朗文堂-好日録002 電子出版の未来

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朗文堂-好日録
ここでは肩の力を抜いて、日日の
よしなしごとを綴りたてまつらん
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◉爆睡の昨夜――仕事も、依頼原稿もだいぶたまっているのに……。きのうは新宿私塾が西尾彩さんの特別講座だったことをいいことに、隣室でA Kaleidoscope Report 003の執筆。講座は5時に終わったが、メシも喰わず一気呵成に書き終えて擱筆。時計をみたら10時を過ぎていた。帰途にメシをかき込んだら睡魔がおそった。考えたら6月頃から土日をまともに休んだことはない。風呂もなにもなく、そのまま爆睡。

◉早起きは三文の徳――スッキリとした目覚め。早朝7時。新聞を読み終えて、このごろお気に入りのカフェに。中西秀彦著『我、電子書籍の抵抗勢力たらんと欲す』をかかえていく。ここはベローチェでもドトールでもないのだが、名前はまだ知らない。ただ珈琲がそこそこにうまいのと、ともかく空いているので、煙草くさくないのが良い。このごろ肩身の狭い愛煙家でも、やはりケムイのは嫌なのだ。どうせなら、おいしく煙草をくゆらしたいのだ(我が儘を承知で、せめて日曜の朝ぐらいだ)が。

◉中西秀彦さんのこと――中西さんは、京都の老舗印刷所・中西印刷株式会社の経営者で、執筆の主舞台は印刷学会出版部の『印刷雑誌』での連載である。その軽妙洒脱な語り口が好評で、連載も長期にわたっているし、単行本も売れているようだ。ところがその連載の前任者はなんと筆者であった。筆者の連載は18ヶ月であった。それに大幅に加筆して『活字に憑かれた男たち』として発売されたが、売れているとはいいがたい。筆力の差か。

◉中西亮さんのこと――中西印刷の六代目社長、中西亮さんとはふしぎなご縁があった。きっかけは1914年(大正3)うまれ、ただいま96歳のオフクロ。オヤジが亡くなった25年ほど前からしばらく、ようやく身軽となったオフクロは「お父ちゃんが、エジプト、ギリシャ、蒙古、アラスカ……行きたいっていっていたから」とまことに都合のよい理由を見つけて、海外旅行を楽しむようになっていた。もちろん老人のことゆえ、単独行ではなく、添乗員つきの団体旅行がおもだった。気に入りの旅行代理店があったらしい。そこでオフクロとしばしば海外旅行にご一緒したのが中西亮さん。ある日オフクロが「お前と同じで、ホテルでも、レストランでも、メニュー、コースター、マッチまで集めて、どこでも勝手に町の印刷屋さんに飛び込む京都のひとがいる。面白くていいかただから一度お訪ねしてごらん……」という次第で、京都の中西印刷さんを二度ほど訪問したことがあった。おもに京都大学の学術書用の特製活字を見せていただいた。そこには一朝一夕の蓄積ではない、素晴らしい「金属活字」があった。

◉ふたたび中西秀彦さんのこと――かつて『本とコンピュータ』という雑誌があった。創刊から3年ほど筆者も連載記事を執筆していた。編集担当は、いまは怪しげな筆名にかわった河上進さんだった。ある日怪しげさんが「オンデマンド印刷、どうおもわれます?」とやってきた。「あんなもの、ゼロックスのトナー・コピーだろう」。「そうそう、それでいきましょう」。怪しげさん、なにやら嬉しげにひとりで納得。しばらくして大日本印刷のgggギャラリーのビルで「激論! オンデマンド印刷の未来」と題する対談が設定された。そのときの「オンデマンド印刷、バラ色の未来の論客?」としての対談相手が中西秀彦さんだった。筆者は怪しげさんが勝手に設定した「オンデマンド印刷だと? ふざけんな! 派」だったらしい。

◉アンダースローの軟投型の投手――対談は1時間の設定だったが、話題がまったく噛み合わず、3時間は優に超えても終わらなかった。中西さんはときおりアンダースローから巧妙な変化球を投じてくる。筆者はジャイアンツの小笠原よろしく、あたりかまわず(なんの思惑もなく)バットをブンブン振りまわす「試合」に終始した。気の毒だったのはカメラマン。最初に対談風景の写真を撮り終えていたが、帰るに帰れず、カメラを抱いたままウツラウツラしていたのを覚えている。あれから何年経ったのだろう。整理の悪い筆者はその掲載誌も探し出せないでいる。それより皆さん、オンデマンド印刷って知っていますか? 使っていますか? オンデマンド印刷はだいぶ進歩して、筆者はときおり急ぎで少部数の「印刷≒コピー」に使ってます。いまやたれもお先棒は担がないようですけどね。

◉中西秀彦著『我、電子書籍の抵抗勢力たらんと欲す』――カフェで2時間ほどかけて読了。書名のタイトルはチト大袈裟かな? 著者は出版社と印刷所が主従関係にあり、あたかも別途の存在としてかたっているが、もともと印刷所から創業して出版社になった版元は多いし、いまでも出版部と印刷部を併営している企業はたくさんあるしなぁ。だから感想はなし。いまさら電子出版に抵抗するはなしをされても困ったなぁ……、というのが実感。便利で安いものは受け入れられるもの。それでダメだったら見捨てられるだけのはなし。それでも定価1,680円、一読の価値はありそうだ。ただし、今朝の珈琲の味はいつもより苦かった。

◉19日[金]に来社した新宿私塾修了生曰く。「掲示板、ブログ、チャット、ミクシィ、ツィッターってやってきたけど、どれも荒れちゃうんでね。もうツィッターも飽きちゃたし、やめました……」。オイオイ迂生は、みんながツィッターにいってブログが空いたんで、周回遅れを笑われながら、シメタとばかりブロガーになったばかりだぞ!

◉4F-Bでは、はるばる金沢から来社されたご夫婦が、Adana-21J操作指導教室受講中。5時で終わり。日帰り日程。きょうは、きょうのうちに帰ろう。

◉11月21日[日]、本日曇天。日日之好日。