旧居近くの「咸亨 カンキョウ 酒店」をたずねたことがあった。
このときは、水にあたって腹具合がわるく、またドライバーの潘 偉飛さんにすすめられて、おそるおそる食した「臭豆腐」にまいったが、すべての料理がいたくおいしかったことは覚えていた。
その店を模した、雰囲気の良さそうな中国料理店が、書芸塾の近くにあるので行ってみようと誘われて、三省堂からは幾分距離があったのでブツクサいいながら歩いた。

イヤァ、チョイとやつがれ驚いた。旨かった。本場の「咸亨酒店」と較べても遜色がなかった。
上掲写真右側の料理は、蘇東坡の考案によるとされ、家人の大好物「杭州名物 東坡肉 トンボーロー」を模し、寧波家庭料理風に仕立てた豚の旨煮料理である。写真を撮るのも忘れて半分食べてからの撮影で、妙なものとなっているが、ともかく旨かった。
若者の掲示板などでも「咸亨酒店」はそこそこの評価を得ているようである。

ただ、神田神保町の「咸亨酒店」は紹興というより、そこからほど近い港町、寧波(ネイハ、ニンボー、波を寧ヤスんずる)料理であった。また本格的な中国料理(値段はさほど高くなかったが)を楽しむには、4-5人で出かけて、いろいろな料理を楽しむのがコツである。ふたりだけでは3皿もとったら満腹になってしまう。

紹興の「咸亨酒店」、そして蘇東坡、王羲之などのことを『花筏 朗文堂-好日録 016』にしるした。当時の写真を探して、さらにこれらの書芸家と料理に迫ってみたい。
なにやら料理がメーンになりつつある『花筏』の昨今。それでも若者にかこまれて、十分タイポグラフィ漬けの毎日ではある。──つまりこの項目は書きかけである。