会期末迫る ! イベント関連の、良書三冊のご紹介


榮久庵憲司とGKの世界『鳳が翔く』

展示図録

B5寸伸び、かがり綴じ、ソフトカバー、本文280ページ、カラー図版多し
ブックデザイン:木村雅彦
発売:世田谷美術館(同館にて展示・販売)
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【同展覧会 フライヤーより】
榮久庵憲司と、彼が率いる創造集団GKは、戦後の復興期より、数々の製品をデザインすることで、日本人の生活や都市空間の近代化の一翼を担ってきました。その領域は、日ごろ街中で目にする日用品やオートバイから、博覧会場の施設やサイン類、都市のインフラストラクチャーまでと、多岐にわたります。

榮久庵は、実家を継ぐべく僧門に入ったのち、デザインの道を志しました。その原点には、原爆で廃墟となった広島の街の光景と、進駐軍が体現していたアメリカ文化があったといいます。そして東京藝術大学在学中より、ともにデザインを学ぶ同窓生と、「モノの民主化」、「美の民主化」をスローガンに、当時の日本としては類のない、インダストリアルデザインを専門とするグループ、GKを結成しました。

以降、60年にわたるデザイン活動の根底に流れているのは、モダンデザインと東洋の思想の融合に加え、人が作ってきたもの=道具についての長年の研究です。人類が太古に初めて手にした道具から、未来の暮らしまでを見据えて、人と道具のあるべき関係をデザインによって提案し続けてきました。

本展覧会では、製品化されたものやその模型、将来へのプロポーザル、さらには、人と自然と道具が美しく共生する世界を具現化したインスタレーション等によって、榮久庵憲司とGKが展開してきた、デザインの世界像をご紹介します。
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2013年7月6日土曜日 ― 9月1日日曜日
世田谷美術館 Setagaya Art Museum
開館時間:
午前10時─午後6時(入場は午後5時30分まで)
休 館 日:
毎週月曜日
観 覧 料:
一般1000(800)円、65歳以上800(640)円、
大高生800(640)円、中小生500(400)円
*( )内は20名以上の団体料金。障害者の方は500円
(介助の方1名までは無料)、大高中小生の障害者の方は無料。

【詳細情報:GK Design GroupSetagaya Art Museum

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タイポグラフィ 2つの潮流  Two Streams of Typography

展覧会図録
A4判寸伸び、かがり綴じ、ソフトカバー、付録多数
ブックデザイン:朴 志勲
発売:武蔵野美術大学 美術館・図書館(同館にて展示・販売)

会 期 |  2013年5月20日[月]-8月18日[日]
休館日|  毎週 日曜日
(6/9[日]、7/15[祝]、8/18[日]は 特別開館日)
時 間 |    10:00-18:00(土曜、特別開館日は 17:00 閉館)
入館料|  無 料
会 場 |  武蔵野美術大学美術館 展示室 3
主 催 |  武蔵野美術大学 美術館・図書館
共 催 |  武蔵野美術大学 造形研究センター
監 修 |  新島 実 (視覚伝達デザイン学科教授)
共同監修|寺山祐策(視覚伝達デザイン学科教授)
白井敬尚(視覚伝達デザイン学科教授)

詳細:武蔵野美術大学 美術館・図書館 展覧会情報

武蔵野美術大学図書館所蔵の貴重書・雑誌・ポスターコレクションから、主にイギリス、アメリカ、フランス、ドイツ、オランダ、スイスにおける20世紀欧文タイポグラフィの、国際様式と伝統様式を俯瞰する。

【展覧会概要 ── 同展フライヤーより】

このたび、武蔵野美術大学 美術館・図書館では「タイポグラフィ 2つの潮流」展を開催いたします。
本展は、19世紀末から20世紀後半にかけて、欧米で出版された美しい書物等を一堂に会して、ヨーロッパ及び米国における「伝統様式のタイポグラフィ」「国際様式のタイポグラフィ」の2つの流れを同時に俯瞰し、550年以上にわたり人々を引きつけて止まないタイポグラフィの魅力を探る試みです。

19世紀後半、ウィリアム・モリスが求めた「美しい書物」制作への試みの原点は、15世紀のインキュナビュラへの眼差しをその基本とし、当時の書物を丁寧に分析することから始められました。
そしてこのモリスの眼差しはその後のプライベート・プレス運動へ大きな影響を与え、20世紀のタイポグラフィ、とりわけ書物制作の一潮流として格調高い伝統様式美を復興させました。
さらにこの美しい書物制作への態度は、スタンリー・モリスンやヤン・チヒョルトによって一般化され、現在に至っています。

一方で、新たなタイポグラフィの転換は19世紀末のアール・ヌーヴォー(ユーゲント・シュティール)に端を発し、20世紀初頭のイタリア未来派、ロシア・アヴァンギャルド、デ・スティルそしてドイツのバウハウスなど、ヨーロッパ全土にまで連鎖的な拡がりを見せた革新的芸術運動の影響のもと、エル・リシツキーやバウハウスでのモホリ・ナジ等のタイポグラフィの革新運動にその萌芽を見ることが出来ます。
この新たな転換はその後、ドイツとスイスで国際様式と呼ばれるタイポグラフィデザイン形式を生み出し、印刷紙面に新しい空間構成と意味生成の土壌を形成することに繋がっていきます。

本展では武蔵野美術大学図書館所蔵のタイポグラフィ・コレクション、ポスター・コレクションと合わせて、貴重書の中からイギリスのプライベート・プレスによる書物をはじめ、フランスやドイツで出版された豪華本、画集、挿絵本、聖書などの優れたブックデザインなど250点を取り上げ、それらを同時に展示することによって、視覚造形言語としてのタイポグラフィの今日的な役割と発展を見つめ直す契機にしたいと思います。

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株式会社 精興社 創業百周年記念出版

『活字の世紀 白井赫太郎と精興社の百年』
平成25年4月8日 第1刷発行
四六判上製カバー装・408頁

著  者:田澤拓也
発行者:青木宏至
発行所:精興社ブックサービス
印  刷:精興社
製  本:牧製本印刷
定  価:非売品

〈著者紹介〉
田澤拓也 たざわ たくや
1952年(昭和27年)青森県生まれ。早稲田大学法学部・第一文学部卒業。出版社勤務をへて作家に。『空と山のあいだ』(第八回開高健賞)『ムスリム・ニッポン』(第四回21世紀国際ノンフィクション大賞優秀賞)『虚人 寺山修司伝』『百名山の人 深田久弥伝』『無用の達人 山崎方代』など数多くのノンフィクションや人物評伝を著している。(同書奥付より)
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[ブックレビュー](この項文責:片塩二朗)
小社としたしくおつき合いしている 精興社 が、めでたく創業百周年を迎えた。その記念出版『活字の世紀 白井赫太郎と精興社の百年』を拝読した。
この書物は企業年史というより、企業とその周辺のものがたりである。だからといって価値を貶めることなく、著者/田澤拓也氏の丹念な取材と、抑制のきいた筆致には好感をもった。

精興社のスタッフが、わざわざ『活字の世紀 白井赫太郎と精興社の百年』を持参していただいた。わが国の近代タイポグラフィは140年余の歴史を刻んできた。そのなかで精興社の百年の歴史はおもいものがある。それを賀し、つぎの百年にむけて、勇気ある歩みをすすめていただきたいものである。