月別アーカイブ: 2016年11月

【特別委託販売】 タイポグラフィ学会 『タイポグラフィ学会誌 09』 販売開始

Gakkaishi09_Kari『 タイポグラフィ学会誌  09 』が刊行されました。

タイポグラフィ学会は、タイポグラフィという技芸に学問的な基盤を与え、その成果を実技・実践を通して社会に貢献することを目的に、2005年8月に設立されました。 『タイポグラフィ学会誌』は2007年に創刊、今回が09号となります。

『 タイポグラフィ学会誌  09 』の主要内容
  • 論文:近代初期「平仮名活字」の書き手について― 池原香穉とその周辺
    タイポグラフィ学会会員 春田ゆかり
  • タイポグラフィ学会 設立10周年を経て
    タイポグラフィ学会会長 山本太郎
  • タイポグラフィ学会設立10周年記念催事「長崎研修」の報告
    Viva la 活版 ばってん 長崎『崎陽探訪・活版さるく』

今回は、当学会の10周年の催事(2016年5月に開催「長崎研修」)に関する記事なども特別掲載しております。
これらの研究成果が、日本国内にのみならず、各国の研究者によって広く参照されタイポグラフィ研究の発展に寄与することを希望するとともに、『タイポグラフィ学会誌』が今後さらに、タイポグラフィの研究における特色ある媒体として成長していければと考えております。
タイポグラフィ学会
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◎ 『タイポグラフィ学会誌 09』
特別委託販売 朗文堂ブックコスミイク
・ 非会員向け頒布価格 : 1部 3,000円(送料・税別)
・ 学生向け頒布価格 : 1部 2,000円(送料・税別)
*学生証明書の提示が必要です。

株式会社 朗 文 堂
160-0022 東京都新宿区新宿2-4-9

E-mail : 朗文堂 ブック・コスミイク robundo@ops.dti.ne.jp » send email
Telephone : 03-3352-5070    Facsimile : 03-3352-5160

【活版カレッジ】 2017年冬期「活版カレッジ 昼間部」 1月開講 受講生募集

活版カレッジ <活版カレッジ>は、身体性がもたらす造形精神とそのよろこびをおもくみています。
そのために、科学と、学術的根拠にもとづいた実技と実践を基盤とし、小型活版印刷機 Salama-21A を中心として、Salama シリーズによるケーススタディ ・ メソッドをふんだんに駆使し、あたらしい時代の活版印刷の現場での、現実的な課題の解決方法を学ぶことを目的とします。
活版カレッジ講習風景2017年冬期「活版カレッジ 昼間部」 1 月開講
木曜日(昼間部) 14:00-17:00 (時間超過の場合も有)
3 ヶ月(毎月 3 回、全 9 回)  定員 4 名

01月12日        活字版印刷概論
01月19日        和文端物組版
01月26日        文選
02月02日        和文ページ物組版
02月09日        和文と欧文の違い
02月16日        欧文書体の歴史
03月02日        欧文スペーシング
03月09日        多色刷り1
03月16日        多色刷り2

受講料 72,000円(税込)

定員数の少ない実技講座のため、受講料を全額納入いただきました方から受付完了とさせていただいております。
<Salama-21A 操作指導教室>は随時受けつけております。
詳細は <サラマ ・ プレス倶楽部 教室のご案内 Salama-21A 操作指導教室 >をご覧ください。
アダナタイトル 
【 お申し込み・お問い合わせ : 朗文堂 サラマ・プレス倶楽部  » send email

【新宿私塾】 第29期 11月22日第10回講座 : 櫻井優樹さん/新宿私塾28期修了生の交流会の記録

 

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新宿私塾29期カリキュラム resized 新宿私塾29期risized《新宿私塾第29期  11月22日第10回講座 : 櫻井優樹さん》
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櫻井 優樹 Yu-ki Sakuai
1981年大阪生まれ。artless Inc.を経て、2009年METAMOS™を設立。
2度のADFESTグランプリをはじめ、Cannes Lions 、CLIO Awards、D&AD、ONE SHOW等、国内外で受賞ぼちぼち。
タイポグラフィ・スクール 朗文堂新宿私塾第14期修了。現在は新宿私塾の講師などにも従事。
7 名からなるクリエイティブユニット mokuva のメンバーでもある。
ビジュアルコミュニケーションを中心に節操なく活動中。
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29期櫻井優樹01 29期櫻井優樹02 29期櫻井優樹03

多方面の造形で活躍中の櫻井優樹さん。新宿私塾在塾中からサンセリフ、それも原初的形態のアクチデンツ・グロテスクにこだわり続けてきました。
本講座では「講義 欧文サンセリフの誕生と発展」と題して、たくさんのオリジナル資料と共にあつい講義が展開していました。

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新宿私塾 第28期修了生交流会
私塾
28期懇親会03 28期懇親会01 28期懇親会04 28期懇親会02 新宿私塾第28期生は、半田クンとランスクンのふたりのジャンボがいた以外は、いつものとおり、真摯なタイポグラフィの学徒だとおもっていましたが…… 。
11月18日[金]、朗文堂から至近の会場で、たのしく嬉しい<新宿私塾第28期交流会>。
あちこちで同期会が開催されているようですが、幹事:金子さんの熱心な誘いもあって参加。
たのしく、収穫の多い交流会でした。[撮影 : 福士さん・半田さん]

新宿私塾第28期修了生といえば、アメリカ・ニュージャージー州出身のランス君。最後の〆は、やはり新作 T シャツの披露でした。[文字壹凜 ランス君アーカイブ
28期懇親会05 ランス
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!cid_FCB8E02A-72A4-4301-B622-FAAA2FD17BC1《新宿私塾第30期以降へのご予約のおすすめ》
新宿私塾では次期以降の入塾申込を随時受けつけております。
2017年04月開講予定の<新宿私塾 第30期>、あるいはそれ以降の期に入塾希望のご意向があるかたは、下記詳細情報をご覧いただき、朗文堂:担当鈴木 robundo@ops.dti.ne.jp  » send email  までご一報ください。
演習 ・ フィールドワーク以外の講座は見学申込も随時受けつけております。

【 詳細 : 朗文堂 タイポグラフィ・スクール 新宿私塾

【図書+書体紹介】 当代の人気者ふたりが語り尽くす 集英社『みうらじゅんと宮藤官九郎の世界全体会議』+くらもち銘石B

20161126145209_00001 20161126151043_00001みうらじゅんと宮藤官九郎の世界全体会議  
◯ 著者:みうら じゅん  著者:宮藤 官九郎     

◯ 発行所:集英社  ISBNコード: 978-4-08-780763-9
◯ 判型/総ページ数:四六判/256ページ 
◯ 定価:1,200円(本体)+税
◯ 発売日: 2016年7月20日
【 詳細 : 集英社 BOOKNAVI
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【内容紹介】
「ゆるキャラ」「マイブーム」の名付け親として知られるみうらじゅんと、

『あまちゃん』『ゆとりですがなにか』でおなじみの脚本家、宮藤官九郎。

彼らが、「男と女のあいだに友情は成立するのか?」「なぜ戦争はなくならないのか?」「なぜ男はハゲを恐れるのか?」といった、世界中の誰もが疑問に思いながらも曖昧なまま放置されてきた〝難題〟について、人類を代表して語り合います。

サブカルネタを軸にしながら、政治や国際情勢、下ネタまで縦横無尽に繰り広げられる“知と恥”の哲学問答は、決して世の中を憂うことなく、くだらなさの中にこそ人生の真理を見出していくための知恵が満載です。
混沌の時代を生き抜くための、グローバルスタンダードがここにある!

【本書で取り上げた議題】
◯ なぜ男と女はわかりあえないのか?
◯ 男と女のあいだに友情は成立するのか?
◯ セックスは女の人を何回イカせたら許してもらえるのか?
◯ チンコはデカいほうがいいのか、そうでもないのか?
◯ なぜ戦争はなくならないのか?
◯ お化けはいるのか、いないのか?
◯ なぜ男はハゲを恐れるのか?
◯ なぜ人はコンプレックスを持つのか?
◯ 天職とは何か?
◯ 親は子供にどんな背中を見せたらいいのか? ほか、約30テーマを収録。
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{新宿餘談}
『みうらじゅんと宮藤官九郎の世界全体会議』のブックデザイナーは、これまた当代の人気者 : 川名 潤 さんです。川名さんは<銘石B Combination 3>から、和字として「くらもち」を選択され、本書の随所でご使用されています。
ご愛用ありがとうございました。
銘石Btype con

かねてより、十分なインパクトがありながら、視覚に優しいゴシック体、それもいわゆるディスプレー・タイプではなく、文字の伝統を継承しながらも、使途のひろいサンセリフが欲しいとされるご要望が寄せられていました。
確かにわが国のゴシック体のほとんどは、人工工作物のように無機的で、もはや自然界に存在しないまでに鋭角的で、水平線・垂直線ばかりが強調されています。

「銘石B」の原姿はとてもふるく、中国・晋代の『王興之墓誌』(341年、南京博物館蔵)にみる、彫刻の味わいが加えられた隷書の一種、とくに碑石体と呼ばれる書風をオリジナルとしています。
『王興之墓誌』は1965年に南京市郊外の象山で出土しました。王興之(309-40)は王彬の子で、また書聖とされる王羲之(307-65)の従兄弟にあたります。

この墓誌は東漢の隷書体から、北魏の真書体への変化における中間書体といわれます。
遙かなむかし、中国江南の地に残された貴重な碑石体が、現代に力強くよみがえりました。「銘石B」は和字(平仮名と片仮名)三書体(くれたけ、くろふね、くらもち)が標準でセットされており用途に応じた選択ができます。

【論文発表会】 タイポグラフィ学会 『タイポグラフィ学会誌 08号 09号』 論文発表会を開催

2016_論文発表会チラシ_1101(大)[1] 02_03888-2DSC04014-2タイポグラフィ学会は、2016年11月23日[水・祝日]、学校法人専門学校 東洋美術学校 D棟学生ホール(東京都新宿区富久町2-6)において、『タイポグラフィ学会誌08号・09号』論文発表会を開催しました。

  • 挨拶 タイポグラフィ学会 設立10周年を経て――山本太郎会長
  • 論文発表 学会誌08号から――真田幸治会員
    『「雪岱文字」の誕生-春陽堂版『鏡花全集』のタイポグラフィ』
  • 論文発表 学会誌09号から――春田ゆかり会員
    『近代初期「平仮名活字」の書き手について-池原香穉とその周辺』
    と題した各論文で取りあげられた、資料展示をおこないながらの論文発表会となりました。

【 詳細 : タイポグラフィ学会
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【定番書紹介】 朗文堂ブックコスミイク 『洋書の話 第二版』 髙野 彰著

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書 名 : 洋書の話  第二版
著 者 : 髙 野   彰
装 本 : A5判 ソフトカバー 263ページ
発 売 : 2014年11月13日
定 価 : 本体3,700円 + 税   ISBN978-4-947613-91-2
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[著者あとがきより]
バウアーズが Principles of bibliographical description を出したのは1949年のことである。年代的には古いが、記述書誌学を扱った著作で、バウアーズを越える著作は現在も出ていない。この著作は現在も記述書誌学の重要な基本書であることにかわりはない。

その後、1969年にはパドウィック(E. W. Padwick)がBibliographical method を出した。1970年にはピアス(M. J. Pearce)が A workbook of ana-lytical & descriptive bibliography を出している。そしてギャスケルは1972年に A new introduction to bibliographyを出した。しかしいずれもバウアーズの解説書に近い。ピアスなどはバウアーズ本を章ごとに取り上げて解説しているほどである。バウアーズ本が難解なため、解説書や入門書が必要なのである。

『洋書の話』の初版が出たのは1991年のことである。1995年には増補版を出したが、その後、絶版となってしまった。そしてこの度、第二版を出す機会を得た。初版そして増補版で扱っている時代は16–18世紀が中心であったが、今回もその範囲を越えていない。
『洋書の話』も記述書誌学の概説書であるが、洋書がどんな姿をしているか、その姿はどのようにして作られたのかを示そうとしている。その意味では、本書は、書名に示したように、洋書に関する本と見ていただいても良い。

そのためにも、これまで以上に図を多く取り入れ、目で見てわかるようにつとめた。これまで何気なく見てきたことにも意味があることを知り、それらがどんな目的で用いられ、どんな姿で本に現れているかを理解できるはずである。
  記述書誌学は完成した学問ではない。現在も模索し、発展を続けている学問である。未解決の問題も多い。しかしこの知識を通して得られる情報は計り知れない。記述書誌学を目指す人や洋書に興味を抱いている人にとってお役に立てば幸いである。   

 [主な内容 (目次より)]

1 章     4°:A‒P4 とは何か
2 章     本の隠れた特徴
3 章     折丁式の作り方
            3‒1 折記号を使った折丁式
            3‒2 紙葉の挿入と削除
            3‒3 参照表示
4 章     扉の転写
            4‒1 転写とは
            4‒2 扉の囲み飾り
            4‒3 扉の文字の転写
            4‒4 扉の記号類の転写
5 章     扉以外の部分の転写
6 章     記述の単位
            6‒1 版と刷
            6‒2 異 刷
            6‒3 発行と再発行
            6‒4 別発行
            6‒5 理想本
7 章     記述書誌学とは
8 章     記述書誌と目録の違い
9 章     準ファクシミリ転写法小史 
参考図書/用語集/あとがき/索引
 
髙野 彰resized[著者紹介]

髙 野   彰(たかの あきら)
1941年生まれ
1964年 東京大学総合図書館 勤務
2001年 跡見学園女子大学文学部教授
2012年 跡見学園女子大学文学部特任教授
2013年 退官
 博士(日本文化)
主要著書 :

 『洋書の話』増補版(丸善、1995年)
 『帝国大学図書館成立の研究』(ゆまに書房、2004年) 『英語本の扉』(朗文堂、2012年) 

【 詳細情報 : 既刊書のご案内 『洋書の話』

【新宿私塾】 第29期順調に進行中。「フィールドワーク 公版書籍印刷工場 理想社見学」+河野三男さん講義 

!cid_4FB37547-4D75-4196-8850-D2B82EB5ED8A 新宿私塾29期カリキュラム resized<新宿私塾第29期>は、爽秋の09月27日[火]に開講され、講座は全25回のうち、順調に第08回講座まで進行中です。
<新宿私塾第29期>はこれからほぼ正月休みもなく続き、早春の03月14日に終了します。

◎ 11月05日[土]  第07回講座 : 「フィールドワーク 公版書籍印刷工場 理想社見学」
初のフィールドワークとして、教場をはなれて江戸川橋の理想社まででかけました。
講座は90分の 「印刷概論」 講義ののち、理想社 : 田中宏明さんのご案内で工場見学。
はじめて間近に見る本格書籍組版、印刷の実際。塾生諸君にとってはおおきな刺激となります。その記録を第28期塾生の福士大輔さんの写真をふくめて紹介します。
160521_10[1] 理想社_01 理想社_03160521_03[1]160521_09[1]理想社_02160521_08[1]
◎ 11月08日[火]  第08回講座 : 「講義:欧文組版の基礎 河野三男さん」
河野三男さん担当による「欧文組版の基礎」の二回目の講座。
行、段落の組み方、行間と行長、段落の意味と種類、可読性の検証・・・・・・と熱い講座が続きます。
河野さん_01 河野さん_02 河野さん_03──────────
!cid_FCB8E02A-72A4-4301-B622-FAAA2FD17BC1《新宿私塾第30期へのご予約のおすすめ》
新宿私塾では次期以降の入塾申込を随時受けつけております。
2017年04月開講予定の<新宿私塾 第30期>以降に入塾希望のご意向があるかたは、下記詳細情報をご覧いただき、 朗文堂 : 担当鈴木 robundo@ops.dti.ne.jp  までご一報ください。 演習 ・ フィールドワーク以外の講座は見学申込も随時受けつけております。

【 詳細 : 朗文堂 タイポグラフィ・スクール 新宿私塾

【図書紹介】 ヘルムート・シュミット タイポグラフィック・リフレクション 12 『nippon no nippon』

 

schmid_001+5 schmid_002+5 schmid_003+5タイポグラフィック ・ リフレクション 12
nippon no nippon
ヘルムート ・ シュミット 大 阪
和訳 : 山田清美

   歌麿の官能的な線によって好奇心が芽生え、エミール・ルーダーによって大いに鼓舞された私が、日本の地を踏んだのは、素朴で未熟な 24 歳のときであった。 (不可能を可能にしてくれたのは、東京のアイデア誌のアートディレクター 兼 編集長の大智浩と、ヤラカス館の社長でニッポン ・ インターナショナル ・ エイジェンシーの創立者 ・ 中許忠夫である)。
大阪に到着して間もなく、スイスの TM 誌の編集長であるルドルフ ・ ホシュテトラ一から、植字工の視点で日本的なものについて記事を書いてみないかとの依頼があった。 自分に書けるのだろうか、という疑念を押しやって書いた最初の 『ニッポンのニッポン』 のテーマが「畳」である。 1968年1 月発行の TM 誌に掲載された。

   『ニッポンのニッポン』 で伝えようとしたのは、私なりの理解による日本である。 かつて存在した日本、そして今も存在している日本、さらにこれから発見されるべき日本。 私の寄稿記事にフルページが割かれていた。  レイアウトは雑誌の規格に合わせてある。 私の記事は定期的に掲載されたが、次第に不規則になっていった。  最後の 「手水鉢」 が掲載されたのは1979年3 月号の TM 誌であった。 それから間もなくルドルフ ・ ホシュテトラーが亡くなり、シリーズも終わった。

   このシリーズを一冊の本にすることは、私にとって長い間の夢だった。 ウプサラのオケ ・ ニルソン ― 彼は1950年代のバーゼル ・ スクールの生徒であった ― の励ましもあり、ドイツ語のテキストを基にレイアウトに着手したのは1994年ごろであった。 何故途中で止めてしまったのかは思い出せないが、レイアウトが硬いスイス風であったことを覚えている。
何年かが過ぎ去り、ニコールがバーゼル ・ スクールを終え、バーゼルのデザイン ・ スタジオの仕事を止めて日本に戻ると、彼女は TM 誌のテキストのタイプセットに取り組み始め、現存する写真のスキャンを始めた。英語のテキストも必要と考え、イギリス在住のロイ ・ コールに依頼したところ、彼はライプツィヒ在住の翻訳家でピアニストのグラハム ・ ウェルシュを紹介してくれた。

    二か国語のテキストを基にしたレイアウトがおおむね出来あがった。 ドイツ語のテキストの文字は英語のテキストよりわずかに大きく、コラムの幅も英文に比べると独文がわずかに広い。 このレイアウトを持って、友人である東京の朗文堂社長の片塩二朗に会いに行った。 日本語のテキストがないと本は売れないと彼は言う。 そこで大阪のデザイン事務所の初代通訳であった山田清美に翻訳を依頼、スミ ・ シュミットが眼を通し確認作業を担当した。

    本書では、日本語のテキストをドイツ語と英語の横に並べるのではなく、アルファベット世界と表意文字世界とに分けて、本の後半にまとめた。 本書は2012年に出版され、翌年ロンドンの国際タイポグラフィック・デザイナー協会(ISTD)から最優秀賞を授与された

    出版から三年後、財団法人 DNP 文化振興財団から、京都 ddd ギャラリーで 「ニッポンのニッポン展」 を開かないかという思いがけない招待を受けた。 ポスター、チラシ、招待状、封筒、案内状、20 ページの来場者用冊子デザインも任された。

    書物から展覧会場へ伝達の場が移る。私はテキストと画像を主役にしたいと考えた。
黒い天井と白い床の間に吊るされた 90 センチ幅の半透明のバナーに黒色でプリントされた画像と和 ・ 英テキスト。 訪れる人はランダムに吊るされたバナーの間を回遊しながら観、感じ、発見し、「 88 の音符をランダムに並べた 7 つのバリエーション」 の響きに耳を傾ける。 日本的なるものの寡黙な美を味わうことができる。

    ニコ一ル ・ シュミットと、長谷川哲也によって具現化された 「ニッポンのニッポン」 の展覧会場は、私には夢のようだった。 その夢を形にして残すために、「タイポグラフィック リフレクション」1 2号を出版することにした。 「アイデア」 誌編集長室賀清徳のエッセイを添えて。

【 詳細 ・ 問い合わせ先 : helmut schid design
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{ 新宿餘談 }
おもえらく、ときに交わり、ときに併走し、あるときは逆走しながらも、ながい旅路をヘルムート ・ シュミット氏とはともにしたという感がある。
かたくなまでに変わることの無いひとだったというおもいと、柔軟に時代と整合性をたもって活きてきているひとだともいえる。 DSCF5640[1]シュミットファミリーの皆さんと[1]そのひとつの中間点であり通過点が、図書 『 japan japanese 』 (朗文堂 2012)であった。
透徹な視点と、熟慮されたテキスト、配慮を凝らしたタイポグラフィ・ コンポジションによる図書『 japan japanese 』が誕生した。
それは愛娘ニコール ・ シュミットと、夫君 : 長谷川哲也氏によって 「京都 ddd ギャラリー」 での空間展示に <nippon no nippon> と題されて、三次空間へのあらたな具現化をみた。 201203japanjapanese[1]cid_787B8BD3-8FF0-43FB-B4B4-BDDAFB5680FC1[1]ここまでの 「まとめ」 として、ヘルムート ・ シュミット自主企画出版 <タイポグラフィック ・ リフレクション 12 nippon no nippon> が完成した。
また小社のWEBサイトを繰ってみると、{ 朗文堂ニュース }、{ 文字壹凜 } だけでも相当量の記録がのこっている。
1980年代初頭からシュミット氏との共同製作作業を再再展開してきた。 そろそろまた次の、あらたな企画で、造形界の沈滞を打破したいおもいがつのっている。
編集者としてはヘルムート ・ シュミットと、その若きファミリーとともに意欲的な挑戦をしてみたいとおもうこのごろである。  [ 片塩二朗  wrote ]

 

【講演会報告】 中央区生涯教育講座で古谷昌二さんが「平野富二物語 ~IHIを創業した実業家の人生~」と題されて講演

東京都中央区 生涯教育講座
『平野富二伝 考察と補遺』の編著者 : 古谷昌二
「平野富二物語 ~IHI を創業した実業家の人生~」

プロジェクター説明資料(1-1)PDF_ページ_01 DSCN8267 DSCN8271M7,M37社屋 S4本社2016年10月21日[金]、平野富二ゆかりの地、東京都中央区の生涯教育講座で、『平野富二伝 考察と補遺』の編著者:古谷昌二さんが「平野富二物語 ~IHIを創業した実業家の人生~」と題されての講演会がありました。

同講座は中央区民に向けて広報され、全 8 回の有料連続講座ですが、現在は定員となっていて一般募集はおこなっていません。
それでも主催者のご好意で五名の参加者枠をいただき、サラマ・プレス倶楽部「平野富二の会」参加者の有志五名が聴講しました。 古谷昌二さんuu 平野表紙uu『平野富二伝 考察と補遺』
編著者 : 古谷昌二
発  行 : 朗文堂
定  価 : 本体12,000円 + 税
A4判、ソフトカバー、864ページ 図版多数
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講座は午後二時―四時でしたので、終了後に会場の築地教育会館からわずかに徒歩三分! かつて東京築地活版製造所と平野富二邸があった萬年橋から祝橋の周辺を、古谷さんのご案内で、灯ともしころまで、おもわぬ「築地さるく」となりました。 プロジェクター説明資料(2)PDF_ページ_08 プロジェクター説明資料(1-1)PDF_ページ_14至近の「東京築地活版製造所跡」、「活字発祥の碑」(現コンワビル)をたずね、その背後の「旧平野富二邸跡」(現築地えとビル)などをたずねることができました。
「旧平野富二邸跡」は広大な敷地ですが、ここには東京築地活版製造所、石川島平野造船所の社員寮なども設置されていたようです。
現在はおもに「築地えとビル」となっており、壁面にはえとの十二支の紋様がレリーフとして設置されていました。 DSCN8288 DSCN8297 DSCN8290 DSCN8293

【朗文堂ブックコスミイク】 鈴木 篤著 『わたくしは日本国憲法です。』 11月03日[木・文化の日祝日]は日本国憲法公布から70年の記念日でもありました

プリント

顔写真鈴木篤氏 『 わたくしは日本国憲法です。』 著者 : 鈴木 篤氏

【 朗文堂 ブックコスミイク : 『わたくしは日本国憲法です。』 フライヤーPDF
【 関連ブログ : 弁護士 鈴木 篤 の つれづれ語り
【 文字壹凜 : 【祝日】 五月三日は日本の憲法記念日2016年05月01日
青年劇場広告──────────
《 出版人として、タイポグラファとして、そして、なによりもひとりの国民として 》

小社刊 『わたくしは日本国憲法です。』 の著者 : 鈴木 篤氏は、なによりも日本国憲法の前文をおもくみている。当然そこには憲法全体をつらぬく精神と理念がしるされているが故である。
2014年09月06日の『わたくしは日本国憲法です。』出版記念パーティでも、掉尾を飾って会場に『日本国憲法』前文の画像がながれ、それを女性参加者が声高らかに朗読されて感銘をよんだ。
そして鈴木 篤氏は、『日本国憲法』をつぎのようにかたる。

「すばらしい憲法ではないでしょうか。私たち日本国民は、こんなすばらしい、世界に誇れる憲法を持っているのです」

もちろん図書『わたくしは日本国憲法です。』のなかにも、前文をふくめて、憲法の全文が紹介されている。
また<花筏 朗文堂好日録-045 卯月 四月がおわり、新緑と薫風の 皐月 五月のはじまり>でも、『MORGEN』誌での書評を紹介するなかで、『日本国憲法』前文を紹介した。

ところが、現状のコンピューター・ディスプレーは、大小を問わず、まだまだ可読性 Readability と 判別性 Legibility に劣るという段階にとどまっている。
それでもタイポグラファとしては、こうした貴重な文書に勝手に段落改行などは設けるべきではないと判断していた。
ところが、デバイスによる差はあるとはいうものの、やはりこれだけの文章量がつづくと、画面ではことばの壁となって、読む意欲を減衰させてしまう結果となっていた。

今回は、段落ごとに一行アキとして、ともかく読んでいただけるようにいささかの工夫をしたものである。筆者の意のあるところをお汲みいただけたら幸いである。
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日 本 国 憲 法

施行  昭和二二年五月三日

日 本 国 憲 法   前 文

日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。

そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。
これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。
われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。

われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。
われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。

日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

【タイポグラフィ学会】 『タイポグラフィ学会誌』 08号・09号 論文発表会のご案内

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タイポグラフィ学会
『タイポグラフィ学会誌』 08号・09号 論文発表会

【日  時】
2016年11月23日(祝・水曜日)
14:30-17:30(受付開始 14:10- )各講演80分程度(資料閲覧時間を含む)
【場  所】
学校法人専門学校 東洋美術学校 D棟学生ホール(東京都新宿区富久町2-6)
https://www.to-bi.ac.jp/access/
【講演者】

真田 幸治 ・ 春田 ゆかり
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【講演 1 】

「雪岱文字」の誕生 —- 春陽堂版『鏡花全集』のタイポグラフィ
真田 幸治(タイポグラフィ学会会員/装幀家)

装幀家、挿絵画家などとして再評価が著しい小村雪岱(こむら-せったい)であるが、その評価は主に泉鏡花の著書、「鏡花本」の装幀によるところが大きい。
その雪岱の装幀において、雪岱独自の文字「雪岱文字」が実は大きな役割を担っていたという事実は知られていない。

また「雪岱文字」は、雪岱が大正期に在籍していた資生堂の和文ロゴタイプの成立にも大きく寄与している。そして春陽堂版『鏡花全集』の函の装幀において主要な構成要素として採用されて一つの完成を見ることになる。今まで論じられることの なかった「雪岱文字」が、どのように誕生し、展開されていったのかを考察する。

【講演 2 】
近代初期「平仮名活字」の書き手について —- 池原香穉とその周辺

春田ゆかり(タイポグラフィ学会会員/グラフィックデザイナー)

日本語活字書体のなかで、平仮名書体が注目されて久しい。そのあり方が文面の印象を大きく左右するからだとされる。
しかし平仮名活字書体がどのようにして現在の形にあるのか、その成立期に誰がかかわったのか、その詳細はあまりよく知られていない。

日本の近代印刷・活字の創始者(導入者)として知られる本木昌造の近くにあり、その初期の活字書体の「版下」を手がけた池原香穉(いけはら-かわか)。ながらく詳細不明とされてきたその人物像について 近年判明した事柄と、彼が平仮名書体にあたえた影響と役割について、現物資料も交えて考察する。
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【参加費】
無 料
*当日に限り『タイポグラフィ学会誌』01-09 号を特別価格にて販売いたします。
【懇親会】

講演会場至近を予定 要予約(一般3,000円)18:30より2時間程度
【お申し込み方法】

11月15日(火曜日)までに件名【論文発表会へ参加希望】として、氏名、人数、連絡先、懇親会への出欠の有無を、Eメールかファクシミリにて下記の宛先にお送りください。
こちらより3日以内にお断りの連絡がない場合は、受付完了となります。また定員に余裕のある場合は、期日以降も受け付けます。
【申込先 ・ お問合わせ先】

タイポグラフィ学会 東京事務局
Eメール : info@society-typography.jp
ファクシミリ : 03-3352-0727

【年末恒例 字学】 ポストカード Postcard と クリスマス Christmas の欧文表記に関する注意点 ー もう Post Card(二単語), X’mas の誤用は卒業、Xmas は慎重に

DSCN2014 DSCN2092カレンダーの残りもあと二枚だけ。
本11月01日、郵便局から<郵便はがき>の年賀状が発売され、まちかどには<年賀状印刷たまわります>ののぼりがはためく候になりました。
この時期、造形者の皆さんは「ことしのクリスマスカード、年賀状はどんなアイデアと印刷にしよう」と、楽しくもあり、悩ましくもなるかたが多いようです。
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例年のことながら、そろそろクリスマスカードや年賀状の準備にとりかかっているかたも多いこのとき、フト ふるい記事をおもいだしました。
どういうわけか造形者の一部、なかんずくデザイナーと称するすひとは横文字に親近感をもつようで、郵便局の<郵便はがき>ではなく、欧文表記による私製の<Card>を印刷されることが多くみられます。
そこでの注意点を ソッと …… 。
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【再掲載】 ポストカード Postcard と クリスマス Christmas DSCN3921

 本項の元記事の掲載は<2014年12月03日 花筏>であった。 テーマと問題点に進展があまりがみられないこともあり、ここに再掲載した。

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カレンダーののこりが、もうすぐあと二枚だけになりそうなこのとき、本コーナーを訪問していただいたゲストの皆さまに、しばしばあやまって使われている英語表記をご紹介したい。
ひとつは 「 郵便はがき ポストカード 」 で、ひとつは 「 クリスマス 」 である。

使用する資料は、英和辞書としてたかい評価がある 『 研究社 新英和大辞典 』 で、これは画像紹介の許可をいただいてある。
もうひとつは、『 THE OXFORD DICTIONARY for WRITERS AND EDITORS 』 ( Oxford University Press, 1981,  p.318) である。
同書は、オックスフォード大学出版局の刊行書で、執筆者と編集者にむけて、あまりに日常化していて、ついうっかり、あぁ知らなかった、というたぐいの表記、間違えやすい英単語を中心に、簡潔に紹介したものである。
同書には意外な記述がみられる。
DSCN3937 ここには 「 post  郵便 」 から派生した英単語を列挙して、「 abbr.  省略語、短縮語 」、「 しばしばスペースを入れて二単語にされていますが、一単語ですよ 」、「 語間にハイフンを入れて表記してください 」 などと説明されている。

すなわち 『 THE OXFORD DICTIONARY for WRITERS AND EDITORS 』 では、 「 郵便はがき ポストカードは  postcard  と一単語にしてください。 post card のように二単語では無いのでご注意を。 省略語は p.c. です 」 と、簡略かつ明確にしるされている。 DSCN3943 DSCN3958 3949 いっぽう 『 研究社 新英和大辞典 』 では、とても丁寧に 「 postcard 」 を説明している。
ここでの標題語 「 post ・ card 」 の中黒点は、音節 ( syllable ) をあらわすものであり、ここに中黒やダッシュやスペースは不要。
さらに 『 研究社 新英和大辞典 』 では、「 郵便はがき (含む : 年賀はがき)」 にたいする日英の比較とともに、わざわざ強調の裏罫をもちいて、「 SYN  synonym  同義語、類義語 」 として、「 絵はがき  と はがき 」、「 postal card,  postcard 」 の使いわけと、英国と米国での相違まで説いている。
ご参考になったであろうか。

この問題は、わが国でもふるくから一部の識者から指摘されており、朗文堂 WebSite では 〈  タイポグラフィ実践用語集 は行 葉書・端書・はがき・ハガキ 〉 で、ずいぶん以前 ( まだ郵政省があって、専用ワープロを使っていた時代 ) から触れられている。

ところが、いまだに展覧会シーズンともなると、各種の造形者、とりわけ印刷メディアに関わることがおおい 「 印刷設計士/グラフィックデザイナー 」 の皆さんから、「 Post  Card 」 と、堂堂と二単語で印刷された 「 Postcard 」 をたくさん頂戴しているかなしい状態がつづいている。
ふつうの生活人は、ほとんど 「官製はがき」 [このことばは、現代でも有効なのであろうか] にしるされた「郵便はがき」を、そのままもちいるので、あまりこのミスは犯さなくて済む。

この 「 印刷設計士/グラフィックデザイナー 」 が犯しがちなミスは 意外とやっかいで、1883年(明治16)ごろから < 公文書では 「 葉書 」 としている > と 『広辞苑』 は説くが、その説明文をみると、すべて 「はがき」 としている。そして郵便局が販売しているカードには<郵便はがき>としるされている。  

いかがでしょう、  「 postcard , Postcard 」 。
「 過ちて改めざるを是を過ちと謂う 」、「 過ちては改むるに憚ることなかれ 」 という。 この名詞語は、名にし負う天下のオックスフォード大学の 執筆者や編集者でも 「 ついうっかり 」 なのであるから、なにも臆することはない。
かくいうやつがれも、しばしばこうした誤用や誤謬をおかしては反省しきりの日日である。 そしてこの記事をみたあとは、「 そんなことは、昔から知ってたさ 」 、「 そんなの常識だろう 」 と、どっしり構えて欲しい。

それでもおひとりでも、正しく 「 postcard,  Postcard 」 をもちいれば、まずは大切なクライアントに迷惑をかけることが無くなり、やがてちいさな波紋がどんどん拡大して、わが国の造形者が恥をかかなくなる日が近からんことを念願している
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《 すこし気がはやいですか。 暮れになったら X’mas はやめて、口語の Xmas も慎重に 》
いっぽう 「 クリスマス 」 は少しやっかいである。
それは某国語辞書 『 広辞苑 』 が、どこか意地になって、クリスマスの項目で 「 Christmas,  Xmas 」 を説明しているからである。

それに牽かれたのであろうか、わが国の一部に 「 X’mas 」 と表記する向きがあるが、これはギリシャ語の「キリスト Xristós」の省略を重複したもので完全に間違いである。

『 THE OXFORD DICTIONARY for WRITERS AND EDITORS 』 では、「 Christmas  クリスマス 」 は執筆者や編集者にとってはあまりに平易であり、関心が乏しいようで、わずかに「 Cristmas (cap.)」 として、文頭を大文字にすること (p.70) 〈 参照/タイポグラフィ実践用語集 き行 キャピタライゼーション : capitalization 〉 として簡略に触れている。

またギリシャ語の「キリスト Xristós」由来の 「 Xmas 」 には、キリスト教徒の一部に抵抗を感ずる向きがあって、やつがれも20年ほど前に来社したアメリカの知人から、
「 ここに来るまでに X’mas,  X’mas Sale のディスプレイがたくさんあった。 あれはクレイジーだ。  Xmas ( エクスマス ) にも、発音からわたしには抵抗がある。 それよりどうして日本では、11月のはじめから Christmas をはじめるのだ 」
と責められたことがあった。

宗教や宗派、そして発音までがからむと、やつがれの手にあまる。 まして某国語辞典の存在もあって困惑していたが、『 研究社 新英和大辞典 』 に、わかりやすく 「 クリスマス 」 の解説があった。
長文にわたるので、その紹介にあたって、画像紹介の許可を研究社からいただくことができた。 そしてことしの暮れは、せめて 「 X’mas,  X’mas Sale 」 を見なくてすむように念願したい。
そしてあくまでも口語で、文章語ではない 「 Xmas,  Xmas Sale 」 を、大量配布される広告や印刷物などへの使用に際しては、おおいに慎重でありたいものである。 DSCN3943 DSCN4098 DSCN4086