S E A R C H W A R R A N T
カタツムリ コト 「でん助」
北海道美唄山林うまれ。年齢不詳
趣味/水浴び。 容姿/かわいい。
《暑さ、寒さも彼岸まで とか……。むかしのひとは、いいことをいいました》
ことしの冬はどうやら「かみ雪」だったようである。「かみ雪」とは信州長野の方言らしい。信州では晩冬のころ、「かみ雪」が降ったから、もうすぐ春だ……などといった。
もともと豪雪地帯とされる、信越国境の信州北部や、北アルプス山麓の信州西部などでは、例年になく、ことしはかえって降雪量が少なかったという。
ところが、かつては台湾坊主といったとおもうが、南方からのしめった低気圧(南岸低気圧)が急速に発達し、北方寒気団と衝突して、例年ほとんど降雪をみない太平洋岸の、おもわぬところで、記録的な豪雪をみた。
ところで弥生 三月がおわり、卯月ウヅキ 四月を経て、皐月サツキ五月となったとおもったら、はやくもカレンダーの半分、水無月ミナヅキ六月となった。
03月06日[木]は、冬ごもりをしていた虫がはいでるという「啓蟄 ケイチツ」の日であった。
まこともって良くしたもので、昨年の11月ころから、いくら室内が騒然としていても、吾関せずと、すっかり冬眠をきめこんでいたカタツムリの「でん助」(北海道美唄山林うまれ。趣味/水浴び。年齢不詳)も、ながい冬眠から醒めて、旺盛な食欲を発揮しはじめた。
03月18日[火]が彼岸の入り、03月21日[金・祝日]は春分の日、すなわち春の彼岸の中日であった。
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いずれにしても、カタツムリの「でん助」は、アダナ・プレス倶楽部の会員、とりわけ<活版カレッジ>の皆さんにかわいがられていた。
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《梅雨入り前の酷暑の五月の末、でん助 大脱走》
脱走の直前まで「でん助」は、趣味の水浴びをたのしんでいた。
それが飼育箱のふたをこじあけて、忽然と姿を消したのは、ノー学部が購入して、活版カレッジの皆さんにも勧めていた<美肌パック-かたつむりの分泌液>のせいではないかと、やつがれはうたがっている。
なにぶん気はちいさいが、感受性ゆたかな「でん助」である。
また女性とは、こと美肌とか美容の話題になると熱中する悪弊がある。したがって、室内の女性陣の不穏なふんいきと、怪しい会話、
「デンデン虫の分泌物って、お肌にいいらしいわよ~」
と、夢中になっている会話内容と、ときおりチラチラと「でん助」を見やる、ただごとならぬ視線などを敏感に察知して、
「もしかすると自分も分泌液を搾り取られ、<美肌パック-かたつむりの分泌液>の素材にされるのではないか !? 」
と、懼れ カツ 怯えたのではなかろうか。
そしてみんなが帰った夜更にいたり、なにわともあれ体液を絞りとられてはかなわぬと、精一杯の努力をして、飼育箱の扉を無理矢理押しあけ、孤独な大脱走をしたのではないかとおもっている。
デンデン虫の「でん助」は、どこに消えたのか消息不明である。
まさかうまれ故郷の北海道美唄にもどったとはおもえず、好きだった野菜などをあちこちにおいて登場をまっている。いつかまた、冬眠から目覚めたときのように「でん助」が元気にうごきまわる姿をみたいものである。