月別アーカイブ: 2017年5月

【展覧会】 五島美術館 夏の優品展〔料紙のよそおい〕 6月24日─7月30日

poster_jidai_36[1]五島美術館 夏の優品展
〔料紙のよそおい〕
◯ 期       間 : 2017年6月24日[土]―7月30日[日]
* 毎月曜日休館 7月17日は開館、7月18日休館
◯ 開館時間 : 午前10時―午後5時(入館は午後4時30分まで)
◯入  館  料 :  一般1000円/高・大学生700円/中学生以下無料
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館蔵品のなかから、「染める」「漉きこむ」「摺る」「撒く」などの料紙装飾に関わるキーワードをもとに写経や古筆などの作品約70点を選んで展示。
所を魅せるため、また信仰の証しとして様〻な技術が施された紙の多彩な装いを展観します。

【 詳細 : 五島美術館 】 {文字壹凜 まとめ}

【展覧会】 根津美術館企画展 [はじめての古美術鑑賞 ─ 紙の装飾 ─] 5月25日-7月2日

img_decoratedpaper[1]企画展
はじめての古美術鑑賞
紙の装飾
2017年5月25日[木]-7月2日[日]

◯ 休  館  日   月曜日
開館時間  午前10時-午後5時 (入館は午後4時30分まで)
入  場 料   一般1100円、学生[高校生以上]800円
* 20名以上の団体、障害者手帳提示者および同伴者は200円引き、中学生以下は無料
会    場         根津美術館 展示室 1 ・ 2
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日本の古美術はなんとなく敷居が高いという声に応えて企画した「はじめての古美術鑑賞」シリーズ。2回目の今年は、「読めない」という理由から敬遠されがちな書の作品にアプローチする一つの方法として、書を書くための紙、すなわち料紙(りょうし)の装飾に注目しました。
華麗な色や金銀あるいは雲母(うんも)によるさまざまな装飾技法を、同館コレクションの作品を中心にやさしく解説するとともに、絵画に取り込まれた例もご覧いただきます。
この展覧会が、書の作品に親しく接する機会となり、さらにはより深い古美術鑑賞への足がかりとなれば幸いです。

【 詳細 : 根津美術館 】  {文字壹凜 まとめ

【字学】 さいかち の さかをあるく さて困った<皁・皀・皂>のつかいわけ

神田のさかを、あるいている。
どこからか、あまく、強い、沈丁花のかほりがする。

ぬかあめに ぬるゝ丁字の 香りなりけり    久保田万太郎

この早春の花は中国原産とされるが、秋の金木犀とならんで、格別に樹影や開花をみなくとも、どこからか風にのってやってくる芳醇なかほりを味わうだけでうれしくなる灌木である。
漢名では瑞香という。瑞香のままでよかったのではないかともおもったりもする。
和名の沈丁花は、沈香と丁字のかおりを合わせたものとも、香りは沈香で、花の形は丁字(丁子 Clove)に似るからだともいう。
 DSCN9803 DSCN9804 DSCN9811駿河台での所用をおえて、帰路は「さいかちのさか」をたどることにした。
この坂道は、JR中央線の線路(水道橋-御茶ノ水)の南の脇を、東(水道橋方面)から西(御茶ノ水方面)へとくだる坂道である。坂の下は小栗坂と交じわり、白山通りをわたると水道橋駅東口にいたる。
右側は駿河台から神田川への切り通しのつよい傾斜地で、その下にJR中央線と、それと並行する神田川をはさんだ反対側に、お茶の水坂がある。そちら側はすでに文京区である。

坂の頂上のあたりの右手に、「私立東京歯科大学 水道橋キャンパス さいかち校舎」があり、そのすぐ先からは右手の建物がなくなっている。
千代田区神田駿河台二丁目、坂の左手に「東京デザイナー学院」のキャンパスがある。坂の両側の歩道には街路樹がならんでいる。かつてはここにも「さいかち」が植えられていたとされるが、芽吹きのまえのこのとき、「さいかち」らしき樹木はみられなかった。

それでもこの坂には「さいかち の さか」の由来碑がいくつかある。
 「さいかち」は、山野や川原に自生する豆科の落葉高木で、夏の開花ののち、30センチにもなる細長くて扁平な豆莢が垂れさがる。
秋になると種子が熟れて、豆莢は暗褐色になってよじれてくる。
ふるくは「さいかし さいかち」といった。

さいかしや 吹きからびたる 風の音   呉江
夕風や さいかちの実を 吹き鳴らす   石井露月

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ところで、この樹木が発する樹液を甲虫類が好むらしい。その大型のものを「さいかしむし・さいかちむし」と呼んだ。
すなわち、「さいかしむし・さいかちむし」はカブトムシの古名である。季語は夏とされる。漢字は「皂莢虫」(広辞苑)とあらわされた。
理由はわからないが、字義も字音も異なるのに、この「さいかち」の樹木・実などにしばしば混用されている漢字で「皀」、「皁」、「皂」がある。
 
・「皀」  漢読み キョウ・コウ 訓読み -                     JIS第二水準   6225
・「皁」  漢読み ソウ・ゾウ  訓読み - 意読 くろい JIS第三水準  8864
・「皂」  漢読み ソウ       訓読み -                      JIS表外漢字 9551(Unicode 7682)

これをふまえて「さいかちのさか」にある標識や看板などをみると興味深い。
・東京歯科大学 水道橋キャンパス 「さいかち校舎」
・千代田区教育委員会設置の標識では「皀角坂」

・神田駿河台二丁目のビル名のサインボードには「皂莢坂ビル」
・伝 松尾芭蕉の句碑には「皂角子」

皂角子の 實は そのままの 落葉哉 DSCN9812 DSCN9813 DSCN9815 DSCN9818 DSCN9819 DSCN9820

すこし気になったので、辞書あさりをこころみた。

◎ 『広辞苑 第六版』(岩波書店)
さいかち【皂莢】  マメ科の落葉高木。高さ3-5メートル。山野・河原などに自生。栽培もされる。茎・枝などに多数のとげがあり、葉は複葉。夏、緑黄色で四弁の細かい花を開く。秋、長さ30センチメートル余の莢(さや)を垂下する。果実はサポニンを含み洗濯用、また漢方生薬の皂角子(そうかくし)として、解毒・潤和剤。若芽は食用。材は器具材・細工物などにする。季語は秋。

◎ 『漢字源 JIS第1-第4水準準拠』(学研教育出版 電子版 抄印)
【 皀 】
漢読み キョウ・コウ 訓読み -  JIS第二水準   6225
《意味》 1.  {形・名}かんばしい。穀物のかおり。 2. {名}穀物の粒。一粒。
《解字》   象形。器に穀物を盛った姿を描いた字。卽(即)・既・郷や食の下部に含まれる。
《難読語》 皀莢〈さいかち〉・皀隔〈きゅうかく〉
《熟語》 ありません

【 皁 】
漢読み ソウ・ゾウ  訓読み - 意読 くろい JIS第三水準  8864
1.(名)さいかち・はんのきなどのどんぐり状の実。そのくろい外皮をくろ色の染料とし、その白い実の粉を洗剤にもちいた。「皁実(ソウジツ)」「皁莢(ソウキョウ)」。
2.{形}くろい〈くろし〉。はんのきの実のようにくろい。「皁衣〈ソウイ〉(くろい衣)。
3.「皁隷〈ソウレイ〉」とは、黒衣を着たしもべ。のち役所の雑役夫。→略して皁という。
4.「皁櫪〈ソウレキ〉」とは、馬小屋のこと。→略して皁という。
5.{名}俗:はんのきの実やくろマメをこねてつくった洗剤。「肥皁〈ヒソウ〉〈洗濯材。今は石鹸のこと〉」。
6.{名}くろいかまど。→竈〈ソウ〉に当てた用法。「祭皁〈サイソウ〉〈=祭竈。年末のかまど祭り〉」。
《解字》象形。小枝にまるいどんぐり状の実のなったさまを描いたもの。早と皁はもと同源であるが、皁はその原義をあらわし、早は、くろい → 暗いとき → まだ暗い早朝と転用された。
《難読語》
皁莢〈さいかち〉
《熟語》
【牛驥同皁】ギュウキドウソウ 中略〔史記・鄒陽〕
【皁衣】ソウイ 中略〔漢書・肅望之〕
【皁桟】ソウサン 馬小屋
【皁白】ソウハク 黒色と白色。転じて、是非・善悪のこと〔魏志・鍾繇〕

【 皂 】  
漢読み ソウ       訓読み -         JIS表外漢字 9551(Unicode 7682)
本紹介にあたり使用した『漢字源 JIS第1-第4水準準拠』(学研教育出版 電子版)には「親字」・異体字・俗字のいずれにも「皂」の紹介はみられなかった。
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よんどころなく長年にわたってもちいている『大修館新漢和辞典 机上版』(諸橋轍次ほか 改訂版第二刷り)をみた。
その606ページ、部首「白」、一画「百」につづき、二画のはじめに【 皀 】があり、ついで【 皁 】がおかれていた。「皂」は無かった。二画はこれで終わり、三画「的」につづく。
【 皀 】、【 皁 】の解説は、これまでのものと大差はなかったが、【 皁 】の解説の末尾におもわぬ記述があって絶句した。図版でもしめす。

◇ 皂 は俗字。

karatati[この項つづく] 初出2017年03月02日
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《初掲載から二ヶ月余 さまざまな反響をいただいた》
もっとも多かった反応は<「皂」 漢読み ソウ   訓読み- JIS表外漢字 9551(Unicode 7682)>が電子メディア上に表示されない、もしくはバケルというものであった。
たしかにデバイスによって、また書体選択によっては、表外漢字や記号類の一部が表示されないことは、{活版 à la carte}の姉妹コーナーともいうべき{ 文字壹凜 }で、さんざん苦労し、迷惑をおかけしてきたことでもある。

『大修館新漢和辞典 机上版』(諸橋轍次ほか 改訂版第二刷り)のなかで、俗字とされている【 皀 】に拘泥することが本稿の目的ではない。
そこで次回はおもいきって「さいかちのさか」とひらかな表記としてみたい。

【展覧会】 国立西洋美術館 [Fun with Collection 2017] ル・コルビュジエの芸術空間 ─ 国立西洋美術館の図面からたどる思考の軌跡

コルビュジエ_01 コルビュジエ_02
[Fun with Collection 2017]

ル・コルビュジエの芸術空間 ― 国立西洋美術館の図面からたどる思考の軌跡
会       期 : 2017年6月9日[金]-9月24日[日]
会       場 : 国立西洋美術館 常設展内(版画素描展示室)
開館時間 : 午前9時30分-午後5時30分

* 6月の金・土曜日は20:00まで、7-9月の金・土曜日は21:00まで
* 入館は閉館の30分前まで
休  館  日 : 月曜日(ただし、7月17日、8月14日、9月18日は開館)、7月18日[火]
主   催 : 国立西洋美術館
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国立西洋美術館ファン・ウィズ・コレクションは、同館の所蔵作品や建物を様々な視点から楽しんでいただくプログラムです。今回は、2016年に世界文化遺産に登録された国立西洋美術館の本館をとりあげ、ル・コルビュジエがその設計の過程で描いた習作図面をもとに彼の本館構想のプロセスを紹介します。

ル・コルビュジエは建築を設計する際、研究を重ねたうえでプロトタイプ(基本型)を作成し、
実際に建設される敷地や環境に応じてプロトタイプに変更を加えて完成させるという手法を用いました。所蔵品の増加とともに展示室を増築していくことを基本理念とするプロトタイプ「無限成長美術館」をもとに、彼は松方コレクションを収蔵・展示するための美術館を上野公園に設計しました。

本展は、1)芸術の総合:広場(エスプラナード)、2)螺旋型に鑑賞する、3)卍型に施設を附属する、4)建物のファサードをなくす、5)太陽の光を採り入れる、6) 19世紀大ホールの6
つのセクションで構成されます。
現存する302点におよぶ本館設計に関わる資料の中から、厳選
した34点の図面やスケッチの複製を用いて、ル・コルビュジエがプロトタイプをどのように日本側の希望と上野という敷地に適応させていったのかをたどります。

【 詳細 : 国立西洋美術館

【展覧会】 風船画伯 谷中安規展 須坂版画美術館 ── 君はまた、不思議な魅力を持ってゐた 7月30日まで

20170519140851_00001 20170519140851_00002風船画伯 谷中安規 展
会  期 : 2017年4月12日[水]-7月30日[日]
会  場 : 須坂版画美術館
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ようこそ!安規 Yasunori ワールドへ!
版画家・谷中安規(たになか やすのり 1897-1946)は、幻想と怪奇の木版画で知られ、明治末期から昭和初期にかけて数多くの個性的な版画家を輩出した創作版画運動にあって、とりわけ異彩を放つ作家のひとりです。1930年代の東京を風船のように放浪していたことから「風船画伯」と呼ばれています。
幻想世界の一方で、震災後の復興がもたらしたモダン都市・東京を描いた「街の本」、小説「王様の背中」では挿絵や装幀も手掛け、谷中ならではの光と影が織りなす幻想世界が作品にはちりばめられています。

谷中安規生誕120年を迎えた今年、当館コレクションより谷中作品を一堂に展覧します。
現実とまぼろしを行き来するような、谷中の怪奇と妖気あふれる独創世界にぜひ迷いこんでみてはいかがでしょう。
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谷中安規 たになか-やすのり 1897−1946

大正-昭和時代前期の版画家。
明治30年1月18日生まれ。東京の豊山中学を中退。永瀬義郎にまなぶ。昭和6年日本版画協会の創立に参加。版画誌「白と黒」「版芸術」同人となり、幻想的な画風の作品を発表。
内田百間(ひゃっけん)、佐藤春夫らの作品の挿絵、装丁も手がけた。放浪癖や奇行で知られ、窮乏生活の末に栄養失調で昭和21年9月9日死去。50歳。奈良県出身。

【 詳細 : 須坂版画美術館

【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん 活版小本新作 ── 泉 鏡花 『胡桃』 紹介

富士2[1] IMG_2622[1] IMG_2594[1] IMG_2609[1] IMG_2613[1]ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 一筆箋 }
泉鏡花の「胡桃」をつくりました。

旅人がおみやげの胡桃(「胡桃の砂糖がけ」というお菓子があるらしい)
を買うため菓子屋へ行った時の話です。
お店には新婚らしき美しい女性が応対していました。
旅人の目を通して鏡花好みの女が活き活きと描かれています。

鏡花の初版本などをみると美しい本がたくさんあります。
振袖の端切れでも使って艶やかなものしようと
生地屋へ足を運びましたがこれというものはありませんでした。
しかたなく派手な紙を使ってただただ賑やかにしてみました。
内容とのミスマッチは否めません。
もっと丁寧に素材を選んで作らなければと自省しています。

三度炊く 飯さえこはし柔らかし 思うままにはならぬ世の中

【 詳細  ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 】
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{新宿餘談}
杉本昭生さんは活字書体の選択と、その組版には厳格な姿勢をつらぬかれている。
今回の活版小本  『胡桃』 泉 鏡花 の題簽に、
小社販売の<四川宋朝体 龍爪>をご使用いただきました。

IMG_2594[1] 龍爪パッケ{朗文堂 タイプコスミイク 四川宋朝体 龍爪

【映画】 The Secret of Kells ブレンダンとケルズの秘密

20170518151119_00001 20170518151119_00002SI_066_013聖なる本『ケルズの書』に秘められた不思議な力
美しいケルト文様が万華鏡のように動きだす!

2016年に日本でも公開され注目を集めた『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』。 同作にさきがけ、トム・ムーア監督のデビュー作『ブレンダンと
ケルズの秘密』は、アカデミー賞長編アニメ賞にいきなりノミネートされるという快挙によって、世界中を驚かせた。
『ソング・オブ・ザ・シー 海の
うた』の青に対し、本作はアイルランド・カラーの緑一色。ごく一部のシーンを除き、伝統的な2Dの手描きで作られており、中世絵画にならって現代的な遠近法を排して描かれた。
「ケルズの書」の鮮やかで美しいケルト文様が万華鏡のように動きだす様は圧巻だ。その技術の高さ、
表現の豊かさは、アニメーションを超えて、一級の絵画を見るような印象を与える。
音楽は、『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』と同様、数々の
映画音楽を手掛けるブリュノ・クレとアイルランドを代表する音楽グループ、K i LA。

STORY ──────────
9 世紀のアイルランド。バイキングの襲来にそなえ、ケルズ修道院を囲む塀を作る
大規模な工事が続く中、バイキングに襲われたスコットランドのアイオナ島から、高名な修道士エイダンが、一冊の「聖なる書」を携えて逃れて来る。その本には隠された知恵と力が秘められていた。
ケルズの書を完成させるため、ブレンダンはインクの原料であるある植物の実を探
しに、危険を冒して、不思議な生き物が隠れ住む魔法の森へ出かける。森でオオカミの妖精アシュリンの助けを得て、ブレンダンは無事に実を持ち帰るが、バイキングの襲来がケルズにも迫っていた。
ブレンダンは本の力によって、闇を打ち砕き、光を取り戻すことができるのか?

【 ケルズの書 】
9 世紀、アイルランドの修道士によって作られた豪華な装飾が特徴の福音書。マタイ伝、マルコ伝、ルカ伝、ヨハネ伝が納められている。「世界で最も美しい本」として知られ、ダブリン大学トリニティ・カレッジ図書館に17世紀から350年にわたって保管され、年間50万人が訪れるというアイルランドの国宝である。
ケルト特有の渦巻き、人、動物が描かれ、ケルト美術の最高峰ともいわれている。

【お問い合わせ:チャイルド・フィルム工藤 Masako Kudo  info*child film.com  *→@】

【展覧会予告】 国立西洋美術館 アルチンボルド展 6月20日[火]-9月24日[日]

20170214173632_00006 20170214173632_00005奇想の宮廷画家アルチンボルド。
謎が謎を呼ぶ、思考の迷宮(Labyrinth)へようこそ。
国立西洋美術館 企画展示室

アルチンボルド展
会       期 : 2017年6月20日[火]-9月24日[日]
開館時間 : 午前9時30分-午後5時30分

           毎週金・土曜日:午前9時30分-午後8時
主       催 : 国立西洋美術館、NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社
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ジュゼッペ・アルチンボルド(1526-1593年)は、16世紀後半にウィーンとプラハのハプスブルク家の宮廷で活躍した、イタリア・ミラノ生まれの画家です。

自然科学に深い関心を示したマクシミリアン2世、稀代の芸術愛好家として知られるルドルフ2世という神聖ローマ皇帝たちに寵愛されたアルチンボルドは、歴史上でもひときわ異彩を放つ、宮廷の演出家でした。
そんな「アルチンボルド」の名は、何よりも、果物や野菜、魚や書物といったモティーフを思いがけないかたちで組み合わせた、寓意的な肖像画の数〻によって広く記憶されています。
奇想と知、驚異と論理とが分かちがたく交錯するそれらの絵画は、暗号のようにして豊かな絵解きを誘い、20世紀のシュルレアリスム以後のアーティストたちにも、大きな刺激を与えました。

本展は、世界各地の主要美術館が所蔵するアルチンボルドの油彩約10点のほか、素描などおよそ100点により、この画家のイメージ世界の生成の秘密に迫り、同時代の文脈の中に彼の芸術を位置づけ直す試みです。
日本で初めて、アルチンボルドのユーモアある知略の芸術を本格的にご紹介するこの機会を、どうかご期待ください。

【 詳細 : 国立西洋美術館  特設サイト

【展覧会】 サントリー美術館 国宝 《浮線綾螺鈿蒔絵手箱》 修理後初公開 神の宝の玉手箱 5月31日[水]─7月17日[月・祝]

サントリー美術館5-7展覧会サントリー美術館 六本木 開館10周年記念展
国宝 《浮線綾螺鈿蒔絵手箱》 修理後初公開
神の宝の玉手箱

会   期:2017年5月31日[水]-7月17日[月・祝]
* 作品保護のため、会期中展示替をおこないます。
開館時間:10:00-18:00(金・土は10:00-20:00)
*
7月16日(日)は20時まで開館
* いずれも入館は閉館の30分前まで
* shop×cafeは会期中無休
休  館 日:火曜日 * 7月11日は開館
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今も昔も、きらびやかで美しい箱は、人〻を惹きつけてやみません。内容品が大切であればあるほど、また、所有する者の身分が貴いほど、箱は美しく仕立てられ、〝玉なる箱〟として愛でられてきました。
「手箱」はその代表格で、もともと貴人の手回り品を入れるためのものが、蒔絵や螺鈿といった当時最高の装飾技法によって飾られ、神々のお使いになる具として奉納されるようにもなります。特に中世の手箱は、漆芸技法の結晶美ともいえるほど技術の粋が凝縮され、「神宝」として、あるいは一部の特権階級の所有として伝わるにふさわしいものばかりです。

本展は、このたび約50年ぶりに修理を行った国宝 《浮線綾螺鈿蒔絵手箱(ふせんりょうらでんまきえてばこ)》(サントリー美術館蔵) を修理後初公開することを基点に、人〻が生活の中で用いてきた手箱の姿を織り交ぜつつ、特別に仕立てられた手箱についてその魅力を特集するものです。
特に、名だたる神社に伝わった手箱を、表着(うわぎ)、沓(くつ)、檜扇(ひおうぎ)などの服飾から、鏡、鏡台、硯箱などの調度(ちょうど)にわたる様々な神宝類と合わせて展示します。

また、このたびの修理等を通して知られた、名品手箱の手間を惜しまない複雑な技法の工程と高度な技をご紹介しつつ、近現代の名工が手がけたそれら手箱の模造を通して、輝きに満ちた制作当初の姿をご覧いただきます。
金や螺鈿きらめく玉なる手箱―“玉手箱”。各時代で人々を魅了し、時に神様に捧げられた技と美をご堪能ください。
【 詳細 : サントリー美術館

【展覧会】 田中千絵展 5月15日[月]-6月3日  GalleryBar Kajima

20170515151503_00001 20170515151503_00002田中千絵展
2017年5月15日[月]-6月3日[土]
GalleryBar Kajima  加島牧史
営業時間:14:00-24:00 *日祝日休み
Mail: gbkajima@gmail.com
Web&Blog:gbkajima.jimdo.com
104-0061 中央区銀座7-2-20山城ビル2階
Tel:03-3574-8720
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ピュタゴラスは通りかかった街の鍛冶屋が金属を叩く音を耳にし、その音から音階を生み出した。金属の長さを 1対2  2対3  3対4 にすることで、ハーモニーが生まれることを発見した。
金属を叩くことから比率という考えが生まれ、音楽が生まれ、合理的な世界観が生まれた。その比率で構成された音楽は、やがて天文学に適応され、天界のハーモニーを奏でようとする。
田中千絵もまた、ただ叩くことから千絵の宇宙を生み出す。この不思議な形の宇宙のハーモニーを。(加島牧史)

{文字壹凜 GalleryBar Kajima 加島牧史 まとめ

【公演】 {幽玄} 坂東玉三郎×鼓童 Bunkamura オーチャードホール 5月16日─20日

20170214173632_00011 20170214173632_00012坂東玉三郎と鼓童! 『アマテラス』に続く共演第2作。
 能楽を題材にしたスペクタクル。日本のシアターアートのその先へ。
佐渡を拠点に世界を縦横無尽に活躍する太鼓芸能集団 鼓童。2012年から2016年にかけては、歌舞伎俳優で人間国宝の坂東玉三郎を芸術監督に迎え、毎年一作のペースで新作を発表してきた。
玉三郎と鼓童との出逢いは2000年のこと、舞台での共演を望む鼓童に対し玉三郎はまず鼓童単体の舞台「鼓童ワン・アース・ツアースペシャル(2003年)」の演出で応えた。

そして両者の距離が近づいた2006年「アマテラス」で共演が実現。この作品は日本神話に題をとり、玉三郎演じるアマテラスと八百万の神々に扮した鼓童が繰り広げる音楽舞踊劇。
当代随一の立女形と、日本を代表する和太鼓グループとの共演はたちまち一大センセーションを巻き起こし、翌年には早くも歌舞伎座で再演。
そして2013年の再々演では東京・福岡・京都で計67回の全公演がソールドアウトするという伝説の舞台となった。

その「アマテラス」に次ぐ11年ぶりの待望の共演作が、いよいよ2017年5月、オーチャードホールで幕を開ける。
15年以上にわたり玉三郎はその自由自在な発想と類い稀なる審美眼で、鼓童のクリエイションに大きな変革をもたらした。メインツアー「ワン・アース・ツアー」や、男性のみのエッジの効いた「打男」などを続けざまに演出、いずれも国内外で高い評価を得てきた。

そして今回のテーマは「幽玄」、まさに玉三郎の本領で、世阿弥が見た世界を「羽衣」、「道成寺」、「石橋」など能の代表演目を題材にして表現することに挑戦する。

対する鼓童も600年の月日の中で創り上げられてきた能楽を専門家に学びつつ、世界最高峰の演奏技術と玉三郎の導きによって、これまでの作品群で拡げてきた表現を昇華させ、日本の美意識を鼓童ならではの形で表現しようとしている。
玉三郎氏の舞踊が、魂を揺さぶる鼓童の太鼓の響きと、能楽にインスパイアされた妙なる音色と一体になって、奥深くも情感豊かなイマジネーションの新たな地平へといざなうことでしょう。

とはいえ客席の我〻は、能に詳しくある必要はない。ただ心を開き「幽玄」の感覚を全身で味わいながら、長い時間をかけて育まれた日本文化が、遥か未来に連なってゆく至福の時間を楽しめばよいだけなのだ。

【 詳細 : Bunkamura  オーチャードホール

【巡回展覧会】 日タイ就航30周年記念特別展 {タイ~仏の国の輝き~」 九州国立博物館+東京国立博物館

20170327201727_00005 20170327201727_00006 日タイ修好130周年記念特別展
「タイ ~仏の国の輝き~」
◎ 九州展:九州国立博物館
2017年4月11日[火]-6月4日[日]

◎ 東京展:東京国立博物館 平成館 特別展示室   
2017年7月4日[火]-8月27日[日]
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ことし(2017年)は日タイ修好130周年にあたります。この節目の年に修好記念事業として展覧会を開催します。

タイでは、仏教は人々の暮らしに寄り添う大きな存在であり、長い歴史のなかで多様な仏教文化が花開きました。
本展では仏教国タイについて、タイ族前史の古代国家、タイ黎明期のスコータイ朝、国際交易国家アユタヤー朝、現王朝のラタナコーシン朝における仏教美術の名品を通じて、同国の歴史と文化をご覧いただきます。
また、日本とタイの 交流史についても合わせて紹介します。

【 詳細 : 九州国立博物館  東京国立博物館

【造形詩人 森郁男さんからの情報】 薩摩琵琶 正弦会『琵琶演奏大会』 開催のお知らせ

20170510161827_00001 20170510161827_00002薩摩琵琶 正弦会『琵琶演奏大会』が開催されます。日本の語り芸のなかでも薩摩琵琶の弾き語りは勇壮で、力づよい撥音と、気迫をこめて語る物語が、時空を超えて聴く側に迫ってきます。
魂の叫びにも重なる薩摩琵琶の弾き語りと、琴線に触れる平曲の調べを、ぜひ皆さまにもご鑑賞いただきたいと念願いたします。
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薩摩琵琶  正弦会『琵琶演奏大会』
日時:05月28日[日]正午開演
会場:日本橋社会教育会館ホール

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