【アダナ・プレス倶楽部】 杉本昭生 小型本の世界 Ⅲ

朗文堂 アダナ・プレス倶楽部会員、京都在住の杉本昭生さん製作の小型本(いわゆる豆本)紹介の第三弾です。今回は以下の三冊をご紹介します。

◎ 杉本昭生小型本 第11作 『 漢 詩 抄 』
◎ 杉本昭生小型本 第12作 『 百人一首 抜粋 』
◎ 杉本昭生小型本 第13作 『 死生に関するいくつかの断想 』(小泉八雲)

ともすると小型本の製作者は、なにより小型であることと、装本のおもしろさにこだわりがつよいあまり、そのテキストや、読書のための判別性と可読性を失っていることがみられます。
ところが杉本さんは、もともと読書家ですので、たとえ小型本であろうと、テキストを厳選し、みずからも読み、読者にも読んでもらおうというつよい意志を感じます。
ところで、いつの間にか杉本昭生作品を収納していた容器がいっぱいになりました。小型本、ちいさいながらもおそるべしですね。

お送りいただくたびに添付されている、杉本昭生さんの味わいのある「製作メモ」から、テキストの一部を抜粋して、写真とともにご紹介します。
なおこの記事はアダナ・プレス倶楽部<活版アラカルト>にも同時掲載されています。
<活版アラカルト>のページは、任意の写真をクリックしていただくと、フォトギャラリーをお楽しみいただけます。
アダナ新コラム

◎ 杉本昭生小型本 第11作 『 漢 詩 抄 』

今回の製作は『漢詩抄』です。どなたも一度は読んだことがある有名なものばかりです。
この漢詩の一行を書家が書いたように並べてみました。
文章はあちらこちらからの寄せ集めなので、その道に詳しいひとがご覧になったら 不自然さは歴然です。
長い漢詩は一部を割愛しました。ついでにいうなら署名も落款もいい加減です。 かさねてご寛恕のほどを。
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◎ 杉本昭生小型本 第12作 『 百人一首 抜粋 』
ご存じのように『百人一首』は平安時代から鎌倉時代の歌人、百人の歌を 一首づつ選び集めたもので、それぞれの時代を代表する歌が収められています。
もとより古典の知識があるわけでなく、ほとんどが勝手な解釈による現代文ですし、 おふざけです。
杞憂ながら、試験などでこの現代訳を書くとあなたの印象が悪くなります。 ご注意を。
さっと目を通してさっと忘れる、そんな程度のできだと思っています。 ものすごく暇なときに読んでください。
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◎ 杉本昭生小型本 第13作 『 死生に関するいくつかの断想 』
                    ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)著/林田清明訳
ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)は、明治23年に来日し、明治37年に 54歳で亡くなるまでの14年間に、日本人の民族性や精神性をテーマに 多くの著作を残しました。
『死生に関するいくつかの断想』は、ハーンが見聞した事実を通して 当時のひとの死生観を考察したものです。
今回は、というか、今回も紆余曲折があり、思いもよらない体裁になりました。 今更ながら本づくりの難しさを実感しています。
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本情報を掲載後、杉本昭生さんから含蓄あるメールをいただきました。 ご了承をいただき、下記にご紹介いたします。

朗文堂 アダナ・プレス倶楽部の皆さま

今回も拙作を掲載していただきありがとうございます。 御社のサイトで紹介されている洗練された作品群に比べると、わたくしの作るものなどはまったくお粗末で、恥ずかしい限りです。
しかし自分以上の事ができるわけでなく、好きな物語や言葉を集め伝えていきたいと思っています。 実際、小さなエピソードに人生が凝縮されている事もあります。

以前報道番組で、団地に住む一人暮らしの老人がインタビューに応えていました。
「ええ、一週間以上誰とも話すことがない時もありますね」
「最近誰かと話したことは?」
「二、三日前スーパーで」
「何て」
「袋ください」

東京に行くことがあれば、ぜひご連絡の上またお訪ねしたいと思っています。 どうぞよろしくお願いします。
向暑の砌 ご自愛専一で
杉本昭生

【リンク:アダナ・プレス倶楽部ニュース 杉本昭生 小型本の世界Ⅰ】
【リンク:アダナ・プレス倶楽部ニュース 杉本昭生 小型本の世界Ⅱ】