【会員情報】 杉本昭生 小型本の世界 Ⅳ

朗文堂 アダナ・プレス倶楽部会員、京都在住の杉本昭生さん製作の小型本(いわゆる豆本)紹介の第四弾です。今回はステージを<活版 à la carte>にかえて、以下の三冊をご紹介します。

◎ 杉本昭生小型本 第12作 『 冬日の窓 』 永井荷風
◎ 杉本昭生小型本 第13作 『 舞鶴心中の事實 』 高浜虚子

◎ 杉本昭生小型本 第14作 『 マーク・トウェインの箴言集 』 (第一作の改作)

ともすると小型本の製作者は、なによりも小型であることと、装本のおもしろさにこだわりがつよいあまり、そのテキストや、読書のための判別性と可読性を失っていることがみられます。
ところが杉本昭生さんは、もともと読書家ですので、たとえ小型本であろうと、テキストを厳選し、みずからも読み、読者にも読んでもらおうというつよい意志を感じます。

ところで、ご本人は照れているのか、なにもお知らせがありませんでしたが、京都御所のちかくの <一晴画廊> で、杉本さんの小型本がこの夏に展示されていたようです。
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杉本昭生さんの小さな本/「夏休みの木陰」展
京都御所南 一晴画廊のブログ 2014年08月21日

「夏休みの木陰」展
色鉛筆画 小さな本 日本画 染織
2014年08月19日[水]-08月24日[日]
一晴画廊

604-0951  京都市中京区晴明町660(二条通富小路西入る南側の京町屋)
075-212-3484  080-5714-3753

「なんて美しいものが、ひっそりと世に生み出されていたのだろうか」
杉本昭生さんの本を手に取った時、ため息と共に漏れた言葉です。
こんな作品を、一晴画廊にお寄り下さるお客様へお届けできれば……
その一心で、杉本さんへお願いしました。

じつは、このちいさな本は販売用にお作りになったものではありません。
主に、本が好きな親しい方への、贈り物にされていました。
それを画廊で扱わせていただくことが、本当に良いことなのか
散々考えあぐねた結果、画廊のなかへ
「ひっそりと置かせていただく」ことになりました。

製本も、言葉選びや配置も、すべてが杉本さんの手でなされています。

まるで、杉本さんの言葉に祝福された魂が、
この世にカタチとなって顕れたかのようです。―― 一晴画廊

お送りいただくたびに添付されている、杉本昭生さんの味わいのある「製作メモ」から、テキストの一部を抜粋して、写真とともにご紹介します。
なおこのアダナ・プレス倶楽部 <活版 à la carte/活版アラカルト> のページは、任意の写真をクリックしていただくと、フォトギャラリーをお楽しみいただけます。 cropped-column.jpg

 ◎ 杉本昭生小型本 第12作 『 冬日の窓 』 永井荷風

『冬日の窓』は荷風晩年の随筆です。
東京大空襲で家を焼かれた荷風は、友人の助力を得て、
明石、岡山と疎開生活を続けました。
何年か先には、わたくしも彼とおなじ年齢になります。
幸いにも戦争体験はありませんが、近ごろの世間の動向には
漠然とした不安を感じています。
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◎ 杉本昭生小型本 第13作 『 舞鶴心中の事實 』 高浜虚子

高浜虚子は俳人であり、俳句雑誌『ホトトギス』の編集者として知られています。
また一方で『俳諧師』や『風流懺法』のような味のある小説も書いています。
この作品が虚子の文学の傾向をあらわしているものではありません。
もっといい作品がほかにもあります。作者のために一言付け加えておきます。
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◎ 杉本昭生小型本 第14作 『 マーク・トウェインの箴言集 』 (第一作の改作)

三年前、たいした理由もなくちいさな本をつくりはじめました。

最初につくったのがこの『マーク・トウェインの箴言集』です。
嬉しくて、たれかれなく渡していたら、気づくと手元には
乱丁の一冊がのこっているだけでした。
今回は再版でもあり、簡単だろうとおもっていたら
なかなかそうもいかず、やり直しをくり返す始末でした。
[表紙タイトルは銀色です]
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本を読まない者は
本を読む能力のない者と
少しも変わるところがない
──
飢えた犬を拾ってきて
大切に育ててやれば
決して噛むことはないだろう
そこがいちばん違うところだ
犬と人間の
──
人間はみな月だ
誰にも見せたことのない
暗い面をもっている

【リンク:アダナ・プレス倶楽部ニュース 杉本昭生 小型本の世界Ⅰ】
【リンク:アダナ・プレス倶楽部ニュース 杉本昭生 小型本の世界Ⅱ】
【リンク:アダナ・プレス倶楽部ニュース 杉本昭生 小型本の世界Ⅲ】