タグ別アーカイブ: 活版小本

【会員情報】ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本 新作 ── 魯迅『孔乙己』- こういっき -

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{ ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 一筆箋 }

魯迅の短編「孔乙己(こういっき)」です。
「狂人日記」の一年後に発表されたこの作品は、魯迅の実質的なデビュー作ともいわれています。
酒好きのエリート孔乙己は科挙の試験に落ち続け、生活も破綻し、盗みを働くように
なっていました。しばらく酒場に現れないので、店主が周りに訊いてみると、
盗みに入った家の者に見つかり、殴られた上両脚を折られたということでした……
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よく行くリサイクルシEツプが古い着物の取扱いを止めたので
表紙の布を選ぶのに時間がかかりました。
しかたなく手芸店に行きましたが、ほとんど女性しか出入りしない場所で、
爺がうろうろ布を探すさまは、どう見ても気持ち悪い光景だったでしょう。
いやはや、未だかつてあんなに緊張したことはありませんでした。
ぜひご一読ください。
かしこまる

【 詳 細 : ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 】  { 活版アラカルト 活版小本 既出まとめ 

【会員情報】ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ── 佐藤春夫『あじさい』

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{ ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 一筆箋 }

佐藤春夫の『あじさい』です。
これぐらいの文章(二千文字たらず)だと、
当り障りのない身辺雑記がほとんどですが、
この作品はオチもあり、物語になっているように思いました。
読みづらく回りくとい言い回しはいつもとおりですが。

表紙の布は実家にあった母の着物を使って作りました。
函は花の色をイメージして淡紫の和紙にしました。
自分に画力があればあじさいの絵でも描くところですが
いまさらそんなことをやりだすと泥沼にはまりそうなので
今回はやめました。
ご一読いただければ幸いです。

初さくら

【 詳細 : ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 】 { 活版アラカルト 活版小本 既出まとめ 

【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん 活版小本新作 ── 松尾芭蕉『嵯峨日記』紹介+α

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芭蕉『嵯峨日記』を作りました。
元禄四年四月十八日より五月四日までの十八日間、
嵯峨にある去来の落柿舎に滞在した時の日記です。
独り閑雅を楽しみたいと願う芭蕉ですが、いろいろな人が出入りし
隠遁生活とは程遠いものだったようです。

最初は並製の軽便な本にしようと思っていましたが安っぽくてやめました。
やはり上製本でなければと作りなおしましたが、手触りがゴツゴツして不満でした。
布装ならもっとやさしい感触になるのではと挑戦しましたが。これも結局頓挫しました。
他人なら間違いなく「どうしたいの! もう勝手にして!」といわれているでしょう。
上製でも並製でもない布製のやわらかい本を目指しましたが中途半端です。
手触りだけでいえば思っていたものに近いのですが……
それにしても反省の多い一冊でした。
そそのかす

【 詳細  ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 】 { 文字壹凜Summary }
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活版小本
次の本が出来るまで その86 ―― 2018年1月30日

去年父親が亡くなったので、年賀状は出さず年が明けてから寒中見舞いを作りました。
今さらという気もしますが場つなぎに掲載いたします[杉本昭生]。
杉本昭生さん寒中見舞い* 白露とは水のこと。

【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん 活版小本新作 フランツ・カフカ『あるじの気がかり』

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フランツ・カフカ 『あるじの気がかり』。
気になるのは「オドラデク」です。
「オドラデク」は星形の糸巻のように見えます。
だが、それは単に糸巻であるだけではなく、

星形のまんなかから小さな一本の棒が突き出していて、
この小さな棒と直角にもう一本の棒がついています。
……こんなものが時〻家に来るというお話です。
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今回はボール紙のかわりに真鍮板を使いました。
表紙を黒のミラーコートに印刷したら、
顔のべ夕の部分に埃が吸着して取れなくなりました。

指先で触ると印刷が剥がれとうしようもなく
乾くまで一週問ほど放って置きましたが

埃もくっついたままで、気のせいかいまだに湿った感触があり、
こわごわ触っています。

真鍮板に貼る時にも気つかずに触れて、
カフカの顔がずいふん汚れてしまいました。

製本も堅牢ではありませんし、金属の角で怪我などされぬよう、
取扱いにはくれぐれもご注意ください。
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{新宿餘談}活版小本一年ぶりのカフカです。ウ~ン凄い!
文字壹凜 活版小本まとめ

【会員情報】ぢゃむ 杉本昭生さん活版小本 石川啄木『第十八號室』より+悲しき玩具抜粋製作発表 ご尊顔を拝せる{文字壹凜 杉本昭生過去ログ}一挙紹介

sikibuIMG_2521[1] IMG_2513[1] IMG_2515[1]京都市内吉田山のほとり、ちいさな活版印刷機で小型本の製作をつづけるぢゃむ 杉本昭生さん。
今回の製作は、石川啄木の『第十八號室より』です。後半には「悲しき玩具」から、病気と困窮を歌った何首かが掲載されています。

ブログ「活版小本」も意欲的な更新が継続しています。
「活版小本」の特徴のひとつに、ていねいな書体選択、手抜きの無い文字組版があります。
装本や用紙選択だけでなく、すみずみまでこまやかな配慮をこらす姿勢に好感をもちます。
リンク先でぜひとも拡大画面で本文ページをご覧ください。
ぢゃむ 杉本昭生 活版小本

[杉本昭生 一筆箋]
活版小本の三十何冊目は石川啄木の『第十八號室より』です。

お腹が膨らんできた啄木は病院で慢性腹膜炎と診断されます。
しかしその診断をなかなか受け入れられません……。
大きな病気を宣告された時の患者の混乱した気持が文章から伝わってきます。
後半は「悲しき玩具」から病気と困窮を歌った何首かを掲載しました。

本文書体 Oradano mincho を使って不自然にならない作家を考えた時、
啄木と鏡花、藤村ぐらいしか思い浮かばず、
この機会に啄木の作品を一冊作ろうと決めました。
いつも思うことですか、今度こそ丁寧に作ろうと取り組みましたが
そんな気持がまったく空回りしたお粗末な仕上がりです。
次回は気に入った作品なので、もう少しマシなものにしたいと思っています。
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{新宿餘談}
この{活版 à la carte}コーナーとつよい関連性をもって誕生した、縦組みブログ{文字壹凜 もじいちりん}がスタートからちょうど一年を迎えました。
小型本に高度な組版術と書体選択眼を発揮する杉本氏は、このふたつのコーナーにはしばしば登場されています。
今回は過去一年間のログが一望でき、杉本さんの写真も掲載されている{文字壹凜}から、リンク先にて、「ぢゃむ 杉本昭生過去ログ」を一挙ご紹介いたします。

【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん、活版小本 夏目漱石『硝子戸の中』を製作・発表

kagawa[1]京都の吉田山のほとり、ちいさな活版印刷機で小型本の製作をつづけるぢゃむ 杉本昭生さん。
今回の製作は、夏目漱石『硝子戸の中』。タイトルは「硝子戸のうち」と読むそうです。
ブログ「活版小本」も意欲的な更新が継続しています。
「活版小本」の特徴のひとつに、ていねいな書体選択があります。
装本や用紙選択だけでなく、すみずみまでこまやかな配慮をこらす姿勢に好感をもちます。
リンク先でぜひとも拡大画面で本文ページをご覧ください。


ぢゃむ 杉本昭生 活版小本

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【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん、活版小本 ギョーム・アポリネール『アムステルダムの水夫』を製作・発表

なみ4[1][杉本昭生]
今回はギョーム・アポリーネール「アムステルダムの水夫」 です。
アポリネール(1880-1918)は二〇世紀初頭のパリで、前衛芸術の旗手として
詩、小説、演劇に縦横の活躍をみせ、近代詩から現代詩への方向を決定づけた
才人といわれています。

98118631.v1315706543[1]死の直後に公刊された『カリグラム』(Calligrames,  1918年)では
文字で絵を描くという斬新な手法で高い評価を得ました。
「アムステルダムの水夫」は港に下りた水夫が殺人事件に巻き込まれる話です。

体裁はごらんの通り、本文は色紙を使うこと、表紙は黒にすることなど
あらかじめ決めて作りましたが、やはり出来上がりには不満が残ります。
これは自分の能力に対する不満なので、とうしようもないのですが。
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京都の吉田山のほとり、ちいさな活版印刷機で小型本の製作をつづけている
ぢゃむ 杉本昭生さんは、製作のピッチも順調ですし、そのブログ
<活版小本 コホン>も意欲的な更新が継続しています。
<活版小本>の特徴のひとつに、ていねいな書体選択があります。
テクストのテーマごとに、装本・用紙選択・書体選択と、すみずみまでこまやかな
配慮をこらす姿勢に好感をもちます。
ぜひともリンク先で、できたら拡大画面で本文ページをご覧ください。
こんな小さな図書なのに、そのこころ配りの贅におどろきます。
皆さまのご愛読と、ブログへのご訪問をおすすめいたします。    [やつがれ wrote]
ブログ<活版小本 コホン>のアドレスはこちらです。

 【 ぢゃむ 杉本昭生  活版小本 】

【会員情報】 『名家遺詠集』 京都活版小本、ぢやむ杉本昭生氏が新作発表

活版小本
ともすると小型本の製作者は、なによりも小型であることと、装本のおもしろさにこだわりがつよいあまり、そのテキストが、読書のための 判別性 Legibility と、可読性 Readability を 失っていることがみられます。

ところがぢやむ 杉本昭生さんは、もともと読書家ですので、たとえ小型本であろうと、テキストを厳選し、みずからも読み、読者にも読んでもらおうというつよい意志を感じます。
これからゆっくりご覧ください。 なおこのページはスライドショーでもお楽しみいただけます。
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『名家遺詠集』をつくりました。
「人の将に死なんとする其の言や善し」などといわれ、死を前にしたひとのことばは
おろそかにできないものです。(中略)
これはまったく自分のためにつくった本で、なるべく簡単に仕上げようとおもいました。
そんなとき、和とじは勝手のいい製本方法だとおもいました。
みなさまも、いよいよというときには、ぜひ本書を参考に
末代まで語り継がれる、とっておきの辞世をおつくりください。  合掌  [杉本昭生]

【詳細:ぢやむ 杉本昭生 活版小本

{新宿餘談}
「辞世を集めた本は以前から多く出版されていますが、武士や軍人の勇ましい歌が多く、なかなかこころに響くというものではございません」
杉本昭生氏はこう述べて、むしろ無名のひとの遺詠をまとめているが、やつがれは、よりとりあげられることのすくない、印刷・出版人をおってきた。
遺詠とはいえないが、谷中永久寺にある酔狂人・仮名垣魯文の墓標に刻まれた、自筆とされる「遺言 / 遺言本来空 財産無一物 假名垣魯文」は、書風といい、あっぱれなひらきなおりといい、おもしろいものだ。
仮名垣魯文墓標 法名:佛骨庵獨魯草文 仮名垣魯文遺言S秀英舎(現DNP)の創業者・佐久間貞一には、『佐久間貞一小伝』、『追懐録』のふたつの追悼集がのこされているが、そこには、
「裸で生まれてきたのだから、裸で死ぬさ」
という佐久間貞一の「つぶやき」が、子弟ともいえる庭契会の会員によって記録されている。(『秀英体研究』片塩、p.611)。
やつがれ、なにもいわず、なにものこさず、かくありたいとおもう次第である。

【会員情報】 フランツ・カフカ 『道理の前で』 (別題 『掟の門前』)京都活版小本 ぢやむ 杉本昭生氏が新作発表

チェコ プラハのひと、フランツ・カフカ(Franz Kafka, 1883-1924)は、『審判』 『変身』 『城』 など、一度読んだら忘れられない、独自の小説世界をつくりあげた、20世紀前半を代表する作家です。

ところでこのフランツ・カフカ『道理の前で』は活版小本としては失敗です。
マッチ箱に入れることを前提につくりましたが、途中で気持ちが離れてしまいました。

案の定、紙がかたくてページが開きにくい、化粧断ちをしていないので手触りがわるい、印刷がつぶれたりかすれたりしている、紙面がゆがんでいる。
タイトルが大文字ばかりはおかしいなど欠点の目立つできあがりです。
そしてこのサイズは自分のつくりたい本の大きさではないことを確認しました。
悪しき作例となりました。
【 詳細:ぢやむ 杉本昭生 活版小本
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{ 新 宿 餘 談 }
ぢやむ杉本昭生氏の新作をご紹介した。
いつも送付される際に「一筆箋」のような文章が附属されているが、今回はめずらしくこぼしが多かった。
たしかに「活版小本」の杉本昭生氏がマッチ箱サイズをねらっても、あまり収穫がないような気はした。 このテはほかの豆本製作者に任せてもよいかもしれない。

ところで、やつがれ フランツ・カフカ(1883-1924)のひそかなファン。
したがって4 ページ 一丁、15丁60 ページ、前後見返しつき、前扉別紙差し込みからなるマッチ箱サイズの上製本、「活版小本 カフカ『道理の前で』」をうれしく拝読させていただいた。
そこでフトおもいだしたのは、この作品はチェコ プラハの「黄金の小径」で執筆されたのではないかというおぼろな記憶だった。

2013年晩夏、三泊四日の強行軍でプラハにいった。その報告は「花筏 朗文堂好日録038-喫煙ボヘミアン、プラハへゆく-01 プロローグ」にあるが、ここには序章があるだけでその後の記述はない。
すなわちやつがれが情報過多に陥り、ひとさまにプラハの紹介をすることができなかったというのが苦しいいいわけになる。
2013年のプラハ行きはロシアの航空会社「アエロフロート航空」で、モスクワ経由でいった。
このときの収穫はすくなくなかったが、ともかく魅力がおおすぎて、未整理なままやつがれの胸裡の片隅にある。
2014年に再挑戦をこころみたが、円安のためもあって旅費が高騰していた。

プラハにはいま、アダナ・プレス倶楽部会員・博士山崎が研究のため長期滞在中である。
ノー学部と博士山崎は情報交換が盛んである。したがってどうやらもう一度プラハにいく機会がありそうな昨今である。
プラハの一隅にはカフカの生家があり、そこはちいさな博物館となって公開こされているという。そしてカフカの墓は、その近く「ユダヤ人墓地」にあるという。
前回はユダヤ街にいく時間がなかった。再訪を得たらぜひともたずねたいとおもう。

すなわち、畏友杉本昭生が製作し、失敗作と自嘲した一冊の活版小本が契機となって、プラハ行きを決断することになったということである。
プラハ絵はがき01 プラハ絵はがき02 プラハ絵はがき03 プラハ絵はがき04プラハ市販の長尺絵はがきより。下から二段目、プラハ城脇、かつて錬金術士が居住したことから「黄金の小径」と呼ばれる長屋街。いまはみやげ店がならぶ観光スポット。左手の青い22番の建物は、カフカがここで『城』などの作品を執筆していたとされる。