【長崎歴史文化協会】越中哲也翁-本年三月で三十六年に及んだ幕をおろす ── 今後ともご壮健で{長崎越中節}を熱望するいま

_DSF0300「平野富二生誕の地」碑建立記念祭 除幕式で祝辞を述べられた折りの越中哲也氏
2018年11月24日

越中哲也〔えっちゅう てつや〕
大正一〇年(一九二一)長崎市に光源寺の子息としてうまれる。龍谷大学文学部を卒業して間もなく応集、復員後、長崎市立博物館に学芸員として勤務。昭和四九年(一九七四)長崎市立博物館館長に就任。昭和五六年(一九八一)長崎市立博物館館長を定年退職。
昭和五七年(一九八二)長崎歴史文化協会設立、理事長就任。
昭和五八年(一九八三)純心女子短期大学英米文化科教授となる。平成一〇年(一九九八)純心大学長崎学研究所研究員となり、現在顧問。

現在、長崎歴史文化協会理事長。長崎地方文化歴史研究家であり『ながさきぶらぶら節』(なかにし礼、新潮文庫)に出てくる長崎学の第一人者・古賀十二郎氏の孫弟子にあたる。
長崎史や長崎を中心とした美術・工芸の研究と紹介に努めるかたわら、数多くの執筆活動や監修を手掛ける。
「長崎くんち」や「精霊流し」の季節になると、解説者としてテレビに出演し、長崎の人びとに愛されている。著書に『長崎の西洋料理』(第一法規出版株式会社)、「写真集・長崎」(国書刊行会)ほか多数。

DSCN3496長崎市桶屋町の「長崎歴史文化協会事務所」入口

長崎歴史文化協会事務所は創設以来十八銀行が全面支援にあたっていた。稿者もなんどかこの門をたたき、二階の事務所で越中哲也翁の含蓄あるおはなしをうかがった。2019年3月をもって同会が閉鎖されると報道された。一抹のさびしさはあるが、多年・多岐にわたった越中翁のご功績にふかく感謝申しあげる次第である。
また「平野富二生誕の地」碑建立記念祭の除幕式に際してご臨席をたまわり、祝辞を頂戴した。また、次世代を担う若者とともにお元気な越中哲也翁の謦咳に接し、それを記録する機会を得たことを喜びとしたい。

長崎歴史文化協会
昭和五七(一九八二)年五月、長崎における歴史文化を研究し、各文化団体とも連携の上、地域文化の発展に寄与することを目的として設立。

関係図書資料を整備し、必要に応じて一般に公開し、長崎に関する歴史文化の調査研究に対し適切な助言・指導をおこなう。
また、長崎に関する古文書・史料で未刊・未発表のもの、その他学術的に価値あるものについて整理し発刊をおこなっている。

長崎歴史文化協会 2019年3月で幕 ── 越中さん36年を振り返る

2018/12/16 10 : 1212/16  10:22updated ©株式会社長崎新聞社
[ 参考:  47 NEWS  地方紙と共同通信のよんななニュース
DSCN3496「長崎そのものが一つの文化」-。長きにわたり長崎学の研究や発信に貢献してきた長崎歴史文化協会が、2019年3月末で36年の歴史に幕を閉じる。発足当初から理事長を務める郷土史家の越中哲也さん(97)に、これまでの歩みを振り返ってもらった。

長崎県長崎市桶屋町にある事務所は毎週月、水、金曜日に開いており、そこにはいつも越中さんの姿がある。「越中先生、こんにちは」。約110人の会員をはじめ全国各地からその人柄や知識を慕ってひっきりなしに人が訪れ、歴史談議や世間話に花を咲かせていく。

 同協会は、越中さんが旧市立博物館の館長を定年退職した翌年の1982年、当時の十八銀行頭取・故清島省三さんの肝いりで発足した。
「この土地とみごとに調和している人文的風物の根源を探り、広くその成果を地域の皆さんとともにいたしたい」。
初代会長となった清島さんは、同協会の発行する短信「ながさきの空」第1号でそう寄せている。それ以来同行が長年、公会堂前出張所2階を事務所として提供し、常駐スタッフも派遣している。越中さんは

「十八銀行が全面的に支援して、好きなようにしていいと言ってくれたから、これまで活動できた」
と感謝する。

発足当初から越中さんが抱いてきたのは、「長崎学を一般の人に」という思いだった。戦後の何もない時期、故古賀十二郎さんをはじめとした郷土史家らが県立長崎図書館に集まって、ただ自由に語らった。“ 遊び ”として参加していた越中さんは、
「長崎の人が集まって世間話をすることが長崎学。あの時の雰囲気を協会でもう一度再現したかった」
と話す。

その思いを体現し、同協会は越中さんを中心にした社交場のようにさまざまな人が集う。年間の訪問者数は延べ約2千人に上る。作家の故遠藤周作さんやなかにし礼さんといった著名な文化人も、調査などのために数多く訪れたという。
また会員向けの古文書や食文化といった各種講座の開催や、機関紙の発行といった活動も充実。毎週月曜の「長崎学を学ぶ講座」は、これまでに570回以上開き、毎回さまざまな分野の講師を招いて長崎の歴史文化を学んでいる。
「長崎の歴史が日本の文化にどう影響を与えて、それが現代にどのようにつながっているのか。基礎的なことをここで皆さんと考えてきた」

越中さんの歴史とともに同協会は幕を閉じる。時を重ねるように、戦後の長崎学の拠点だった県立長崎図書館も2018年11月末で休館した。「時代の流れでしょうね」と越中さん。
「託された役割は十分に果たせた。また次に長崎学の “ 幕 ” が自然に上がる時が来るでしょう」。
そう語る表情は充実感をたたえている。