Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO - Report 13  展示紹介-宗像 宏さん/桐島カヲルさん/タイポグラフィ学会

 

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【 テーマ 】     グラフィックデザインと活版印刷
【 作品名 】    『 Ten thousand types 』
【 作者名 】     印刷 : 宗像 宏( THE DODO )
【 版式 ・ 技法 】   文字 : 凸版(活字版印刷)
使用活字 : カッパープレートゴシック 9pt., 10,000字 ( 作品は100×100字詰め )
版数: 5 版  5 度刷り ( モノトーンで 5 階調にしています )
題材 : 肖像 )  サミュエル ・ ベケット ( Samuel Beckett )
文章 )  ベケット著  “ 名づけえぬもの (
The Unnamable )”  の冒頭から10,000字 ( 約物は除いてます )
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宗像 宏さん、このかたをどうご紹介すれば良いのでしょう。
版画家……すこし違うような気がします。 やはり造形者と呼ばせていただきましょう。
< 一万本の活字をもちいて、活版印刷で肖像画をつくりたい > とうかがったときは、費用や機器といった障壁ばかりにおもいをめぐらせ、その実現を危ぶみました。

宗像さんは Adana-21J のユーザーですが、今回は業者の工場に通って、手動式活版校正機をみずからが操作しての活版印刷に挑戦されました。 実際 10,000 本の新鋳造活字の手配、ふつうチェースで固定することが無い 校正機での固定枠の製作、校正機での精密な見当合わせの器具の製作……。
さなざまな障害があったようですが、「 既存の機器が無ければ、自分でつくればよい 」  という、なんとも意欲的かつ楽天的なとり組みで、このような活版印刷史上でも歴史的な力作を完成させました。

会場に 『 Ten thousand types 』 が展示されたとき、先乗り込み組の会員は、その苦心のほどがすぐに解るだけに息をのみました。 ところががご本人はのんびりと、後乗り込み組で、鹿児島空港でレンタルしたちいさな軽自動車に、おおきな体躯をつめこんで 飄飄と登場。
そして早速作業着に着がえ、印刷担当に着手していました。
アダナ ・ プレス倶楽部には、こうした、なんとも常識の尺度で測れないひとが多いのがふしぎです。
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【 関連URL : THE DODO
【 関連資料 : ウィキペディア Samuel BeckettSamuel Beckett 画像集

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【 テーマ 】     コトバと活字
【 作品名 】    連作 『 秋 』 より ― 吾 亦 紅 ―
【 作者名 】    桐島カヲル ( Lingua Florens )
【 版式 ・ 技法 】  文字 : 凸版 ( 活字版印刷 )   図版 : 凸版 ( 樹脂凸版 )

吾 亦 紅 ―― ワレモコウ ――
―― 野辺に咲く すべての紅い花を集めよ ――
と命じた殿様の
帰路を眺める いにしへの女 ひとり
―― ワレも紅ナリ ――

気位という 衣を纏い
乞うことも 恋がれることもなく
古血の味のみぞ知る

さりとて
女は産まれながらにして 女
そしてまた
女は枯れ尽き果てて なおも 女

DSCN8123DSCN7735 桐島02 【 テーマ 】     コトバと活字
【 作品名 】    知覧によせて
【 作者名 】    桐島カヲル ( Lingua Florens )
【 版式 ・ 技法 】  文字 : 凸版( 活字版印刷 )

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【 テーマ 】     コトバと活字
【 作品名 】    西南の戦によせて
【 作者名 】    桐島カヲル( Lingua Florens )
【 版式 ・ 技法 】   文字 : 凸版(活字版印刷)

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【 テーマ 】    タイポグラフィ学会の活動
【 作品名 】   本木昌造賞表彰状
【 作者名 】   紙面設計 : タイポグラフィ学会
活字組版 ・ 印刷 : 大石 薫 ( タイポグラフィ学会員 )
【 版式 ・ 技法 】   文字 : 凸版 ( 活字版印刷 )   オーナメント、プリンターズ ・ マーク : 凸版 ( 銅凸版 )
オーナメントは 『 BOOK OF SPECIMENS 』 活版製造所  平野富二 ( 明治10年 ) より採録

朗文堂 アダナ ・ プレス倶楽部会員、活版カレッジの修了生には、タイポグラフィ学会と重複する会員のかたがたくさんいらっしゃいます。
今回の < Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO > で、このコーナーの担当者は、タイポグラフィ学会事務局担当 : 春田ゆかりさん、副会長 : 小酒井英一郎さんのおふたかたでした。
タイポグラフィを学際的に突きつめていく学問は 迂遠な途となりますが、 言語とその表現に関わる学問ですから、地味とはいえ枢要な学問です。
今回は鹿児島のタイポグラファとのあたらしい交流がはじまり、いくつかの種子を薩摩に置くおおきな成果がありました。