滋賀県立美術館
企画展 滋賀県立美術館開館40周年記念
生誕100年記念 人間国宝 志村ふくみ展 色と言葉のつむぎおり
会 期 2024年10月8日[火]- 11月17日[日]
休 館 日 毎週月曜日(ただし祝日の場合には開館し、翌日火曜日休館)
開館時間 9:30 - 17:00(入場は 16:30 まで)
会 場 滋賀県立美術館 展示室3
〠 520-2122 滋賀県大津市瀬田南大萱町1740-1 TEL 077-543-2111
観 覧 料 一 般 1,200円、高校生・大学生 800円、小学生・中学生 600円(未就学児は無料)
* 企画展のチケットで展示室1・2で同時開催している常設展も無料で観覧可
* 身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳をお持ちの方は無料
* チケット各種優待情報、関連イベント情報などは下掲詳細参照
特別協力 都機工房
企 画 山口 真有香(滋賀県立美術館 主任学芸員)
主 催 滋賀県立美術館、京都新聞
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この秋、紬織の人間国宝である染織家、志村ふくみの生誕100年を記念して、故郷滋賀では約10年ぶりとなる個展を開催します。
滋賀県近江八幡市出身のふくみは、30代の頃、実母の影響で染織家を志し、植物染料による彩り豊かな染めと、紬糸(節のある絹糸)を用いた紬織に出会います。特定の師にはつかず、自らの信念を頼りに道を進むうちに、生命力あふれる色の表現、文学や哲学といった、多彩な芸術分野への探究心に培われた独自の作風が評価され、1990(平成2)年、紬織の人間国宝に認定されました。
本展では、国内屈指の規模を誇る当館収蔵の志村ふくみ作品と、館外からの借用作品、作家ゆかりの資料など80件以上を展示し、初期から近年までの歩みをたどります。あわせて、ライフワークである「源氏物語シリーズ」や、ふくみの心のルーツであり、制作においても重要な位置を占める滋賀をテーマにした作品を紹介します。
またふくみは、染めや織りの仕事と共振させるかのように言葉を紡ぎ、第10回大佛次郎賞を受賞した初の著作『一色一生』(1982-昭和57年)など、これまで20冊以上の著作を刊行しています。本展では随筆家としての活動にも注目し、染織作品や故郷、仕事への思いを語るさまざまな言葉をご紹介します。経糸と緯糸が交差して織り出される紬織のように、色と言葉の出会いを美術館でお楽しみください。
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< 見どころ >
● 志村ふくみの故郷滋賀への思いが込められた作品が全国各地から大集合。
● 志村家から特別にお借りした直筆原稿や作家の愛用品を展示。
● ふくみのライフワークである「源氏物語シリーズ」の作品を展示。
● 染織作品とともに、ふくみが紡ぎ続けてきた数々の言葉もご紹介。
● 色糸の魅力を体感できるインスタレーション作品を展示。
● 子どもから大人まで、いつでも楽しめるワークショップコーナーもご用意。
<展覧会の構成 >
◆ 第一章 近江八幡の水辺から
1924(大正13)年、琵琶湖畔の町である滋賀県近江八幡で小野元澄-もとずみ、豊-とよ-の間に次女として生まれたふくみは、幼い頃に実父の弟、志村哲-さとる-夫妻の養女となりました。やがて自身の出自を知ったふくみは、かつて京都で民藝運動に携わったこともある実母の手引きによって、1955(昭和30)年より故郷で染織家としての活動をはじめます。特定の師を持たず、素朴ながらも独自の感性に裏打ちされた作品が近江八幡の工房で生み出され、1957(昭和32)年、第4回日本伝統工芸展に初出品で初入選を果たします。
随筆家としてのふくみの歩みも、またかの地からはじまったといえるでしょう。ふくみが最初にまとまった文章を発表したのは1954(昭和29)年、早世した実兄、小野元衞-もとえ-について記した「兄のこと」。近江八幡の実家で、元衛の枕元に寄り添った看病の日々が綴られています。
本章では、日本伝統工芸展に初出品し染職家として歩みはじめた近江八幡時代の紬織作品と、関連する言葉を紹介します。
◆ 第二章 広がる色と言葉の世界
1968(昭和43)年、ふくみは近江八幡から京都嵯峨に工房を移します。この時期、多くの交流や旅などを通してふくみの視野は一気に広がりました。やがて生命力あふれる色の表現、文学や哲学といった多彩な芸術分野への探究心に培われた独自の作風が評価され、1990(平成2)年には、いわゆる人間国宝である重要無形文化財保持者(紬織)に認定。2015(平成27)年には、染織を学ぶ場として「アルスシムラ」を設立し、後進の育成にあたるようになります。
旺盛な染織作品の制作と歩調を合わせるかのように、言葉による表現にも積極的に取り組みました。1982(昭和57)年に出版された随筆集『一色一生』(求龍堂)は、翌年に第10回大佛-おさらぎ-次郎賞を受賞。自身が興味を抱いたさまざまな領域を行き来しながら紡ぎ続ける言葉は、いまも多くの読者を魅了しています。
本章では、より独自性の強い作風へと展開を見せた、京都嵯峨の工房への転居後から現在に至るまでの作品を展示いたします。
◆ 第三章 王朝の世界に遊ぶ 「源氏物語シリーズ」より
ふくみが京都で工房を構えた嵯峨には、歴史ある名刹が点在しています。『源氏物語』の主人公、光源氏のモデルといわれる平安時代の実在の人物、源融-みなもとのとおる-が眠る清凉寺もその一つです。ある日、散歩の途中に清凉寺を訪れたふくみは源融の墓所の存在を知り、遠い王朝の世界が一気に身近に感じられるようになったといいます。そもそも『源氏物語』は、作者である紫式部が近江石山寺に参籠し、琵琶湖に映る月を眺めていた際に物語の着想を得たことが執筆のきっかけと伝わります。古典文学への造詣が深く、滋賀と京都、両地ともにゆかりの深いふくみにとって、『源氏物語』が深く興味を惹かれるテーマであったことは想像に難くありません。
本章では、ふくみがライフワークとして織りつなぐ「源氏物語シリーズ」から9件を抜粋し、ご紹介します。
◆ 第四章 近江 百年の原風景
「琵琶湖は私にとって単なる風景ではない。肉親や愛する人などの終焉の地であり、鎮魂の思いのする湖、いわば私の原風景というべきところである。」(「自然の風景、心象風景を織る」『伝書 しむらのいろ』求龍堂 2013年)と語るように、ふくみにとって琵琶湖は、実兄の元衛-もとえ-をはじめとする大切な人を見送り、人生の再出発を決意した祈りと鎮魂の地でもありました。故郷の近江をこよなく愛したふくみは、京都に工房を移転した後も制作に行き詰まると電車に飛び乗り、琵琶湖を眺めに出かけたといいます。
展覧会の結びとなる本章では、本年100歳を迎えたふくみの原風景である近江、琵琶湖がテーマの作品群をご紹介します。また、植物染料によって染められた「色糸-いろいと」のインスタレーションも展示。ふくみが故郷で出会い心惹かれた、織り上げられる前の状態の糸の艶や質感をお楽しみください。
※ 下掲詳細公式サイトで最新情報を確認の上ご観覧を。
[ 詳 細 : 滋賀県立美術館 ]