【ことのは】THIS IS A PRINTING OFFICE|ここは印刷所なり|Beatrice Warde (Paul Beaujon)|

THIS IS A PRINTING OFFICE

Beatrice Warde (Paul Beaujon)

ここは印刷所なり

文明の十字街頭にして

芸術のこもれるところ

時の浸食にめげず

真実の剣が安置されるところ

風聞や浮説にくみせず

機械はうねりをあげる

ここよりひろくことばは飛翔して

電波のように浪費されることもなく

物書きの気ままに左右されることもなく

刷りをかさねて明瞭となり

時空を超えてとどまる

友よ! 君は聖地に足をふみいれた

ここは印刷所なり

Beatrice L. Warde

  • THIS IS A PRINTING OFFICE ── この銘板はワシントン D C のアメリカ合衆国政府印刷所のエントランスに設置されている。
  • Beatrice Warde (ビアトリス・ウォード アメリカうまれの女性 1900-69 Paul Beaujon-ポール・ビュージョン は、当時女性の進出が少なかった印刷界に向けてもちいた男性名前のペンネーム ウィキペディア )。
  • タイポグラファ、印刷史研究家、編集者・評論家。タイポグラフィ・ジャーナル『The Fleuron』,『The Monotype Recorder』誌などで活躍。16編からなるエッセイ集のうち『The Crystal Goblet ── 印刷は不可視である』でも知られる。
  • 16世紀の活字父型彫刻士 Claude Garamont 製作とされてきた活字の多くが、90年ほどのちのジャン・ジャノン-Jean Jannon 作であり、当時では標準的な図書本文用活字であった …… とした論考はおおきな話題を呼び、英国 Lanston Monotype Corporation では『The Monotype Recorder』の非常勤の編集ポストを提供したところ、若い女性の登場で驚愕したという逸話がのこる。彼女の「設定」では、ポール・ビュージョンはながい灰色の髭をはやし、四人の孫をもつ高齢の男性としていたが、実際はまだ20代の女性だった。

{参考:「Garamond Types  大陸を横断したフランス活字 ── ギャラモン活字の行方」『欧文書体百花事典』白井敬尚、朗文堂}
{ 参考: Thoughts On Typography    タイポグラフィ格言集