月別アーカイブ: 2012年3月

新宿私塾第19期修了

新宿私塾第19期は、予定通りすべての講座を終えて、3月10日修了制作発表会を開催して、全員が無事に終了をむかえました。塾生の皆さん、講師の皆さん、ご苦労さまでした。
新宿私塾の修了制作とは、むしろ修了論文ともいったほうが適切なもので、これまでの19期分をまとめると膨大な論文集となりそうです。
修了生の皆さんは、これを起点として、さなぎが蝶になるようにおおきく成長して、タイポグラフィの創作活動に立ち向かっていきます。一部の修了生はさらにここでの研究を継続して、堂堂たる論文としてまとめられるかたも少なくはありません。

昨年9月にスタートした第20期での半年間には、しばしば余震があり、世相はなんとなく重苦しいものがありました。冬にはいると、例年になく寒い毎日がつづきました。そんな苦楽をともにし、それぞれの個性・苦楽を知った諸君との別れはさびしいものです。
それでも皆さんがタイポグラフィにこだわりを持ち、これからも同じフィールドでの活動がつづきます。きっと再会の機会はなんどもあることを信じて、いっときのお別れです。

3週間だけのわずかな春休みを終えると、新宿私塾は4月3日、第20期生をむかえます。旅立ちの春、あたらしい門がひらかれる春です。

アダナ・プレス倶楽部からのお知らせ

第11回 活版ルネサンス フェア

新企画・新規商品もぞくぞく入荷です!
どうぞご期待ください!!
あわせて朗文堂春の新発売書籍、
新発売電子活字も、いちはやく購入可能です。

2012年3月30日[金]31日[土] 13:30―19:00

会場 * 新宿区新宿2-4-9 中江ビル4F 朗文堂

  *

アダナ・プレス倶楽部の会員と、活版ファンの皆さまを対象とした
新品・中古品のカッパン関連機材・資材の展示即売会です。
手狭な会場に、貴重アイテム、マニアックな商品が溢れています!
創作の春に向けて、このチャンスをぜひともお役立てください。
[東京都公安委員会許可 第304380708865号]

アダナ・プレス倶楽部が製造・販売している新品のカッパン印刷関連機器、独自企画開発商品はもとより、カッパン印刷所で長年の使用に耐えてきた優秀な中古品もドッサリ用意いたしました。これらは現在では生産中止となったカッパン関連機器や、個人では入手しにくい活版専用インキなどの器材・資材を含みます。カッパン印刷のサポーターとして、アダナ・プレス倶楽部ならではの、懇切丁寧な使用方法の解説もいたしますので、狭い会場ながらも魅力溢れる展示販売会となります。

折しも「活版凸凹フェスタ2012」をはじめ、春の展覧会や、春の創作活動のシーズン到来。「今年こそ、活版ライフをスタートしよう! いつかは活版凸凹フェスタに出展しよう!」と意気込む皆さまには絶好のチャンスです。創作に活用できそうな機材の補充、実制作での疑問解決、技術の向上に、どうぞこの「活版ルネサンス フェア」をご利用ください。

「活版凸凹フェスタ」は、活字版印刷にまつわるさまざまを集めた楽しいお祭りです。活字を主要な印刷版とする「活字版印刷術 Typographic Printing」と、各種凸版類をもちいて印刷をおこなう「凸版印刷 Letterpress Printing」を中心に、版画や製本といった関連技術も含めた作品と製品を展示し、一部は販売もおこないます。

昨年は震災の影響で残念ながら中止という苦渋の決断をさせていただきましたが、一年間の充電期間を得て、満を持しての再開となります。朗文堂アダナ・プレス倶楽部は、身体性をともなった真の造形活動、モノづくりの喜びにいそしむ、ひらかれた会員制の倶楽部です。
なお両イベントの詳細は、順次掲載される  アダナ・プレス倶楽部  のWebsiteをごらんください。

【会 期】 2012年5月3日(木・祝)―5月6日(日)
        10:00―17:00(最終日は15:00まで)
【会 場】 日展会館 2F イベントスペース
      東京都台東区上野桜木2―4―1
【主 催】 朗文堂アダナ・プレス倶楽部

朗文堂ブック・コスミイクからお知らせ

新刊書のご案内 ──4月中旬 発売!
製本所混雑のため少少遅延。お詫びいたします。 

japan japanese

 

日本的なるものの寡黙な美

ヘルムート  シュミット編著
英訳  グラハム・ウェルシュ
和訳  山田清美

朗文堂
──
コンセプト&デザイン
ヘルムート  シュミット

発行・発売
株式会社朗文堂
160-0022
東京都新宿区新宿 2-4-9
03-3352-5070 telephone
03-3352-5160 telefax
robundo @ops.dti.ne.jp
www.robundo.com

発行日
2012年 03月 20日

ISBN 978-4-947613-83-7 C1070

定価 3,800円(本体 3,619円)

独・英・日本語表記
250 x 255 mm(重箱本)
108ページ
オフセット平版印刷
スミ 1色
かがりとじ上製本
ジャケット付
──
「未知のかたち、未知の響きは実に
魅惑的だ。単調で、迷いのない仏僧たち
の読経。風のような、神秘的な尺八
の響き。日本の宮廷音楽である
雅楽で使われる笙ショウの繊細で微妙な音色。

これらは時代の音にも決して
かき消されることのない洗練された世界
である。しかしこれは向こうから
近づいて来ることはない、むしろこちら
から近づいて行かなければならない
世界である」

「歌麿の官能的な線によって好奇心が
芽生え、エミール・ルーダーによって大いに
鼓舞された私が、日本の地を踏んだのは、
素朴で未熟な 24歳のときであった。

ある日、スイスのティポグラフィシェ・
モナーツブレッテル( TM)誌のルドルフ・
ホシュテトラー編集長より手紙を
受け取った。タイポグラファの目を通して
見た日本のフォルムや暮らしの中の道具
といったものを紹介する記事を毎月
連載してみないかという誘いであった。

このシリーズを「Japan japanisch」
(ニッポンのニッポン)と呼ぶことにした。
というのは、私自身が理解している日本、
すなわち、かつて存在した、そして今も
存在している日本、更にこれから発見
されるべき日本を伝えたいと思ったからだ。

40年以上の時を経て、この連載は
僅かな変更とテキストを追加して、一層
充実した本のかたちで生まれ変わった」

ヘルムート  シュミット
「私のニッポン」「ニッポンのニッポン」より

────
スイスでまなび、タイポグラファとしておおきく成長したひとりの青年(ヘルムート  シュミット氏)が、なぜ、とおい日本をその活動の本拠地としてえらび、なぜ、はるばると日本にやってきたのか。その日本で、なにを発見し、なにに惹かれ、そしてなぜ日本に定住する道を選択したのか……。

すなわち本書は「日本を日本たらしめている、素晴らしいひとと造形の数数」を、繊細な視線と、すみきった明るい心境からときあかしています。そこには、日本にうまれ、日本で育ったわたしたちが見落としがちな「すばらしい日本、すばらしい日本人」が、清明に、いきいきと描かれています。

これからは、名著として評価のたかい『茶の本』『陰翳礼讃』とならんで、わが国はもとより、世界規模でのあらゆる造形者が、日本と日本人を語りあう際に、互いの共通基盤として『japan japanese』が 絶好の書物になることを夢見て。

片塩二朗「編集佳境ナレド越年必至!」より

朗文堂 新宿私塾からお知らせ

新宿私塾第19期修了!

新宿私塾第20期4月より開講!

新宿私塾第19期生は、いよいよ3月10日[土]に修了制作発表会を迎えます。第19期の開講は昨年9月、振りかえれば、まだまだ震災の影響がのこり、節電運動や余震騒ぎなどがあって、なにかと気のおもい毎日が続くなかでの開講でした。
そんななか、新宿私塾第19期に結集した俊才は、いよいよ修了制作を発表して、タイポグラフィの前衛としてのあらたな旅立ちのときを迎えます。造形界に吹く風は追い風ではないいま、タイポグラフィの知・技・美を十分まなんだ俊才の旅立ちです。

新宿私塾第20期スケジュール表
エリック・ギルの試作スケッチををカスタマイズ。
杉下城司氏デザイン

 新宿私塾第20期生は、4月3日から第1回の講義がはじまります。身体性をつよく意識し、五感のすべてを駆使しての造形、タイポグラフィの深甚なる魅力をまなび、体得する半年間になります。
第20期は、講師陣の追加があり、この塾から旅立ち、おおきく成長した造形者が講師としてもどってきます。新宿私塾は、講師と塾生がともに触発しあい、ともに成長することをめざしています。あたらしい講師の皆さんは意欲に燃え、準備おさおさぬかりなく進行中です。
いよいよ旅立ちのとき、そしてあたらしい門の扉がひらかれるときです。
すべての修了生、講師の皆さんともども、この国のタイポグラフィの前進に尽力するときです。

朗文堂タイプ・コスミイクからお知らせ

新書体2点を発表。3月20日発売開始!

robundo

 type cosmique


Human Sans Serif  銘石B  Combination 3
和字 おゝことのは Family 9

書体設計は欣喜堂・今田欣一氏によるものです。欣喜堂は日本・中国・欧米の、書写と印刷の歴史にはぐくまれた、正統的な活字書体の開発をめざしております。
販売は朗文堂タイプコスミイクによるものです。小社はつねづねお客さまとの双方向の情報交換を希望しております。本書体をお客さまがご愛用いただき、ご希望、改善点、ご叱声など、ご遠慮なくお寄せいただけることをお待ちしております。

日本語総合書体『Human Sans Serif 銘石B Combination 3』、
和字書体(ひら仮名・カタ仮名)『和字 おゝことのは Family 9』を、
3月20日より新発売いたします。
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Human Sans Serif  銘石B  Combination 3

くれたけ銘石B、くろふね銘石B、くらもち銘石B
販売価格 ¥36,750 (本体価格  ¥35,000)

《ついにわが国でもヒューマン・サンセリフが誕生!―碑石体B》
十分なインパクトがありながら、視覚に優しいゴシック体、それもいわゆるディスプレー・タイプではなく、文字の伝統を継承しながらも、使途のひろいサンセリフ――わが国の電子書体にも「ヒューマン・サンセリフ」が欲しいとされるご要望が寄せられていました。
確かにわが国のゴシック体のほとんどは、もはや自然界に存在しないまでに鋭角的で、水平線・垂直線ばかりが強調されて、鋭利な画線が視覚に刺激をあたえます。

今回欣喜堂・朗文堂がご提案した「銘石B」の原姿はふるく、中国・晋代の『王興之墓誌』(341年、南京博物館蔵)にみる、彫刻の味わいが加えられた隷書の一種で、とくに「碑石体ヒセキ-タイ」と呼ばれる書風をオリジナルとしています。

『王興之墓誌』。この裏面には、のちに埋葬された
妻・宋和之の墓誌が、ほぼ同一の書風で刻されています。



『王興之
墓誌』拓本。右払いの先端には隷書に独特の
波磔のなごりがみられ、多くの異体字もみられます。

『王興之墓誌』は1965年に南京市郊外の象山で出土しました。王興之(309-40)は王彬の子で、また書聖とされる王羲之(307-65)の従兄弟イトコにあたります。
この墓誌は煉瓦の一種で、粘土を焼き締めた「磚 セン、カワラ、zhuān」に碑文が彫刻され、遺がいとともに墓地の土中に埋葬されていました。そのために風化や損傷がほとんどなく、全文を読みとることができるほど保存状態が良好です。



王興之の従兄弟・書聖/王羲之の(伝)肖像画。
同時代人でイトコの王興之もこんな風貌だったのでしょうか。

魏晋南北朝(三国の魏の建朝・220年-南朝陳の滅亡・589年の間をさす。わが国は古墳文化の先史時代)では、西漢・東漢時代にさかんにおこなわれた、盛大な葬儀や、巨費を要する立碑が禁じられ、葬儀葬祭を簡略化させる「薄葬」が奨励されていました。
そのために、書聖とされる王羲之の作にはみるべき石碑はなく、知られている作品のほとんどが書簡で、それを法帖ホウジョウにしたものが伝承されるだけです。

この時代にあっては、地上に屹立する壮大な石碑や墓碑にかえて、係累・功績・生没年などを「磚セン」に刻んで墓地にうめる「墓誌」がさかんにおこなわれました。『王興之墓誌』もそんな魏晋南北朝の墓誌のひとつです。

『王興之墓誌』の書風には、わずかに波磔ハタクのなごりがみられ、東漢の隷書体から、北魏の真書体への変化における中間書体といわれています。遙かなむかし、中国江南の地にのこされた貴重な碑石体が、現代のヒューマン・サンセリフとして、力強くよみがえりました。

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和字 おゝことのは Family 9

販売価格 ¥9,450(本体価格  ¥9,000)


《ことのはの原姿は、アンチック体和字活字です》
和字書体「ことのは」は、ひろくは「アンチック体」と呼ばれている活字を統一感をもって整理・整頓し、ウェートを使途にあわせて多様化して9種類にしたものです。
その初登場は、欣喜堂和字シリーズ第2弾として発売された『和字 Tradition 9』に収録されて、好評を博しました。
その原姿は『辞苑』(新村出編著、1935年初版、書香文庫蔵)の見出し語活字で、俗に「アンチック体」とされる和字活字にあります。幸い資料が辞書でしたから五十音それぞれのキャラクターを抽出できました。

アメリカからもたらされた活字書体「antique」と同じ名称をもち、辞書などの見出し語として用いられてきた和字書体に「アンチック体」があります。欧字書体としてのアンチックの名称は、ふるくは『活版様式』(活版製造所平野富二、1876)に登場し、和字・漢字をともなった総合書体としては『新撰讃美歌』(警醒社、1888)で使用されています。

《アンチック体と混同されがちな 太仮名由来の和字書体》
アンチック体和字は、しばしば金属活字由来の「太仮名」と混同されています。このふたつの活字書体は、ともに明治期に誕生した優れた書体ですが、アンチック体の画線は比較的均一で、太さの差異がすくなく、太仮名由来の和字書体は画線に抑揚があり、脈絡を強調する特徴がみられます。

そのために、このふたつの和字書体は異なる設計意図にもとづく書体とおもわれます。簡便に見わけるためには、ひら仮名「の」の頂点がほぼ同じ太さになっているのがアンチック体、頂点が細くなっているのが太仮名活字由来の和字書体ということができます。その詳細は『ヴィネット11号 和漢欧書体混植への提案』(今田欣一  朗文堂)に報告があります。

『和字  おゝことのは Family 9』では、もう一度原点に立ち帰り、形象をさらに検討し、ウェートを9ウェートとしてファミリーを構築しました。漢字書体との組み合わせは、一応参考・推奨書体はありますが、お客さまご自身が「和字・欧字・漢字」の組み合わせの妙を発揮していただくことを期待しています。