【図書紹介】 沢 豊彦著『「文学」という自己表象』(明文書房)

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組版設計書 : 沢 豊彦 著『「文学」という自己表象 1843–2017』 日吉洋人 PDF

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沢 豊彦 著『「文学」という自己表象1843–2017』
明文書房、叢書 : 明文ブックス、2017
四六判、並製本、312頁、定価 : 本体1600円 + 税
ISBN978-4-8391-0810-6 C0395
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組版設計書 : 沢  豊彦 著 『 「文学」という自己表象 1843–2017 』
報告者/日吉洋人

本  文
四  六 判 : 幅 130mm × 高さ 188mm
版     面 : 幅 265.25 pt. × 高さ 407 pt.
マージン : 天 42 pt.   地 なりゆき(83.913 pt.)   小口 48 pt.   ノド なりゆき(55.254 pt.)
活字サイズ : 9.25 pt. (欧文はサイズ調整)
書    体 : 和文  本明朝 book 小がな、欧文 Stempel Garamond Regular / Italic
字    間 : ベタ (字送り:9.25 pt.)
行    間 : 6.75 pt. (行送り:16 pt.)
字    詰 : 44文字
行    数 : 17行

ページナンバー
ノンブル(小口から2行目にセンター揃え)
書 体 : Adobe Poetica Regular
活字サイズ : 10 pt.


活字サイズ : 7 pt. (欧文はサイズ調整)
書 体 : 和文 本明朝 book(標準がな)、欧文 Stempel Garamond Regular
註の指定の活字サイズ : 5.5 pt. (仮想ボディ右揃え)
パーレン内の活字サイズ : 8 pt.
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目  次

・旧派短歌の共同性―今日、問われていること
・日本農民文学、その前期および前派
・夏目漱石『三四郎』―明治の青春小説
・長田幹彦という芸術
・田山花袋の「幕末維新」小説
・既成作家の「政治と文学」論―秋田雨雀、小川未明、近松秋江の場合
・大谷藤子の作品『青花集』―時代の綴り文字
・昭和期の近松秋江の読者たち―誤解のなかにあらわれた視点
・加藤周一「日本の庭」論―文化記号論としての庭
・文学教育・言語教育素描―新学習指導要領という「制度」
・詩人論
I    井上英明という詩人
II   行方しれずの詩人相場きぬ子―人さがしゲーム
III  完結せざる詩精神―田口三舩の詩集
・書評
I    布野栄一著『政治の陥穽と文学の自律』
II   田中実・須貝千里編『文学の力×教材の力』
III  平岡敏夫著『文学史家の夢』
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本書の装幀は、武蔵野美術大学基礎デザイン学科教授の小林昭世先生で、僕の卒業制作ゼミ担当の先生です。僕は編集者として本文組版とともに造作のお手伝いをいたしました。

著者の沢豊彦氏は、武蔵野美術大学基礎デザイン学科において「言語表現論」の授業をうけもたれておられました。ですから僕は平素より沢先生と呼んでいます。また僕は、沢先生はきっと「モダニスト」であろうとこっそり思っています……。

本書タイトルの「1843–2017」の2017とは現在のこと。1843とは、元号でいうと江戸時代の天保十四年にあたります。

この年に、桂園派最後の歌人といわれている、萩坪松浦辰男が生まれており、このことが一つの起点となっていると沢先生は後記において述べています。また萩坪松浦辰男は、のちに自然義文学運動の中心人物となる田山花袋の和歌の師匠でありましたとも同時に述べられています。
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標準日本語が定められ、その国語によって小説の書き方が発明される明治時代の経緯は、自然主義者となるまでの花袋の里程とかさなっている。欧米の文学移植がたんなる翻訳でなく、日本の文化のなかで独自の文学がはじめて、近代日本語をもちい自然主義文学として成立したのである。ということは、文学史という「歴史」のなかで自然主義文学はことさらに特筆しなければならない、一つの起終点であったのである。

またその実行者が田山花袋であったのだ。そしてまた、彼の生涯にわたる文学創造〈自己表象〉は歌人萩坪と結びついたものであった。日本近代文学は明治になって誕生したものであったとして、その成立の根源はさらに以前に存在することを自明のこととしなければならない。そのことを象徴する意味をもつので、一八四三年を本書の起点においたのである。

「二〇一七」という年は、当然、〈自己表象〉としての文学の創造がいまも継起・継続しているということを意味する。(本書「あとがき」より)
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と。
また同時期は、近代活版印刷術が日本に流入し、広がりはじめた時代です。
モダン・タイポグラフィというべきでしょうか。「標準日本語」が定められ、もしくはそれを定めるために、どのような「活字」「組版」「装本」でそれらを表出すべきなのか、試行錯誤がおこなわれた時代です。
江戸期・明治期の民衆は、熱く、ダイナミックに「言語」に「造形」にと忙しく、新たな思考の枠組みを構築していったのだと思います。また、これが「モダニズム」と呼ばれています。
本書はそんなモダニストの沢先生の「アウトテイク集」です。

内容は……
旧派短歌歌人から、夏目漱石、長田幹彦、田山花袋、秋田雨雀、小川未明、近松秋江、加藤周一、詩人の井上英明、相場きぬ子、田口三舩など盛りだくさんです!