【会員情報】 フランツ・カフカ 『道理の前で』 (別題 『掟の門前』)京都活版小本 ぢやむ 杉本昭生氏が新作発表

チェコ プラハのひと、フランツ・カフカ(Franz Kafka, 1883-1924)は、『審判』 『変身』 『城』 など、一度読んだら忘れられない、独自の小説世界をつくりあげた、20世紀前半を代表する作家です。

ところでこのフランツ・カフカ『道理の前で』は活版小本としては失敗です。
マッチ箱に入れることを前提につくりましたが、途中で気持ちが離れてしまいました。

案の定、紙がかたくてページが開きにくい、化粧断ちをしていないので手触りがわるい、印刷がつぶれたりかすれたりしている、紙面がゆがんでいる。
タイトルが大文字ばかりはおかしいなど欠点の目立つできあがりです。
そしてこのサイズは自分のつくりたい本の大きさではないことを確認しました。
悪しき作例となりました。
【 詳細:ぢやむ 杉本昭生 活版小本
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{ 新 宿 餘 談 }
ぢやむ杉本昭生氏の新作をご紹介した。
いつも送付される際に「一筆箋」のような文章が附属されているが、今回はめずらしくこぼしが多かった。
たしかに「活版小本」の杉本昭生氏がマッチ箱サイズをねらっても、あまり収穫がないような気はした。 このテはほかの豆本製作者に任せてもよいかもしれない。

ところで、やつがれ フランツ・カフカ(1883-1924)のひそかなファン。
したがって4 ページ 一丁、15丁60 ページ、前後見返しつき、前扉別紙差し込みからなるマッチ箱サイズの上製本、「活版小本 カフカ『道理の前で』」をうれしく拝読させていただいた。
そこでフトおもいだしたのは、この作品はチェコ プラハの「黄金の小径」で執筆されたのではないかというおぼろな記憶だった。

2013年晩夏、三泊四日の強行軍でプラハにいった。その報告は「花筏 朗文堂好日録038-喫煙ボヘミアン、プラハへゆく-01 プロローグ」にあるが、ここには序章があるだけでその後の記述はない。
すなわちやつがれが情報過多に陥り、ひとさまにプラハの紹介をすることができなかったというのが苦しいいいわけになる。
2013年のプラハ行きはロシアの航空会社「アエロフロート航空」で、モスクワ経由でいった。
このときの収穫はすくなくなかったが、ともかく魅力がおおすぎて、未整理なままやつがれの胸裡の片隅にある。
2014年に再挑戦をこころみたが、円安のためもあって旅費が高騰していた。

プラハにはいま、アダナ・プレス倶楽部会員・博士山崎が研究のため長期滞在中である。
ノー学部と博士山崎は情報交換が盛んである。したがってどうやらもう一度プラハにいく機会がありそうな昨今である。
プラハの一隅にはカフカの生家があり、そこはちいさな博物館となって公開こされているという。そしてカフカの墓は、その近く「ユダヤ人墓地」にあるという。
前回はユダヤ街にいく時間がなかった。再訪を得たらぜひともたずねたいとおもう。

すなわち、畏友杉本昭生が製作し、失敗作と自嘲した一冊の活版小本が契機となって、プラハ行きを決断することになったということである。
プラハ絵はがき01 プラハ絵はがき02 プラハ絵はがき03 プラハ絵はがき04プラハ市販の長尺絵はがきより。下から二段目、プラハ城脇、かつて錬金術士が居住したことから「黄金の小径」と呼ばれる長屋街。いまはみやげ店がならぶ観光スポット。左手の青い22番の建物は、カフカがここで『城』などの作品を執筆していたとされる。