カテゴリー別アーカイブ: 会員の活版作品

【会員情報】ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本 新作 ── T・ウィリアムズ『話してくれ、雨のように……』|’24年9月

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{ ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 一筆箋 }

『欲望という名の電車』に登場する人物の強烈な個性に圧倒され、
以降『熱いトタン屋根の猫』『ガラスの動物園』など
T・ウィリアムズの著作を読み漁っていました。
『話してくれ、雨のように……』の舞台はニューヨークの下町、
アパートの一室で男と女が話しています。酔っ払った男の話は、
現実と非現実があいまいなまま、とりとめもなく続きます。
外は雨が降っています……。
登場人物の毒気にあてられたのでしょうか。

今回は苦労しました。
とにかく印刷がうまくいかなくて、何回刷っても

かすれるか、潰れるかで、普段の五倍ぐらい印刷しました。
表紙もあえて紙を貼ってみましたが、全体にチグハグな感じがいなめません。
次は用紙を変えて、もう少しましな仕上がりを目指します。

別るるや
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{ 活版アラカルト 活版小本 既出まとめ 

【会員情報】ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本 新作 ── ウディ・アレン『心霊現象を探る』

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{ ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 一筆箋 }

ウディ・アレンの『心霊現象を探る』です。
この話は短篇集『羽根むしられて』に掲載されています。
彼の映画(どちらかといえば初期の頃)をそのまま活字にしたような
ギャグやパロディがぎっしりつめ込まれ、おおいに笑わせてくれます。
ほかにもいくつか作りたくなる話がありました。

ニューヨーカーらしい彼のイメージを伝えるため写真を使いました。
表紙は、タイトルの位置や紙の厚さが気に入らず、何度もやり直しました。
予定ではもっとおしゃれな本になるはずだったのですが……。
本文用紙を含め、紙の選定を間違ったようです。
まあ、至らないところは次の糧にして、
気ままな一人遊びを楽しみたいと思います。
花曇り【 詳 細 : ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 】  { 活版アラカルト 活版小本 既出まとめ 

【会員情報】ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本 新作 ── 里見 諄『椿』

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里見諄の名作『椿』です。
川端康成が『新文章読本』で褒めていたのを読んだことがあります。
話は単純で、叔母と姪(叔母は三十歳ぐらい、姪は二十歳)が
布団を並べて寝ている時の出来事を描いたものです。
***************
この作品はずっと前に作っていましたが、後回しにしていました。
なんとなく出来上がりが想像できたからです。
しかし実際に印刷し製本してみると
頭の中で考えていたものとは違う存在感があり、
あっ、こんなふうになるのかと新鮮な驚きを感じました。
たぷん、そんな感触が楽しくて飽きずに続けているのでしょう。
よろしければご一読ください。
ねむらざる

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【会員情報】ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本 新作 ── 魯迅『孔乙己』- こういっき -

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魯迅の短編「孔乙己(こういっき)」です。
「狂人日記」の一年後に発表されたこの作品は、魯迅の実質的なデビュー作ともいわれています。
酒好きのエリート孔乙己は科挙の試験に落ち続け、生活も破綻し、盗みを働くように
なっていました。しばらく酒場に現れないので、店主が周りに訊いてみると、
盗みに入った家の者に見つかり、殴られた上両脚を折られたということでした……
***************
よく行くリサイクルシEツプが古い着物の取扱いを止めたので
表紙の布を選ぶのに時間がかかりました。
しかたなく手芸店に行きましたが、ほとんど女性しか出入りしない場所で、
爺がうろうろ布を探すさまは、どう見ても気持ち悪い光景だったでしょう。
いやはや、未だかつてあんなに緊張したことはありませんでした。
ぜひご一読ください。
かしこまる

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【会員情報】ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本 新作 ── ジョナサン・スウィフト『死なない人たち』|発表紹介

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『死なない人たち』はジョナサン・スウィフトの『ガリバー旅行記』の第三篇、
ストラスドブルグに関する記述を抜粋して作りました。
現在の高齢化社会の現状と一脈通じるところがあるような気がしました。
この先、人工的に寿命がコントロールできる時代が来る予感がします。
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制作の感想は、まあ可もなく不可もなくというところです。
最低限、開きやすく読みやすい本にしたかったので、本文用紙は薄くしています。
今回のように無難な出来上りは、自分にとってある意味退屈です。
もし作りなおすことがあれば、表紙は布装にしたいと思います。
なぜなら仕上がりが想像できないから……。
これ見よと【 詳 細 : ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 】  { 活版アラカルト 活版小本 既出まとめ 

【会員情報】ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本 新作 ── ジョージ・オーウェル『 絞 首 刑 』発表紹介

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作者のジョージ・オーウェル(1903ー50)は、『動物農場』や
『1984年』で有名な、インド生まれのイギリスの作家です。
『絞首刑』は、彼がビルマで警官として勤務していた二十代のころ、
現地で見た死刑執行の様子をもとに書かれたといわれています。
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今回は、はじめに絞首台の縄を作りました。
これが実物のように見えることがポイントでした。
縄は糊で貼りつけてあるだけなので剥がれるかもしれません。
表紙の文字は直接刷ると潰れるので、別紙に刷りました。
本文の印刷は何度やっても均一にならず、限界を感じています。
それでも、本という形になっていくのは楽しいものです。
それがたとえ幼稚なものだとしても …… 。
ほととぎす【 詳 細 : ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 】   { 活版アラカルト 活版小本 既出まとめ 

【会員情報】ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本 新作 ── K・マンスフィールド『パール・ボタンはどんなふうにさらわれたか』

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作者のキャサリン・マンスフィールドはニュージーランド生まれの作家で、
主にイギリスで作品を発表しました。34歳の若さで夭折しましたが、

人間心理の機敏を描く作家として現在も高い評価を受けています。
長いタイトルの「パール・ボタンはどんなふうにさらわれたか」は
5歳くらい(?)の少女が遭遇した事件を淡々と綴った作品です。
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今回は二つ失敗しました。
ひとつは表紙の紙の選定を間違ったこと。
凹凸がある紙なので、インキが定着せず小さな文字がかすれてしまいました。
もっとインキの乗りのいい紙を選ぶべきでした。
あとひとつは本文中に不要な改行があることです。
誤植がないか何度も見直したつもりでしたが見落としていました。
こんな初歩的なミスをしていると気持も落込みますが、
それはそれとして、気を取り直し、次回こそ「自信の一冊」をめざします。
活版小本タイトル03月

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【会員情報】ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本 新作 ── 森 鷗 外『 團 子 坂 』

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森鷗外の一幕物のひとつ「團子坂」です。
登場人物は学生(賢そうなのでだふん帝大生)と、
女学生(銀行とか大企業の偉い人の娘のよう)。
推しの強い女学生と、生真面目すぎる男学生との会話がもどかしい
明治時代の男女交際の話です。
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制作はあまり考えずにできました。
すんなりできたふん「味のない本」になってしまった気がします。
美しい装幀が本の価値を高め、内容のグレードを上げることはわかりますが、
きままな一人遊びゆえ、外注するほどのこだわりもなく。
手持ちの紙や布を選んで仕上げているので
変わり映えがしないのも むべなるかな、というところです。
下駄買って

【 詳 細 : ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 】 { 活版アラカルト 活版小本 既出まとめ 
[ 参 考 : 活版アラカルト〔展覧会〕文京区立 森鷗外記念館|特別展  写真の中の鷗外  人生を刻む顔|’22年1月9日-4月17日 ]

【会員情報】ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── 中島 敦『和歌でない歌』

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今回の「活版小本」は小説ではありません。
中島敦の『和歌(うた)でない歌』から34人を選び、
見開き1ページにその人の言葉とシルエット、かんたんな解説を加えたもので、
何と呼んでいいのかわからない代物です。
内容がこんなものなので、体裁が決められず、
ぐずぐずしていたら時間がたって、今になってしまいました。

版代の節約のため、しかたなく本文を2つ折りにしましたが、
紙が厚くなり、これは失敗でした。
何も決められないまま、タイトルに引かれて簡易な装丁にしましたが、
これも適正かどうか判りません。
というところで、作る時間より迷っている時間のほうがはるかに多かった
厄介な作品でした。まちがいなく消化不良の一冊です。
2、3ページ眺めて頂けたら幸いです。

行く秋

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【会員情報】ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── ドーデ『嘘をついていた女』

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ドーデ(1840-1897年)は、「月曜物語」や「風車小屋だより」などで知られる
一九世紀のフランスの作家です。
今回の「嘘をついていた女」は『世界の文学52 フランス名作集』(中央公論社)
に掲載されていたものです。ネットで調べてもほとんど情報がない作品ですが
ストーリーが何となく印象に残り制作しました。
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表紙は女性の絵を使ったデザインにするつもりでしたが、直前で気が変わり、
これを扉ページにして、内容があまり具体的内でない 花柄 に変更しました。
(扉ページの絵は、ムンクの The Brooch. Eva Mudocci この女性の眼差しは
小説の中に登場する女性のイメージに近いと思います)
あいかわらずツメの甘い仕事でうんざりですが
読んでいただければ幸いです。

杉本あさがお

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【会員情報】ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── サ キ『開いた窓』The Open Window

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今回はサキの『開いた窓』です。
ご存知のようにサキ(本名:ヘクター・ヒュー・マンロー、1870-1916年)は
ブラックユーモアと、意外な結末を得意としたイギリスの短編作家です。
『開いた窓』はサキの志向がよくあらわれた作品で、
簡潔な文章と自然な話運びで、いつのまにか読者を恐怖の世界へ誘います。
──────────
いまさらサキを取り上げるのもどうだろうと、作るのを迷っていましたが
別の作品も思い浮かばないので、気持を入れ替え作りはじめました。
今回は丸背にしたくて、面付を変えて、一枚(4ページ)ずつ かがり ました。
いつもの二枚(8ページ)より少し開きやすくなった気がします。
相変わらず作業は雑ですが……。
いま出来上がりを見ると表紙の文字を、左ヘ1ミリ移動したくてたまりません。

あじさい

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【会員情報】ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── 佐藤春夫『あじさい』

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佐藤春夫の『あじさい』です。
これぐらいの文章(二千文字たらず)だと、
当り障りのない身辺雑記がほとんどですが、
この作品はオチもあり、物語になっているように思いました。
読みづらく回りくとい言い回しはいつもとおりですが。

表紙の布は実家にあった母の着物を使って作りました。
函は花の色をイメージして淡紫の和紙にしました。
自分に画力があればあじさいの絵でも描くところですが
いまさらそんなことをやりだすと泥沼にはまりそうなので
今回はやめました。
ご一読いただければ幸いです。

初さくら

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【会員情報】ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── 井伏鱒二『へんろう宿』

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井伏鱇二『へんろう宿』です。
この作品は井伏が 室戸岬へのバスの中で見かけた小さな宿に着想を得て
空想で書いた作品といわれています。
しかしその設定や登場人物は、強い存在感とリアリティがあり、
井伏が実際に見聞した宿の女性たちを 世間の好奇心から守るために、
「空想による作品」としたのだろうといわれています。
──────────────
いつのまにやら新年になりました。
前の『流渦』とおなじ体裁にしようと 絣の古布を探していたのですが
適当な布がすぐ見つかるはずもなく、あっても高くて手がでないので
あきらめて紙にしました。
同じ色目の函をつくり、別紙でタイトルを貼付けました。
海の色をイメージしたのですが 伝わっているでしょうか。
方言が読みづらいかもしれませんが いい作品です。

虚子

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【会員情報】ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── 内田百閒『 流 渦 』

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『流渦』(りゅうかと読むのでしょうか)は百閒の処女短篇集『冥土』の中の一篇です。
漱石の『夢十夜』に触発されて書いたといわれる掌編群は、不気味な幻想に満ち、
底知れない恐怖と、不条理な夢の世界を、イメージ豊かに描き出しています。
とちらかといえば随筆家として知られている 内田百閒 の、
怖くておかしい、夢の話を味わってみてください。
──────────────

相変わらずの仕上がりです。
いつも行くリサイタルショップに、着物コーナーがなくなり
袋に突っ込んであった二、三枚の中から、一番ましな生地を選んで作りました。
本当なら、一枚の布を探して京都中の店を訪ね歩くぐらいのこだわりが
あったほうが面白いと思うのですが、私にはそこまでの熱意もなく、
まあこれでも変じゃないかな、という程度の安直な判断で決めています。
自分さえ納得できればいいので、とても楽ちんです。
箱庭

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【会員情報】ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── 志賀直哉『 老 人 』

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{ ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 一筆箋 }

志賀直哉の「老人」です。
題材からすればゴタゴタが起ってしかるべきところですが、
志賀直哉はそれらを描くことはせず、淡々と老人の気持を書いています。
素人考えですが、同業の小説家に志賀直哉が尊敬される所以は
文章の巧拙だけでなく、登場人物の描き方に彼独特のヒューマニズムを
感じさせるところにあるのだろうと思います。

古くさい装幀になりました。
渋い感じを出そうとしてうまくできてないような印象です。
タイトルは活字の方が良かったと思います。
この文章を書きながら、また違う装幀のものを作ろうかなと思っています。
世の中は

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【会員情報】ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── 中島 敦『寂しい島』

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中島 敦『寂しい島』です。
彼が赴任したパラオ諸島に子供が生まれない離島がある。
原因はわからない。二十歳以下は五歳の女の子が一人いるだけで
やがて島民は一人残らず居なくなるだろう。
人気のない浜で満天の星空を見ながら、人類の絶えてしまった後の世界を思い描く。
「誰も見る者も無い・暗い天体の整然たる運転」の世界を……。

前回、前々回と寄り道をして、小さい本に挑戦しましたが、
やはり自分にはこれぐらいの大きさが適当だと思いました。
愛玩される豪華な本はつくれないので、
コース料理なら「お浸し」。
少年野球なら「八番ライト」ぐらいの位置をめざします。
あじさい

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【会員情報】ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── ヨハン・ペーター・ヘーベル『暦物語』

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ヨハン・ペーター・ヘーベルの「暦物語」より、「思いがけぬ再会」と
「恐ろしい事件が平凡な肉屋の犬によってあばかれた話」です。
「暦物語」とは、カレンダーに添える短い挿話や教訓話のことで
ベーベルは多くの物語を執筆しました。二百年前のことです。
機知とユーモアに富んだ物語は、現在も読み継がれているということです。

今回は連休があったので、思ったより早くできました。
印刷もわりと上手くでき、きれいな本になると思ったのですが
できてみると、前回「無人島」のおさらいのような感じで、新鮮さに欠けるものでした。
やり直すほどでもないが、喜べるほどでもない、宙ふらりんの満足感です。
次回は日本の作家を予定しています。
ご期待ください。
あじさい

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【会員情報】ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── マッチ箱大の読める丸背上製本|マルセル・アルナック『無人島』

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「無人島」は堀口大學の翻訳集「花売り娘」(昭和十五年・第一書房)に掲載の小品です。
作者はマルセル・ファナックという人ですが、若くして自動車事故で
亡くなったということ以外わかりません。
お話は外国のコメディにあるお決まりの物語で、新鮮さは感じられませんが、男性はちょっとわくわくするかも知れません。

マッチ箱に入れた小さな本は前にも作りましたが、
あまりにひとい出来だったので再挑戦してみました。
いつもの大きさだとページ数が少ないので、丸背の本は無理でしたが、
今回は小さくしてページ数を増やし、丸背の本に挑戦しました。
しかしいい加減にやり始めたので、当然うまくできるわけもなく、
ツメの甘い、気の抜けた仕上がりです。
たくさん学ふところがあったので、次はすこしましなものを作ります。

◉ 杉本昭生さん: 文香-ふみこう を同封しました。すこし甘い香りが強いかもしれません。玄関にでも置いておたのしみください。
◉ 吾輩のつぶやき: 今年に入って杉本昭生さんは、『活版小本』の郵送に文香を同封されています。封をきると奥ゆかしい香りがただよいます。重苦しい気分を払底するのには最適です。杉本さん曰く「文香は平安時代のドラッグ」だそうです。
ひらひらと

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【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── 川端康成『有難う』

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{ ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 一筆箋 }

川端康成の『有難う』を作りました。
掌編小説を収録した作品集『掌の小説』の中の一篇です。
ストーリーは簡単ですが、私の読みが浅かったのか
運転手と娘が結ばれたとは思わず。娘の憧れの人と最後の一夜を
同室で過しただけだと思っていました。
簡潔な文体と描写が印象に残る作品でした。

柔らかい布の表紙にしようと作りはじめたのですが、
途中から道に迷ったような気持になりました。
出来あがってもすっきりとせず(いつものことですが)
どこで間違ったのか確かめるため。同じ工程を初めから辿りました。
けっきょく二種類の本が出来ました。
読んでいただければ
「ありがたう。」
とにかくなんでも
「ありがたう。」

杉表紙

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【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── ライナー・マリア・リルケ『 駆 落 』森 鷗外(森 林太郎)訳

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森 歐外(森 林太郎)訳、リルケの「駈落」です。
「駈落」の筋は単純です。
交際を禁じられたアンナとフリッツは相談し
明日の朝、駅で待合せて二人でどこか遠くへ行くことにしました。
しかし時が近づくにつれてフリッツの気持は動揺してきました。

先日古書市で第一書房(長谷川巳之吉)の本をまとめて見る機会がありました。
だれかの蔵書で、表紙はすべてパラフィン紙がかけられ、
大切に所蔵されていたことが窺えました。
洋書のような凝った装丁は出版社のこだわりを強く感じさせるものでした。
印象が消えない内に今回の扉を作ってみました。(フーツラが太すぎますが)
作りながら、アナログの単純な色分けのなかに
久しく忘れていた、古くて新しい美しさがあることを感じました。
同時にそれを表現する技術が自分にないことも……。

◉ 杉本昭生のつぶやき:生の葱を囓ったような苦い味がする作品でした。(個人的な感想です)
◉ 吾輩のつぶやき: 京都吉田山山麓で製作に勤しむ杉本昭生さん。西のみやこ:京都盆地は、夏暑く、冬は冷えこみます。そんななかで創作欲を保つだけでも敬服に価します。みやこの雪たよりとともに、活版小本新作が登場しました。

下駄買って

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【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── 佐藤春夫『指 輪』

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『指輪』は佐藤春夫の小品です。
男は妻が欲しがっている指輪を同じ職場の若い女に買い与え、
社員旅行に行くふりをして、二人だけで何処かへ出かける計画をしています。
正直この話はいやな気分にさせられます。
そこで「いやな気分のおすそ分け」のつもりで本にしました。

何かくたびれた、華のない本になってしまいました。
洋本か和本か迷ったあげく、和本にしたのですが、案の定失敗しました。
横組の題簽も、本文の赤い枠も落着きのないものになっています。
見た目から自然に内容に導いていくような造本が
いつになったらできるのか、めざすところはまだ雲の上です。
よろしければご一読ください。

◉ 杉本昭生つぶやき:同じ体裁に少し飽きています。次回はもっと美しく格調高く。
◉ 吾輩つぶやき:過剰な感染症情報に身も心も萎え気味な昨今であったが、そろそろ ……. かな。
朝顏

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【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── 松尾芭蕉『幻住庵記』評釈ゟ

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だれも読まないであろう『幻住庵記』評釈です。
芭蕉の文章だけだと短くて本にならないので、解説を入れました。
自分の程度にあわせて理解しやすいようにしましたが
まず今の時代、これを読む人がいるかどうか、少し不安です。

本体は割とすんなりできました。
慣れてきたのでしょうか、要領がよくなった気がします。
苦労しなかった分、何か物足りなく、貼箱を作ることにしました。
いつもの調子でいい加減にはじめたら、やはり失敗し三回作り直しました。
はじめは、箱と本の寸法が微妙にきつくていやになり、
次は蓋をしたときの指にかかる感じが気になり、
三度目でやっと納得できるものになりました。
ときとき箱から出して眺めていただければ幸いです。

すぐるるや

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【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── 小川未明『ペストの出た夜』ゟ

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「ペストの出た夜」は前に作った「橋の上」という作品と同じ本に載っていた
小川未明の小品です。どこで読んだのか思い出せなくてずいぶん探しました。
隣町にペストが発生したと聞き、神経質な主人公は慌てふためきます。
その様子ははたから見れば極端でヒステリックなものでした……。

今回は予定していた作品を変更して作りました。
和木の体裁にして三冊目で、いろいろな作業の段取がやっと掴めてきた感じです。
足らないところも確認できたので、次の制作に活かしたいと思っています。
二ヶ月前には想像すらできなかった事態が世界中を巻きこんで進行しています。
覚悟を決めて、くれぐれもご用心、ご用心。
一葉
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【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── 泉 鏡 花『 迷 子 』ゟ

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泉鏡花の「迷子」です。
買物の途中、人だかりがしているのでのぞいてみると
小さな女の子か迷子になっていました。その可憐な様子を見て
心のやさしい娘お考は、何とかしてあげたくてたまりません。

前回ダヴィンチを和木で作ってみて、その可能性を感じたので
今回も和本にしました。
何か新しい要素を取り入れて斬新な感じにしたかったのですが。
題材か世間によくある話でもあり、絢爛豪華な装丁は似合わないし
箱や帙に入れるのも違和感があり、けっきょく当り障りの
ない平凡な仕上がりになりました。
表紙は縮緬、手触りはいいのですが、厚みがあり、折ってもすぐに
元に戻ってしまう、扱いにくい素材でした。
フォントは筑紫オールド明朝Mで仮名を少し小さくしています。

* 杉本昭生つぶやき:地味な本になりました。

鴨【 詳細  ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 】 { 活版アラカルト 活版小本 既出まとめ 

【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── レオナルド・ダ・ヴィンチの手帖より

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レオナルド・ダ・ヴィンチは多くの分野に足跡を残した「万能の天才」といわれています。
今回は残された手稿の中で、人や動物に関する文章を選び
「哲学」「動物訓話」「諧謔」に分け一冊にしました。
もちろん彼の思考は広範で、こんなところにおさまる人ではありません。

外国の作家の作品を和本で作るとどうなるだろうと思い今回は和本にしました。
表紙は軽く、明るく、天才ダヴィンチのイメージとは少し違いますが
思っていたほと違和感はありませんでした。
勝手な思い込みかもしれませんが、一般に流通している書籍にはない
アートブックとしての可能性を感じました。
センスのいい人が作ればですが。
 * 参考「レオナルド・ダ・ヴィンチの手帖」(昭和18年、六興商會出版部)

うめ【 詳細  ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 】 { 活版アラカルト 活版小本 既出まとめ 

【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── 菊 池 寬『 母 』

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{ ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 一筆箋 }

菊池寛の「母」を作りました。
なぜ菊池寛なのか。ひとことでいえば彼の短編小説が好きだからです。
今回の『母』もごく短いものですが、強く印象に残りました。
 母が亡くなり葬式に出るため故郷の実家へ向かう清三は
 幼いころ見た或る光景が忘れられず、母に対して複雑な思いを抱き続けています。
無駄な描写がなく、短編小説のお手本のような作品だと思います。
──────────────
本文は十二字詰め五行、一頁六十文字でゆったりと組んでいます。
それに合わせて判型も窮屈にならない程度に小さくしました。
装幀は我ながら野暮ったい感じがします。
本文を読むとあまり冒険もできず、手元にあった安物の着物地で
作りましたが、もう少し品よくできたのではと反省しています。
お読みいただければ幸いです。

秋の夜の

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活版小本
2019年9月25日水曜日
次の本が出来るまで その140
『仮名世説』
『仮名世説』は蜀山人が「世説」に倣い近世の逸話、名言を蒐めたものです。
近松門左衛門の辞世の文章を掲載します。
近松{杉本昭生つぶやき:そろそろ辞世の準備をしないと …… といいつつ何年過ぎたことやら}

【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── 夏目漱石『永日小品』ゟ「モナリサ」「懸物」

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{ ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 一筆箋 }

漱石の『永日小品』より「モナリサ」と「懸物」を選びました。
はじめ「火鉢」か「声」を加え、三作品で一冊作るつもりでしたが
頁が増え過ぎるので二作品にしました。
とちらも古いものにまつわる話で、時代を感じさせる好短編です。

薄い半紙があったので使いましたが、薄すぎて
片面刷りでも裏の文字が透けてしまいました。
しかたなく間にもう一枚挟んで写らないようにしています。
今回も、何となくかたちになるだろう、といい加減にはじめたせいで
随分遠回りをしてしまいました。
よろしければお読みください。
────────────────
余談ですが、森茉莉の『父の帽子』に
鷗外の「半日」について書いた文章がありました。
以前、遺言書をブログに掲載しましたが、改めて「半日」を読むと
妻への冷遇も納得させられた気がしました。

あじさい

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【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── 永井荷風『罹災日録抄 偏奇館炎上』

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{ ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 一筆箋 }

永井荷風の『罹災日録抄 偏奇館炎上』です。
昭和二十年の日記をまとめた「罹災日録」の中から
三月九日未明の東京大空襲の記録を一冊にしました。
荷風六十六歳、この戦争がなければ悠々自適の老後だったかもしれません。
────────────────
連休中、毎日毎日古書展で本の背をながめたせいか、
食傷気味で、作る気持ちが起こらず放っていました。
気持ちの伝わるものを作りたいと思ってはいるのですが
なかなか昇華できません。
難しい事を考えだすと迷路に迷い込むので。
ふわふわと気楽に本造りを楽しむようにしています。
お暇な時にご一読ください。

青楼や

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【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ─『パリの憂鬱』|フレデリック・ブウテ作、森 鷗外訳

物乞いをして暮らす「一本腕」は橋の下で寝起きしている。
雪の降るある日、いつものように帰ってくると見知らぬ老人がいた。穴だらけの外套を着、白い髭を生やした男は「一本腕」と同じ境遇のように見えた。老人は横になったまま「一本腕」が手にした一切れのパンを物欲しげに見ている …… 。

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{ ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 一筆箋 }

フレデリック・ブウテ作、森 鷗外訳の『橋の下』です。
物乞いをして暮らす「一本腕」は、橋の下をすみかにしています。

雪の降るある日、いつもの場所に戻ってくると見知らぬ老人がいました。
破れた外套を身にまとい白い髭は薄汚れています。
老人は「一本腕」に自分の過去を話しだしました。
────────────────
今回は表紙カバーが先にできたので、それに見合う表紙にするつもりでしたが、
うまくできないのでカバーの図版を表紙にしました。
光沢紙でも作ってみましたが、印刷インキが定着しないのと、
折り曲げた部分のトナーが剥がれるので
普通のコピー用紙にしました。ご一読ください。 [杉本昭生]

栄えゆく

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【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── ボードレール『パリの憂鬱』

ボードレールは18世紀のフランスの詩人で「近代詩の父」といわれています。『パリの憂鬱』は散文詩と呼ばれる新たなジャンルを切り拓いたもので、韻律も脚韻もない散文形式で近代人の孤独と憂鬱を語り、ランボー、ヴェルレーヌ、マラルメら後の詩人たちに大きな影響を与えました。
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{ ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 一筆箋 }

ボードレールは、一八世紀のフランスの詩人です。
もっと最近の人だと思っていましたが、活躍していたのは江戸時代の終わり頃です。
生前に発表された『悪の華』は風俗壊乱のかとで、罰金と詩六編の削除を命じられました。
今回は彼の死後出版された、散文詩集『パリの憂鬱』から五篇を選んで作りました。
時代を感じさせない新鮮な感覚で都会人の憂鬱や孤独を描いています。
────────────────
今回は割と迷わずできました。
早く表紙カバーを作りたくて急いで作業しました。
自分のセンスのないのを棚に上げていうならば
表紙だけだとどうしても限定され無難なものしかできませんが
カバーをつけることで、イメージの幅が広がるように思います。
次回からは背文字も入れたちゃんとした本を目指します。[杉本昭生]

梅

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【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── 太 宰 治『 朝 』ゟ + α

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{ ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 一筆箋 }

心を入れかえ作った太宰治「朝」です。
作家の経歴についてはご存知でしょうから省略します。
彼の作品は悩みをかかえる青年の気持をつかむところがあり
わたしも若いころ心酔した時期がありました。

今回は冊数を少なくして慎重につくりましたが、見た目は変わりません。
表紙の布も、もう少し選択の余地があった気がしています。
外箱も考えましたが、角背の本にはあわないと思い採用しませんでした。
遅まきながら、作る過程の楽しみはこれらの取捨選択にあることが分かり
これからは制作第一主義(とこかの国のことではなく)でいこうと思っています。
近所の書店にて

太 宰 読 む 娘 (こ) の 横 顔 が 気 に か か り

かしこまりて

次の本が出来るまで その109 ── 2018年10月23日 火曜日
天行病(はやりやまひ)

天行病 天行病3「閑窓瑣談」より
※今年はインフルエンザの予防接種を受けることにした。

次の本が出来るまで その108 ── 2018年10月15日 月曜日
気になった文章
其碩
『假名世說』 太田蜀山人
※蜀山人が書いたものではなく編輯したもの。江戸の匂いが漂います。

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【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── フランツ・カフカ『観察』ゟ

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{ ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 一筆箋 }

散文詩風の小品18編を収めた作品集「観察」から
「独身男の不幸」「走り抜けて行く人々」「拒絶」「通りに向かう窓」の
4篇を選びました。
カフカの生涯や作品については省略します。

今回は表紙にデ・キリコの「通りの神秘と憂愁」
(少女が輪っかを転がしている絵)を
使うつもりでいましたが、カラーコピーが安っぽくて、やめました。
印刷も自分でしておきながら、雑で不満です。
最近はコメントも愚痴ばかりで、作る楽しみが感じられません。
で、この本をきりにして、次回からは
新しい気持で取り組もうと決心(今さら!)しました。
とりあえず次回から背にターター(本の背に貼る紙の筒)を
つけようと思っています。
時間があればご一読ください。
秋成

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【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん 活版小本新作 ── 北条 民雄『続 癩院記録』より

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{ ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 一筆箋 }

北条民雄「続 癩院記録」です。
北条民雄は十九歳でハンセン病を発病し施設に収容されます。
隔離生活の中で、自身の体験にもとづく名作『いのちの初夜』を執筆。
二十四歳で亡くなるまで創作を続けました。

前回の「エセー」と同時に作っていたので、あまり間を置かず出来上がりました。
中身に寄り添った本の体裁を考えると、どうしても無難なものになり、
(すべては自分の想像力のなさによるものですが…… )

つくりながら「地味すぎる」「ツメがあまい」「しまりがない」「他にないのか」
と心の声がしきりに聞こえてきます。
そんな声を「ああ、また言ってる」と聞き流して今回もつくりました。
ぜひご一読ください。
蕪村──────────

活版小本
次の本が出来るまで ── は、ついに-その100-を迎えました。

ご訪問をおすすめいたします。

次の本が出来るまで その100
年 号
* 間違っていたらすみません[杉本昭生]。

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【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん 活版小本新作 ── モンテーニュ『随想録』より

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{ ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 一筆箋 }

モンテーニュの「随想録」より抜粋しました。
十六世紀のフランスのモラリスト、モンテーニュが著した「随想録」は
深く広い思索を平易な文体で書きとめたもので、
新しい散文様式として後世に大きい影響を及ぼしました。
抜粋した部分はお金にまつわる彼の経験談です。
「うん、そうだよね」と思わせるものでした。

今回もいろいろなトラクタが発生して思った以上に時間がかかりました。
表紙を見ても誰の何の話かわからないので。帯をつけるつもりでしたが
文言が気に入らずやり直すか、付けないか考え中です。
少し背を丸くしたくて1ミリ厚のボール紙を指で曲げていたら
次の日指先が痛くて痛くて泣きました。
今はもう回復しています。
お読みいただければ幸いです。

暑き日──────────
活版小本
次の本が出来るまで ── は、ついに-その99-になっています。百の大台はもう目前です。
ご訪問をおすすめいたします。

次の本が出来るまで その99
『百人一首』より
明治二十一年発行の本より抜き出したものです。その頃は万葉仮名を読める人がまだ世間におおぜい居たのでしょうね。

天智天皇【 詳細  ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 】

【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん 活版小本新作 ── 萩原朔太郎『 虫 』紹介+α

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{ ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 一筆箋 }

萩原朔太郎は大正時代に近代詩の新しい地平を拓き「日本近代詩の父」と称される詩人です。「虫」は神経衰弱の男が「鉄筋コンクリート」の〈本当の意味〉を知りたいと思い
右往左往する話です。そして、突然閃きます。「虫だ!」。

初めは萩原朔太郎の詩集にしようと思っていました。

ああわたしはしっかりとお前の乳房を抱きしめる、
お前はお前で力いっぱいに私のからだを押へっける、
さうしてこの人気のない野原の中で、
わたしたちは蛇のやうなあそびをしよう、
            (『月に吠える』より「愛憐」部分)

しかしちいさな本では文字の切れ目や余白が不自然でやめました。
今回の本は媚びるような感じがあってやや不満です。
楽しみではなく。仕事として作っている感じですね。
次回はもっとお気楽にやります。
どこやらで【 詳細  ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 】
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活版小本
次の本が出来るまで その91 ──── 2018年4月13日

酒合戦

文化十二年十月、千住に住む中屋六右衛門の六十の祝いに酒合戦が催されました。芸者や太鼓持ちも呼ばれ三味線の音も賑やかに酒量を競ったそうです。そこでは厳島杯、鎌倉杯、江島杯、万寿無量杯、緑毛亀、丹頂鶴などと呼ばれる杯が使われました。
厳島杯は五合(900mℓ)、鎌倉杯は七合(1,260mℓ)、江島杯は九合(1,620mℓ)、万寿無量杯は一升五合(2,700mℓ)、緑毛亀は二升五合(4,500mℓ)、丹頂鶴はなんと三升(5,400mℓ)。
杯に万寿無量や緑毛亀(蓑亀ともいう。長寿を象徴する縁起のよいもの)などめでたい席にふさわしい名前をつけるセンスが粋ですね。ちなみに酒は伊丹の「玉緑」と「上竹」、肴はからすみ、花塩、さざれうめ、蟹、ウニ、うずらの焼き鳥、鯉の羹などだったそうです。
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【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん 活版小本新作 ── 松尾芭蕉『嵯峨日記』紹介+α

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芭蕉『嵯峨日記』を作りました。
元禄四年四月十八日より五月四日までの十八日間、
嵯峨にある去来の落柿舎に滞在した時の日記です。
独り閑雅を楽しみたいと願う芭蕉ですが、いろいろな人が出入りし
隠遁生活とは程遠いものだったようです。

最初は並製の軽便な本にしようと思っていましたが安っぽくてやめました。
やはり上製本でなければと作りなおしましたが、手触りがゴツゴツして不満でした。
布装ならもっとやさしい感触になるのではと挑戦しましたが。これも結局頓挫しました。
他人なら間違いなく「どうしたいの! もう勝手にして!」といわれているでしょう。
上製でも並製でもない布製のやわらかい本を目指しましたが中途半端です。
手触りだけでいえば思っていたものに近いのですが……
それにしても反省の多い一冊でした。
そそのかす

【 詳細  ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 】 { 文字壹凜Summary }
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活版小本
次の本が出来るまで その86 ―― 2018年1月30日

去年父親が亡くなったので、年賀状は出さず年が明けてから寒中見舞いを作りました。
今さらという気もしますが場つなぎに掲載いたします[杉本昭生]。
杉本昭生さん寒中見舞い* 白露とは水のこと。

【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん 活版小本新作 ── 陶淵明『桃花源記』紹介+α

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ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 一筆箋 }

陶淵明の『桃花源記』です。
原文は漢字で三百二十字、原稿用紙一枚にも満たない短い物語ですが
ここから生まれた「桃源郷」という言葉は千六百年後の現代も生きています。
「桃源郷」とは「魂の理想郷」を意味しているということです。

今回は活版が苦手なべ夕のかすれを活かそうと、
拓本のように自抜で印刷しましたが、インキを盛りすぎて乾かすのに苦労しました。
しかしこのあたりに活版印刷の可能性が僣んでいるような気がします。
表紙は端切れを三種類購入してそれぞれで作りました。
自分の想像していたものと違うことがよくわかります。

【 詳細  ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 】 { 文字壹凜Summary

ねこ次の本が出来るまで その71
Le Chat 「猫」  ジュール・ルナール『植物誌』より
* ポストカードを束ねて冊子にしようと思っていますが、すぐに気持が変わりそうです。
使用書体 : 筑紫オールド明朝R + KOたいらM  [杉本昭生]
** ブログロール「活版小本」では、年末に際して過去のトップページをまとめて紹介中です。
リンク先でお楽しみください。 [字遊人]

【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん 活版小本新作 ── 三遊亭圓朝 『士族の商法』 紹介

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ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 一筆箋 }

三遊亭圓朝『士族の商法』を作りました。
明治初期、特権を失った士族が慣れない商売に手を出して失敗する人が多かったことで
「不慣れな商売などを始めて失敗すること」のたとえとして今も用いられています。

圓朝は自分が実際に経験したことを噺にしたということです。

今回は知り合いの印刷所のご好意に甘えて断裁をお願いしました。

糺書房さま、ありがとうございます。
直角が微妙にずれてカタカタしていた切断面が
赤ちゃんの肌のようにツルッツルになりました。

これで俄然やる気になりましたが、
あとの作業が相変わらず不正確で自信の持てない出来栄えです。
しかし次回からは、きれいな裁断面をお見せできると思います。
ご期待ください。

【 詳細  ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 】 { 文字壹凜Summary

【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん 活版小本新作 ── 寺田寅彦『どんぐり』 紹介

IMG_2655[1] IMG_2657[1] IMG_2659[2] IMG_2645[1]ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 一筆箋 }
寺田寅彦の『どんぐり』です。

物理学者の寺田寅彦は随筆家としてその名を知られています。
この作品は漱石の推薦により明治三十八年四月の「ホトトギス」に掲載されました。
随筆などという筆にまかせて書いたものとは違う、いい作品だと思います。

今回は頁数をふやし窮屈にならないよう心がけました。
両面にまず枠を刷り、次に文字を印刷し、なかなか骨の折れる仕事でした。
裁断面の不揃いを解消するため手動の断裁機を買いましたが
まったく期待はずれで結局ぜんぶ手で切りました。
あまり美しくはありませんが今のところこれが限界です。
何冊作っても課題が見つかるばかりで技術の蓄積は皆無です。
しかし作品は名作です。ぜひお読みください。
※ 二色印刷は手間がかかります。でもなんかこれでないと駄目な気がして。
雨[1]

ぢゃむ 杉本昭生 活版小本】 {文字壹凜 まとめ

【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん、活版小本 ギョーム・アポリネール『アムステルダムの水夫』を製作・発表

なみ4[1][杉本昭生]
今回はギョーム・アポリーネール「アムステルダムの水夫」 です。
アポリネール(1880-1918)は二〇世紀初頭のパリで、前衛芸術の旗手として
詩、小説、演劇に縦横の活躍をみせ、近代詩から現代詩への方向を決定づけた
才人といわれています。

98118631.v1315706543[1]死の直後に公刊された『カリグラム』(Calligrames,  1918年)では
文字で絵を描くという斬新な手法で高い評価を得ました。
「アムステルダムの水夫」は港に下りた水夫が殺人事件に巻き込まれる話です。

体裁はごらんの通り、本文は色紙を使うこと、表紙は黒にすることなど
あらかじめ決めて作りましたが、やはり出来上がりには不満が残ります。
これは自分の能力に対する不満なので、とうしようもないのですが。
IMG_2478[1] IMG_2486[1] IMG_2480[1] IMG_2482[1]──────────────
京都の吉田山のほとり、ちいさな活版印刷機で小型本の製作をつづけている
ぢゃむ 杉本昭生さんは、製作のピッチも順調ですし、そのブログ
<活版小本 コホン>も意欲的な更新が継続しています。
<活版小本>の特徴のひとつに、ていねいな書体選択があります。
テクストのテーマごとに、装本・用紙選択・書体選択と、すみずみまでこまやかな
配慮をこらす姿勢に好感をもちます。
ぜひともリンク先で、できたら拡大画面で本文ページをご覧ください。
こんな小さな図書なのに、そのこころ配りの贅におどろきます。
皆さまのご愛読と、ブログへのご訪問をおすすめいたします。    [やつがれ wrote]
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