セルリアンタワー 能 楽 堂
定期能五月 ── 宝生流 ──
平成30年5月27日[日]
第一部 午後1時00分開演(12時30分開場)
第二部 午後4時30分開演(04時00分開場)
前売り開始:2月27日午前10:00分ゟ
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初夏の宝生流、第一部は武田孝史による能「景清」。
平家の勇将悪七兵衛景清は、源平の戦乱後に日向国に流され盲目の琵琶法師となって粗末な生活を送っています。娘の人丸が鎌倉からやって来ますが親子の名乗りをせず、一度はその地を離れた人丸が再び訪れると心を和らげて対面し、頼みに応じて武勇談を聞かせ、やがて涙ながらにまた別れを告げるのでした。
第二部は宗家・宝生和英による能「藤」。
諸国を旅する僧が越中多祜の浦で咲き誇る藤の花の中、里の女に出逢います。この藤の花のために詠まれた古歌を挙げ、自分はこの藤の精であると伝え、やがて僧が仮寝をしていると藤の精は再び姿を現し、春から夏にかけて長く咲く藤の風情を美しく謡い舞い、夜明けと共に消え行きます。
両部とも、人間国宝・山本東次郎と一門による狂言を併演。冒頭に上演演目の解説があります。
解説:金子直樹(両部とも)
【詳細: セルリアンタワー 能 楽 堂 】
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< 第 一 部 >
狂言「樋の酒」
太郎冠者:山本東次郎
主 :山本則秀
次郎冠者:山本則俊
☆
◯ 樋の酒(ひのさけ)
主人は、留守中に召し使いが酒を盗み飲みするので、太郎冠者を軽物(絹布)蔵、次郎冠者を酒蔵に押し込めて外出します。二人はやがて酒が飲みたくなり、酒蔵にいる次郎冠者は酒を飲み始めますが、軽物蔵にいる太郎冠者は飲めません。そこである方法で酒を渡そうとしますが …… 。
主人の留守中にどうにかして酒を飲もうとするのは、『棒縛』と同じ設定です。二人が別の藏にいる様子を、能舞台の特徴を活かして表現するのも見どころです。
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能「景清」
景清:武田孝史
人丸:小倉伸二郎
人丸の従者:野月聡
里人:殿田謙吉
笛 :杉信太朗
小鼓:鵜澤洋太郎
大鼓:國川純
後見:金井雄資、小倉健太郎、金井賢郎
地頭:髙橋章
☆
◯ 景清(かげきよ)
平家の勇将悪七兵衛景清は、源平の戦乱後に日向国宮崎に流され、源氏の栄える世を見る事を厭い、盲目の琵琶法師となって乞食同然の生活を送っています。噂を聞いた娘の人丸が遠く鎌倉からやって来て、父とも知らず藁屋の盲目の乞食に景清の行方を尋ねます。景清はわざと他人の様に対応し、わが子の行く末を思い親子の名乗りをせず、他を探す様にと促します。
しかし、里人から真実を聞いた人丸が再び訪れると、かたくなな心を和らげて対面し、しみじみと言葉を交わします。景清は娘の頼みに応じて、屋島の合戦で敵方の三保谷四郎と力くらべの錣引をした武勇談をして聞かせ、やがて自身の亡き跡の回向を頼んで涙ながらに別れを告げるのでした。
< 第 二 部 >
狂言「鱸包丁」
伯父:山本東次郎
甥 :山本則重
☆
◯ 鱸包丁(すずきぼうちょう)
淀に住む甥は、都の伯父が仕官したのでその祝宴用に鯉を買ってくる様に頼まれましたが、まだ用意をしておらず、求めた鯉を淀の橋杭につないでおいたところ片身を獺(かわうそ)が食ってしまったと嘘をいいます。甥の嘘を見抜いた伯父は口先だけでもてなして追い返そうと思い、鱸を用いて料理、酒などを振る舞う様子を話しますが …… 。
伯父の料理についての語りを中心とした、シテのほぼ一人舞台の作品。包丁道の故実や作法も見せる、狂言の極致ともいえる作品です。
能「藤」
里女/藤の精:宝生和英
旅僧:殿田謙吉
従僧:則久英志、吉田祐一
里人:山本泰太郎
笛 :杉信太朗
小鼓:鵜澤洋太郎
大鼓:國川純
太鼓:大川典良
後見:野月聡、小倉伸二郎
地頭:今井泰行
☆
◯ 藤(ふじ)
都の僧が諸国を巡り、越中多砧の浦で咲き誇る藤の花を眺めて古歌を囗ずさんでいると、里の女が顕れて、花のためには他の歌を思い出すべきなのに、なんと心無い旅人だろうと語ります。この浦の藤は色も香も知る人ぞ知る、歌に詠まれた通りだといい、自分はこの藤の花の精だと明かして、夕暮れの藤波の影に姿を消します。
〈中入〉僧が仮寝をしていると藤の精が姿を現し、四季の移り変わりの中で春から夏にかけて咲く藤の風情を格別だと謡い舞い、やがて曙のおとずれと共に消え行きます。
〔解説:金子直樹(両部とも)〕