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『平野富二伝』刊行記念 展示・講演会終了いたしました

《両日とも好天に恵まれ、多くの皆さまにご来場いただきました》
2013年11月30日[土]、12月01日[日]の両日にわたって開催された『明治産業近代化のパイオニア――平野富二伝』刊行記念展示・講演会(主催 平野家、協力:朗文堂、後援:理想社・タイポグラフィ学会・アダナプレス倶楽部)は、多くのご来場者をお迎えして無事に終了いたしました。
ご来場いただきました皆さま、ご協力いただきました皆皆さまのご尽力にふかく感謝いたします。
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著者:古谷昌二氏の講演会は、用意した椅子席がたりなくなるほどの盛況で、明治産業近代化に果たした平野富二の功績の大きさに、ご来場者もあらためて驚かれたというご感想が多かったようです。またはじめて公開されました平野家所蔵品は、平野富二の逝去後、関東大震災、戦禍などの大きな災禍のなかでも、平野家一門によってたいせつに守りぬかれてきた品品でした。これらの一次資料の数数に、皆さまは熱心にみいっておられました。
『平野富二伝』著者・古谷昌二氏と実兄・古谷圭一氏ご来場いただきました皆さま、ご協力いただきました皆皆さまのご尽力にふかく感謝いたします。
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後援いただきました タイポグラフィ学会 は、本木昌造賞平野富二賞 の両賞をもうけており、
「平野富二賞は、タイポグラフィの普及発展に著しく功績のあった個人及び団体に対するもので、その対象者は社会へのタイポグラフィの認識を高める行動及び啓蒙などにおいて、その事績が本学会にとどまらず、広く社会に貢献していると認められるものです」
としており、両賞関連資料の展示と、その活動報告をされました。

理想社 は、今回の展示・講演会にさいし、相当量作製されたパネル類の製作に協力いただき、また搬出入にもご協力いただきました。
平野富二自作短歌わが アダナプレス倶楽部 は、平野家にのこされた池原香穉カワカの画幅・書軸・短冊の多いことにひそみ、本木昌造活字復元プロジェクトで再生した、いわゆる「和様三号活字」をもちいて、平野富二の明治20年自作短歌、
「世の中を 空吹く風に 任せ置き  事を成す身は 國と身のため」
の活字組版を用意して、小型活版印刷機 Adana-21J によってご来場者ご自身での印刷体験をしていただきました。
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《掃苔会と、通運丸雑司ヶ谷ダラーイドックでの進水式》
会場となった日展会館の近くには「谷中霊園」があります。ここには平野富二の巨大な顕彰碑と塋域があり、その友人・知人の墓地もたくさんあります。幸い好天にめぐまれ、平野家ご長老の参加をふくめ、意義深い「掃苔会」となりました。

また展示には平野富二設立「石川島平野造船所」に源流を発する企業「株式会社 IHI 」のご協力もいただきました。
展示の一環として船の模型を拝借しようとしたこころ、模型とはいえやはりそこは船で、とても気軽に移動するわけにはいかず、急遽紙製のちいさな模型を製作・展示することとしました。

平野富二の業績のうち、活字製造と活版印刷機器製造の分野には、インキ(英:インク)、ピンセット(英:ツィーザー)などのオランダ語由来はことばがのこります。
もうひとつの造船・機械製造業の分野でも、やはり江戸期長崎出島からの情報発信のなごりがみられ、「ダラーイドック」などとしるされています。
これは英語ではドライドック、現在でも乾式船渠とされるようですが、今回の通運丸の製作は、雑司ヶ谷のマンションの一室「雑司ヶ谷ダラーイドック」で進水・艤装されて、無事に展示されました。

もうすこし整理がすすみましたら、詳細報告の舞台を 《朗文堂  タイポグラフィ・ブログロール 花筏》 に移して順次ご報告いたします。

『平野展』ポスターL

明治産業近代化のパイオニア
『平野富二伝』 考察と補遺  古谷昌二編著
刊行記念 展示・講演会
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日 時 : 2013年11月30日[土]-12月01日[日]
      11月30日[土] 展示 観覧  10:00-16:30
                  著者講演会 14:00-16:00
             12月01日[日]  展示 観覧  10:00-15:00
                 掃 苔 会   10:00-12:00
      編著者・古谷昌二氏を囲んでの懇話会、サイン会は、会期中随時開催
会 場 : 日展会館
             東京都台東区上野桜木2-4-1 電話 03-3821-0453
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主 催 : 平 野 家
協 力 : 朗 文 堂
             東京都新宿区新宿2-4-9 電話 03-3352-5070 
後 援 : 理想社/タイポグラフィ学会/アダナ・プレス倶楽部

【イベント開催趣旨】
平野富二没後120年、平野活版製造所(のちの東京築地活版製造所)設立140年、石川島造船所(のちの石川島平野造船所・現 IHI)創業160年という記念すべき年にあたり、古谷昌二氏編著『平野富二伝』が刊行されました。

本展示講演会は『平野富二伝』に詳細にしるされた、明治前期の活字版印刷術の黎明期に、活字製造、活版印刷機器製造ならびに技術基盤の確立に活躍し、ついで、造船、機械製造、土木工事、鉄道敷設、水運開発、鉱山開発など、わが国近代産業技術のパイオニアとして、おおきな業績をのこした平野富二(1846-92)に関して、これまで一般にはあまり知られていなかった事績を発掘し、その全貌を紹介し、再認識していただくことを目的とします。

同時に、明治前期の工業界をリードした、技術系経営者としての平野富二の多彩な事績の紹介が、そのままわが国近代の産業技術発達史の一断面をなすものであるとの認識のもとに、関東大震災や第二次世界大戦の戦禍を乗りこえ、平野家に継承されてきた貴重な資料を中心に、本格的にははじめて資料を整理・展示し、《明治産業近代化のパイオニアとしての平野富二像》を描きだすものです。

『平野展』フライヤー

【ブックコスミイク】『平野富二伝』(古谷昌二編著)刊行を控えて、朗文堂関連既刊書を紹介いたします。

この既刊書紹介ページは、近刊 『平野富二伝』(古谷昌二編著/2013年11月刊行予定) の刊行に先駆けて、朗文堂ブックコスミイク刊行書のうち、近刊『平野富二伝』と関連性がつよく、残部僅少の書籍3点を、あらためてご紹介するものです。
既刊書のため、現在では書店での店頭展示販売はほとんどございませんが、書店注文方式、オンライン書店経由、あるいは小社より直送でお求めいただけます。この機会にご愛読たまわれば幸せに存じます。
   Ⅰ 朗文堂愛着版 『本木昌造伝』(島屋政一著)
   Ⅱ 『VIVA!! カッパン ♥』(朗文堂アダナ・プレス倶楽部 大石 薫 編著)
   Ⅲ 『富二奔る ── 近代日本を創ったひと・平野富二 Vignette 08 』(片塩二朗著)

本木昌造伝

朗文堂愛着版 本木昌造伝

島屋政一著
朗文堂刊
上製本 A5判 480ページ
発 行:2001年08月20日
定 価:16,000円[税別]
     ISBN4-947613-54-8 C1070

口絵カラー写真20点、本文モノクロ写真172点、図版196点
特上製本 スリップケース入れ 輸送函つき
背革に羊皮の特染めバックスキン
ヒラは英国コッカレル社の手工芸マーブル紙

本書をご希望の方は直接朗文堂ヘお申し込みください。
本書は直販のみで通常書店では取り扱っておりません。
梱包送料・振り込み料金ともに、本書に限り小社負担にて直送いたします。
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【目 次】
・本木昌造の誕生から通詞時代
・長崎製鉄所時代の本木昌造
・近代活字創製の苦心
・ガンブルの来日と活版伝習所の創設
・新街私塾と長崎活版製造会社
・長崎から東京へ/活版印刷術の普及
・本木昌造の終焉と本木家のその後
・凸版印刷と平版印刷、ライバルの登場
・印刷界の二大明星
・本木昌造をめぐるひとびと
・野村宗十郎とアメリカン・ポイント制活字
・印刷術の普遍化とわが国文化の向上
・印刷界の現状
 新街私塾の印本書の元原稿は、昭和24年(1949)10月に島屋政一氏によって脱稿されたものの、太平洋戦争の直後の混乱のなかで刊行をみることはなく、ほぼ半世紀にわたり、名古屋の活字製造業者・旧津田三省堂の篋底キョウテイふかく秘められてきました。

朗文堂愛着版『本木昌造伝』は、再発見された島屋政一氏による原稿をもととして、図版などに大幅な再編集をくわえるとともに、ふたたびこの書物が篋底に秘められることがないように、朗文堂愛着版と銘うって上製本仕立てで刊行したものです。

本木昌造の裏紋とされるBmotoSozo[1]

【例言】――島屋政一
わが国の印刷事業はとおく奈良平安朝のむかしに寺院において創始され、久しきにわたって僧侶の手中にあった。江戸期にはいって勅版がでて、官版および藩版がおこり、ついで庶民のあいだにも印刷事業をはじめるものがあらわれた。

寛文(1661-72)以後、木版印刷術おおいに発達して、正徳、享保時代(1711-35)から木版印刷術は全国に普及をみたが、それは欧米諸国の近代活字版印刷術にくらべてきわめて稚拙なものだった。

幕末の開国とともに洋学が勃興して、印刷術の改善にせまられた。そのときにあたり、近代活字鋳造と近代印刷術の基礎をひらき、善く国民にその恩恵をひろめたものが本木昌造翁だった。

筆者はすでに『印刷文明史』を著わし、本木昌造のことをしるしたが、いささか冗長にながれ、またいささかの訛伝の指摘もあった。さらには畏友にして活字界の雄たりし、青山進行堂活版製造所・青山容三[督太郎]氏、森川龍文堂・森川健市氏の両氏から、活字の大小の格[活字ボディサイズ]のことのあらたな教授もえた。

さらに筆者はすぐる太平洋戦争において、おおくの蔵書を戦禍にうしなった。また青山進行堂活版製造所、森川龍文堂の両社は、その活字の父型や母型のおおくをうしなっている。

このときにあたり、ふたたび日本の近代文明に先駆して、開化の指導者としておおきな役割を演じた本木昌造の功績を顕彰して、それに学ぶところは大なるものがあると信ずるにいたった。

本木昌造は、ひとり近代印刷術の始祖にとどまらず、むしろ研究者であり、教育者でもあった。本木昌造の設立にかかる諸施設とは、むしろ「まなびの門」でもあったのである。
そうした本木昌造のあらたな側面を中枢にすえて本書をしるした。
昭和24年10月20日
                                                   著 者 識

長崎港新町活版所印

長崎活版製造会社之印

viva-cover-3

『VIVA!! カッパン ♥』

編 著:朗文堂アダナ・プレス倶楽部 大石 薫
装 本:B5判 136ページ オールカラー ジャケット付
発 行:2010年05月21日
定 価:本体価格2,800円[税別]
     ISBN978-4-947613-82-0

活版印刷の楽しくてカワイイ入門書誕生!!
{懐かしいのに新しい}
魅惑の印刷、活版印刷。
見て美しい!知って楽しい!
自分でやるともっと楽しい!!!
カッパン♥ を愛する アナタの必携書です。
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突起部にインキをつけて印刷する凸版印刷は、凹版印刷・平版印刷・孔版印刷とならぶ印刷四大版式のひとつです。そのプリミティブな仕組みは、印刷の原理を理解するのにもっとも適し、五感を駆使する作業工程は、ものづくりに対する純粋なよろこびをもたらします。その凸版人札のなかでも、文字活字を主要な印刷版とするのが活字版印刷術、略称:活版印刷、愛称:カッパンです。

本書は、たんなるふるき良きものにたいする懐古趣味や、「作品紹介中心」の視点からではなく、活版印刷にはじめて触れる、スモール・プリンターや活版造形者に向けて、まばゆいばかりに新しく、コンパクトで愛らしい活版印刷機 Adana-21J を、21世紀の日本で誕生させたアダナプレス倶楽部が、活版♥の魅力と可能性をトコトン追求した入門書です。

【VIVA!! カッパン 目次】
懐かしいのに、あたらしい、
魅力の活字版印刷術 ――― 活版
活字のおはなし
文選箱ギャラリー
文 選
組 版(植字)
組みつけ
印 刷
活字鋳造
Adana-21Jの使い方
muccu が行く!
   活字鋳造所探訪(築地活字編)
   活字版書籍印刷所探訪(長瀬欄罫製作所編+豊文社印刷所編)
あとがきにかえて
   こんな時代だから…………
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アダナ・プレス倶楽部とは
朗文堂/アダナ・プレス倶楽部と、活版印刷を大切にされる造形者の皆さまとのゆるやかな連帯の倶楽部です。面倒な規則や決まりはありませんが、21世紀日本においてあらたに誕生した活版印刷機 Adana-21J を中核にして、活字・組版・印刷・周辺機器や情報の交換・販売と、交流会・展示会をおこなっています。

富二、奔る

 『富二奔る ── 近代日本を創ったひと・平野富二』
 Vignette 08  平野富二没後百十年記念出版

著  者:片塩二朗
装  本:B5判 174頁 モノクロ 並製本
発行日:2002年12月03日
定  価:本体3,000円[税別]
      ISBN4-947613-66-1 C1070

なにもかもが草叢のなかからわきあがった明治の初期、小指のさきほどもないちいさな活字と、巨大な艦船を、ふたつともにつくった面白い人物 ── 平野富二がいました。その足跡は、金属活字製造、活字版印刷、機械製造、造船、航海、海運、土木と、その貢献は多方面で、めざましいものがありました。そんな平野富二の実像に鋭くせまりました。本格人物評伝『平野富二伝』(古谷昌二編著)と照合しながらご一読ください。

【富二 奔る  目次より】
・序の章  平野ホールの歴史と所蔵品
・一の章  新資料紹介
・三の章  長崎に埋もれていた平野富二碑
・四の章  平野富二と、いっときの敗者たち
・終の章  平野富二の体臭のごとき活字