《 畏友 : 杉本昭生[活版小本]によれば 11月07日 水がはじめて凍るとき――立冬とする 》
そもそもブログや SNS で犬や猫をテーマにするのは禁じ手ではなかろうか。
犬も猫もあまりに、そして無条件にかわいいし、さまざまな愛らしいポーズもとってくれる。
京都吉田山に居住する杉本昭生さんは、季節のうつろいをブログ上にえがきだしてみごとである。今回は画像の一部を拝借した。ここには当然犬猫のたぐいは登場しない。
やつがれは犬も猫もだいすきである。以前は同時に犬も猫も飼っていたが、喘息によくないからと医者に飼育をストップさせられた。その恨みと焼きもちの気分もすくなからずある。
そこでいつもの「空中花壇」の話題に転じよう。
吾が 「 空中花壇 」 の造園家は迂闊で、しばしば播種のときをはずすし、季節はずれの艸花をムキになって育てたりしている。
また、世間では「雑草」の代表のように唾棄する野草を、わざわざ 鹿児島の五代才助(友厚)生誕地から採取 して 「 才助 」 と名づけて育ててきた。
そもそもやつがれ、「 雑草 」 という名の艸はないと心底おもっているから、懸命に育てていた。やがて 「 才助 」 は野菊に似たちいさな花をつけた。 それはわざわざ鹿児島から持ちかえるまでもなく、東京でもどこの空き地にでも繁茂している、まぎれもない「 雑草 」 だったが、名を調べないまま枯れるまで見まもっていた。
【 花筏 : 朗文堂好日録039-春を待つ日日。わっせクン、才助とかわす朝の挨拶 2015年02月04日】
《 そもそも、ハロウィン ・ グッズを花壇に持ちこむ不逞のやからがいるからして…… 》
10月31日は 「 ハロウィン 」 である。
昨今のハロウィン祭りは、アメリカ経由のカラ騒ぎの面がみられるが、本来のハロウィンは、紀元前1000年ころに中央ヨーロッパを席巻した 古代ケルト人 が起源の祭とされ、秋の収穫を祝い、悪霊などを追い出す宗教的な意味合いのある行事である。
ケルトの「 文 ≒ 紋学 」 [ウィキペディア画像集]は、「 字学 」 と同様に興味がつきないが、現代の視点からみると、多くの古代文化の造形と同様に、面妖で怪奇な面もなくはない。
吾が「 空中花壇 」 に、ちいさなカボチャを頭にして、三年ほどまえから鎮座ましましているのが 「 わっせ君 」。 これはバレンタイン モトイ ハロウィンのときに ノ ー学部がなにかのついでに100円ショップで買ってきた。
価格は安いが、ソーラーパワー ( 太陽電池 ) がどこかに内蔵されているらしく、いまでも陽射しがつよい日には 「 わっせ、わっせ 」 と左右に躰をはげしく振動させている。
ただそれだけのものだが、目覚めの一服のさなかは、たったひとりの朋輩であり、見飽きることがない。 だからベランダにでると、まず、勝手に名づけた 「 わっせクン 」 と挨拶、顔合わせをつづけている。
[ノー学部] わたしのガラ携動画で撮ったので画質が悪いのですが、片塩さんのベランダ喫煙の友「わっせ君」の動く様子です。一年365日、ベランダで頑張っている健気なやつです。
ことしはやつがれが丹精している赤と紫のペチュニアふた株の植木鉢に、失敬千万、けしからんことに、いつの間にかコウモリがついた風車のようなハロウィン・グッズが、むかしからいたような顔をして居座っている。これもノー学部の仕業に違いない。
このペチュニアは過酷な夏、それもエアコンの室外機が吐きだす熱風にまけず、花をつけ続けた愛着のある艸花であるのに。
ところで、長岡栃尾の 「 紙漉 サトウ工房 」 でも味わいのある草木染めをみた。とても味わいがあってよかったが、やつがれはだいぶ前から、いつか草木染めに挑戦しようという意図があって、密かにこの花柄を摘んで空き瓶に貯めている。
このごろすこし赤花のパペチュアが元気がないなとおもったら、なんと、せまい植木鉢から 「 才助 」 がニョキニョキと芽ばえていた。考えてみたらこの植木鉢はかつて 「 才助 」 を育てた鉢だった。
もちろん移植に際して土替えはしたが、なにしろ悪名とどろく 「 雑草 」 のことゆえ、どこかに種子をのこしていたらしい。
それでも隣のピンクのベゴニアの花は、なんとなく草木染めには適さないとおもっていたし、ペチュニアの赤い花も、紫の花にくらべるとすこし力感に欠けると …… 。だからいまは、おそらく 「 才助 」であろうが 、ニョキニョキと伸びるがままにしている。
すこしうれしいのは、ちいさな苗で買った香草がげんきなこと。「ホットリップス」、「レモン・マリーゴールド」、「セージー」などが次〻に花をつけている。原産地はメキシコ高地の植物だというからこのまま冬を越しそうな勢い。
《 畏友 : 杉本昭生「活版小本」によれば11月12日からは立冬 次候 : 地始凍とするが 》
11月も半ばとなった。古来の暦法、二十四節季、七十二侯によれば、すでに立冬で、水も土も凍りはじめるときらしい。
ところが「空中花壇」の園芸家は、摘芯のときをわすれ、背丈だけやたらに伸びて、颱風のおり、支柱のさきから半分枝折れしてしまったミニトマトをいまだに育てている。
ミニトマトとしては、夜などは摂氏10度を下まわる寒さのなかで結実するのは、さぞかしたいへんなこととおもわぬでもない。
反対側の壁面には、熱帯植物 : 雲南百薬 {おかわかめ} と、謎の巨大植物 {メキシカーナ} がげんきである。
既報のとおり、最近 {おかわかめ倶楽部} という奇妙な会が誕生し、あちこちの黒ポットにムカゴや挿し芽の{おかわかめ}が寒風に震えながらも育っている。
念のためにしるすが、{おかわかめ}はあくまで熱帯地方の草花である。かような立冬のさなかに増植すべきものではないはずだとおもう。
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11月12日[土]、寒い朝だったが陽光がベランダに射していた。
そんな朝、「立冬 地始めて凍る」と京都の畏友が予告しているにもかかわらず、早朝からたたき起こされた。
「たいへん、たいへん、またトロロアオイが咲いてるよ」
冗談ではない。やつがれ今日か明日かと待ち望んでいた、ひこばえから健気に結花しようとしているトロロアオイのことなど十分に知っていた。
せっかくの休日だったが、ともかくこの花の開花時間はみじかい。そこで眠気まなこをこすりながら、間違いなくことし最後であろう「トロロアオイ」の花を観賞した。
嗚呼無情、こののちわずか、朝食の木綿豆腐の上に、長寿の薬草{おかわかめ}と、{トロロアオイ}の花が一輪、ちいさく刻まれて載り、いつの間に採取したのか、赤くなったミニトマトが数個、トーストの脇に転がっていた。
そのとき、椋鳥かなにかのつがいの渡り鳥が{メキシカーナ}にやってきて、ギャーと啼いた。