【公演】歌舞伎座百三十年|七月大歌舞伎|7月5日初日-7月29日千穐楽|

歌舞伎座七月歌舞伎座七月歌舞伎座百三十年
七月大歌舞伎
平成30年7月5日[木]-29日[日]
昼の部 午前11時ゟ
夜の部 午後4時30分ゟ
【休演】11日[水]・17日[火]夜の部/18日[水]・19日[木]昼の部

【貸切】7日[土]昼の部 * 幕見席は営業
チケット好評販売中

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市川海老蔵が語る歌舞伎座「七月大歌舞伎」

kabukiza_a0617ebizo 歌舞伎座「七月大歌舞伎」 十一代目市川海老蔵の手には、堀越勸玄(長男-かんげん 右)からの父の日プレゼント。「大事なものを入れる」手づくりの器です

7月5日[木]に初日を迎える、歌舞伎座百三十年「七月大歌舞伎」について、出演の市川海老蔵が語りました。

信長一色だった海老蔵が秀吉に挑む
当時、海老蔵を名のっていた祖父十一世團十郎の秀吉。その傍らの一段高いところに立つ三法師公は、市川夏雄を名のって初舞台を踏んだ父十二世團十郎。
「私は祖父に会ったことはありませんが、子どもの頃にその『大徳寺』の写真を見て、父の初舞台に祖父がその狂言を選んだ理由も聞き、祖父はそういう思いで父をこの舞台に出したんだ、自分もいつかやってみたいと思っていました」。
その「大徳寺焼香の場」が入った太閤記ものとして、『三國無雙瓢箪久-さんごくむそうひさごのめでたや- 出世太閤記』が上演されます。

「親子でやるものだと思っていたので、倅を授かった今だったら、この場面ができるなと」、
祖父が2度手がけた秀吉を海老蔵が勤め、父の初舞台の三法師を息子の堀越勸玄が演じます。祖父に大佛次郎が書き下ろした『若き日の信長』では三代にわたり信長を勤め、さらに海老蔵はテレビドラマや歌舞伎以外の舞台でも信長を演じており、
「これまで信長一色で過ごしてきました。信長は大好きですが、秀吉には私にないものがある。本質的に私からかなり遠い」
という自覚があります。

kabukiza_b0617ebizoつながる團十郎家の『源氏物語』
「人たらしで頭脳明晰な秀吉に、挑戦したいなと。40歳になり、自分の可能性をもう少し広げていかないといけないのではないか、というのも正直ありました」。
写真の『大徳寺』で見た十一世團十郎の美しい秀吉も頭に置きつつ、
「私はもう少し写実的に、猿と呼ばれていた時代を過ごしてきた人物としての部分も追いたいなと思っています」。
幕開きには夢の場面で「西遊記」の孫悟空として宙乗りを見せ、勢力争いの物語をわかりやすく見せる工夫も検討していると明かしました。

「祖父がつくった『源氏物語』、父が継承した『源氏物語』、そして私が変化を与えて幅を広げた『源氏物語』。倅がそれを見て、自分の『源氏物語』をつくるのではないか。私はここではパイプラインだと思っています」。
絶世の美男子として九世海老蔵を世に送り出し、十世海老蔵が継承して十二世團十郎としても勤めた『源氏物語』の光の君。当代海老蔵が 5 歳で初お目見得を果たした作品で、同じ 5 歳の勸玄が、今回初めて、若き日の光の君を勤めます。

海老蔵が与えた変化、幅とは、光の君の孤独です。
「孤独を表すためには周りが華やかだったり、別の情景が浮かぶようにすること。そうすることで、その人の孤独感が増すだろう」
と、能、オペラ、華道を歌舞伎に融合させた舞台を重ねてきました。
「光の君のドラマに焦点を当てた、芸術性の高いものになることは約束できます」。
歌舞伎よりも歴史ある伝統芸能とともに、
「宙を舞うというドラマができたら、それ以上のロマンはないのでは」と、「歴史的に初めての試みとなる宙乗り」も見せます。

4 年前から上演を重ねている海老蔵の『源氏物語』が、歌舞伎座で上演されるのは初めて。プロセニアム(舞台と客席を区切る枠の部分)を超えて映像を使い、
「歌舞伎座がこうなるの! と皆様の度肝を抜くものをと、澤邊芳明さんにお願いしています」。
桟敷席のお客様が見づらくならない程度に、
「できれば天井くらいまで(映像が)はみ出る形にしたい。紫式部の書く時代にタイムトリップしたのかと思わせる世界観と、(映像により際立つ)光の君の孤独。この 2 つです」
と、映像の演出にも期待を持たせました。

「七月、歌舞伎座、頑張ります!」
昼夜ともに、成田屋三代にわたる縁の深い演目が並んだ「七月大歌舞伎」。勸玄にも、

「祖父、父、私がやっているお役をするという認識はあります。でも、今それより重要なことはせりふ、動き」
と、海老蔵は時間が許す限り、朝も夕も稽古をつける日々を送っています。

 取材の最後に現れ、
「堀越勸玄-かんげん-です。七月の歌舞伎は三法師と光の君を勤めさせてもらいます。どうぞ、よろしくお願いいたします」
と、大きな声で元気いっぱいに挨拶し、出演が「楽しみ」と満面の笑みを見せた勸玄。厳しく稽古しているという海老蔵へ、この日は「父の日」ということもあり、プレゼントとともに感謝の気持ちを贈った勸玄に対し、
「せりふを練習していても、私が父に言われている感じがある」
と、不思議な気持ちを率直に明かした海老蔵。七月の歌舞伎座には世代をつないできた父子の思いがあふれます。

【詳細: 歌舞伎座

演 目 と 配 役/みどころ  

歌舞伎座百三十年
七月大歌舞伎
平成30年7月5日[木]-29日[日]

< 昼 の 部 >

織田紘二 補綴・演出
石川耕士 補綴・演出
川崎哲男 補綴・演出
藤間勘十郎 補綴・演出

通し狂言 三國無雙瓢箪久-さんごくむそうひさごのめでたや
出世太閤記
市川海老蔵宙乗り相勤め申し候

序 幕   第一場 西遊記(夢の場)
      第二場 本能寺の場
      第三場 備中高松城外、秀吉陣中の場
二幕目   第一場 小栗栖村竹薮の場
      第二場 近江湖水の場
      第三場 松下嘉兵衛住家の場
大 詰   大一場 松下嘉兵衛住家の場
      第二場 同  奥庭の場

   羽柴秀吉/孫悟空  市川 海老蔵  
明智光秀/明智左馬之助  中村 獅 童
 松下嘉兵衛/柴田勝家  市川 右團次
     秀吉女房八重  中村 児太郎
        三法師  堀越 勸 玄
      光秀妻皐月  中村 雀右衛門
     嘉兵衛妻呉竹  中村 東 蔵

{みどころ}
名もなき猿が天下の頂へ
織田信長は、天下統一の念願成就も目前というところで、本能寺で明智光秀の謀反にあい、無念の最期を遂げます。備中高松城で毛利攻めをしていた羽柴秀吉は、信長討死の知らせを受けると大急ぎで山崎の地へ戻り、光秀の軍を破ります。光秀は小栗栖村で討たれますが、明智左馬之助が陣羽織を引き継ぎ光秀が存命のように見せかけます。光秀の一子重次郎は、松下嘉兵衛の住家に落ち延び、秀吉は重次郎が身に付けた品から、光秀に育てられた重次郎が実は自らの実子であることを知ります。

信長亡き後、柴田勝家をはじめとした重臣は信長の遺児信雄、信孝兄弟のどちらかを考えていましたが、秀吉は仇討ちをしなかった兄弟にはその資格はないと、弁舌鋭く勝家たちを説き伏せます。秀吉は信長の孫、三法師こそ織田家の後継者であると重臣たちに認めさせ……。

農民の出でありながら、知略を以て戦乱の世を制し、天下人へと駆け上がった豊臣秀吉。歌舞伎でも多くの作品が秀吉の立身出世を描いており、それらの作品群は「太閤記もの」と呼ばれています。
成田屋に所縁のある「大徳寺焼香の場」を含めてこれまでの「太閤記もの」を再構成した、歌舞伎の魅力あふれる舞台をご覧いただきます。

< 夜 の 部 >

今井豊茂 作
藤間勘十郎 演出・振付
通し狂言 源氏物語-げんじものがたり
市川海老蔵宙乗り相勤め申し候

光源氏/桐壺帝/龍王  市川 海老蔵
       右大臣  市川 右團次
       葵の上  中村 児太郎
       光の君  堀越 勸 玄
       紫式部  市村 萬次郎
     六条御息所  中村 雀右衛門
       大命婦  中村 東 蔵
     弘徽殿女御  中村 魁 春
               ◯
            片山 九郎右衛門
            梅若 紀 彰
            観世 喜 正
     (能楽師出演者は公演日により異なります)
               ◯
      闇の精霊  アンソニー・ロス・コスタンツォ
      光の精霊  ザッカリー・ワイルダー

{みどころ}
誰も見たことのない奇跡の物語
石山寺で、筆を走らせている紫式部。紫式部がしたためている書物こそ「源氏物語」。輝かんばかりの美貌と才気を兼ね備えた光源氏の物語が描き出されます。光源氏は皇子として生まれますが、幼くして母を亡くし、我が子の将来を案じた父桐壺帝により、皇族から臣下の位に降ろされてしまいます。人々の羨望を受ける光り輝く皇子として生まれながら、心に抱える深い闇。その光源氏の内に混在する光と闇が、紫式部に物語を書かせるのでした …… 。

平安時代中期に紫式部によって著された「源氏物語」は、世界最古の長編小説として知られ、その文学性は国内外から高い評価を受けています。華やかな都で織りなされる切なくも哀しい光源氏の物語は、一千年以上経った今でも人々を魅了し続けています。

初めて「源氏物語」が歌舞伎化された昭和26(1951)年の上演では、海老蔵の祖父、十一世市川團十郎が光源氏を勤めました。以降さまざまな脚色を加え上演を重ねていくなかで、父十二世市川團十郎も光源氏を演じ、海老蔵(当時 新之助)も勤めています。宙乗りなどの歌舞伎ならではの魅力をふんだんに盛り込み、オペラと能楽という異なる舞台芸術と融合し、さらには華道、映像の表現も取り入れた、誰も見たことのない『源氏物語』にご期待ください。