カテゴリー別アーカイブ: アダナ・プレス倶楽部会員便り

中国 上海の活字製造と活版印刷事情 ── アダナ・プレス倶楽部会員 畠中結さんから情報提供をいただきました。

Studio1 Studio2 Studio3《錯綜する中国の活字製造と活版印刷関連情報》
なにしろ広大な国土の中国ですから、活字製造と活版印刷関連情報とひとくちにいっても、とかく情報が混乱して錯綜しています。
情報がはいりやすい北京とその近郊には、すでに活字製造業者は無いことは確実のようですが、
「中国東北部の吉林省や遼寧省
では、まだ活版印刷業者があって、活字も供給されているようだ」
「中国南西部の四川省でも、まだ金属活字の製造が継続しているようだ」
といった、伝聞や風評ばかりで、歯がゆいものがありました。

ところで、上海で活躍する版画家:楊 黙さんと畠中 結さんのご夫妻は、2012年の暮れに、朗文堂 アダナ・プレス倶楽部から <小型活版印刷機 Adana-21J >をご購入されました。上掲写真のように、 Adana-21J は楊 黙さんのスタジオに設置されて、その造形活動の拡大に貢献しています。
そんなおふたりから、今般上海郊外の活字鋳造所の現況報告と写真をご送付いただきました。〈活版アラカルト〉のページでご紹介いたします。
アダナ新コラム
【 関連記事 】
★ YANG MO  楊 黙
★  エッ、いまごろお正月 !? 上海在住の会員がご来社に。そして「老北京のご紹介」 2014年02月10日
★  <在時間的某処>, Somewhere in time, ある日どこかで。 2014年05月21日
★ 中国 上海の活字製造と活版印刷関連情報 ── 畠中結さんからのご報告

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1_1[1] 6_work02[1] 7_privarte10_v2[1] 9_work03[1] 8_privarte112[1]楊 黙  Yang Mo ┊ 1980年中国うまれ
中国上海在住。日常生活のすべてを芸術、デジタル・デザイン、版画製作に捧げているアーティスト。
楊氏は南京芸術大学を卒業し、そののち版画製作の最先端の研究を、ドイツ中央部、芸術と大学都市、カッセル(Kassel)で続行した。同地で日本から留学中の畠中 結さんと知り合って結婚した(中国では夫婦別姓がふつう)。
中国に帰国後、ふたりは上海にアトリエを開設して、中国各地でいくつかの展覧会を開催した。また2012年の東京TDC賞にも選ばれている。
楊氏はおもにデジタル・デザイナーとして活躍しているが、常に彼自身の版画作品をつくって、現代中国では顧みられることの少ない、あたらしい版画芸術を提案し続ける、意欲にあふれる造形家である。
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アダナ・プレス倶楽部会員の情報を《活版アラカルト》でご紹介。

アダナ新コラム《新コーナー、【活版 à la carte/活版印刷アラカルト】ができました》
アダナ・プレス倶楽部のWebSiteに、ブログロール【 活版 à la carte 】が誕生いたしました。
このコーナーは、これまでは「コラム」として、文章を中心に記録してまいりましたが、画像を増やし、「活版印刷と タイポグラフィの 気軽なひとしな」を記録いたします。またこのコーナーは写真をクリックすると「スライド・ショー」が楽しめます。

《アダナ・プレス倶楽部会員の皆さまの情報をご紹介いたします》
うれしいことに、アダナ・プレス倶楽部の会員の皆さま、活版実践者の数はどんどん増加しています。
かつて、アダナ・プレス倶楽部のWebSiteには〈会員からのお知らせ〉コーナーがありました。ところが情報の多様化・大量化のために、いつの間にか有名無実な存在となっておりました。
そこで新コーナー、【 活版 à la carte 】、「活版印刷と タイポグラフィの 気軽なひとしな」において、アダナ・プレス倶楽部会員の皆さまの活動をご紹介させていただきます。展覧会、イベント、新作紹介の場として、積極的なご利用をお待ちしております。

ご覧いただいておわかりのように、軽便なブログロールですし、製作管理者もIT関連にはつよくありません。したがって情報の提供は、できるかぎりデジタル・データとし、画像はJPGデータでいただけると幸いです。 
タイポグラフィ・ブログロール【 朗文堂 花筏 】ともども、【 活版 à la carte 】、「活版印刷と タイポグラフィの 気軽なひとしな」のご愛読と、積極的なご参加をお待ち申しあげます。

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杉本昭生 小型本の世界Ⅱ

DSCN3378 DSCN3380 DSCN3388DSCN3385アダナ・プレス倶楽部会員、京都在住の杉本昭生さん製作の小型本(いわゆる豆本)紹介の第二弾です。
ともすると小型本の製作者は、なにより小型であることと、装本のおもしろさにこだわりがつよいあまり、そのテキストや、読書のための判別性と可読性を失っていることがみられます。
ところが杉本さんは、もともと読書家ですので、たとえ小型本であろうと、テキストを厳選し、みずからも読み、読者にも読んでもらおうというつよい意志を感じます。

上掲写真は平成26年1月25日製作、橘 曙覧『獨樂吟』です。装本は経本折りとして、ていねいな函をつくり、活版印刷による題簽ダイセンを手貼りしてあります。
かたわらに無粋ですが爪楊枝をおきましたので、そのおおきさを実感してください。
こんなに小型の図書ですが、一句一句がしみじみと楽しめます。

DSCN3358 DSCN3369 DSCN3374 DSCN3362杉本昭生小型本10作目となったのが『老人』(リルケ作 森鷗外訳 平成26年3月)です。
最初にパラパラとめくっていたら、最終ページに濃い紅色の花弁のようなものが貼られていました。
[杉本さんは、こんなロマンチストだったかな]
とおもってテキストを読んで納得。さらに添付のお手紙に、
「今回は翻訳ということですこし体裁を変えましたが、成功しているとはいえません。おまけもつけました。
ふふん、なるほどと思っていただけるか、いやいやまったくのひとりよがりか……。
ご一読いただければ幸いです」

どうやら杉本さんは、少少照れておられるようです。いいじゃないですか、この花びらは。
ただし朗文堂社内では、この花弁は「山茶花サザンカです」と、「なにかの洋花だろう」と、若干の論争がありました。
【リンク:アダナ・プレス倶楽部ニュース 杉本昭生 小型本の世界Ⅰ】

エッ、いまごろお正月 !? 上海在住の会員がご来社に。そして「老北京のご紹介」

恭賀新年

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《2014年01月31日、上海在住のアダナ・プレス倶楽部会員がご来社に》
もうすっかりお正月気分の消えた01月31日[金]、上海在住のアダナ・プレス倶楽部会員で、Adana-21J のユーザーでもある、畠中 結(はたけなか ゆい)さん、楊 黙(Yang Mo  1980-) さんご夫妻が来社され、「 dana-21J 操作指導教室」 を受講されました 【 リンク : YANG MO 】。

おふたりは留学先のドイツで知り合われて結婚されましたが、中国では夫婦別姓なのでそれぞれの姓をもちいておられます。 上海では畠中さんは商事会社に勤務、楊さんは版画家として活躍されています。


アトリエで作業中の楊 黙さん 同氏のWebsiteより

畠中 ・ 揚ご夫妻は小型活版印刷機 Adana-21J を一昨年暮れにご購入されましたが、これまで来日の機会がなく、操作指導教室の受講が延び延びになっていました。 それでもこれまでにたくさんの@メールのやりとりがあり、はじめてお会いしたとはおもえないほど会話がはずみました。

また今回は、中国では入手難な活版印刷関連資材や機器もたくさんご購入。 幸い畠中さんのご実家が京都にあるため、これまでの Adana-21J などの輸送と同様に、ご実家に送付して、ほかの荷物といっしょに船便輸送となるようです。
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《中国のお正月・春節は前年の12月中旬に政府が発表し、毎年時期がすこしずつかわります》
畠中 ・ 楊ご夫妻が来日されたのは 「 春節休暇/旧暦のお正月休暇 」 を利用してのことでした。
詳細はわかりませんが、中国では翌年の祝日を12月中旬に法定祝日として政府が発表するそうです 【 リンク :
中国の祝日 2013年/2014年 カレンダー 】。

中国には 元旦 ・ 春節 ・ 清明節 ・ 労働節 ・ 端午節 ・ 中秋節 ・ 国慶節などの祝日があり、それぞれ 3-7 連休となることがおおいようです。 ちなみに新暦のお正月(元旦)は、中国でもやはり法定祝日は01月01日ですが、休日期間は2013年は12月30日[日]-01月01日[火]の3連休で、2014年は01月01日[水]だけが休日でした。

また国民がもっとも重要視して、郷里で家族 ・ 親戚とにぎやかにすごすことが多い 「 春節 ・ 旧暦のお正月と連休 」 は、2013年の法定祝日は02月10日[日]で、休日期間は02月09日[土]-15日[金]の7連休でした。 ところが2014年の法定祝日は01月31日[金]で、休日は01月31日[金]-02月06日[木]の7連休です。

これではカレンダーやダイアリーの製造者はたまったものではありませんね。 しかもことしは大晦日にあたる01月30日が祝日ではないために、春節元旦までの帰省を楽しみにしていたおおくの民衆から不評をかったようです【リンク:上海 ロイター2013年12月記事】。
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《 変貌著しい中国ですが、アダナ ・ プレス倶楽部コラム欄にて 「 老北京-ふるき よき 北京 」 をご紹介 》
DSCN0399tori DSCN0394tori DSCN0432 DSCN0360 DSCN0456北京オリンピック、上海万博と、おおきなイベントが相次いで開催され、そしてついでに、勢いあまって都市公害なども話題となる昨今の中国です。 それはちょうど1960-70年代のわが国のように、活気に満ち、変化の激しい世相を現出しています。
それでも数千年の歴史を刻んできた中国では、春節を祝い、古き良きものへの関心を失っていません。

最近中国の友人に 「 紫金城 ・ 故宮博物院 」 内の、三層におよぶ京劇の舞台  ——  かつては同時にみっつの京劇が上演され、それを皇帝をはじめ廷臣が観劇する御殿も併設されています —— をご案内いただきました。 そんなこともあって、これから数回にわたってアダナ ・ プレス倶楽部コラム欄において、「 老北京 —— ふるきよき北京 」 をご紹介いたします。お楽しみください。
【 リンク : はじめての京劇鑑賞 そのⅠ 湖廣會館——アダナ・プレス倶楽部コラム
 】

2014年 アダナ・プレス倶楽部の年賀状

adana年賀 アダナ・プレス倶楽部の年賀状は例年、数ある欧文活字を、時代性によっていくつかのカテゴリーにわけ、それを歴史順に一書体づつ選択して制作してきました。
これまでの年賀状では、ブラック・レター、ヴェネチアン・ローマン、オールド・ローマン、トランジショナル・ローマン、モダン・ローマン、クラレンドンを経て、今年はサン・セリフの「フランクリン・ゴシック」を使用しました。

「フランクリン・ゴシック」は、アメリカン・タイプ・ファンダース(ATF)のチーフ・デザイナーをつとめた、モーリス・フラー・ベントン(1872-1948)による活字書体です。M. F. ベントンは、200以上の活字書体を設計した、多産家の活字設計士として知られています。
このようにたくさんの活字書体を製造することができた背景には、発明家で、おなじく活字設計士でもあった、父 リン・ボイド・ベントンの開発による、いわゆる「ベントン機械式彫刻機」によって、活字父型および活字母型の製造効率が飛躍的に向上したことも見逃せません。

活版印刷時代の活字書体をたくさん紹介した、イギリス版活字書体事典『 ENCYCLOPAEDIA OF TYPE FACES 』の記載によりますと、M. F. ベントンが「フランクリン・ゴシック」を、アメリカン・タイプ・ファンダース(ATF)からデビューさせたのは1903年のことです。
おなじ年にM. F. ベントンは、やはりアメリカン・タイプ・ファンダース(ATF)から、オルタネート・ゴシックと、エージェンシー・ゴシックも発表しています。
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ちょうどその頃、おなじアメリカ大陸で偉業を成し遂げたふたりの兄弟がいました。
ふたりとは、ライト家の5人兄妹の3男、ウィルバー・ライト(1867-1912)と、4男、オーヴィル・ライト(1871-1948)です。
ライト兄弟 として知られるウィルバーとオーヴィルは、奇しくも「フランクリン・ゴシック」が誕生した年とおなじ1903年に、人類初の有人動力飛行に成功しました。20世紀の初頭、まさに機械産業時代の幕開けを告げるできごとであり、活字書体の誕生でした。

あまり知られていませんが、ライト兄弟は、飛行機の開発のほかに、印刷機械や活版印刷業とも、とてもゆかりの深い人物でした。飛行機の開発に成功する以前、10代の末頃のライト兄弟は、活版印刷機や紙折り機をみずから製作し、取材記者もこなして、新聞『 West Side News 』の発行をしていました。
のちに「ライト&ライト印刷所」を創業して印刷業を続けるかたわら、自転車の製造・販売、そして、子供の頃からの夢であった飛行機の開発へとつなげていきました。

今回の年賀状では、ライト兄弟の飛行実験の写真を亜鉛凸版で、そして、24pt.フランクリン・ゴシックの活字を用いて、兄ウィルバーの言葉を活字組版しました。

動力がなくとも飛ぶことはできる。
しかし、知識と技術なしには
大空を翔けることはできない。
―― ウィルバー・ライト――

動力のない、手動式の活版印刷機をもちい、不自由で限られた活字を駆使して、活版印刷の知と技と美の研鑽をつづけている、アダナ・プレス倶楽部会員の皆さまへ ────────
活版印刷の普及と存続のために、アダナ・プレス倶楽部の機材の製造と供給を支えてくださっている、おおくの職人の皆さまへ ────────
すべての、身体性を伴なった「ものづくり」の現場の皆さまへ ────────

感謝と尊敬と応援の意を込めて、今年の念頭のご挨拶に代えて、このことばを贈ります。

adana年賀宛名面ところでフランクリンといえば、時代はさかのぼりますが、アメリカ建国の父のひとりであり、避雷針などの発明家としても知られる、ベンジャミン・フランクリン(1706-1790)も、若いころには印刷業を営んでいました。
まだアメリカに活字鋳造所が無い時代、はるばる太平洋を渡ってイギリスまで活字を買いに行ったり、活字やインキを自作したり、活版印刷機の改良をおこないました。
また、図書館をつくったり、新聞を発行することなどを通して、アメリカにたくさんの印刷所ができるように尽力しました。

なお、「フランクリン・ゴシック」という活字書体の名称は、「世界印刷術中興の祖」ともされる、ベンジャミン・フランクリンにあやかってつけられた名前かどうかは定かではありません。

杉本昭生 小型本の世界

杉本豆本01uu アダナ・プレス倶楽部会員、京都在住の杉本昭生さんの作品です。
杉本昭生さんは、三年ほど前からご趣味で、小型活版印刷機をもちいて、小型本(いわゆる豆本)
づくりをねばり強くつづけられています。
もともと読書家ですので、昔の著名作家の作品をテキストとして厳選し、おもに樹脂凸版を
印刷版とされ、装本に粋を凝らしての挑戦がつづいています。

このお正月にも新作に挑戦されていたようですが、これまでのシリーズをご紹介いたします。
杉本豆本02uu
杉本豆本03uu
杉本豆本04uu

【製作者 杉本昭生さんのコメント】
自分の作った本について書くのは本当に恥ずかしいものです。
好き勝手に作っているだけなので、ひたむきな努力も不屈の精神にも縁がありません。
仕事も未熟で雑です。そんなわたしが苦労話や薀蓄を語るのは十年早いと思います。
ただ、言えることは、小さな印刷機があれば、自分一人で一冊の本を作ることができます。
本は読むのももちろん楽しいですが、作るほうがもっとに楽しいものです。
これだけは実感しています。

ムサビ助手展2012 活字公倍数504pt.&五号24倍

 

助手展 2012 武蔵野美術大学助手研究発表
The Research Associate Exhibition 2012

助手展 2012 武蔵野美術大学助手研究発表

会 期| 第1期:2012年11月26日[月]-12月08日[土]
       第2期:2012年12月10日[月]-12月22日[土]
会 場| 武蔵野美術大学 美術館 展示室1、2
Web site|http://musabi.ac.jp/ra/2012/
主 催| 武蔵野美術大学 美術館・図書館
企 画| 助手展2012運営委員会

武蔵野美術大学の各研究室に所属する助手の皆さんによる、作品と研究成果の展覧会です。美術、デザイン全般にわたる作品と研究成果が、同大学美術館展示室で、2 期にわけて発表されました。
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武蔵野美術大学《助手展2012  第 2 期》に「504ポイントのコンポジション」のテーマで参加された日吉洋人ヒロトさん(基礎デザイン学科助手、アダナ・プレス倶楽部会員、活版カレッジ修了)から、同展の情報と、データーの提供をいただきました。

日吉さんは、武蔵野美術大学基礎デザイン学科助手としての勤務のかたわら、活版印刷にこだわって、21世紀、あるいは平成の時代になってから、わが国はじめての「活字鋳造工・活字組版工見習い」として研鑽をつづけているかたです。

また、武蔵野美術大学基礎デザイン学科には、小型活版印刷機 Adana-21J が導入されており、活字の追加購入も盛んです。もちろん学生の皆さんや助手の皆さんの積極的な使用がみられます。 

504 ポイントのコンポジション
 凸版印刷(letterpress printing)の技法で、
504 x 504 ポイントの紙面に構成をおこないました。
 
活字組版は、正楷書体の五号サイズの大出張の
活字 100 本を使用。インテルの長さは五号 24 倍。
行間のあきは、五号全角、二分、四分、八分を
組み合わせて使用。
込め物は、五号四倍、三倍、二倍、全角、二分、
三分、四分を組み合わせて使用。
 
活字組版は、角柱の活字を組み合わせて四角形
に組版します。その四角形にしようとする意志が
既に構成を志向しているように感じます。
 
その後、うみだされた版面は紙面に配置されて
余白を決定します。
活字組版は、版面が活字のサイズの倍数で
制御され、結果として法則性をあたえられて
います。そのことは、版面のなかに破綻をあた
えるような造形的な要素を持ち込みません。
また、印刷するときは、紙面に自由に配置し
ています。
無数の造形の要素を選択・決定し、ビジュアル
コミュニケーションの造形を生成するための
方法が、活字版印刷術のシステムとプロセスの
なかには確立されています。 今回の制作では
活字版印刷術の造形の生成
の手段を
意識しながら、主題は求めず、自由に
構成を
おこないました。         (日吉洋人 wrote)
 

今回の研究・展示「504ポイントのコンポジション」のテーマで、日吉洋人さんが着目した「504ポイント」とは、わが国の「金属活字新号数制」のもとでの最小公倍数としてもちいられた数値です。
また、それを厳格に計測するための「活字の原器」の存在を、本年03月に『花筏』に報告しました。そのときからすでに日吉さんはこのテーマの共同研究者でした。
★『花筏』タイポグラフィ あのねのね*019「活字の原器と活字のステッキとは-活字の最小公倍数 504pt. 」2012年03月17日掲載 

また「五号24倍」とは、活版印刷のおもに端物業者(名刺・カードなどの少量小型印刷業者)がよく使う倍数で、端物印刷には適応性がとても高い数値です。

504pt. と 五号24倍の相関関係考察表  日吉洋人

トロロアオイの花が咲きました

アダナ・プレス倶楽部 会員便り

日本全国のアダナ・プレス倶楽部会員のもとで
トロロアオイが開花中です

「トロロアオイ(黄蜀葵)/学名 Abelmoschus manihot」は中国原産の一年草で、ハイビスカス、ムクゲ、フヨウ、オクラ、ワタ、ケナフなどとおなじアオイ(葵)科の植物です。
印刷狂・活字狂・愛書狂をもって自他ともにゆるした「アオイ書房」の志茂太郎が、その社名にもしたほど愛した可憐な花として知られます。
「花オクラ」とも呼ばれ、オクラの花に似た淡黄色の花は食用にもなります。また、オクラのような粘りを有し、その根の粘液は和紙づくりのネリとして使用されます。蒲鉾や蕎麦のつなぎや、漢方薬としても利用される身近で有用な植物です。

昨年の秋、活版カレッジUpper Class(活版カレッジの修了生)有志の皆さんと、東京都内に残る伝統的な手漉き和紙であり、都の指定無形文化財の「軍道紙( ぐんどうがみ)」の工房である「あきる野ふるさと工房」に紙漉きの実習に行ったところ、ちょうどトロロアオイの種が熟す時期と重なり、種をたくさん分けていただきました。

そこでこのトロロアオイの種を、蒔き時となる春先まで大切に保管し、アダナ・プレス倶楽部の会報誌『Adana Press Club NewsLetter』春号(Vol.13, Spring 2011)の特別付録として配布したところ、全国のアダナ・プレス倶楽部の会員の皆さまが育ててくださいました。9月に入って続々と開花の報告が届いておりますので、その一部を掲載させていただきます。

東京都新宿区K塩J朗さん宅のトロロアオイ
9月の半ばに2週間ほど、海外出張の予定が入っていましたので、出発前に花が開くすがたをひとめみてから出かけたいものだと、ベランダのロダンのいすに腰かけて魔法のけむり(煙草とも)をふかしながら、まだかたい蕾をまいにちうらめしく眺めていたところ、やつがれの願いが届いたのか、魔法のけむりが効いたのか、月がかわったとたんにつぎつぎと花芽がほころびはじめました。

そんなやつがれが、まいにちせっせと水をやり、だいじに育ててやっと咲いたこのカレンな花を、あろうことか家人が食べようと狙っています。
しかしさいわい、家人は朝寝坊なので、トロロアオイの花が元気よく咲いている時間帯には、まだ夢のなか。しめしめといったところです。

東京都豊島区M夫妻のトロロアオイ

うちは庭が無いので、軒下のプランターで育てています。
残りの種はこっそりと近くの公園に蒔いて、密かにその生長を見守ってきました。
公園の除草作業のたびに、「もはやこれまでか……」と毎回ハラハラしましたが、なんとか花が咲くまで生きのびました。
いまでは公園の主として堂々と花を咲かせています。

東京都文京区Gさん宅のトロロアオイ

玄関先の植木鉢で咲いています。

東京都調布市Sさん宅のトロロアオイ

やっと咲きました。思ったよりも大きい花です。

埼玉県S市Tさん宅のトロロアオイ
ベランダのトロロアオイが満開です。

宮城県仙台市Oさん宅のトロロアオイ
毎日、まだかなあと蕾をのぞきこんでいましたが、
とうとう咲きました。
ほんとうにきれいな花ですね。
見ていると気持ちが柔らかになります。

京都府Yさん宅のトロロアオイ
お花はまだですが、だいぶ大きくなりました。

【会員情報】 中島印刷所 活版印刷で リ・スタート

ふるさと富山の 「 いま 」 にこだわり、過去から未来を見つめる月刊誌 『 富山写真語 万華鏡 』。 その227号では 「 活字 」 をテーマに、アダナ ・ プレス倶楽部の富山県会員である 「 中島印刷所 」 さんの特集号となっていますのでご紹介します。

中島印刷所(富山県滑川市)

中島正彦さんは昭和29 年生まれ、現在も富山県の滑川市で奥様の伴衣 ( ともい ) さんと、夫婦二人三脚で活版印刷を続けておられます。
父の幸市さんが昭和28年に開業した活版印刷所を、正彦さんが引き継いだのは平成09年のこと、それまではほかの印刷会社で、活版印刷からオフセット平版印刷まで修行を積まれたそうです。


中島正彦さん、伴衣さん ご夫妻

中島印刷所さんの活版印刷機は 手差しの円圧機で、いままで A3 の印刷物から名刺までを、この一台でこなされてきたとのこと。
そこで、名刺の印刷用に 「 小回りが利いて 色替も楽な、小型の活版印刷機があれば……」  と探していたところ 「 Adana-21J 」 の存在を知り、昨年 Adana-21J を導入されました。
中島印刷01写真上) 名刺印刷用に購入された Adana-21J  写真下) 使いこまれた手差し活版印刷機
中島印刷菊四手差し活版印刷機02 中島印刷文選植字部03
活版印刷の全盛期、富山の活版印刷所のおもな仕事は、ときを同じくして隆盛であった 「 売薬 ( 家庭用配置薬 )」 関係の印刷だったそうです。
活版印刷は、「 薬売りの命 」 ともされる 「 掛場帳 ( 訪問先の住所 ・ 氏名 ・ 使用薬の種類 ・ 使用量 ・ 売買明細 ・ 家族構成や健康状態などを記す顧客リストのようなもの)」 や、精算書、伝票、厚袋、配布用のおまけ ( 食い合わせ表、人生訓、健康十訓、格言集 ) など、各売薬業者さんからの小口注文の印刷に適していました。

また、そのような印刷物に、木版をもちいて商標や屋号を入れる仕事も多く、年季の入った木版の一部は、今でも現役で使用されているそうです。 印刷物や印刷版から、富山県ならではのお国柄をうかがい知ることができるのも、特徴的でおもしろいところです。

【 写真 : 社団法人・日本写真家協会 会員 風間耕司 】

月刊 『 富山写真語 万華鏡 』 「 第227号  活字 」   定価500円
( 書店販売はしていません。 購入や詳細については以下におたずねください )
発行 : ふるさと開発研究所
930―0916  富山県富山市向新庄町1―5―3 ユニティ内
電話 ・ ファクシミリ : 076―45―8850
@メール : k_kaze33@ybb.ne.jp
URW : http://www.furukaze.com/