世田谷美術館
企画展 麻生三郎展
三軒茶屋の頃、そしてベン・シャーン
開催期間 2023年4月22日[土]- 6月18日[日]
会 場 世田谷美術館 1 階展示室
157-0075 東京都世田谷区砧公園1-2 050-5541-8600(ハローダイヤル)
時 間 10:00 - 18:00(最終入館時間 17:30)
休 館 日 毎週月曜日 * 5月1日[月・祝]は開館
観 覧 料 一 般 1,200円、65歳以上 1,000円、大高生 800円、中小生 500円
* 本展では、展示室内の混雑を避けるため「日時指定券」を4月1日より販売します
* 各種優待、割引、「日時指定券」購入などの情報は、下掲詳細を参照。
主 催 世田谷美術館(公益財団法人せたがや文化財団)
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現代の人間像を鋭く見つめ、戦後美術に確かな足跡を印した画家・麻生三郎(1913-2000)。その生誕110年を記念し、麻生が世田谷に住んだ25年間に焦点を定めた展覧会を開催いたします。
戦争末期の空襲で豊島区長崎のアトリエを失った麻生は、1948年、世田谷区三軒茶屋にアトリエを構えました。この再出発の地から《ひとり》(1951年)や、1950年代半ばにくり返し描いた《赤い空》など、戦後復興期の代表作が生まれました。
1960年代には、安保闘争やベトナム戦争といった社会問題に、麻生は作品を描くことで向き合い、個の尊厳をきびしく問います。一方、虫や小鳥など、身近なものにも澄んだまなざしを向けました。しかし、首都高速道路や地下鉄の建設工事で制作環境が悪化し、1972年、麻生は川崎市多摩区生田へと転居しました。
本展では、麻生が三軒茶屋時代に描いた油彩、素描あわせて約110点をはじめ、野間宏、椎名麟三など文学者たちとの交流を示す挿絵や装丁の仕事も集め、時代と対峙した、その創作の軌跡をたどります。
また、この時期に麻生が強く惹かれ、自ら作品を蒐集した作家に、20世紀アメリカを代表する社会派の画家ベン・シャーン(1898-1969)がいます。その人生の集大成といわれる版画集『一行の詩のためには…:リルケ「マルテの手記」より』全24点を含む、麻生旧蔵の作品群も本展でご紹介します。麻生三郎が描きだした時代の情景、そして深々と共感したベン・シャーン作品をあわせてご覧いただき、その重なり合いを今、味わっていただければと思います。
三軒茶屋時代の麻生の言葉
── 人と家、土、空、川と、
つまりはどこにもある人の住んでくらしている街、
ちいさい路地の一角、石のすきまから出ている雑草のかたまりでもいいのだ。
そのままある自然のかたちで満足して仕事をつづけた。
麻生三郎「川のある家」『芸術新潮』1976年10月号より
左)アトリエの麻生三郎 1967年
< 展示作品の 一部紹介 >
麻生三郎《少女像》1960年 茨城県近代美術館蔵
麻生三郎《三軒茶屋》1963年 世田谷美術館蔵
麻生三郎 椎名麟三著「永遠なる序章」『日本の文学 68 椎名麟三、梅崎春生』
(中央公論社、1968年)挿絵原画 神奈川県立近代美術館蔵
< 麻生三郎 略年譜 >
1913(大正2) 3月23日、東京市京橋区本湊町(現・中央区湊)に生まれる。
1930(昭和5) 17歳 太平洋美術学校に入学し、佐藤俊介(後の松本竣介)らを知る。
1938(昭和13) 25歳 渡仏するが、大戦下の緊迫した情勢により約半年の滞在で帰国。
1939(昭和14) 26歳 美術文化協会に参加する。豊島区長崎のアトリエ村に転居。
1943(昭和18) 30歳 松本竣介、井上長三郎らと新人画会を結成。
1945(昭和20) 32歳 空襲で自宅が全焼し、作品を焼失する。
1947(昭和22) 34歳 麻生も含め新人画会の同人全員が自由美術家協会に参加。
1948(昭和23) 35歳 世田谷区三軒茶屋町に転居する。
1950(昭和25) 37歳 土門拳が麻生のアトリエを撮影。評論家の佐々木基一、埴谷雄高ら『近代文学』同人と交友が始まる。
1952(昭和27) 39歳 野間宏著『真空地帯』(河出書房)の装丁を担当。このほか、井上光晴、椎名麟三、芹沢光治良らの著書の装幀を手がける。武蔵野美術学校(現・武蔵野美術大学)で美術を教えはじめる。
1959(昭和34) 46歳 伊勢湾台風の豪雨により自宅前を流れる蛇崩川が氾濫し、アトリエが浸水被害を受ける。
1960(昭和35) 47歳 安保闘争の学生デモに参加していた女学生が死亡。これを受けて《死者》(1961)、《仰向けの人》(1961)を描く。
1963(昭和38) 50歳 昭和37年度(第13回)芸術選奨文部大臣賞を受賞。ベトナムで政府への抗議のため僧侶が身体に火を放ち自ら命を絶つ。これを受けて《燃える人》(1963)を描く。
1964(昭和39) 51歳 自由美術家協会を脱退し、以後、無所属となる。
1970(昭和45) 57歳 「ベン・シャーン展」(東京国立近代美術館)を鑑賞。この後90年代にかけて、ベン・シャーン作品を蒐集する。
1971(昭和46) 58歳 この頃、三軒茶屋で道路や地下鉄工事が相次ぎ環境悪化に苦しむ。
1972(昭和47) 59歳 神奈川県川崎市多摩区生田に転居。
1995(平成7) 82歳 神奈川文化賞を受賞。
2000(平成12) 87歳 4月5日、自宅にて死去。
2010(平成22) 「麻生三郎展」(東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、愛知県美術館)が開催される。
2014(平成26) 「美術と文学の交流 麻生三郎の装幀・挿画展」(神奈川県立近代美術館 鎌倉別館)が開催される。
※ 本展示作品の写真画像は世田谷美術館から拝借しました。二次流用などはご遠慮ください。
※ 本展では展示室内の混雑を避けるためオンライン「日時指定券」の購入が推奨されています。
※ 感染症予防対応実施中。下掲詳細を確認の上ご観覧を。
[ 詳 細 : 世田谷美術館 本展特設サイト ]