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【展覧会】 「野上弥生子展 ~99歳まで書き続けた作家~」 軽井沢高原文庫 10月09日(月・祝)まで  

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展覧会 「野上弥生子展 ~99歳まで書き続けた作家~」
軽井沢高原文庫
2017年7月15日[土]-10月9日[月・祝]
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夏目漱石との出会いにより文学に開眼し、明治・大正・昭和を生き抜き、99 歳まで現役の作家として書き続けた類無い明察者、野上弥生子の生涯と文学を紹介します。
とくに代表作「迷路」は、第二次世界大戦を挟み、日本の社会情勢を見つめて、約20年をかけて完成された稀有な長編であり、弥生子の平和への願いは今日の私たちの心に響きます。
弥生子は「真知子」終章以降、「迷路」「秀吉と利休」「森」など長編のほとんどを、北軽井沢山荘で執筆しました。
1928年以来、こよなく愛した北軽井沢での暮らしぶり、文化人・文学者との交友、子どもの本なども紹介。初版本、原稿、書簡、初出紙誌、遺愛の品々など約200点を展示いたします。
今回の展覧会を機に、北軽井沢にあった野上弥生子の離れ(1996 年に当館敷地内に移築)の茅葺屋根の葺き替え工事を行い、再公開します。
【 詳細情報 : 軽井沢高原文庫
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{新宿餘談}
晩夏から本格的な秋の彩りに。高原のまち軽井沢でアフター・バカンスを愉しんでいた別荘族も「山をおりて」、これからは静寂のときを迎えます。
ご案内が遅れましたが、軽井沢高原文庫では、企画展「野上弥生子展 ~99歳まで書き続けた作家~」が間もなく会期を終了します。
多くの文人に愛された軽井沢には 「 堀辰雄文学記念館 」 もあります。秋のいちにち、つれづれに文庫めぐりはいかがでしょう。

展覧会 「野上弥生子展 ~99歳まで書き続けた作家~」の告知フライヤーの見出しには、小社販売の 「 四川宋朝体 龍爪 」 をご使用いただいております。
「四川宋朝体 龍爪」は、唐代中期の顔真卿の筆法を引き継いでいた、四川刊本字様を継承したもので、あたらしいデジタル・タイプとして誕生しました。
龍爪パッケ

【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん 活版小本新作 ── 泉 鏡花 『胡桃』 紹介

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泉鏡花の「胡桃」をつくりました。

旅人がおみやげの胡桃(「胡桃の砂糖がけ」というお菓子があるらしい)
を買うため菓子屋へ行った時の話です。
お店には新婚らしき美しい女性が応対していました。
旅人の目を通して鏡花好みの女が活き活きと描かれています。

鏡花の初版本などをみると美しい本がたくさんあります。
振袖の端切れでも使って艶やかなものしようと
生地屋へ足を運びましたがこれというものはありませんでした。
しかたなく派手な紙を使ってただただ賑やかにしてみました。
内容とのミスマッチは否めません。
もっと丁寧に素材を選んで作らなければと自省しています。

三度炊く 飯さえこはし柔らかし 思うままにはならぬ世の中

【 詳細  ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 】
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{新宿餘談}
杉本昭生さんは活字書体の選択と、その組版には厳格な姿勢をつらぬかれている。
今回の活版小本  『胡桃』 泉 鏡花 の題簽に、
小社販売の<四川宋朝体 龍爪>をご使用いただきました。

IMG_2594[1] 龍爪パッケ{朗文堂 タイプコスミイク 四川宋朝体 龍爪

【朗文堂タイプコスミイク】 足立涼子さんのアート・ブック 『 ジャックと豆の木 』 

Jack07ジャックと豆の木/Jack and the beanstalk

2008年/東京/20部限定
サ   イ  ズ : 32 x 32 x 3.5cm/桐箱入り
印     刷 : 2種類の楮紙と三椏紙にインクジェット、 木版印刷、 亜鉛凸版印刷(タイトル)
使用書体 : 四川宋朝体 龍爪、Weiss
製   本 : 30cm × およそ7m の2枚の長紙を交互に折り曲げた構造。1枚にテキストと木版ブロック、もう1枚に豆の蔓のイメージを印刷。
2枚の紙は重なり合いながら一続きの螺旋構造を成し、印刷された面は折る毎に異なった方向に向けられる。三椏紙による英訳冊子は16ページ中綴じ 。
内   容 : イギリス民話「ジャックと豆の木」を下敷きに創作した本。空まで伸びる巨大な豆の木に、世界に広まりつつある遺伝子組み換え作物とその背景を比喩的に重ねて制作。(日本語 : 足立涼子、 英訳 : 佐藤公俊)
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足立涼子さんは東京都に生まれました。多摩美術大学大学院修了。
ブック ・ アーティストとしての積極的な活動がつづいています。
ここでは足立涼子さんの解釈による、イギリスの民話『ジャックと豆の木』を
中心とするアート ・ ブック
『 ジャックと豆の木 』 の製作を紹介しましょう。

足立 涼子
『 ジャックと豆の木 』

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────────── 足立涼子さんのコメント
荒々しい豆の蔓のイメージに合う、力強い日本語書体はないものかと探していたところ、

折よく朗文堂さんで 『四川宋朝体  龍爪』 をご紹介いただき、「これだ!」 とおもって
『 ジャックと豆の木 』 に選択しました。

印刷は活版で刷ることも模索しましたが、全ページ手漉き和紙を使用し、
さらに制作費が回収できるかどうかもわからぬ私家版刊行のゆえ
印刷費を落としました。

したがってタイトルは亜鉛凸版印刷ですが、中の文章はインクジェット印刷となりました。
活版印刷のように力強く表現したかったので、邪道ですが少し字を太らせて印刷しました。
英字にはWeiss-エミル ・ ワイス製作の欧文を合わせました。

『 ジャックと豆の木 』 は、幸いなことにアメリカのアーティストブック普及のNPO団体 “Booklyn” によって紹介される機会を持ち、ボストン図書館( The Boston Athenæum ) などの幾つかのパブリック ・ コレクションに加えて頂きました。
ご高覧いただければ幸いです。
足立涼子
【 関連URL : 『ジャックと 豆の木/Jack and the beanstalk 』 】
四川宋朝体

中国の南西部四川省は、ふるくは蜀とよばれていました。
蜀は唐王朝末期の木版印刷術の発祥地のひとつで、「蜀大字本」と呼ばれ、「字大如銭、墨黒似漆――文字は古銭のように大きく、文字の墨の色は黒漆のように濃い」 とされます。
唐王朝ののち、五代十国の混乱をへて建朝された北宋時代にも、唐王朝官刊本の伝統的な体裁を四川刊本は継承していました。

また女真族金国との争乱に敗れ、都を開封から臨安(現 ・ 杭州)に代えて建朝された南宋での刊刻事業の継続と、覆刻(かぶせぼり)のための原本の供給に、四川刊本は大きな貢献をはたしました。
ところがこうした四川刊本も、相次ぐ戦乱と文書弾圧のなかに没して、『新刊唐昌黎先生論語筆十巻』 『蘇文忠公奏議』 『周礼 しゅらい』 など、きわめて少数の書物しかのこっていません。その代表作がわが国に現存する 『周礼』(静嘉堂文庫所蔵)です。

『周礼』 の力強い字様には、横画の収筆や曲折に 「龍爪 りゅうそう」 とされる、鋭角な龍の爪にも似た特徴が強調されています。
これは起筆にもあてはまり、またどっしりとした収筆です。
縦画の起筆にみられる蚕頭の筆法は 『周礼』 においてはさらに強靱になり 龍爪 に相対しています。

このような顔真卿の書風が四川刊本字様となり、力強く独自性のある刊本字様へと変化したといえます。これは工芸の文字として整理がすすんだことをあらわしますが、唐代中期の顔真卿の筆法の特徴を十二分に引き継いでいるともいえます。
「四川宋朝体  龍爪」 は、このような顔真卿書風と、四川刊本字様を継承した、あたらしいデジタル ・ タイプとして誕生しました。

[パッケージ平面設計 : 白井敬尚形成事務所]
【 詳細情報 : 朗文堂タイプコスミイク 四川宋朝体 龍爪 】