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【平野富二の会】『通運丸開業広告』から|石川島平野造船所が最初に建造した「通運丸」シリーズ|東京築地活版製造所五号かな活字に影響をあたえた「宮城梅素-玄魚」

本項は、近日発行『平野号 平野富二生誕の地碑建立の記録』(編集:「平野富二生誕の地」碑建立有志の会、発行:平野富二の会、B 5 版、ソフトカバー、384頁、図版多数)より。
その抜粋紹介の記事として、「平野富二の会」のウエブサイトに掲載されたものを転載した。
表紙出力『平野号 平野富二生誕の地碑建立の記録』表紙Ⅰ

表紙の画像は以下より採取した。
◉ 右上:最初期の通運丸 ──『郵便報知新聞』(明治10年5月26日)掲載広告
◉ 右下・左上:『東京築地活版製造所 活版見本』(明治36年 株式会社東京築地活版製造所)電気版図版から採録

◉ 左下:『BOOK OF SPECIMENS MOTOGI & HIRANO』(明治10年 長崎新塾出張活版製造所 平野富二)アルビオン型手引き活版印刷機
◉ 中心部の図案:『本木號』(大阪印刷界 明治45年6月17日発行)を参考とした。

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【 石川島平野造船所 ── 現:石川島資料館 】

石川島資料館入口石 川 島 資 料 館
[ 所在地:中央区佃1丁目11─8 ピアウエストスクエア1階 ── もと佃島54番地 ]
digidepo_847164_PDF-6東京石川島造船所工場鳥瞰図『東京石川島造船所製品図集』
(東京石川島造船所、明治36年12月、国立国会図書館蔵)

石川島資料館の地は、平野富二が明治9(1876)年10月に石川島平野造船所を開設したところで、昭和54(1979)年に閉鎖されるまでの103年間にわたって、船舶・機械・鉄鋼物の製造工場であった。この地は嘉永6(1853)年、水戸藩が幕府のために大型洋式帆走軍艦「旭丸」を建造するための造船所を開設した所で、これをもって石川島造船所(現:I H I )開設の起点としている。

石川島資料館は、このような長い歴史を持つ石川島造船所の歴史を紹介するとともに、それと深い関わりを持つ石川島・佃島の歴史と文化を紹介する場として開設された。

web用_200090 300dpi 通運丸開業広告 印刷調整 軽量化-1『通運丸開業広告引札』明治10(1877)年
山崎年信 画 宮城梅素-玄魚 傭書 物流博物館所蔵

『通運丸開業広告引札』(物流博物館所蔵)には、平野富二が石川島平野造船所を開いて最初期に建造した「通運丸」が描かれている。
平野富二が石川島平野造船所を開いて最初に建造した船は、内国通運会社(明治5年に設立された陸運元会社が、明治8年に内国通運会社と改称。現:日本通運株式会社)から請け負った「通運丸」シリーズだった。

内国通運会社は、政府指導で組織化された陸運会社であったが、内陸部に通じる河川利用の汽船業にも進出した。
隅田川筋から小名木川・中川・江戸川を経由して利根川筋を小型蒸気船で運行する計画を立て、明治9(1876)年10月末に開設したばかりの石川島平野造船所に、蒸気船新造4隻と改造1隻を依頼した。

明治10(1877)年1月から4月にかけて、相次いで5隻の蒸気船が完成した。新造船は第二通運丸から第五通運丸まで順次命名された。第一通運丸と命名された改造船は、前年に横浜製鉄所で建造された船艇であったが、船体のバランスが悪く、石川島平野造船所で大改造を行ったものである。
同年5月1日から第一、第二通運丸により東京と栃木県を結ぶ航路の毎日往復運航が開始され、盛況を博した。

「通運丸」と命名された小型蒸気船は第五六号まで記録されており、昭和23年代まで運行されていた。

この絵図に描かれた通運丸が第何番船かを特定することはできない。しかし宣伝文から推察すると、利根川下流の木下や銚子まで運行していることから、すでに第五通運丸までが就航していると考えられる。
したがって、石川島平野造船所で納入した五隻の通運丸のいずれかが対象になる。後年、船体の外輪側面に大きく「通運丸」の船名が表示されるが、初期には、この航路は内国通運会社の独占だったため標示されていない。

津運丸帆柱付き帆柱のある通運丸を描いた「内国通運会社」新聞広告。当初は一本の帆柱を備えていた。
『郵便報知新聞』明治10年5月26日に掲載。(『平野富二伝』古谷昌二 著から引用)

web用_200097 300dpi 東京両国通運会社川蒸気往復盛栄真景之図 野沢定吉画-1 軽量化船体の外輪側面に大きく船名が表示された通運丸
『東京両国通運会社川蒸気往復盛栄真景之図』明治10年代
野沢定吉 画 物流博物館所蔵

上掲の『通運丸開業広告引札』明治10(1877)年は、画は山崎年信、傭書は宮城梅素ー玄魚の筆になる。以下に詳細を掲載した。

【山崎年信 ── 初代】(1857─1886)
明治時代の日本画家。安政四年うまれ。歌川派の月岡芳年(1839─92)に浮世絵をまなび、稲野年恒、水野年方、右田年英とともに芳年門下の四天王といわれた。新聞の挿絵、錦絵などをえがいた。明治19年没、享年30。江戸出身。通称は信次郎。別号に仙斎、扶桑園など。

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「傭書家: 宮 城 梅 素-玄 魚 」

通運丸開業広告引札』の撰並びに傭書は、宮城梅素・玄魚(みやぎ・ばいそーげんぎょ)によるものである。以下は錦絵に書かれた文章の釈読である。[釈読:古谷昌二]

廣 告

明治の美代日に開け。月に進みて
盛んなれば。實に民種の幸をやいはん。
國を冨すも亦。國産の増殖に在て。
物貨運輸。人民往復。自在の策を起
にしかず。されど時間の緩急は。交際
上の損益に關する事。今更論をま
たざるなり。爰に當社の開業は。郵
便御用を専務とし。物貨衆庶の乗
客に。弁利を兼て良製迅速。蒸気
数艘を製造なし。武總の大河と聞たる。
利根川筋を逆登り。東は銚子木下
や。西は栗橋上州路。日夜わかたず
往復は。上等下等の室をわけ。
發着の時間は別紙に表し。少も
遲〻なく。飛行輕便第一に。三千
余万の諸兄たち。御便利よろしと
思したまはゞ 皇國に報ふ九牛
の一毛社中の素志を憐み給ひて。
數の宝に入船は。出船もつきぬ
濱町。一新に出張を設けたる。内國
通運會社の開業より試み旁〻
御乗船を。江湖の諸君に伏て希ふ

      傭書の 序  梅素記

梅素_画像合成_02『通運丸開業広告引札』明治10(1877)年の錦絵の広告文を釈読に置き換えたもの

宮城梅素-玄魚(1817─1880)は、幕末から明治時代の経師・戯作者・傭書家・図案家である。
文化14年江戸うまれ。浅草の骨董商ではたらき、のち父の経師職を手つだう。模様のひな形、看板の意匠が好評で意匠を専門とした。
條野傳平・仮名垣魯文・落合芳幾らの粋人仲間の中核として活動。清水卯三郎がパリ万博に随行したおり玄魚の版下によってパリで活字を鋳造して名刺を製作したとされる。

明治一三年二月七日没。享年六四。姓は宮城。名は喜三郎。号:梅素(ばいそ)玄魚・田キサ・呂成・水仙子・小井居・蝌蚪子-おたまじゃくし-など。
江戸刊本の伝統を継承した玄魚の書風は東京築地活版製造所の五号かな活字に昇華されて、こんにちの活字かな書体にも影響を及ぼしている。

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東京築地活版製造所 五号かな活字(平野ホール所蔵)
『BOOK OF SPECIMENS MOTOGI & HIRANO』(明治10年 長崎新塾出張活版製造所)

2013平野富二伝記念苔掃会-10一恵斎芳幾(落合芳幾)が書いた晩年の宮城梅素-玄魚
『芳潭雑誌』より

【 詳細: 平野富二の会 】

【展覧会】武蔵野美術大学 美術館・図書館|武蔵野美術大学90周年記念|「清水多嘉示資料展-石膏原型の全てと戦後資料(第Ⅲ期)」-6月16日

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武蔵野美術大学 美術館・図書館
武蔵野美術大学90周年記念
「清水多嘉示資料展-石膏原型の全てと戦後資料(第Ⅲ期)」
会  期  2019年5月20日[月]-6月16日[日]
時  間  10:00-18:00  * 土曜日、特別開館日は17:00閉館
休  館  日  日曜日 * 6月16日[日]は特別開館
入  館  料  無 料

会  場  武蔵野美術大学美術館 展示室 1・2、アトリウム 1
主  催  武蔵野美術大学 美術館・図書館
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彫刻家・清水多嘉示(1897-1981)により1923年の渡仏から没する前年1980年までに制作され、現在遺されている全石膏原型約250点と戦後期の作品、文書、写真、印刷物などの多量の資料を展示し、共同研究「清水多嘉示の美術教育と武蔵野美術学校」の集大成として、清水多嘉示の制作活動と美術教育を含む広範な社会活動への関与と業績を解明・検証する。

【 詳細: 武蔵野美術大学 美術館・図書館

【展覧会】武蔵野美術大学 美術館・図書館|内⽥あぐり ── 化身、あるいは残丘|5月20日-6月16日

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内⽥あぐり ── 化身、あるいは残丘
会  期  2019年5月20日[月]-6月16日[日]
時  間  10:00-18:00  * 土曜日、特別開館日は17:00閉館
休  館  日  日曜日 * 6月16日[日]は特別開館
入  館  料     無 料
会  場  武蔵野美術大学美術館 展示室 3・4、アトリウム 2
主  催  武蔵野美術大学 美術館・図書館
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絵画において⼈間の存在を示すものとは何かという根源的な問題を探るなかで、新たな⽇本画の可能性を提示してきた内田あぐり作品。

本展では、身体をめぐる絵画考から展示空間へと立ち現れた⼀つの残丘ともよべる新作を核に、人物の情念を発する濃密な初期の具象作、抽象表現により⾝体のリアリティに⾁迫した2000年前後の大作、そして空間を圧倒する世界観を放つ近年の大型作品などを展示し、その絵画表現に接近する。

【 詳細: 武蔵野美術大学 美術館・図書館

【展覧会】千代田区立図書文化館 特別展|アートになった猫たち展 ~ 今も昔もねこが好き ~|4月26日-6月23日|終了

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千代田区立図書文化館
特別展 アートになった猫たち展 ~ 今も昔もねこが好き ~

会  期  426日[金]-623日[日]
休  館  日  6月17日[月]

観覧時間  月曜日-木曜日:午前10時-午後7時、金曜日:午前10時-午後8時、
      土曜日:午前10時-午後7時、
      日曜日・祝日:午前10時-午後5時 * 入室は閉室の30分前まで
会  場  千代田区立日比谷図書文化館 1階特別展示室
  覧  料  一般300円、大学・高校生200
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日比谷図書文化館では「アートになった猫たち展」を開催いたします。現在、空前の猫ブームといわれていますが、200年も前の江戸時代から猫ブームは存在していました。
江戸の町では、愛猫家の絵師・国芳が人気を博し、多様な猫の姿が浮世絵に描かれました。愛らしく、時に神秘的な猫は、美人画や戯画に登場し、女性と戯れる猫、踊る猫、芸をする猫、猫顔で人気役者になりきって愛嬌たっぷりの姿を披露する猫など、江戸の庶民に広く親しまれてきました。
また近代では、竹久夢二、藤田嗣治、水野年方、海外ではビアズリーなどが自らの作品に好んで猫を描き、多くの人々を魅了してきました。

本展は、本展は、浮世絵蒐集家・中右瑛氏が長年にわたり蒐集した浮世絵と近代美人画のコレクションを中心に、暮らしの中に描かれた猫や、猫を愛した芸術家たちの作品約100点(展示替えを含む)を紹介するものです。 人々を惹きつけてやまない猫たちと、人と猫の深い関わりをお楽しみください。

[ 詳細: 日比谷区立図書文化館

【展覧会】ギンザ・グラフィック・ギャラリー第373回企画展|井上嗣也展 Beginnings|05月14日-06月26日

20190426154558_00001 20190426154558_00002ギンザ・グラフィック・ギャラリー第373回企画展
井上嗣也展 Beginnings
会  期  2019年05月14日[火]-06月26日[水]
会  場  ギンザ・グラフィック・ギャラリー
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ギンザ・グラフィック・ギャラリー( g g g )の5・6月は、「井上嗣也展 Beginnings」を開催いたします。
“ 写真とタイポグラフィの斬新なデザイン ”、“ 写真が生きるための魔法のデザイン ”、それらを意のままに操り、鋭い感性の衝動性を示し続ける井上嗣也。  80年代から90年代、そして現在に至るまで、その凛としたアバンギャルドなクリエイティブに一寸のブレもありません。
g g g での初の個展から約10年。その後も広告と出版のふたつの分野において、井上の飽くなき好奇心と冒険心から生み出されてきた作品は、ますます進化と純化の一途をたどり続けています。

本展では、太陽、月、光、水、油、植物等の写真を駆使し、架空の宇宙を創出した「The Burning Heaven」、緊張感あふれる中にもユーモアと遊び心を忍ばせた「Happy Time」などの新作ポスターシリーズを中心に、数ある傑作から自選した代表作。そして、近年ますます拡がりをみせているファッション界とのコラボレーションによるポスターやブックデザインを一堂にご紹介します。
作品から放たれる、息をのむばかりの圧倒的オーラ。そこに潜む、未知の感覚を感じ取ってください。
井上嗣也の新たな旅のはじまりです。

【 詳細: g g g ギャラリー

【公演】森 郁 男さんゟ|薩摩琵琶 正 絃 会|琵琶演奏大会|2019年5月11日

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薩摩琵琶 正 絃 会
琵琶演奏大会
日  時  2019年5月11日[土] 正午開演
会  場  日本橋社会教育会館ホール

      日本橋社会教育会館(日本橋小学校等複合施設8階)
      〒103-0013 中央区日本橋人形町一丁目1番17号
      TEL 03-3669-2102・2794
入  場  料  無 料

主  催  薩摩琵琶 正 絃 会
      〒248-0007 鎌倉市大町3-20-11
      TEL・FAX  0467-25-1420
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日頃は、私ども正絃会に対しまして、力強いご支援と、あたたかいご声援を賜り誠にありがとうございます。
本会では、数百年来、鹿児島で培われてきた薩摩琵琶および中世芸能としての平曲という二つの琵琶楽の伝統を守り、師伝の芸風を次の世代に伝えていくことを目標に、毎月の定例演奏会を継続しております。

おかげ様にて近年は琵琶楽に興味を持つ若い力も加わり、会員一同その研鑚に励んでおります。その日頃の成果を多くの皆様にお聞きいただき、ご批評を賜りたいと存じまして今年も演奏大会を企画いたしました。
出演者一同、元気な演奏をご披露致したいと存じますので、どうぞお誘い合わせの上、ご来場賜りますようよろしくお願い申し上げます。

【 森郁男さんからのお便り + 薩摩琵琶とは 】

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【展覧会】瓜生美雪個展|Miyuki Uryuu Exhibition|「そのむこう」|北洋の館|5月1日-30日

20190418123949_00001 20190418123949_00002瓜生美雪個展
Miyuki Uryuu Exhibition
「そのむこう」
期  間  2019年05月01日[水]-30日[木] * 火曜日定休
会  場  北洋の館
      938-0084 富山県黒部市生地芦崎330 電話 0765-0138
時  間  10:00-18:00 * 01日は11:30ゟ 30日は15:00迄
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雨あがりの景色は、まるでたくさん泣いた後のように
すっきりときれいに光っている。

たくさん泣いたあと見える世界は、きっと眼球が掃除されて、
それまでよりもっときれいに見えているんだ。そう信じたい。
そんなことをぼんやり思いながら、描いたり刷ったりしていました。
四年ぶりの個展です。 [瓜生美雪]

【展覧会】目黒区美術館|京都国立近代美術館蔵 世紀末ウィーンのグラフィック ─ デザインそして生活の刷新にむけて|’19年4月13日-6月9日|終了

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目黒区美術館
京都国立近代美術館蔵 世紀末ウィーンのグラフィック
── デザインそして生活の刷新にむけて
会  期  2019年4月13日[土]-6月9日[日]
時  間  10:00-18:00 * 入館は17:30まで
休  館  日  月曜日  * GW期間中の開閉館日はリンク先参照
観  覧  料  一般 800円、大高生・65歳以上 600円、小中生 無 料
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目黒区美術館は1987 年の開館以来、近現代の美術だけでなく、生活美術やデザイン、建築といった分野にも着目し、企画展やワークショップの活動に反映させてきました。
その中で、2009 年に開催した『上野伊三郎+リチ コレクション展 ── ウィーンから京都へ、建築から工芸へ』は、京都国立近代美術館のご協力により、同館所蔵の、1920 年代にウィーン分離派のヨーゼフ・ホフマンに建築を学んだ上野伊三郎とウィーン工房でデザイナーとして活躍したフェリーツェ・リックス(上野リチ)夫妻の作品・資料群を一堂に紹介したものでした。 

2015 年、京都国立近代美術館の収蔵品には、新たに世紀末ウィーンの優れたグラフィック作品がまとまった形で加わりました。当時のウィーンで生み出された版画や挿絵本とその原画、装丁、壁画の原画など、多様な表現による作品群で、アパレル会社キャビンの創業者、平明 暘(ひらあき いずる)氏が蒐集したコレクションです。 そして2019 年 1 月から2 月にかけて、京都国立近代美術館で同コレクションの全貌が紹介されました。これに続き、今春、目黒区美術館で『世紀末ウィーンのグラフィック』展を開催いたします。

1897年のウィーン分離派設立から1914 年の第一次世界大戦勃発まで、世紀末から二十世紀初頭のウィーンでは、グスタフ・クリムトやヨーゼフ・ホフマンらを中心に、新しい時代に相応しい芸術、そしてデザインの在り方が模索され、絵画、彫刻、建築をはじめ数多くの素晴らしい作品が生まれました。中でもグラフィックの分野は、印刷技術の発展や雑誌メディアの隆盛を背景にめざましく発展し、新しい芸術の動向を人々に伝え、社会に浸透させる上でも重要な役割を担いました。

本展は、京都国立近代美術館所蔵の約 300 件にのぼる膨大なグラフィック作品のコレクションを中心に、同じく平明氏旧蔵のリヒャルト・ルクシュによる石膏彫像と貴重なアドルフ・ロースの家具一式を加え、世紀末ウィーンの息吹と魅力をお伝えします。

【 詳細: 目黒美術館
[ 関連: 活版アラカルト[展示]チェコセンター「プラハの機能主義建築 ─ 伝統と現代建築への影響」2018年 終了企画

【展覧会】根津美術館 特別展|尾形光琳の燕子花図 寿ぎの江戸絵画|’19年4月13日-5月12日|終了

ogata_korins_irises根津美術館 特別展
尾形光琳の燕子花図
寿ぎの江戸絵画
2019年4月13日[土]-5月12日[日
休  館  日  毎週月曜日、4月15日[月]、22日[月]、5月7日[火]
開館時間  午前10時-午後5時  * 入館は午後4時30分まで
      夜間開館 5月8日[水]-12日[日] 午後7時まで開館  * 入館は午後6時30分まで
入  場  料       一般1300円 学生1000円 中学生以下は無料
会  場  根津美術館 展示室 1・2
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尾形光琳(1658-1716)による国宝「燕子花図屏風」は、草花図であると同時に『伊勢物語』の一節、八橋の場面に基づくともいわれます。さらに八橋は古来、和歌に詠われる「名所」でした。そうした多面性にちなみ、このたびの「燕子花図屏風」の展示は、三章で構成します。

第一章の作品の題材は、江戸時代の人々が憧れた公家風俗や王朝文学です。
つづく第二章で集める草花図も、江戸初期の宮廷周辺における草花ブームに端を発しています。
そして第三章は、祇園祭に沸く京の都や、社寺参詣や物見遊山の人々でにぎわう各地の名所を描いた作品。平和な時代を寿ぐ江戸時代の絵画の数々をお楽しみいただきます。

【 詳細: 根津美術館 】 { 活版アラカルトまとめ

【Information Release 14】「平野富二生誕の地」碑建立有志の会|日本二十六聖人記念館:宮田和夫会員ゟ|長崎直近情報-碑前三の堀の櫻が満開に!

DSC_0681 「平野富二生誕の地」碑 正面

「平野富二生誕の地」碑建立有志の会 ── 皆さま
[日本二十六聖人記念館 宮田和夫]

ご無沙汰しております。
本日〔4月9日〕「平野富二生誕の地」記念碑の様子を見にいきました。
碑の表面側からみると、真正面に、なんと満開の桜が!
富二さんが毎年ちょうどこの季節に、満開の桜を愛でることができるようになった
気がしまして、
この場所に設置してよかったな、とはじめて思えました。

(撮影ポイントの制約で、添付写真では分かりにくいかもしれません)

長崎は風がつよく、ことしは春の黄砂? もありました。
碑の文字がかなり深く、太く彫り込まれている関係もありますが、

大切な碑文に土ぼこりが溜まりやすいことが分かりました。
ときどきふき取り作業にあたりたいと思います。

また今日は渋沢栄一の肖像が新一万円札に採用とのニュースもあり、
感慨深い一日となりました。

平野富二の会 ── 皆さまお元気でご活躍ください。[宮田和夫]
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「平野富二生誕の地」碑は2018年11月24日、長崎県勤労福祉会館
(長崎県長崎市桜町9 ― 6)脇、長崎市の歩道に設置されました。
碑は江戸時代の三の堀跡の方向をむいていますが、ここが櫻の名所だとは
知りませんでした。

宮田会員の写真で、前方突き当たり、満開の櫻並木を左手に曲がると、
そこから信号ひとつ、三分ほどで長崎奉行所立山役所(現:長崎歴史文化博物館)裏門です。
すなわち、安政4年-1857-数えて12歳の矢次富次郎少年 ── のちの平野富二が「特例をもって」
当時のならいで、家僕(中間)ひとりをともなって長崎奉行社へ勤務した「通勤路」にあたります。表門にまわっても七-八分ほど、どうやら富次郎少年の運動不足はいなめなかったようです。

長崎訪問の折は、ぜひともここにお立ち寄りいただき、平野富二の「通勤路」を追体験していただき、またできましたら碑周辺の清拭にあたっていただけたらと勝手なお願いを。
そして宮田さん、いつもながらご負担をおかけしまして恐縮です。

[ 参考: 長崎歴史文化博物館 日本二十六聖人記念館

【展覧会】三菱一号館美術館|ラスキン生誕200年記念|ラファエル前派の軌跡展|3月14日-6月9日

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三菱一号館美術館
ラスキン生誕200年記念
ラファエル前派の軌跡展

会  期  2019年3月14日[木]-6月9日[日]
開館時間  10:00-18:00  * 入館は閉館の30分前まで
      * 祝日を除く金曜、第2水曜、6月3日-7日は21:00まで
      * ゴールデンウィーク中の開館・閉館状況はリンク先で

休  館  日  月曜日  * 4月29日、5月6日、6月3日、トークフリーデーの3月25日、5月27日は開館
主  催  三菱一号館美術館

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1848年、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティらが結成したラファエル前派兄弟団は、英国美術の全面的な刷新をめざして、世の中にすさまじい衝撃をもたらしました。この前衛芸術家たちの作品は、観る者の心に訴えかけ、広く共感を呼びました。人々は、社会の基盤が移りゆくなかで、彼らの芸術に大きな意義を見出したのです。
その精神的な指導者であるジョン・ラスキンは、あらゆる人にかかわる芸術の必要性を説く一方で、彼らとエドワード・バーン=ジョーンズ や ウィリアム・モリスら、そして偉大な風景画家 J. M. W ターナーとを関連づけて考察しました。

本展では、英米の美術館に所蔵される油彩画や水彩画、素描、ステンドグラス、タペストリ、家具など約150点を通じて、彼らの功績をたどり、この時代のゆたかな成果を展覧します。ラスキンが指し示した道から、新たな試みが芽生え、発展してゆくさまを、多彩な秀作によって跡づけます

【 詳細: 三菱一号館美術館
[関連:花筏|朗文堂-好日録005|ラファエル前派からウィリアム・モリス、ジョン・ラスキン|ラファエル前派兄弟団 P R G のこと|2010年12月21日]── ふるい記録で恐縮ですが…… 。

【展覧会】東京国立博物館|特別展「国宝 東寺 ― 空海と仏像曼荼羅」|’19年3月26日-6月2日|終了

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東京国立博物館
特別展「国宝 東寺 ― 空海と仏像曼荼羅」
会  期  2019年3月26日[火]-6月2日[日]
会  場  東京国立博物館 平成館(上野公園)
開館時間  9:30-17:00(入館は閉館の30分前まで)

      * ただし、会期中の金曜・土曜は21:00まで
休  館  日  月曜日、5月7日[火] * 4月1日[月]は東寺展会場のみ開館
      4月29日[月・祝]、5月6日[月・祝]は開館
観覧料金  一般1600円、大学生1200円、高校生900円、中学生以下無料

主  催  東京国立博物館、真言宗総本山教王護国寺(東寺)、読売新聞社、NHK、NHKプロモーション
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東寺(教王護国寺)は、平安京遷都に伴って、王城鎮護の官寺として西寺とともに建立されました。唐で新しい仏教である密教を学んで帰国した弘法大師空海は、823年に嵯峨天皇より東寺を賜り、真言密教の根本道場としました。2023年には、真言宗が立教開宗されて1200年の節目を迎えます。

空海のもたらした密教の造形物は、美術品としても極めて高い質を誇り、その多彩さや豊かさはわが国の仏教美術の中で群を抜いています。

本展は、空海にまつわる数々の名宝をはじめ、東寺に伝わる文化財の全貌を紹介するものです。空海が作り上げた曼荼羅の世界を体感できる講堂安置の21体の仏像からなる立体曼荼羅のうち、史上最多となる国宝11体、重文4体、合計15体が出品されるほか、彫刻、絵画、書跡、工芸など密教美術の最高峰が一堂に会します。東寺が1200年にわたり、空海の教えとともに守り伝えてきた至宝をご堪能ください。

【 詳細: 東京国立博物館

【展覧会】国立公文書館|平成31年春の特別展 江戸時代の天皇|’19年4月6日-5月12日|終了

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国立公文書館
平成31年春の特別展 江戸時代の天皇
会  期  平成31年4月6日[土]-5月12日[日]
開館時間  月-水、土、日、祝日  午前9時45分-午後5時30分
      木・金曜日       午前9時45分-午後8時  * 祝日を除く
      ※入館は、それぞれ閉館30分前まで(特別展は、期間中無休)
会  場  国立公文書館 本館
入  場  料    無 料
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平成31年(2019)は天皇陛下の御退位と皇太子殿下の御即位が行われます。
本展では、この御退位・御即位を記念し、江戸時代の天皇について取り上げます。
織田信長・豊臣秀吉・徳川家康ら天下人が登場し、それに続く江戸幕府による支配の中で、天皇・朝廷はどのように渡り合い、関係を構築していったのか。光格天皇による朝廷儀式の再興、江戸時代の元号の選定と改元などについて、当館所蔵の絵巻物や公家日記などを中心に御紹介いたします。

【 詳細: 国立公文書館 】 

主な展示資料

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【会員情報】 ぢゃむ 杉本昭生さん|活版小本新作 ─『パリの憂鬱』|フレデリック・ブウテ作、森 鷗外訳

物乞いをして暮らす「一本腕」は橋の下で寝起きしている。
雪の降るある日、いつものように帰ってくると見知らぬ老人がいた。穴だらけの外套を着、白い髭を生やした男は「一本腕」と同じ境遇のように見えた。老人は横になったまま「一本腕」が手にした一切れのパンを物欲しげに見ている …… 。

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{ ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 一筆箋 }

フレデリック・ブウテ作、森 鷗外訳の『橋の下』です。
物乞いをして暮らす「一本腕」は、橋の下をすみかにしています。

雪の降るある日、いつもの場所に戻ってくると見知らぬ老人がいました。
破れた外套を身にまとい白い髭は薄汚れています。
老人は「一本腕」に自分の過去を話しだしました。
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今回は表紙カバーが先にできたので、それに見合う表紙にするつもりでしたが、
うまくできないのでカバーの図版を表紙にしました。
光沢紙でも作ってみましたが、印刷インキが定着しないのと、
折り曲げた部分のトナーが剥がれるので
普通のコピー用紙にしました。ご一読ください。 [杉本昭生]

栄えゆく

【 詳細  ぢゃむ 杉本昭生 活版小本 】 { 活版アラカルト 活版小本 既出まとめ 

【図書紹介】『夢と次代への挑戦』|平野富二の生涯 ─ 日本初の造船会社「石川島造船所」創業者|株式会社 I H I

20190405172141_00001『夢と次代への挑戦』
平野富二の生涯 ─ 日本初の造船会社「石川島造船所」創業者
株式会社 I H I
2019年4月1日発行

発行者  株式会社 I H I
     135-8710 東京都江東区豊洲三丁目1番1号
仕 様  新書判 128ページ モノクロ

編 集  広報・I R 部 社内報グループ   非売品
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《 主要内容 ── 目次より 》

はじめに
01 近代日本の幕開けとともに
02 機関手として、幕末の海をわたる
03 土佐藩に一時雇われ、龍馬と熱く語る

04 造船への道と、大きな挫折
05 恩師・本木昌造に導かれ、活版印刷の世界へ
06 新都・東京への旅立ち
07 東京築地活版製造所の誕生と、悲しい別れ
08 民間ではじめての造船所をひらく
09 約束を果たし、さらなる夢に挑む
10 試練のとき
11 夢の結晶~軍艦「鳥海」進水へ
12 富二がおこした新事業と、描いた理想
     ◯ 平野土木組
     ◯ 東京平野汽船組合
     ◯ 鉱山事業の機械化
     ◯ 東京中央市区改造計画論
     ◯ 官業払い下げをめぐる怒り
     ◯ わが国初の商業用水力発電所建設の提言
     ◯ 果たされなかった大規模物流計画
     ◯ 民間メーカー初の近代橋を建設
13 石川島造船所を支えた、澁澤榮一発案の「匿名組合」
14 闘病を経て、近代経営への道をあゆむ
15 永遠の熱き思いを胸に
監修あとがき

I H I の原点 ~ 平野富二と石川島 ~ 

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【展覧会】東京国立近代美術館|イメージコレクター・杉浦非水展| 会場/東京国立近代美術館 2階 ギャラリー 4|’19年 前期:2月9日-4月7日 後期:4月10日-5月26日|終了

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東京国立近代美術館
イメージコレクター・杉浦非水展
会  場  東京国立近代美術館 2階 ギャラリー 4

会  期  前期 2019年2月9日[土]-4月7日[日]
      後期 2019年4月10日[水]-5月26日[日]
開館時間  10:00-17:00(金曜・土曜は20:00まで)
      * 入館時間は閉館30分前まで

休  館  日  月曜日(G W 中の休館情報はリンク先で)
観  覧  料  一般500円、大学生250円
主  催  東京国立近代美術館

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日本のグラフィックデザインの創成期、重要な役割を果たした図案家の杉浦非水(1876-1965)。当館ではご遺族から一括寄贈された非水のポスター、絵はがき、原画など700点以上を収蔵しています。本展では三越のためのポスターや、数多く手がけた表紙デザインの仕事、原画やスケッチなど、19年ぶりに当館の非水コレクションを一堂に展示します。

さらに今回は、非水が手元に残した海外の雑誌やスクラップブック、16mmフィルムなど、貴重な旧蔵資料も初公開します。図案の創作にいたるまでの「イメージの収集家」としての側面に焦点をあて、杉浦非水の活動を改めて紹介します。

【 詳細: 東京国立近代美術館

【展覧会】渋谷区立松濤美術館|女・おんな・オンナ ~ 浮世絵にみる女のくらし|’19年4月6日-5月26日|終了

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渋谷区立松濤美術館
女・おんな・オンナ ~ 浮世絵にみる女のくらし
2019年4月6日[土]-5月26日[日]
* 会期中展示替えがあります。リンク先で確認を。
入  館  料  一般1000円、大学生800円、高校生・60歳以上500円、小中学生100円
休  館  日  月曜日(4月29日、5月6日は開館)、4月23日[火]、5月2日[木・休]、7日[火]
      * 臨時休館日にご注意ください
主  催  渋谷区立松濤美術館
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江戸時代に生きた女性の「くらし」の様相を、描かれたもの、記録されたものから考えます。現代と異なる身分制社会の中で、公家・武家・農民・町人・商人・遊女など多様な階層の女性たちが何を身にまとい、働き、学び、楽しみ、どのように家族をつくったのか。女性のくらしが描かれた美人画や春画、着物や化粧道具などから、その様子をみていきます。
* 18 歳未満の方(高校生を含む)がご覧になれない作品が一部含まれます。

【 詳細: 渋谷区立松濤美術館

【展覧会】五島美術館|[館蔵]春の優品展 ── 和と漢へのまなざし|4月6日-5月6日

poster_jidai_48五島美術館
[館蔵]春の優品展 ── 和と漢へのまなざし
2019年4月6日[土]-5月6日[月]
休 館 日  毎月曜日(4月29日・5月6日は開館)
開館時間  午前10時-午後5時(入館は午後4時30分まで)
入 館 料  一般1000円/高・大学生700円/中学生以下無料
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館蔵品の中から、『和漢朗詠集』と、その撰者・藤原公任に関連する古筆、あわせて日本・中国を題材とした絵画を選び展観。和歌と漢詩文の世界への憧れは、創作の源泉となり豊かな美の数々を生み出してきました。和と漢へのまなざしを映した名品約四十点を展示します。
(会期中一部展示替あり)

【 詳細: 五島美術館 】  { 活版アラカルトまとめ

【展覧会】竹久夢二美術館|竹久夢二という生き方|─ 明治・大正・昭和を駆け抜けたロマンチスト ─|4月4日-6月30日

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竹久夢二美術館
竹久夢二という生き方 
── 明治・大正・昭和を駆け抜けたロマンチスト ──
会  期  2019年4月4日[木]-6月30日[日]
開館時間  午前10時-午後5時  * 入館は4時30分まで

休  館  日  月曜日、5/7[火]
      * GW期間を含む4/23[火]-5/6[祝・月]は無休で開館
料  金  一般900円/大・高生800円/中・小生400円 * 弥生美術館もご覧いただけます────────────────
明治17(1884)年に生まれ、大正時代(1912-26)を象徴する画家として活躍し、昭和9(1934)年に世を去るまで、49歳11ヶ月の人生を駆け抜けた竹久夢二。

画家としての活動にとどまらず、デザイナー、詩人としても数多くの作品を残し、恋と旅を重ね、夢二はドラマチックな生涯を送りました。そして平成時代が幕を閉じようとする今もなお、夢二が残した美の世界は、注目され続けています。

本展では、明治・大正・昭和にわたる、ロマンに満ちた夢二の生き方と芸術を紹介し、さらに夢二をめぐる平成年間の動向も振り返り、その魅力を深く追求します。 

【 詳細: 竹久夢二美術館

【WebSite紹介】 明治産業近代化のパイオニア 平野富二|{古谷昌二ブログ24}|地方への活版普及 ── 茂中貞次と宇田川文海

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古谷03月

平野富二生誕170年を期して結成された<「平野富二生誕の地」碑建立有志会 ── 平野富二の会>の専用URL{ 平野富二  http://hirano-tomiji.jp/ } では、同会代表/古谷昌二氏が近代活版印刷術発祥の地:長崎と、産業人としての人生を駈けぬけた平野富二関連の情報を意欲的に記述しています。
本稿もこれまでの「印刷史研究」とは相当深度の異なる、充実した内容となっております。関係各位のご訪問をお勧めいたします。
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古谷昌二ブログ ──── 地方への活版普及 ── 茂中貞次と宇田川文海 

ab8a2b0e21f54ff5474ba991de0cb37c-300x199◎ 古谷昌二ブログ
[管理人:「平野富二生誕の地」碑建立有志会事務局長 日吉洋人]

① 探索:平野富二の生まれた場所
② 町司長屋の前にあった桜町牢屋
③ 町司長屋に隣接した「三ノ堀」跡
④ 町司長屋の背後を流れる地獄川
⑤ 矢次事歴・平野富二祖先の記録
⑥ 矢次家の始祖関右衛門 ── 平野富二がその別姓を継いだ人
⑦ 長崎の町司について
⑧ 杉山徳三郎、平野富二の朋友
⑨ 長崎の長州藩蔵屋敷
⑩ 海援隊発祥の地・長崎土佐商会
⑪ 幕営時代の長崎製鉄所と平野富二
 官営時代の長崎製鉄所(その1)

⑬ 官営時代の長崎製鉄所(その2)
⑭ ソロバンドックと呼ばれた小菅修船場
⑮ 立神ドックと平野富次郎の執念
 長崎新聞局とギャンブルの伝習
 山尾庸三と長崎製鉄所
⑱ 本木昌造の活版事業
⑲ 五代友厚と大阪活版所
 活字製造事業の経営受託
 文部省御用活版所の開設
㉒ 東京進出最初の拠点:神田和泉町
㉓ 神田和泉町での平野富二の事績
㉔ 地方への活版普及 ── 茂中貞次と宇田川文海

 地方への活版普及 ── 茂中貞次と宇田川文海 主要内容 >

まえがき
1) 茂中貞次と鳥山棄三について
2) 宇田川文海(鳥山棄三)による平野富二の言動記録
3) 鳥山棄三の秋田での『遐邇新聞』発行
4) 茂中貞次による地方への活版印刷普及
ま と め
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[古谷昌二まとめゟ]
茂中貞次と鳥山棄三の兄弟は、明治5年(1872)から6年(1873)にかけて、神田和泉町に開設されたばかりの「文部省御用活版所」で小幡正蔵の下で勤務した。その後、小幡正蔵が独立したため、隣接する「長崎新塾出張活版製造所」に移り、平野富二の下で勤務した。

鳥山棄三は、のちに文筆家となって宇田川文海と名乗るが、その頃の事柄を自伝『喜寿記念』に残しており、平野富二の人柄を知るうえで貴重な記録となっている。

この兄弟二人は、関西地方と東北地方で最初の活版印刷による新聞発行に関わった。その後、兄の茂中貞次は活版所の経営者となり、弟の鳥山棄三は新聞記者、新聞小説家となって、兄弟共に神戸、大阪で活躍した。
現在では、宇田川文海といっても、その名前を知る人はほとんどいないが、その才能を見出し、その道に進むよう勧誘した平野富二の人を見る目を高く評価したい。

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わが国最初期の新聞のひとつ、『遐邇-かじ-新聞』、第一号(明治7年2月2日)の表紙

「遐邇-かじ」は遠近をあらわす。平野富二による長崎新塾出張活版製造所から派遣された鳥山棄三(のち宇田川文海)が編輯者となり、秋田県の聚珍社から発行された。長崎新塾出張活版製造所製の活字が用いられ、漢字は楷書風、ルビは片仮名。「人民をして遠近の事情に達し内外の形勢を知らしめ」と記されている。

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