月別アーカイブ: 2014年5月

<日本の>教育漢字:畑、人名漢字:畠。中国では?

Web畑・畠<畑>
教育漢字 小学校三年配当。常用漢字。シフトJIS : 94A8
常読 : はた/はたけ
意読 : はた/はたけ

<畠>
人名漢字。シフトJIS : 94A9
意読 : はた/はたけ

教育漢字<畑>、人名漢字<畠>。これらの字は教育漢字、常用漢字、人名漢字などと<漢字>といっています。つまり一見漢字にみえますが、ふつうは<わが国でつくられた漢字を模した字 ≒ 国字>とされています。
では、漢民族の国、中国における<字  ≒ 漢字>として、<畑><畠>をはじめ、およそ1,500余字が存在するとされる<わが国でつくられた漢字を模した字 ≒ 国字>をどうみているのか、どう使用しているのか……。そして中国では<国字>はどういう意味をもっているのか。
その手がかりを「朗文堂タイポグラフィ・ブログロール 花筏」と、「活版アラカルト」の双方で近近探ります。お楽しみにお待ちください。

hanaikada_color アダナ新コラム

Bunkamura 25周年記念 ヤン・リーピン<孔雀>春夏秋冬を演じきる。

ヤン・リーピン01 ヤン・リーピン02 ヤン・リーピン03

ひさしぶりにライブにでかけた。渋谷のオーチャードホールでの公演、Bunkamura 25周年記念 ヤン・リーピン<孔雀>である。
ヤン・リーピンは中国雲南省の少数民族「白族」の出身で、「白族」の守護神は孔雀であり、孔雀を精霊としてあがめることが多いという。したがってこれまでの公演でも孔雀をテーマとしたものが多かったが、今回はそのものずばり、<孔雀>をタイトルとした公演だった。

ともかくいたく感動したが、舞踏やバレエについてかたる資格はない。そもそもこの公演が、バレエかというとそうでもないようでもある。
またカーテンコールをのぞいて撮影禁止であり、紹介できる資料がすくないが、公演パンフレット、公式 WebSite などから、わずかでもヤン・リーピン<孔雀>の魅力を紹介したい。

公演パンフレット<孔雀> ヤン・リーピンと山本寛斎氏の対談より。
山本寛斎 : ヤンさんの出身地の中国雲南一帯は、民族衣装の宝庫なんですね。わたしは美しいものに出会うと、海賊が宝物をみつけたみたいなかんじになっちゃうんですよ。はしりまわっちゃうんです。
ヤン・リーピン : 中国の舞踏界においては、西洋のバレエの要素を借りてきて、作品に取り入れたり、バレエの影響を受けすぎたりというひとがすごく多いんですね。でもわたしはそうではなくて、あくまでも中国の特色ある踊りをする。それが西洋のものとの違いになる。この違いをうむことによって<自分の踊り>の特色を出していくというかんがえかたは、ずっとかわったことがありません。

東京公演/2014年05月23日[金]-06月01日[日] オーチャードホール

関連情報 : Bunkamura25周年記念 ヤン・リーピン「孔雀」
関連情報 : ヤン・リーピン画像集
YouTube : 美しい孔雀ダンス 雀之恋- ヤン・リーピン
【 関連情報 : 花筏 朗文堂好日録-036 台湾春節:林昆範さ んの年賀状 2014年02月14日
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2014年05月、世界が認めた中国の至宝/ヤン・リーピンが、長年見る者を魅了してきた<孔雀の舞>を、いままでの集大成として、壮大なスケールの舞踊劇にして来日した。
これまで『シャングリラ』(1908年、2010年)や、『クラナゾ』(2011年)で見せたような圧巻の群舞に加えて、今回の公演はデュエットやソロを中心に構成されていて、本編中の大半にヤン・リーピンが出演しており、その踊りを堪能できる。

《 愛のものがたりこそ、孔雀にはふさわしい 》
これまで日本で上演されてきたヤン・リーピンの孔雀の舞は、孔雀の生態を舞踊へと変換し、芸術に高めたものであった。本作<孔雀>では、技術と芸術性の高さはそのままに、移り変わる四季を背景にして、深遠なるラブストーリーに創りあげられている。
豊かな自然の中で生命が生まれ、運命的な出あいを経て恋が生まれ、その愛が豊かに育ち、繁栄をもたらす──。

おごそかで祝祭的な愛の物語には、ヤン・リーピンが磨き上げてきた孔雀の舞のテクニックが、存分に発揮されている。 いっぽうヤン・リーピンは、孔雀の愛がカラスの邪悪な欲望の犠牲になるというストーリーラインも用意している。
それも、カラスを一方的に悪者にするのではなく、美しさと愛に強く憧れる、孤独で不器用な存在としてカラス描き、物語を苦く深遠なものにしたのだ。
輝き、喜び、希望、美、清純と共に、渇きや陰影、寂しさや激しさなど、愛の全容を舞踊に込め、全身で踊り尽くす。それによって孔雀の舞は、観る人の記憶に刻まれるものになった。

ヤン・リーピン「孔雀」 舞台写真

《 四季の移り変わりと、いのちの循環 》
この作品のストーリーの流れを支える重要な役割を担うのが、四季の流れ、ときの移ろいである。 舞台上で変わってゆく「春、夏、秋、冬」という季節は、孔雀たちの住む森の時間をあらわし、孔雀たちの愛の形が変化していく様子に伴走する。

「ものごとはすべて変化し、命は繰り返します。仏教には輪廻リンネという考え方がありますが、春 夏 秋 冬 という季節の変化のなかで、それを表現したいとおもいました」
――ヤン・リーピン

このように、「神」、「時間」といった、抽象的な概念が配役として設定され、ヤン・リーピン独特の哲学的な世界観を、舞踊劇の形でイメージ豊かに構築している。

ヤン・リーピン「孔雀」 舞台写真

《 驚異の能力をもった、「後継者」に注目の視線が 》
四季の歩みを刻み、決して止まることのない時の経過は、この作品の重要なポイントである。
それを体現する「時間」の役に抜擢された美少女パフォーマーは、ヤン・リーピンの実の姪であり、幼い頃からカンパニーの中で育って来た、若干14歳のツァイー・チー(彩旗)である。
ツァイー・チーは2時間余におよぶ上演時間中ずっと、一瞬も止まることなく、舞台下手にあって体を一方向に回転し続けている。

「訓練してこれができるようになったのではなく、わたしは子供の頃から目が回るということがないんです。 ただ、今のように長く回転していられるようになったのは、叔母(ヤン・リーピン)から、<ほかのひとが稽古している間、あなたは体力をつけるために回っていなさい>といわれて、毎日練習していたからです。ですからわたしが 回転していた稽古場の場所は、ほかと比べて床がくぼんでいるんです(笑)」
――ツァイ・チー

彼女はこともなげに笑顔で話すが、驚異的な身体能力とずば抜けた存在感を持つツァイー・チーが、いまや「ヤン・リーピンの後継者」と目されるのも納得できる。
ストーリーの内容に合わせて、自在に緩急をつけ、回転する姿は、血筋を感じさせると同時に、血のつながりがなくても、きっとヤン・リーピンに見つけ出されたであろうゆたかな才能を感じさる。

《 世界一流のクリエイターが参加 》
本作の美術総監督と衣裳デザインを手がけるのは、ハリウッドでも活躍し、映画『グリーン・デスティニー』で2001年のアカデミー賞最優秀美術デザイン賞を受賞したデザイナーのティム・イップ(葉錦添)である。
前からヤン・リーピンの仕事に注目していたというティム・イップは、プロジェクトのスタート当初からヤン・リーピンと綿密な打ち合わせを繰り返し、稽古場にも通い詰めたという。
「孔雀の動きを模倣するダンサーたちを目の前で見て、話を聞き、どんな素材を使い、どれだけの長さや重さの衣裳にすれば、彼らの動きが活かせるのかを丹念に調べてプランを練りました」
――ティム・イップ
こうしてビジュアル面での充実を図り、ヤン・リーピンの最高傑作にふさわしい美的世界を完成させた。

【展覧会】 バルテュス展 東京都美術館

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かのピカソをして、「20世紀最後の巨匠」と言わしめた画家がバルテュス(本名 : バルタザール・クロソフスキー・ド・ローラ、1908-2001)です。
時が止まったように静謐な風景画や、バルテュス曰く、「この上なく完璧な美の象徴」である、少女のいる室内画など、どこか神秘的で緊張感に満ちたバルテュスの絵画は、多くの人びとに愛され続けています。

<バルテュス展 賞賛と誤解だらけの20世紀最後の巨匠>は、バルテュスの初期から晩年までの作品を通して、画家の創造の軌跡をたどる大回顧展です。
ポンピドゥー・センターやメトロポリタン美術館のコレクション、また個人蔵の作品など、世界各国から集めた40点以上の油彩画に加えて、素描や愛用品など、あわせて約100点を紹介するとともに、晩年を過ごしたスイスの「グラン・シャレ」と呼ばれる住居に残るアトリエをはじめて展覧会場で再現し、孤高の画家バルテュスの芸術が生み出された背景を探ります。

◎みどころ
1967年にバルテュスと結婚した節子夫人の全面的な協力を得て開催する、日本国内では没後初、かつ最大規模の大回顧展となります。
世界の名だたる美術館のコレクションだけでなく、公開されることの少ない個人蔵の作品も含め、 国内ではほとんど見ることのできないバルテュス作品が一堂に並びます。
東京都美術館 バルテュス展図録──────
◎ 会 期
2014年4月19日[土]-6月22日[日]
◎ 会 場
企画棟  企画展示室
◎ 休室日
月曜日
◎ 開室時間
9 : 30-17 : 30 (入室は閉室の30分前まで)
◎ 夜間開室
毎週金曜日は9 :30-20 : 00 (入室は閉室の30分前まで)

【 詳細情報 : 東京都美術館 バルテュス展 Balthus : A Retrospective

<在時間的某処>, Somewhere in time, ある日どこかで。

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 《上海のアダナ・プレス倶楽部会員、畠中結さんと楊 黙さんの再紹介》
ことしのはじめのころ、旧正月(春節)の休暇にあわせて来社された、朗文堂アダナ・プレス倶楽部会員、畠中結さん・楊 黙さんご夫妻を紹介しました。
そのときにおふたりは〈 Adana-21J 操作指導教室〉を受講され、その後は小型活版印刷機も本格始動がはじまったようです。 そんなおふたりを応援するために、ここに楊 黙氏のWebSite の情報を中心に、おふたりをご紹介します。【リンク:YANG MO】。

最初に掲げた版画は、漢字が簡化体になっています。日本式表記ですと「在時間的某処」となります。
「<在時間的某処>は、英語では<Somewhere in time>、日本語では<ある日どこかで>となります。-畠中」
とても夢のあることばですし、すばらしい版画ですね。

〈 EXHIBITIONS 〉
18_exhibit01[1] 18_exhibit02[1] 18_exhibit03[1] 18_exhibit04[1] 18_exhibit05[1] 18_exhibit06[1] 18_exhibit07[1] 18_exhibit08[1]
〈 WORKSHOP 〉
17_studio01[1] 14_dscf5048[1] 17_studio02[1] 17_studio03[1] 17_studio04[1] 17_studio05[1] 17_studio06[1]Studio1 Studio2 Studio3楊 黙  Yang Mo ┊ 1980年中国うまれ
中国上海在住。日常生活のすべてを芸術、デジタル・デザイン、版画製作に捧げているアーティスト。 楊氏は南京芸術大学を卒業し、そののち版画製作の最先端の研究を、ドイツ中央部、芸術と大学都市、カッセル(Kassel)で続行した。同地で日本から留学中の畠中 結さんと知り合って結婚した(中国では夫婦別姓がふつう)。
中国に帰国後は上海にアトリエを開設して、中国各地でいくつかの展覧会を開催した。また2012年の東京TDC賞にも選ばれている。 楊氏はおもにデジタル・デザイナーとして活躍しているが、常に彼自身の版画作品をつくって、現代中国では顧みられることの少ない、あたらしい版画芸術を提案し続ける、意欲にあふれる造形家である。

〈 SELECTED WORKS 〉
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【再録】 エッ、いまごろお正月 !? 上海在住の会員がご来社。

恭賀新年 新年快楽有ーあけましておめでとうございます。

《2014年01月31日、上海在住のアダナ・プレス倶楽部会員がご来社に》
もうすっかりお正月気分の消えた01月31日[金]、上海在住のアダナ・プレス倶楽部会員で、Adana-21J のユーザーでもある、畠中 結さん・楊 黙(Yang Mo  1980-) さんご夫妻が、中国の旧正月休暇(春節)を期に来社されて、「Adana-21J 操作指導教室」を受講されました【リンク:YANG MO】。
おふたりは留学先のドイツで知り合われて結婚されましたが、中国では夫婦別姓なのでそれぞれの姓をもちいておられます。上海では畠中さんは商事会社に勤務、楊さんは版画家として活躍されています。

畠中・楊ご夫妻は小型活版印刷機 Adana-21J を一昨年暮れに購入されましたが、これまで来日の機会がなく、 「Adana-21J 操作指導教室」の受講が延び延びになっていました。それでもこれまでにたくさんの@メールのやりとりがあり、はじめてお会いしたとはおもえないほど会話がはずみました。
また今回は、中国では入手難な活版印刷関連資材や機器もたくさんご購入。幸い畠中さんのご実家が京都にあるため、これまでの Adana-21J などの輸送と同様に、ご実家に送付して、ほかの荷物といっしょに船便輸送となるようです。
【初掲載:アダナ・プレス倶楽部ニュース 2014年02月10日
【関連情報 : 花筏 【アダナ・プレス倶楽部】 中国 上海の活字製造と活版印刷情報

【展覧会】 今田欣一の書体設計 活版・写植・DTP

文字道メーンMoji Moji Party No.7
今田欣一の書体設計 活版・写植・DTP
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◎ 会  期
2014年06月24日[火]-06月29日[日]
12時-19時 最終日は17時まで
◎ 会  場
ギャラリー華音留 http://blog.kaoru-japan.net/?p=289
113-0031 東京都文京区根津2-22-4  4F
◎  主  催
株式会社 文 字 道   http://www.mojido.com
info@mojido.com   携帯:090-4963-0599
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annaijo-ura annaijo-omote展示に関連して、今田欣一氏のトークショーを
ギャラリー近くの「不忍通りふれあい館」で行います。
■ 日    時 : 6月28日[土]14 : 00-16 : 00
■ 参加費 : 1,500円
■ 定    員 : 30名
※先着順で30名の定員になり次第締め切ります。
申込先:文字道 Tel: 090-4963-0599 E-mail: info@mojido.com

【講演会】神奈川大学租界班第43回研究会 板倉雅宣さん

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租界班 第43回研究会 神奈川大学非文字資料研究センター 2014年度 第1回公開研究会
『近代中国における日本人経営の新聞の研究』
    ◎日時:2014年6月21(土)13:00~17:30
    ◎会場:神奈川大学横浜キャンパス 1号館804会議室
    ◎主催:租界班
    ◎内容:
    開会挨拶:内田青蔵(非文字資料研究センター長)
    開催趣旨説明:孫安石(非文字資料研究センター研究員)
    報告:
    『上海新報と修文書館について』板倉雅宣(タイポグラフィ学会)
    『上海新報と日本人コミュニティー』高綱博文(日本大学)
    『上海新報と日本の外務省』孫安石(神奈川大学)
    『泰東日報(大連)-都市空間からの対日本言説-』橋本雄一(東京外国語大学)
    『順天時報(北京)とその社説について』青山治世(亜細亜大学)
    コメンテーター:
    大里浩秋(神奈川大学)、関智英(明治大学)、周武(上海社会科学院歴史研究所)*書面による参加
お問い合わせ先:
神奈川大学日本常民文化研究所 非文字資料研究センター事務室
〒221-8686 横浜市神奈川区六角橋3-27-1
電話:045-481-5661(内線3532)  FAX:045-491-0659
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タイポグラフィ学会会員/板倉雅宣さんが、<租界班 第43回研究会 神奈川大学非文字資料研究センター 2014年度 第1回公開研究会 『近代中国における日本人経営の新聞の研究』>において、 『上海新報と修文書館について』と題しての講演を担当されます。
皆さまお誘い合わせの上ご参加ください。
【関連情報】
神奈川大学 日本常民文化研究所 非文字文化センターのホームページhttp://himoji.kanagawa-u.ac.jp/news/index.html#1085
神奈川大学ホームページ
http://www.kanagawa-u.ac.jp/lecture/details_11132.html

朗文堂 新宿私塾 PIAZZA SHINJUKU 誕生。

PIAZZA 新宿私塾

朗文堂 新宿私塾が誕生したのは2004年09月のことでした。このとき「学校教育機関だけでは学べない、タイポグラフィの前衛養成のための私塾」として、意欲に富んだ第一期生を迎えました。
それから十年余が経過し、新宿私塾修了生はいまでは二百数十名を数えるにいたりました。現在は新宿私塾第24期生が、真摯な学習をつづけております。

ソーシャルメディア全盛の現代ですから、新宿私塾修了生の皆さんは、同期会などを結成して、各種のプラットホームで情報発信と情報交換を続けています。
それでも新宿私塾はひらかれた場所であり、なによりもコミュニケーションの手段として、タイポグラフィをおもくみる、ちいさなコミュニティでもあります。

ここに新宿私塾同期会の枠を越えた情報交換の場として、簡便なブログスタイルでの〈PIAZZA SHINJUKU  新宿私塾のひろば〉を、拠点の朗文堂 WebSite の一画に開設いたしました。

〈PIAZZA SHINJUKU  新宿私塾のひろば〉の投稿者は、新宿私塾修了生、新宿私塾在講生、講師の皆さんが中心となり、管理者は新宿私塾修了生有志が担当します。
もちろん読者は新宿私塾修了生にとどまらず、タイポグラフィにご関心のある皆さまにむけて、ひろく、ひらかれた場所になります。
まもなく新宿私塾修了生の皆さんには、投稿方法などを送付いたしますので、積極的な参加を期待いたします。

また朗文堂 WebSite をご訪問のみなさまは、ときおりホームページからお入りいただき、〈PIAZZA SHINJUKU  新宿私塾のひろば〉をご覧いただいて、若く、あたらしい、意欲に富んだ、タイポグラファ群像をご覧いただけたら幸甚でございます。

【新宿私塾】 第24期 順調に進行中。

私塾24期順調に進行中

《新宿私塾第24期、櫻花爛漫の春、意欲満満でスタートしました》
東京の櫻があでやかに花をつけた04月01日[火]、新宿私塾第24期が開塾いたしました。
この日の日中は新宿御苑にお花見に出かけるひとで賑やかだった周辺も、夕刻ともなると花冷えでしょうか、いくぶん肌寒くなり、いつもの静けさがもどりました。
ところが定刻から第一回目の講座が開始されると、教場はあつい熱気につつまれました。
DSCN3908これから半年間、ほぼ夏休みもなく新宿私塾は開講され、晩夏の09月16日に終了します。
この間、講師、塾生の先輩ともども、全力であたらしいタイポグラフィの前衛を育成するために努力しますし、25回の講座は、いずれも内容の濃いものとなっています。
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櫻前線が津軽海峡をわたって、いつの間にか北海道におよんでいました。
新宿私塾第24期第4回目、04月22日[火]は、「講義:活字組版指定基礎」(講師:鈴木 孝)でした。

180分の講座時間いっぱい、演習としての「組版指定の実際」と、課題2「組版指定」が展開していました。

この講座をつうじて「活字サイズ、字間、行間、段間」、「基本組体裁、縦・横、左右揃え、頭揃え、中心揃え」、「禁則、約物、段落字下げ、ぶらさがり組、追い出し・追い込み、行頭括弧の扱い、和・欧文混植の実際」などをまなびます。
そしてこれらの実際が、活版印刷、写植組版などの歴史のなかで醸成され、現代のパソコン組版の基礎となっていることを体験します。

こうして新宿私塾第24期は順調に進行しております。今週末の05月10日[土]は、フィールドワークとして、いったん教場をはなれて公版書籍印刷所の実際をまなびます。
これから半年後、自信にあふれた塾生の皆さんの、お顔と、お姿を、再度紹介できたら幸せです。

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【書体使用例紹介】 「日比谷に咲いたタカラヅカの華」

宝塚告知ポスター
東京宝塚劇場会場80周年記念特別展

日比谷に咲いたタカラヅカの華

1934年、日比谷の一角に日本第一級の大劇場、東京宝塚劇場が開場し、今年で80年を迎えました。
宝塚歌劇生みの親の小林一三は、開場に際して
「我等の初舞台、朗らかに、清く正しく美しく、我等の宝塚こそ大衆芸術の陣営、家庭共楽の殿堂、おゝ、我東京宝塚劇場!」
と高らかに表明し、宝塚歌劇を上演して来ました。

しかし、戦争の激化による休場、戦後のGHQの接収などの苦難の時代を見つめてきた東京宝塚劇場も、いったん63年の歴史に幕を閉じました。
やがて、新劇場完成までの1000日間の仮設劇場を経て、2001年には新東京宝塚劇場が完成し、東京での通年公演が実現しました。
本展は東京宝塚劇場開場80周年を記念し、その80年の軌跡をポスターや写真などの公演資料でたどります。

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◎ 会   期
平成26年 4月23日[水]-6月22日[日]
休館日:5月19日[月]、6月16日[月]
◎ 開室時間
平日 10:00-20:00、土 10:00-19:00、日・祝 10:00-17:00
◎ 観 覧 料
一般300円、大学・高校生200円、区民・中学生以下、障害者手帳をお持ちの方および付き添いの方1名は無料
※住所が確認できるもの、学生証、障害者手帳をお持ちください。
◎ 協  力
阪急電鉄株式会社、宝塚歌劇団、公益財団法人阪急文化財団、株式会社宝塚クリエイティブアーツ、株式会社宝塚舞台
◎ 出品協力
東宝株式会社、一般社団法人映画演劇文化協会
【詳細情報:千代田区立日比谷図書文化館

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正調明朝体s 正調明朝体Bs 大明南京國史監 南齋書

東京宝塚劇場会場80周年記念特別展「日比谷に咲いたタカラヅカの華」展の告知メディに、「正調明朝体」の「和字:あおい 漢字:金陵M」をご使用いただきました。
【書体詳細情報:朗文堂タイプコスミイク 正調明朝体Combination 3 正調明朝体B Combination 3

「正調明朝体 金陵」は中国・南京の雅称から名づけられ、その金陵にあった大明南京国子監刊行の木版刊本『南斉書』にみられる、端正な明朝体字様を現代に再生したものです。

朗文堂タイプコスミイク販売の「正調明朝体 金陵」パッケージには、和字書体の「あおい」「きざはし」「さおとめ」それぞれに、漢字書体の正調明朝体「金陵」が標準セットになっています。
「正調明朝体 金陵」シリーズは、ながい木版刊本の歴史のなかで醸成された、適度な古拙感、すぐれた可読性と誘目性を有しており、ご好評をいただいております。
皆さまの積極的なご採用、ご使用をお待ちしております。
[書体設計:欣喜堂 今田欣一 パッケージ設計:白井敬尚形成事務所]
 

ポストカード postcard と クリスマス Christmas

DSCN3943 DSCN3921《 黄金週間 ゴールデンウィークに入りました。皆さまお元気ですか?》
例年この長期休暇、ゴールデンウィークの期間中は〈 朗文堂 〉 と 〈 アダナ ・ プレス倶楽部 〉 の WebSite 双方ともに訪問者が減少します。 長期休暇の乏しいわが国のことですから、皆さまは、旅行に、帰省にと、楽しくゴールデンウィークをお過ごしのことと存じます。

ところでこの休暇を、かつては 「 黄金週間 」 と呼んで、その直前になると、新聞紙面などには賑やかに見出しが躍っていました。 それがいつの間にか 「 ゴールデン ウィーク 」 に転じ、ことしの新聞の見出しには 「 GW 」 と、全角欧文 !? で、縦組みになったタイトルが踊っていました。
このすっかりおなじみとなった 「 ゴールデンウィーク 」 を、『 広辞苑 』 にあたってみました。

【 ゴールデン-ウィーク 】
( 和製語 golden week ) 4月末から5月初めの休日の多い週。 黄金週間。

どうやら 「 ゴールデンウィーク 」 は、「 黄金週間 」 が転じたもので、いわゆる 和製英語 であり、英語圏での会話や表記には使わないほうが安全のようです。
なお 「 ゴールデン-ウィーク 」 のダッシュは、音節 ( syllable ) をあらわすものであり、この語間に 中黒 や ダッシュ は不要です。

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というわけで、せっかくの 「 ゴールデンウィーク 」 に、本コーナーをご訪問していただいたゲストの皆さまに、しばしばあやまって使われている英語表記をご紹介します。
ひとつは 「 郵便はがき ポストカード 」 で、ひとつは 「 クリスマス 」 です。

使用する資料は、英和辞書として高い評価がある 『 研究社 新英和大辞典 』 で、これは画像紹介の許可をいただいておりjます。
もうひとつは、『 THE OXFORD DICTIONARY for WRITERS AND EDITORS 』 (1981,  p.318 ) です。
後者は、オックスフォード大学出版局の刊行書で、執筆者と編集者にむけて、あまりに日常化していて、ついうっかり、あぁ知らなかった、というたぐいの表記、間違えやすい英単語を中心に、簡潔に紹介したものです。
DSCN3937ここには 「 post  郵便 」 から派生した英単語を列挙して、「 abbr.   略称 」、「 しばしばスペースを入れて二単語にされていますが、一単語ですよ 」、「 語間にハイフンを入れて表記してください 」 などと説明されています。
すなわち 『 THE OXFORD DICTIONARY for WRITERS AND EDITORS 』 では、

「 郵便はがき ポストカードは postcard と一単語にしてください。 post card のように二単語では無いのでご注意を。 略語は p.c. です」

この問題はわが国でもふるくから一部の識者から指摘されており、朗文堂 WebSite では 〈 タイポグラフィ実践用語集 は行 葉書・端書・はがき・ハガキ 〉で、ずいぶん以前から触れています。
ところが、いまだに展覧会シーズンともなると、各種の造形者、とりわけ 「 印刷設計士/グラフィックデザイナー」
の皆さまから 「 Post  Card 」 と、堂堂と印刷された 「 Postcard 」 をたくさん頂戴しております。

いかがでしょう。 「 過ちて 改めざるを 是を 過ちと謂う 」、「 過ちては 改むるに憚ることなかれ 」 といいます。 この名詞語は、名にし負う天下のオックスフォード大学の執筆者や編集者でも「ついうっかり」なのですから臆することはありません。
そして 「 ゴールデンウィーク 」 が終わったら、「 そんなことは、昔から知ってたさ 」 、「 そんなの常識だろう 」 と、平然と、どっしり構えてください。

それでもおひとりでも、正しく 「 postcard 」 をもちいれば、まずは大切なクライアントに迷惑をかけることが無くなり、やがてちいさな波紋がどんどん拡大して、わが国の造形者が恥をかかなくなる日も近いことでしょう。
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いっぽう 「 クリスマス 」 は少しやっかいです。
それは某国語辞書 『 広辞苑 』 が、どこか意地になって、クリスマスの項目で 「 Christmas,  Xmas 」 を説明しているからです。

それに牽かれたのでしょうか、わが国の一部に 「 X’mas 」 と表記する向きがありますが、これは省略を重複したもので完全に間違いです。

またギリシャ語由来の 「 Xmas 」 には、キリスト教徒の一部に抵抗を感ずる向きがあって、わたくしも20年ほど前に来社したアメリカの知人から、
「ここに来るまでに X’mas,  X’mas Sale のディスプレイがたくさんあった。 あれはクレイジーだ。  Xmas, エクスマスにも、発音からわたしには抵抗がある。 それよりどうして日本では、11月のはじめから Christmas Sale をはじめるのだ 」
と責められたことがありました。

宗教や宗派、まして発音までがからむと、わたくしの手にあまります。
まして某国語辞典の存在もあって困惑していましたが、『 研究社 新英和大辞典 』 に、わかりやすく 「 クリスマス 」 の解説がありました。 長文にわたりますので、その紹介にあたって、画像紹介の許可を研究社からいただくことができました。
以下は少少時間をいただいて、〈 タイポグラフィ ・ ブログロール花筏 〉でご紹介いたします。そして、ことしの暮れは、せめて 「 X’mas,  X’mas Sale 」 を見なくてすむように念願いたします。

【 関連情報 : 朗文堂好日録-037 なにかとあわただしい師走です。【再掲載】 ポストカード postcard と クリスマス Christmas 2014年12月04日