杉本昭生 小型本の世界Ⅱ

DSCN3378 DSCN3380 DSCN3388DSCN3385アダナ・プレス倶楽部会員、京都在住の杉本昭生さん製作の小型本(いわゆる豆本)紹介の第二弾です。
ともすると小型本の製作者は、なにより小型であることと、装本のおもしろさにこだわりがつよいあまり、そのテキストや、読書のための判別性と可読性を失っていることがみられます。
ところが杉本さんは、もともと読書家ですので、たとえ小型本であろうと、テキストを厳選し、みずからも読み、読者にも読んでもらおうというつよい意志を感じます。

上掲写真は平成26年1月25日製作、橘 曙覧『獨樂吟』です。装本は経本折りとして、ていねいな函をつくり、活版印刷による題簽ダイセンを手貼りしてあります。
かたわらに無粋ですが爪楊枝をおきましたので、そのおおきさを実感してください。
こんなに小型の図書ですが、一句一句がしみじみと楽しめます。

DSCN3358 DSCN3369 DSCN3374 DSCN3362杉本昭生小型本10作目となったのが『老人』(リルケ作 森鷗外訳 平成26年3月)です。
最初にパラパラとめくっていたら、最終ページに濃い紅色の花弁のようなものが貼られていました。
[杉本さんは、こんなロマンチストだったかな]
とおもってテキストを読んで納得。さらに添付のお手紙に、
「今回は翻訳ということですこし体裁を変えましたが、成功しているとはいえません。おまけもつけました。
ふふん、なるほどと思っていただけるか、いやいやまったくのひとりよがりか……。
ご一読いただければ幸いです」

どうやら杉本さんは、少少照れておられるようです。いいじゃないですか、この花びらは。
ただし朗文堂社内では、この花弁は「山茶花サザンカです」と、「なにかの洋花だろう」と、若干の論争がありました。
【リンク:アダナ・プレス倶楽部ニュース 杉本昭生 小型本の世界Ⅰ】