花こよみ 005

詩こころ無き身なれば、折りに触れ、
古今東西、四季のうた、ご紹介いたしたく。

冬   が   来   た

きっぱりと冬が来た
八つ手の白い花も消え
公孫樹 イチョウ の木も 箒 ホウキ になった

きりきりともみ込むような冬が来た
人にいやがられる冬
草木にそむかれ、虫類に逃げられる冬が来た

冬よ
僕に来い、僕に来い
僕は冬の力、冬は僕の餌食だ

しみ透れ、つきぬけ
火事を出せ、雪で埋めろ
刃物のような冬が来た

高村光太郎(詩人・彫刻家 1883-1956)