Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO - Report 07
こんな辞書をつくりたい-若き薩摩青年が希求した
通称「薩摩辞書」とは
【 名 称 】 Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO
【 会 期 】 2014年11月1日[土], 2日[日], 3日[月 ・祝] 3日間
【 時 間 】 開場 8 : 30 ― 閉場 17 : 30
【 会 場 】 仙巌園〔磯庭園〕 尚古集成館本館 展示室 鹿児島県鹿児島市吉野町9700-1
【 主 催 】 朗文堂 アダナ ・ プレス倶楽部
尚古集成館 http://www.shuseikan.jp/ 仙巌園 http://www.senganen.jp/
朗文堂 アダナ・プレス倶楽部 http://robundo.com/adana-press-club/
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[ 撮影協力 : 松尾篤史氏 ]
【 関連情報 : Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO - Report 05 薩摩辞書 ―― あまりにも多くの未解明の謎にせまる第一歩 】
俗称「薩摩辞書」は、アメリカの語学者/ウェブスター(Noah Webster, 1758-1843)による英語辞書 『 ウェブスター大辞典 』 を主要な典拠(第二版の日本語序文文中に記録がある)としており、以下の三版が知られています。
ここに紹介した図版は、おもに ◯ B 第二版 『 大正増補 和訳英辞林 官許 』 (明治四歳辛未 カノトヒツシ ゙ 十月) をもちいています。
◯ A 第一版
『 和訳英辞書 』(明治二歳 己巳 ツチノト ミ 正月 千八百六十九年新鐫)。
鐫センは深く掘る。年月は旧暦/1869年-明治02年。印刷所 : American Presbyterian Mission Press 上海 美華書館。和文序に「改訂増補和訳英辞書」、英文扉に「THIRD EDITION」とある。 後述。
◯ B 第二版
『 大正増補 和訳英辞林 官許 』 (明治四歳辛未 カノトヒツシ ゙ 十月)。
年月は旧暦/1871年-印刷所 : American Presbyterian Mission Press 上海 美華書館。欧文扉に 「 FORTH EDITION REVISED 」 とある。 後述。 ここにみる「大正」は元号を意味するものでは無い。
◯ C 第三版
『 稟准 和譯英辞書 』 (明治六年十二月 紀元二千五百三十三年)。
年月は新暦/1873年-明治06)。 印刷所 : 東京新製活版所 天野芳次郎蔵版(一部複写のみ所有。未見)。 複写資料を見る限り、あまり見かけない活字書体が用いられている。
鹿児島市の中央部に、歴代の薩摩藩主の居城であった鶴丸城があります。その鶴丸城の跡地の一画に鹿児島県立図書館があります。
その正面入り口には 《 薩摩辞書之碑 》 があり、「AN ENGLISH-JAPANESE DICTIONARY 薩摩辞書之碑 American Presbyterian Mission Press 1869」 と刻まれています。
「薩摩辞書」とは俗称であり、『 和譯英辭書 』 の名が、初版(1869年/明治02年)における正式名称です。 この英和辞書は、幕末の大混乱のさなかに密かに上海で刊行作業が進行し、維新ののちに完成をみた大冊の英和辞書です。
したがっていかに衰微していたとはいえ、幕府の正式な許可を得ないまま、薩摩藩庁から資金提供をうけて刊行に着手した、薩摩藩の若き俊才たちは、正式な刊記(刊行記録、現代の奥付にあたる)をのこすことなく、わずかな記録として、日本語の序文の末尾に <日本 薩摩学生> と、若い実務者の名前だけを記録しています。
鹿児島中央駅前広場には「若き薩摩の群像」が建立されています。
ここに登場する青年たちの調査は、郷土史家を中心に相当の進捗をみますが、こと活版印刷と図書刊行という見地からの調査はほどんど未着手とみられます。
その研究のてがかりに、おそらく、若い薩摩の学生が手にし、見入ったであろう、英語辞書 『 ウェブスター大辞典 』、『 WEBSTER’S NEW INTERNATIONAL DICTIONARY 』(G. & C. MERRIAM COMPANY, PUBLISHERS 1956) の画像を中心に紹介しましょう。
この版は比較的あたらしいものの、専用の書見台がついた、重厚感のあるものです。
そういえば、鹿児島中央駅前広場の「若き薩摩の群像」には、書見台にのせられた大判の図書がみられました……。