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【会員情報】 上原修一 銅版画作品展 銀座二会場同時開催 <泳ぐ> <跳ぶ>

20150410180715695_0002 20150410180715695_0003版画家にして、美学校銅版画工房講師、新宿私塾修了生の上原修一さんの<ダブル個展 泳ぐ 跳ぶ>のお知らせです。
上原さんは、アダナ ・ プレス倶楽部主催、四谷CCAA アートプラザ で開催された、第一回<活版凸凹フェスタ>にも意欲的に出展されていました。
皆さまのご参観をおすすめいたします。

【 関連URL : 上原修一 銅版画ギャラリー
【 関連URL : Galleria grafica bis
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【良書紹介】 黒滝哲哉『美鋼変幻-たたら製鐵と日本人』 & 『活字-記憶鉛與火的時代』

DSCN3440『美鋼変幻 【たたら製鉄と日本人】』
黒滝哲哉著
日刊工業新聞社 2011年03月28日
定価:1,800円(本体価格)
ISBN978-4-526-06657-3
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たまたま火と金属に関するふたつの図書を読んだ。
『美鋼変幻 【たたら製鉄と日本人】』の著者:黒滝哲哉氏は、「財団法人日本美術刀剣保存協会 略称:日刀保 ニットウホ たたら」の有力メンバーである。

わが国では古来、製鉄術として「たたら製鉄法」【ウィキペディア:たたら製鉄】によってきた。同書「はじめに」によると、

「たたら製鉄とは、(一操業ごとに)粘土で築いた炉に、原料を砂鉄とし、燃料に木炭を用い、送風動力に 鞴 フイゴを使用して、きわめて純度の高い鉄類を生産する日本古来の製鉄技術をいう」
としている。
この技術は奈良朝時代に本格化し、明治初期に西洋式溶鉱炉の導入によって衰退したが、いまなお日本刀作刀などのための必須の原料として、島根県の山中で、年に三度ほど製造されているという。

「日刀保たたら」では、粘土をこねて炉を築き、三昼夜、間断なく、木炭およそ12トン、砂鉄およそ10トンを灼熱の高温で燃焼させつづける。
その間、かつては、鞴フイゴを踏み、風を送る、「番子バンコ」と呼ばれる係りのものがいて(現在では電動モーター)、決まった時間ごとにかわることから、「かわりばんこ」ということばがうまれたとする。
そして2.5トンほどの「鉧 ケラ」、すなわち良質な鉄の原料をとりだすことになる。そのときせっかく築いた炉は、一気に壊されてしまうという。-ひと操業ごとに-とは、そうした意である。

この不眠不休の三昼夜を見守り、工匠が終始礼拝を欠かさないのは、製鉄の神とされる「金屋子神」である。黒滝氏は「金屋子神」を女神として紹介し、「かなやご-しん」と濁って紹介している。また、製鉄だけではなく、「産業の守護神」としてひろく信仰をあつめてきたとし、地域により「金山さん・金屋神・荒神さん・稲荷さん」と呼ばれているとしている。

東京築地活版製造所の活字鋳造工、鋳物士(俗にイモジ)が信仰していたのも「金屋子神」であり、「火の象徴としての太陽の勢いが、もっとも衰微する冬至の日」に際して、「鞴フイゴまつり、蹈鞴 たたらまつり」を催し、「一陽来復」を祈念し、従業員にはミカンを配ってきたことはしばしば紹介してきた。
東京築地活版製造所の源流は、幕府時代の「長崎製鉄所」にあり、創業者の平野富二(1846-92)も、16-23歳のとき、そこに所属していたが、「長崎製鉄所には製鉄の設備は無く、むしろ大規模な鉄工所としたい」(『平野富二伝』古谷昌二)ともされている。
黒滝氏も指摘されていることだが、古代製鉄法が紅蓮の焔を必要とし、その祭神「金屋子神」を、やはりフイゴやたたらを用いて、高熱を必要とした、活字鋳造工、鋳物士たちも信仰するようになったようである。

◎ 花筏 A Kaleidoscope Report 002:『活字発祥の碑』をめぐる諸資料から 2010年11月08日
◎ 花筏 タイポグラフィあのねのね*012 平野富二と李白 春夜宴桃李園序 2011年08月03日
◎ 花筏 朗文堂-好日録012 アダナ・プレス倶楽部 新潟旅行Ⅰ 2013年10月09日
◎ 花筏 平野富二と活字*02 東京築地活版製造所の本社工場と、鋳物士の習俗 2013年10月21日

『美鋼変幻 【たたら製鉄と日本人】』は、技法書ではなく、むしろ産業史であり、文化・文明論をかたって興味ぶかい。ご一読をおすすめする次第である。
なお、「日刀保たたら」の作業場は、危険があり、また神事にちかい作業でもあるので、見学・撮影は制限されている。詳しくは同書巻末に紹介されている。
なお、たたら製鉄法と金屋子神に関しては、多くの画像をもちいて紹介している【島根県安来市和鋼博物館 たたらの話】も参照してほしい。

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『活字 記憶鉛與火的時代』
周 易正 編
行人出版社 廖 美立
ISBN 978-986-90287-0-7
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台湾の活版印刷の現状をよく伝える図書 『活字 記憶鉛與火的時代』 を、日星鋳字行の張 介冠代表にいただいた。
原題 『活字 記憶鉛與火的時代』 はすこしわかりにくいので、《活字-鉛と火の時代の記憶》、あるいは副題としてつけられた 《Remembering the Letterpress Printing in Tiwan》 としたほうがわかりやすいかもしれない。

日星鋳字行(行 は お店の意)は台湾唯一の活字鋳造所である。活字鋳造所とはいいながら、日星鋳字行では、鋳字(活字鋳造)、検字(文選)、そしてときには排版(組版)までをおこなう。
張 介冠さんは、独自の活字母型製造法をもちいて、「活字母型製造」と「活字鋳造」をにない、游 珠(親しみをこめて シュおばさま ≒ 阿 珠姐)さんが検字(文選)作業をになっている。

同書によると、台北市・台南市を中心に、台湾には16ヶ所の「活字版印刷所」があり、排版(組版)と活版印刷業務にあたっている。活字の供給は当然日星活字鋳造行である。まだページ物印刷も多いが、紙型鉛版をもちいず、活字原版刷りが多いとする。印刷機器は、日星鋳字行をふくめ、その設備の大半は日本製である。
『活字 記憶鉛與火的時代』は、第一部「職人的記憶」と、第二部「活著的様貌-創新、活用與保存」からなり、附録として「字體様本」が綴じこまれている。
第一部はいくぶん懐古的だが、第二部は、活版印刷を活用しながら保存する-創新-という、台湾行政府の方針をうけた構成となっている。
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『活字 記憶鉛與火的時代』をお持ちいただいたのは、台湾活版印刷文化保存協会  柯 志杰(カ シケツ)さん。朗文堂 アダナ・プレス倶楽部と、日星鋳字行の張 介冠さん、游 珠さん、そして柯 志杰さん、支援にあたっている台湾大学の有志とは親しくお付きあいいただいている。
今回の柯 志杰さんの来日でも、様様なご相談をいただいた。いずれも困難な問題ではあるが、台湾では「活版印刷を活用しながら保存する-創新-」の取り組みに積極的である。アダナ・プレス倶楽部も「活版ルネサンス」の旗を掲げて前進している。お互いに協力していきたいものである。

《活版凸凹フェスタ2012》会場にて。左:日星鋳字行  張 介冠(チョウ-カイカン)代表
右:台湾活版印刷文化保存協会  柯 志杰(カ シケツ)さん

 ◎ 花筏 朗文堂好日録-025 台湾の活版印刷と活字鋳造 日星鋳字行 +台湾グルメ、圓山大飯店、台湾夜市、飲茶 2013年01月22日

アダナ・プレス倶楽部の皆さん。台湾・台北市の日星鋳字行にて