カテゴリー別アーカイブ: 朗文堂

【タイプコスミイク】 02月19日は元旦 ! (旧暦ですが)。 Human Sans Serif 銘石B Combination 3 をご紹介。

恭賀新年

祝羊年大吉、身体健康、万事如意、闔家安康 !

中国をはじめ、香港、台湾、韓国など、旧暦で正月を祝う習慣をご紹介したところ、使用書体に関してご質問を頂戴しました。
【 関連情報 : エッ !  いまごろお正月 ?!!  恭賀新年 中国/台湾/香港/韓国のみなさまへ  】

上掲図は、<Human Sans Serif  銘石B  Combination 3 > をもちいております。 元旦早早 !?  広告宣伝めいて恐縮ですが、その書体解説を以下に簡略にお示しいたします。

Human Sans Serif  銘石B  Combination 3

<Human Sans Serif  銘石B  Combination 3 > の書体設計は 欣喜堂 ・ 今田欣一氏によるものです。 欣喜堂 ・ 今田欣一氏は、日本 ・ 中国 ・ 欧米の、書写と印刷の歴史にはぐくまれた、正統的な活字書体の開発をめざしています。
販売は朗文堂タイプコスミイクによるものです。 小社はつねづねお客さまとの双方向の情報交換を希望しております。
本書体をお客さまがご愛用いただき、ご希望、改善点、ご叱声など、ご遠慮なくお寄せいただくことをお待ちしております。

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Human Sans Serif  銘石B  Combination 3

くれたけ 銘石 B   くろふね 銘石 B   くらもち 銘石 B
【 くれたけ くろふね くらもち かな三種の組版テストPDF KANA03 test 505KB 】

【 詳細情報 : 朗文堂タイプコスミイク Human Sans Serif  銘石B  Combination 3

銘石B銘石02L

《 ついにわが国でも ヒューマン ・ サンセリフが誕生! 銘石 B 》
十分なインパクトがありながら、視覚に優しいゴシック体、それもいわゆるディスプレー ・ タイプではなく、文字の伝統を継承しながらも、使途のひろいサンセリフ ―― わが国の電子書体にも 「 ヒューマン ・ サンセリフ 」 が欲しいとされるご要望が寄せられていました。
確かにわが国のゴシック体のほとんどは、もはや自然界に存在しないまでに鋭角的で、水平線 ・ 垂直線ばかりが強調されて、鋭利な画線が視覚に刺激をあたえます。

欣喜堂 ・ 朗文堂がご提案した 「 銘石 B 」 の原姿はふるく、中国 ・ 晋代の 『 王興之 オウ コウシ 墓誌 』 (341年、南京博物館蔵 ) にみる、彫刻の味わいが加えられた隷書の一種で、とくに 「 碑石体 ヒセキ-タイ 」 と呼ばれる書風を製作の源泉としています。

王興之墓誌。南京博物館蔵uu。
『 王興之墓誌 』。 この裏面には、のちに埋葬された
妻 ・ 宋 和之の墓誌が、ほぼ同一の書風で刻されています。
王興之墓誌の拓本uu。
 『 王興之墓誌 』 拓本。
右払いの先端には隷書に独特の
波磔のなごりがみられ、多くの異体字もみられます。
総キャラクター数はこの図版にみるように、わずかな文字種の参考資料でした。

王 興之とその妻 ・ 宋 和之は、中国晋朝の340年代に埋葬されたとみられています。
晋朝では薄葬が奨励され、石碑の建立は禁止されていましたので、墓地に生前の記録を埋設することがみられました。
その 『 王興之墓誌 』 は1965年に南京市郊外の象山で出土しました。

王興之 (309-40) は 王 彬の子で、また書聖とされる 王 羲之(307-65)の従兄弟イトコにあたります。
この墓誌は煉瓦の一種で、粘土を焼き締めた 「 磚 セン、カワラ、 zhuān 」 に碑文が彫刻され、遺がいとともに墓地の土中に埋葬されていました。 そのために風化や損傷がほとんどなく、全文を読みとることができるほど保存状態が良好です。
王家 家系図uu
王 興之の従兄弟 ・ 書聖/王 羲之の ( 伝 ) 肖像画。
同時代人で イトコの王 興之もこんな風貌だったのでしょうか。

魏晋南北朝 ( 三国の魏の建朝 ・ 220年-南朝 陳の滅亡 ・ 589年の間をさす。 わが国は古墳文化の先史時代 ) では、西漢 ・ 東漢時代にさかんにおこなわれていた、盛大な葬儀や、巨費を要する立碑が禁じられ、葬儀葬祭を簡略化させる 「 薄葬 」 が奨励されていました。

そのために、書聖とされる王 羲之の作にはみるべき石碑はなく、知られている作品のほとんどが書簡で、それを 法帖 ホウジョウ にしたものが伝承されるだけです。
この時代にあっては、地上に屹立する壮大な石碑や墓碑にかえて、係累 ・ 功績 ・ 生没年などを 「 磚 セン 」  に刻んで墓地にうめる 「 墓誌 」 がさかんにおこなわれました。

『 王興之墓誌 』 もそんな 魏晋南北朝の墓誌のひとつです。 『 王興之墓誌 』 の書風には、わずかに 波磔 ハタク のなごりがみられ、東漢の隷書体から、北魏の真書体への変化における中間書体といわれています。 遙かなむかし、中国江南の地にのこされた貴重な碑石体が、現代の ヒューマン ・ サンセリフとして、力強くよみがえりました。

【会員からの情報】 英国 BBC News, テムズ川河床から<Doves Type>を発掘と報じた。ー 故 松本八郎のこと

19世紀世紀末から20世紀の初頭、ロンドンテムズ河畔の
アッパーマル通りにあった、印刷と製本工房が Doves Press でした。
Doves Press は、Cobden – Sanderson と Emery Walker を中心に
Arts and Crafts movement の中核的な存在として知られ
多くの忘れられない図書をのこしています。

Doves Press の工房は、俗に Doves Type とされる
フィリップ ・ プリンスの活字父型彫刻による
独自のハウスフォントを所有していましたが、
1917年(大正06)に、両者のあいだのいさかいがもとで
工房裏のテムズ川にすべての活字と活字複製原型が
投げ捨てられたとされています。

それがこのたび、潜水作業をともなった涙ぐましい調査によって
活字の一部が発見されたことを
英国 BBC News が動画入りで報告しました。
[ 情報提供 : タイポグラフィ学会会員 K 氏 ]

【 元記事 英国BBC : Lost typeface printing blocks found in river Thames 】 動画あり 01:03
【 この項初出 : [会員からの情報] 英国 BBC News, テムズ川河床から<Doves Type>を発掘と報じた。2015年02月13日

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松本八郎_顔松本八郎 遺影 ( 大枝隆司郎氏提供 )

いまはむかし  ロンドンのテムズ河畔のわずかな砂地をさすらうひとりの日本人がいた。
その名を松本八郎という。
松本はときおり砂地にかがみこんでは、それを
掘りおこしたり、あちこちを眺めまわしたりしていた。 松本はここに、かつてのダヴス ・ プレスの活字の一本でもみつけたいとやってきた。

松本八郎からその報告をきいた、もうひとりの日本人がいた。
ならばとばかり、子供と潮干狩りにいった際のちいさな熊手をたずさえて、やはりテムズ河畔の砂地を三時間ばかり掘り起こしてあるいた。 すっかり腰が痛くなった。
まだ千葉の幕張海岸で潮干狩りができたころのふるいはなしである。

ふたりの酔狂な日本人の挑戦はむなしくおわった。 それだけに今回の Doves Type 発見の報告はうれしかった。 そして松本八郎、この世にありせしば、いかにかこの Doves Type 発見の報を喜んだだろうとおもわずにはいられないのである。

松本八郎は、朗文堂に公刊書 『 エディトリアルデザイン事始 』 (A5判 224ページ 1989年09月08日)をのこした。
9784947613219エディトリアルデザイン事始 』 の刊行はもう四半世紀も前になる。 さほど売れた図書ではない。 だからいまでも30冊ほどの在庫があるほどのものだ。
しかし1960-70年代うまれのグラフィックデザイナーのおおくは、本書でエディトリアルデザインの初歩をまなんだはずである。 図書とはそんな存在である。

松本八郎は 『 文字百景 』( 朗文堂 ) にも、三冊にわたって寄稿した。
033  いま再び 「 理想の書物をもとめて」 ケルムスコット ・ プレス逍遙
039  いま再び 「 理想の書物をもとめて」 ダヴス ・ プレス エッケ ・ マンダスの余波
041  いま再び 「 理想の書物をもとめて」   エルンスト ・ ルートヴィッヒ ・ プレッセ探訪
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松本八郎は2014年09月に逝去した。松本は晩年の10年ほどは、おもに出身地の関西方面に友人知己を得て、そちらでの活動がおおかった。そのためであろうか、関西から追悼記の刊行もあったし、ブログでの追悼文もみる。

ところが在京の先輩 ・ 知人から、やつがれが松本八郎の追悼文を < 花 筏 > にでも書けと責められている 。 やつがれ、松本八郎とはほぼ同世代。 だから勝手に先に逝ったというおもいがないでもない。 いずれにしても、もうすこし気持ちと資料整理の時間をいただきたい。
その間、スタッフが松本八郎著の三冊の 『 文字百景 』 を PDF データーにしてくれた。
ご高覧いただければ、黄泉のひととなった松本八郎も喜んでくれそうである。

【 『 文字百景 』 松本八郎著分三冊 matumoto hatirou  7.5 MB 】

テムズ河畔の図033 いま再び 「 理想の書物をもとめて」 ケルムスコット ・ プレス逍遙 ―― 松本八郎 1996年12月

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◎ イギリス  アーツ&クラフツ運動

ロンドン、アッパーマル12-26番地 19世紀末-20世紀初頭
【 この項初出 : タイポグラフィ あのねのね*014 烏兎匆匆 アルダス工房、ドベルニ&ペイニョ、アーツ&クラフト運動 】 一部を抜粋紹介

テムズ河畔、馬車はもちろん、車も入れない、せまいせまい路地がアッパーマル通り。
19世紀中葉からこの路地に造形者が集まり、産業革命の負の側面を解消し、労働の喜びを賛歌するひとつの運動体を形成した。 それが 「 アーツ & クラフツ運動 」 であった。

著名なケルムスコット ・ プレスは この路地の入口、馬車のUターンのスペース ( 現在は駐車場 ) の前に、テムズ河畔に面してあり、路地にはダヴス ・ プレスなどの著名な印刷所と、製本 ・ 皮革工芸 ・ ステンドグラス ・ 刺繍の工房などが軒をつらねていた。

アーツ & クラフツ運動と、ウィリアム ・ モリスに関する紹介は、わが国でも多すぎるほど多い。 吾輩も英国 ・ 米国 ・ わが国の先行資料をそれなりにもっている。
さりながら、多くの執筆者たちは、このせまい路地に立ったことがあるのだろうか……とおもわせる記述が多い。 なによりも、この路地のテムズ川にせりだした 《 パブ ・ ダヴ 》 の珈琲はかなりうまいのだが、たれもそれにはふれないなぁ。
ピクチャ 1
Lost typeface printing blocks found in river Thames
7 February 2015 Last updated at 11:15 GMT

Printing blocks for a typeface called Doves Type have been discovered in the River Thames.
The font has not been used for nearly a century as the printing type blocks, used to print letters, were thrown into the river in 1917.

Nick Wilmshurst reports.

【講演会】 <欧文書体百花事典 その後> ご支援、ご協力 ありがとうございました。 

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<人生は短く 技芸の習得は長い>

W欧文書体百花事典その後VIちらしDSC05634第06回講師 : 木村雅彦氏 DSC04749-2第02回 講師 兼 広報担当 : 杉下城司氏

10ヶ月間、全06回にわたって開催された<欧文書体百花事典 その後>の講演会シリーズが終了しました。
ご来場、ご聴講いただいた皆さまに 厚く御礼を申しあげるとともに、引きつづき、『 欧文書体百花事典 』 普及版 の いっそうのご愛読をお願いいたします。
Bencyclo2[1]
< 欧文書体百花事典 その後 > の講演会シリーズには、タイポグラフィ学会、学校法人専門学校 東洋美術学校  産学連携事務局 デザイン研究会アクティ (担当 : 中村将大氏 ) の両団体からご後援をいただき、さまざまなご支援と ご協力をいただきました。

また、毎回の講演会関連の、フライヤー、ポスター、WebSite など、各種広報メディアの製作は、杉下城司氏に講師兼任でその任にあたっていただきました。
皆さまにはこのページをかりまして、深甚なる謝意を表明させていただきます。
DSCN9702 DSCN9687 DSC05755 DSC05562 DSC05556DSC01301 DSC01298会場の東洋美術学校には、故小池光三氏と、森澤 茂氏の寄贈による小型活版印刷機がありました。 この貴重な活版印刷機をもちいて、全06回の講演会に際して、アダナ ・ プレス倶楽部の、おもに活版カレッジ修了生の皆さんにご協力いただきました。 ありがとうございました。
最終回の使用活字書体は <セントール 48 pt. > です。
[ 写真協力 : 木村雅彦氏 ]
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【朗文堂ブックコスミイク】 『欧文書体百花事典』その後 普及版刊行記念連続講演会 第6回 『 刻まれた文字を訪ねて 』 木村雅彦氏 終了のご報告

W欧文書体百花事典その後VIちらしDSC05634講師 : 木 村 雅 彦
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『 欧文書体百花事典』 普及版 刊行記念特別連続講演会(全 6 回)
第 6 回  『 刻まれた文字を訪ねて 』
講   師 : 木村 雅彦
日 時 : 2014年12月07日[日] 午後 1 時より 3 時間
会 場 : 東洋美術学校 D 棟 1 階 階段教室
161-0067 東京都新宿区富久町2-6
主  催 : 株式会社 朗 文 堂
後  援 : タイポグラフィ学会
      学校法人専門学校 東洋美術学校  産学連携事務局 デザイン研究会アクティ
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20141211200307296_0001 20141211200307296_0002Bencyclo2[1]──────────
DSCN9684 DSCN9687 DSCN9695 DSCN9702 DSCN9781 DSC05634 DSC05708 DSC05657 DSC05655 DSCN9841 KIMURA01 KIMURA02 KIMURA03 KIMURA04 KIMURA05 KIMURA06 KIMURA07 KIMURA08 KIMURA09 KIMURA10 KIMURA11 KIMURA12 KIMURA13講演会場には A 全ポスター10枚を連結すると < トラヤヌスの碑文>が原寸大で再現できると、この講演会のビジュアルを担当した杉下城司さんのアイデアで、巨大ポスターを展示しました。
超大型プリンターをもちいれば一枚の出力で済みますが、そこはあえてA
全10枚を連結することにこだわりました。

東洋美術学校が所蔵する小型活版印刷機は、故小池光三氏と、森澤 茂氏の寄贈による貴重なものでした。 教育機関にありがちなことですが、ここ数年使用が停止して、機械の円滑さを欠いていましたが、今回の連続講演によって、一定の快適な使用環境を回復しました。
今回の使用活字書体は < セントール 48 pt. > です。[ 協力 : アダナ ・ プレス倶楽部 ]
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 DSC05556 DSC05562 DSCN9729 DSCN9724 DSCN9749 DSC05649 DSC05686 DSC05550 DSC05533 DSC05519 DSCN9733 DSCN9850 DSC05764 DSC05755木村雅彦氏自宅付近の秋[ 写真提供 : 春田ゆかりさん/中村将大さん/松尾篤史さん 画像提供 : 木村雅彦さん ]

Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO - Report 07 こんな辞書をつくりたい-若き薩摩青年の希求 通称「薩摩辞書」とは

goando-ロゴ2色Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO - Report 07  
こんな辞書をつくりたい-若き薩摩青年が希求した
通称「薩摩辞書」とは

【 名 称 】 Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO
【 会 期 】 2014年11月1日[土], 2日[日], 3日[月 ・祝] 3日間
【 時  間 】   開場 8 : 30 ― 閉場 17 : 30
【 会 場 】 仙巌園〔磯庭園〕  尚古集成館本館 展示室 鹿児島県鹿児島市吉野町9700-1
【 主  催 】 朗文堂  アダナ ・ プレス倶楽部

尚古集成館 http://www.shuseikan.jp/  仙巌園  http://www.senganen.jp/
朗文堂 アダナ・プレス倶楽部  http://robundo.com/adana-press-club/
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【 関連情報 : Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO - Report 01  開催のお知らせ
【 関連情報 : Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO - Report 02  告知はがき印刷篇
【 関連情報 : Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO - Report 03  お先でゴアンド  鹿児島を往く
【 関連情報 : Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO - Report 04   薩摩藩と三代木村嘉平の活字
【 関連情報 : Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO - Report 05 薩摩辞書 ―― あまりにも多くの未解明の謎にせまる第一歩 】
【 関連情報 : Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO - Report 06   鹿児島 おすすめ情報Ⅰ 仙巌園/尚古集成館 】
【 関連情報 : Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO - Report 08   鹿児島 おすすめ情報Ⅱ 長島美術館 】
【 関連情報 : Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO - Report 07  こんな辞書をつくりたい-若き薩摩青年が希求した通称「薩摩辞書」とは

【 関連情報 : Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO - Report 00 番外編 しろくまは カゴンマ de ゴアンド ! 花筏 】

以下の画像は<スライドショー>でご覧いただけます。
テキストは以下のURLをご参照ください。
[ 撮影協力 : 松尾篤史氏 ]
【 関連情報 : Viva la 活版 薩摩 dé GOANDO - Report 05 薩摩辞書 ―― あまりにも多くの未解明の謎にせまる第一歩 】

DSCN7654 20141024152838867_0001 20141024152838867_0002 20141024152838867_0003 20141024152838867_0004
俗称「薩摩辞書」は、アメリカの語学者/ウェブスター(Noah Webster, 1758-1843)による英語辞書 『 ウェブスター大辞典 』 を主要な典拠(第二版の日本語序文文中に記録がある)としており、以下の三版が知られています。
ここに紹介した図版は、おもに ◯ B 第二版 『 大正増補 和訳英辞林 官許 』 (明治四歳辛未 カノトヒツシ ゙ 十月) をもちいています。

◯ A 第一版
『 和訳英辞書 』(明治二歳 己巳 ツチノト ミ  正月 千八百六十九年新鐫)。
鐫センは深く掘る。年月は旧暦/1869年-明治02年。印刷所 : American Presbyterian Mission Press 上海 美華書館。和文序に「改訂増補和訳英辞書」、英文扉に「THIRD EDITION」とある。 後述。
◯ B 第二版
『 大正増補 和訳英辞林 官許 』 (明治四歳辛未 カノトヒツシ ゙ 十月)。
年月は旧暦/1871年-印刷所 : American Presbyterian Mission Press 上海 美華書館。欧文扉に 「 FORTH EDITION REVISED 」 とある。 後述。 ここにみる「大正」は元号を意味するものでは無い。
◯ C 第三版
『 稟准 和譯英辞書 』 (明治六年十二月 紀元二千五百三十三年)。
年月は新暦/1873年-明治06)。 印刷所 : 東京新製活版所 天野芳次郎蔵版(一部複写のみ所有。未見)。 複写資料を見る限り、あまり見かけない活字書体が用いられている。

DSCN1461 DSCN1462 DSCN1464 DSCN1414DSCN1417DSCN1433鹿児島市の中央部に、歴代の薩摩藩主の居城であった鶴丸城があります。その鶴丸城の跡地の一画に鹿児島県立図書館があります。
その正面入り口には 《 薩摩辞書之碑 》 があり、「AN ENGLISH-JAPANESE DICTIONARY  薩摩辞書之碑  American Presbyterian Mission Press 1869」 と刻まれています。

「薩摩辞書」とは俗称であり、『 和譯英辭書 』 の名が、初版(1869年/明治02年)における正式名称です。 この英和辞書は、幕末の大混乱のさなかに密かに上海で刊行作業が進行し、維新ののちに完成をみた大冊の英和辞書です。
したがっていかに衰微していたとはいえ、幕府の正式な許可を得ないまま、薩摩藩庁から資金提供をうけて刊行に着手した、薩摩藩の若き俊才たちは、正式な刊記(刊行記録、現代の奥付にあたる)をのこすことなく、わずかな記録として、日本語の序文の末尾に <日本 薩摩学生> と、若い実務者の名前だけを記録しています。

鹿児島中央駅前広場には「若き薩摩の群像」が建立されています。
ここに登場する青年たちの調査は、郷土史家を中心に相当の進捗をみますが、こと活版印刷と図書刊行という見地からの調査はほどんど未着手とみられます。

その研究のてがかりに、おそらく、若い薩摩の学生が手にし、見入ったであろう、英語辞書 『 ウェブスター大辞典 』、『 WEBSTER’S NEW INTERNATIONAL DICTIONARY 』(G. & C. MERRIAM COMPANY, PUBLISHERS  1956) の画像を中心に紹介しましょう。
この版は比較的あたらしいものの、専用の書見台がついた、重厚感のあるものです。
そういえば、鹿児島中央駅前広場の「若き薩摩の群像」には、書見台にのせられた大判の図書がみられました……。 

DSCN4866 DSCN4862 DSCN4867 DSCN4896 DSCN4890 DSCN4872 DSCN4870 DSCN4886 DSCN4887 DSCN4888 DSCN4878 DSCN4879 DSCN4897 DSCN4880 DSCN4881 DSCN4882 DSCN4884

【朗文堂タイプコスミイク】 足立涼子さんのアート・ブック 『 ジャックと豆の木 』 

Jack07ジャックと豆の木/Jack and the beanstalk

2008年/東京/20部限定
サ   イ  ズ : 32 x 32 x 3.5cm/桐箱入り
印     刷 : 2種類の楮紙と三椏紙にインクジェット、 木版印刷、 亜鉛凸版印刷(タイトル)
使用書体 : 四川宋朝体 龍爪、Weiss
製   本 : 30cm × およそ7m の2枚の長紙を交互に折り曲げた構造。1枚にテキストと木版ブロック、もう1枚に豆の蔓のイメージを印刷。
2枚の紙は重なり合いながら一続きの螺旋構造を成し、印刷された面は折る毎に異なった方向に向けられる。三椏紙による英訳冊子は16ページ中綴じ 。
内   容 : イギリス民話「ジャックと豆の木」を下敷きに創作した本。空まで伸びる巨大な豆の木に、世界に広まりつつある遺伝子組み換え作物とその背景を比喩的に重ねて制作。(日本語 : 足立涼子、 英訳 : 佐藤公俊)
──────────
足立涼子さんは東京都に生まれました。多摩美術大学大学院修了。
ブック ・ アーティストとしての積極的な活動がつづいています。
ここでは足立涼子さんの解釈による、イギリスの民話『ジャックと豆の木』を
中心とするアート ・ ブック
『 ジャックと豆の木 』 の製作を紹介しましょう。

足立 涼子
『 ジャックと豆の木 』

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────────── 足立涼子さんのコメント
荒々しい豆の蔓のイメージに合う、力強い日本語書体はないものかと探していたところ、

折よく朗文堂さんで 『四川宋朝体  龍爪』 をご紹介いただき、「これだ!」 とおもって
『 ジャックと豆の木 』 に選択しました。

印刷は活版で刷ることも模索しましたが、全ページ手漉き和紙を使用し、
さらに制作費が回収できるかどうかもわからぬ私家版刊行のゆえ
印刷費を落としました。

したがってタイトルは亜鉛凸版印刷ですが、中の文章はインクジェット印刷となりました。
活版印刷のように力強く表現したかったので、邪道ですが少し字を太らせて印刷しました。
英字にはWeiss-エミル ・ ワイス製作の欧文を合わせました。

『 ジャックと豆の木 』 は、幸いなことにアメリカのアーティストブック普及のNPO団体 “Booklyn” によって紹介される機会を持ち、ボストン図書館( The Boston Athenæum ) などの幾つかのパブリック ・ コレクションに加えて頂きました。
ご高覧いただければ幸いです。
足立涼子
【 関連URL : 『ジャックと 豆の木/Jack and the beanstalk 』 】
四川宋朝体

中国の南西部四川省は、ふるくは蜀とよばれていました。
蜀は唐王朝末期の木版印刷術の発祥地のひとつで、「蜀大字本」と呼ばれ、「字大如銭、墨黒似漆――文字は古銭のように大きく、文字の墨の色は黒漆のように濃い」 とされます。
唐王朝ののち、五代十国の混乱をへて建朝された北宋時代にも、唐王朝官刊本の伝統的な体裁を四川刊本は継承していました。

また女真族金国との争乱に敗れ、都を開封から臨安(現 ・ 杭州)に代えて建朝された南宋での刊刻事業の継続と、覆刻(かぶせぼり)のための原本の供給に、四川刊本は大きな貢献をはたしました。
ところがこうした四川刊本も、相次ぐ戦乱と文書弾圧のなかに没して、『新刊唐昌黎先生論語筆十巻』 『蘇文忠公奏議』 『周礼 しゅらい』 など、きわめて少数の書物しかのこっていません。その代表作がわが国に現存する 『周礼』(静嘉堂文庫所蔵)です。

『周礼』 の力強い字様には、横画の収筆や曲折に 「龍爪 りゅうそう」 とされる、鋭角な龍の爪にも似た特徴が強調されています。
これは起筆にもあてはまり、またどっしりとした収筆です。
縦画の起筆にみられる蚕頭の筆法は 『周礼』 においてはさらに強靱になり 龍爪 に相対しています。

このような顔真卿の書風が四川刊本字様となり、力強く独自性のある刊本字様へと変化したといえます。これは工芸の文字として整理がすすんだことをあらわしますが、唐代中期の顔真卿の筆法の特徴を十二分に引き継いでいるともいえます。
「四川宋朝体  龍爪」 は、このような顔真卿書風と、四川刊本字様を継承した、あたらしいデジタル ・ タイプとして誕生しました。

[パッケージ平面設計 : 白井敬尚形成事務所]
【 詳細情報 : 朗文堂タイプコスミイク 四川宋朝体 龍爪 】

【朗文堂タイプコスミイク】 伊藤形成事務所,近作の ほんの一部をご紹介。

犬山焼フライヤー三折り
伊藤嘉津郎カヅオさん、伊藤 恵メグミさんによるデザイン事務所 : 伊藤形成事務所のおふたりとは、なが~いおつきあいになります。
もともとおふたりとも、いっときは新宿周辺を職場とされていました。ですからご主人の郷里にもどられ、名古屋に事務所を開設してからも、ときおり新作を送っていただいています。
2013年08月05日には <【書体使用例紹介】 伊藤形成事務所  和字:いけはら、総合書体:正調明朝体の使用例をご紹介> として、そのお仕事ぶりの一端をご紹介いたしました。

伊藤形成事務所
460-0008 名古屋市中区栄2-3-16 伏見コンビル307号
Telephone : 052-202-7412 E mail : ito-keisei@air.ocn.ne.jp

お仕事は、堅実でケレンの無い作風が顧客の信頼を呼び、美術館や博物館の図録、図書製作などが多いようです。
今回もすこし勝手をいって、小社販売書体を使用した製作物を中心にご紹介いたします。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA今井焼フライヤー上) 特別展/今 井 焼 ― 埋もれた創業の記憶 ―
   図録 4c, 1c,  A4判 あじろ綴じ ・ 44ページ
下) 特別展/今 井 焼 ― 埋もれた創業の記憶 ―
   フライヤー  A4判 4c  / 0c

岩田洗心館 : 特別展/今 井 焼 ― 埋もれた創業の記憶 ― の図録製作、フライヤー製作にあたって、表題部分の主要書体として、漢 字 : タイプバンク 花胡蝶、和 字 : 朗文堂 ・ 欣喜堂 Ambition 9 所収 <いけはら> をご使用いただきました。
【 関連URL : 岩田洗心館 URL
 和字Ambition9和字書体のパッケージ 「アンビション Ambition 9 」は、さよひめ、もとい、いけはら、まなぶ、くらもち、ひさなが、ゆかわ、みなみ、たいらの 09 種類の伝統のたかみにある和字を複刻 ・ 再生したもので、「 Ambition  大志」 という意味を込めて命名しました。

わが国の活字書体の開拓にあたって、版下を描いた書家である、池原香穉、久永其頴、湯川梧窓をはじめ、研究者 ・ 企業家として大きな貢献をした、本居宣長、本木昌造、平野富二、吉川半七、江川次之進、青山安吉、津田伊三郎、寿岳文章らの「大志」をたたえて、「欣喜堂和字シリーズ」第 4 弾の名称に「和字 Ambition 9 」を採用しました。

[パッケージ平面設計 : 白井敬尚形成事務所]
【 詳細情報 : 朗文堂タイプコスミイク 和字 Ambition 9

上野雄次展DOC花道家 上野雄次の 花いけ ライブ ・ パフォーマンス
  フライヤー  A4判 4c  / 1c

岩田洗心館 : 花道家 上野雄次の 花いけ ライブ ・ パフォーマンスのフライヤー製作にあたって、表題部分の主要書体として、漢 字 : モリサワ 光朝、和 字 : [花]いけ ライブ ・ パフォーマンスに、朗文堂 ・ 欣喜堂 Ambition 9 所収 <ゆかわ> に「太らせ加工」を加えてご使用いただきました。

犬山焼フライヤー三折り 犬山焼見開き01犬山本窯 尾関作十郎陶房 犬 山 焼
フライヤー  A4判 変形三つ折り 4c  / 4c

犬山本窯 尾関作十郎陶房 犬 山 焼のパンフレット製作にあたって、主要書体として、漢 字 : タイプバンク 花胡蝶、和 字 : 朗文堂 ・ 欣喜堂 Ambition 9 所収 <もとい> をご使用いただきました。
 【 関連URL : 犬山焼本窯元尾関作十郎陶房

【朗文堂ブックコスミイク】『欧文書体百花事典』その後 普及版刊行記念連続講演会 第5回 『 タイプ・サイズとは何か P・S・フールニエとの関係で 』 山本太郎氏 終了のご報告

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たくさんのお客様をお迎えして、『欧文書体百花事典 その後Ⅴ』 は終了いたしました。
颱風18号がこの直後に襲来しました。そのためにあいにくの雨天でした。
雨の中、わざわざのご来場ありがとうございました。
また、いつものように、タイポグラフィ学会、学校法人 専門学校 東洋美術学校の皆さまからご後援をいただき、さまざまなご協力をたまわりました。

次回講演は最終回、12月07日[日] 木村雅彦さん <刻まれた文字を訪ねて> です。 ご期待ください。 関連情報は、随時<朗文堂ニュース>のコーナーに掲載いたします。

告知資料製作 : 杉下城司さん  写真提供 : 木村雅彦さん/アダナ・プレス倶楽部
後援 : タイポグラフィ学会/学校法人専門学校 東洋美術学校  産学連携事務局 デザイン研究会アクティ
活版印刷実演協力 : アダナ・プレス倶楽部 活版カレッジ
この <活版 à la carte> のページは、画像をクリックするとスライドショーでお楽しみいただけます。

『 欧文書体百花事典 』 普及版 刊行記念特別連続講演会(全 6 回)
第 5 回  『 タイプ・サイズとは何か P・S・フールニエとの関係で 』
講    師 :  山 本   太 郎
日    時 :   2014年10 月05日[日]
会   場  :   東洋美術学校
主  催 :  株式会社 朗 文 堂
後  援 :  タイポグラフィ学会
学校
法人専門学校 東洋美術学校  産学連携事務局 デザイン研究会アクティ

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テキスト/ わたしは  わたし
je_1DSC01298 DSC01301 DSC01458 DSC01472 DSC01493 DSC01519 欧文書体百花事典その後Vポスター

新 宿 與 談 ============================
大型颱風18号が、この講演会の直後に日本列島を縦断していきました。被害にあわれた皆さまにお見舞いもうしあげます。
ところでこの講演会には、徳島から日帰りの予定で川崎孝志さん(新宿私塾修了、タイポグラフィ学会)が参加されていました。 講演の終了後、あわただしく羽田に向かわれたのですが、やはりすでに航空便は相当混乱していたようです。
こんな熱心な聴講者もいらっしゃいました。感謝です。
川崎さんからの@メールを記録します。

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本日はおつかれさまでした。 目的地に着陸できない場合は羽田に U ターンという条件付(西日本地区は全て)でのフライトでした。
夜だいぶ遅くなりましたが、なんとか午後09時に徳島に到着しました。
乗客からは悲鳴がでるほど揺れ通しのフライトで、機内は究極の絶叫マシーンと化していました。
あいにくの天気でしたが上京して正解でした。成果の多い講演会でした。
最後はお手伝いもできず失礼しました。  川崎孝志

【展覧会】 エミール ・ ルーダーの100年 記念講演 : ヘルムート ・ シュミット氏

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 2014年09月19日、スイス、バーゼルのデザインスクール、S f G 及び HGK FHNW は、エミール ・ ルーダー(Emil Ruder,  1914-70)の生誕百年を祝い、その功績を称えて、<エミール ・ ルーダーの100年> と題するシンポジウムと展覧会を開催した。
その資料をヘルムート ・ シュミット氏よりいただいたので、ここに紹介したい。
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シンポジウムの講演者 :
リチャード ・ ヒリス、ロンドン
ラルス ・ ミュラー、チューリッヒ
ホアン ・ アラウシ、バルセロナ
ミヒャエル ・ レナー、バーゼル
ヘルムート ・ シュミット、大阪

この講演の内容は、TM 誌の 2014年第 3 号に掲載される予定である。

展覧会では、エミール ・ ルーダーのデザインによるポスター30点が展示された。
政治的ポスター「 Liste 1 」は含まれていなかった。
「 Liste 1 」は、2014年3月20日から4月29日まで、東京 ・ プリントギャラリーで開催された
<danke Emil Ruder > 展で展示された。
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写真 : フィヨドル ・ ゲイコ

【 関連情報 : 朗文堂ブックコスミイク 『 japan japanese 』
【 関連URL : プリントギャラリー/<danke Emil Ruder >
以下の情報は『 japan japanese 』に関して2011年12月14日-13年03月21日まで、都合09回にわたって掲載された記事を、降順に並べ替えて掲示した。順を追ってお読みいただけるとおもしろい。
【 関連情報 : 『 japan japanese 』 刊行記念 ヘルムート・シュミット氏の講演会+展覧会のお知らせ

【訃報】 欧文タイポグラフィの巨星 |旧晃文堂/リョービイマジクス社長:吉田市郎氏がご逝去されました|2014年9月29日

yoshida_sama[1] 吉田市郎  1921(大正10年)01月28日-2014(平成26年)09月29日 行年93

元株式会社晃文堂代表取締役/株式会社リョービ印刷機販売代表取締役、株式会社リョービイマジクス代表取締役、リョービ株式会社取締役、吉田市郎氏が、2014年09月29日肺炎によりご逝去されました。
ここに謹んで皆さまにご報告いたします。

吉田市郎氏にお世話になったのは、朗文堂 : 片塩二朗がまだ小学生のころに、日本橋丸善の店頭にあったスミスコロナ社の欧文タイプライター(パイカとエリートサイズを搭載していた)に惹かれ、神田鍛冶町二丁目18 にあった、株式会社晃文堂-欧文活字の晃文堂をオヤジとともに訪ねたのが最初でした。

以来半世紀余にわたり、筆舌につくせないご薫陶をたまわりました。
ご高齢でもあり、いつかこの日がくることは覚悟していたつもりでしたが、お知らせをいただいて、まさに <巨星 墜つ> のおもいで ことばもございません。

いずれ別項 <タイポグラファ群像> をもうけてご報告いたしますが、吉田市郎氏は、終戦後ようやく復員し、まもなく晃文堂を設立され、金属活字 ・ 活版印刷関連機器の製造販売からスタートし、写真植字、デジタル世代の三代にわたって、つねにその先頭にたって業界を牽引したかたでした。
またタイポグラファの見地から、印刷術をシステムとしてとらえ、その基盤の書体開発から、印刷までの、一貫したシステムの開発に尽力されました。

ともかく仕事一筋のかたでしたから、業界紙誌への寄稿はたくさんありますが、まとまった著述はのこされませんでした。わずかに吉田市郎氏からの聞き語りと、頂戴した資料をもとに記述した拙著 『逍遙 本明朝物語』 (オフセット印刷版は完売。樹脂凸版印刷版のみ在庫。朗文堂) が、わずかにそのタイポグラファとしてのお姿を伝えるばかりです。
【 朗文堂ブックコスミイク : 既刊書案内 『逍遙 本明朝物語』

アダナ・プレス倶楽部の発足 ・ 運営に際しては、終始あたたかいご援助をたまわりました。
そこで、吉田市郎氏が 2006年に発足した、朗文堂 アダナ ・ プレス倶楽部の <ニュース第一号> にお寄せいただいたご祝辞を紹介させていただき、せめてもの吉田市郎氏のご人徳をしのぶよすがとさせていただきます。 DSC03368[1] DSC03405[1]
【 元記事 : アダナ・プレス倶楽部ニュース No.001- Adana-21J の誕生おめでとう 2006.09 
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ニュース No.001 【アダナ・プレス倶楽部便り】

アダナ型印刷機 < Adana-21J  現:Salama-21A > の誕生おめでとう  !

吉田市郎01吉田 市郎 株式会社リョービイマジクス顧問 (元 ・ 株式会社晃文堂代表取締役)

このたび、朗文堂/アダナ・プレス倶楽部からアダナ型小型活版印刷機「 Adana – 21J 」が誕生されるとうかがい、大変嬉しく存じます。

古い話しになりますが、株式会社晃文堂の時代に「アマチュア用印刷機 ADANA 」を2機種 (3×5 inch, 5×8 inch) 輸入販売いたしました。
当時のわが国では活版印刷はとても盛んでしたが、国家そのものに外貨の蓄えがなく、外貨の為替管理がきわめて厳しくて、海外からの、活字、活版印刷関連機器など、物資の輸入には様々な困難がありました。

幸い多くのユーザーの皆さまを得て、アダナ印刷機はご好評をいただきましたが、その後イギリスのメーカーが製造を中止し、また活版印刷全般も衰勢をみせるようになって、アダナ印刷機の代理販売業務から撤退いたしました。
従いまして、多くのユーザーの皆さまには、不本意ながらご迷惑をおかけすることになったことにたいして、内心忸怩たるものがありました。

それが今般、長年ご厚誼をいただいている朗文堂さんの新事業部門、アダナ・プレス倶楽部(現:サラマ・プレス倶楽部)によって、新設計による国産活版印刷機 「 Adana-21J 」 が誕生するとうかがい、大変嬉しく思っております。

おそらく活版印刷と鋳造活字には、まだまだ寒風が押し寄せるでしょうが、それにめげず、創意と挑戦の意欲を持って、これからの開発 ・ 販売にあたって頂きたいと存じます。 「 Adana-21J 」 の試作機のご発表、おめでとうございます。

【展覧会】 花王 にほんのきれいあたりまえ展

20141007002048145_0002 20141007002048145_0001朗文堂 新宿私塾 第23期修了生の I M さん(花王クリエーティブハウス勤務)から、情報提供と、フライヤーを数十枚いただきました。
ご参観をおすすめいたします。
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<第 5 回企業のデザイン展  花王 にほんのきれいのあたりまえ展> は東京藝術大学デザイン科が2005年から隔年で開催している「企業のデザイン展」の第 5 回目となります。
日本の 「きれい」 と、
それに連なる日本の 「あたりまえの生活」 を日本独自の文化としてとらえ、それをささえ続けてきた花王の製品に、デザイン的視点から焦点をあて、未来につながるモノづくりやライフスタイルのヒントをみいだす展覧会です。
また、展覧会と同時に、書籍 『にほんのきれいのあたりまえ』 を出版いたします。

会       期 : 2014年10月4日[土]-10月26日[日]
会       場 : 東京藝術大学 大学美術館 陳列館
開催時間 : 10 : 00-19 : 00 (入館時間は18 : 30まで)
会期中無休 入場無料
主催 ・ 企画 : 東京藝術大学 美術学部 デザイン科、花王株式会社
協       力 :  凸版印刷株式会社
【URL : にほんのきれいのあたりまえ 藝大×花王 】

【著者展覧会】 2015 羽原肅郎 カレンダー展 ― 忘れられない本 : その 1

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2015年版カレンダーでは忘れられない本をご紹介します. 子どもの頃に手にした本もあれば数年前に入手した本も. 本を眺めていると多々思い出すことがあります. 是非ご覧ください.

「 山上の垂訓 」
1950年頃, 広島県福山市の書店で英文の “Sermon on the Mount” を戴く.
その帰り道, 何となく立ち寄った教会で,
日本語の 『 山上の垂訓 』 を戴いた.
まだ, まだ敗戦国日本のくらい感のする時期に,
何か明るい希望を感じたものだ.
しかし, この垂訓をどれだけ守って来ただろうか.
背景はエデンの園に見えた.

会  場 : 東塔堂 | totodo
会  期 : 2014年10月06日[月] - 10月25日[土]
時  間 : 12:00-20:00 [日曜休み]
入  場 : 無 料

◆ 羽 原 肅 郎
1935年, 広島県に生まれる.
桑沢デザイン研究所リビング ・ デザイン科研究クラス卒業.
建築写真家 : 二川幸夫に師事.
美術出版社 ・ 月刊 『デザイン』 誌編集責任者, 東京造形大学助教授, 二玄社出版部部長として 『CG』 誌等の編集に参加.
鹿島出版会 『SD』 誌デザインエディター, JIDA事務局長を歴任.
明星大学 造形芸術学部 造形芸術科 教授.
武蔵野美術大学, 筑波大学, 東京YMCAデザイン研究所, 多摩美術大学等の非常勤講師を務めた.
著書に 『構造の芸術』, 『本へ!』(朗文堂 朗文堂ブックコスミイク 『本へ!』 ) 等がある.
『世界デザイン史』等にも執筆.
コンクリート・ポエトリーの制作も行っている.

【 詳細 : 東塔堂 | totodo 2015 羽原肅郎 カレンダー展 忘れられない本:その1 】
【 詳細 朗文堂ブックコスミイク 『本へ!』

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『本へ!』

羽原 肅郎 著
朗文堂刊

A5 変形判 50 ページ
経本折り製本
スリップケース入り
日英2ヶ国表記
ISBN4-947613-79
定価 : 本体3,000 円+税

【会員情報】 モトヤが平野富二賞受賞の報告と、モトヤ活字資料館のご案内

 

タイポグラフィ学会 <第 4 回 平野富二賞>
受賞者を 株式会社モトヤ に決定
授賞式開催のお知らせ

平野富二uu平野富二賞モトヤ平野富二賞  賞状 ならびに 記念品

 タイポグラフィ学会(会長 : 山本太郎)は、株式会社モトヤ(大阪市)を 「 第 4 回 平野富二賞 」 受賞者に選定いたしました。
タイポグラフィ学会では、日本の近代活字版印刷術の始祖ともいえる、本木昌造と平野富二の業績にちなんだ 「本木昌造賞」 と 「平野富二賞」 を設けております。
平野富二賞は、タイポグラフィの普及発展に著しく功績のあった個人及び団体に対するもので、その対象者は社会へのタイポグラフィの認識を高める行動及び啓蒙などにおいて、その事績がタイポグラフィ学会にとどまらず、広く社会に貢献していると認められるものです。

このたび株式会社モトヤにたいして、1949年(昭和24)に活字の基本書体の開発後、国内における活字鋳造の発展はもとより、たゆまざる<モトヤ正楷書体>の改刻、日本初となる文字のデジタル化にたいする業績などを高く評価いたしました。
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第 4 回  平野富二賞授賞式
タイポグラフィ学会 会長 : 山本太郎
日 時 : 2014年09月23日[火 ・ 祝] 午後 03 時から
会 場 : 学校法人 専門学校 東洋美術学校
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抜けるようにたかい秋晴れの空のもと、2014年09月23日、タイポグラフィ学会は <第10回 年次総会> を開催し、つづいて <第 4 回 平野富二賞授賞式> を開催しました。
ここに <第 4 回 平野富二賞授賞式> の模様を、写真画像をもってご紹介いたします。

平野富二賞 プレゼンター:平野正一氏。受賞者:モトヤ左) プレゼンター : 平野正一氏 (タイポグラフィ学会会員、平野富二玄孫)
中) 受賞者 : 株式会社モトヤ技術部課長 / 芳仲孝夫氏
右) タイポグラフィ学会副会長 : 木村雅彦氏 モトヤ 芳仲氏講演 モトヤ 吉仲氏講演02平野富二賞 受賞記念講演 株式会社モトヤ技術部課長 : 芳仲孝夫氏 平野富二賞授賞式後の記念撮影平野富二賞 授賞式後の記念撮影

【 詳細情報 : タイポグラフィ学会 URL 】

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《 モトヤ 活字資料館 貴重な活字見本帳を新展示―芳仲孝夫氏情報提供 》

活字資料館の新規展示_1 活字資料館の新規展示_2 活字資料館の新規展示_3
< 活字資料館の開設にあたって > ―― 平成9年2月 株式会社 モトヤ
株式会社モトヤは、平成8(1996)年7月31日、創業以来75年間にわたって、共に喜び、共に苦しんできた「活字」との別れの日を迎えた。
このことは後退を告げるものではない。モトヤの社是「顧客と共に栄える」を標榜し、21世紀に向け、100周年に向け、さらには永遠に歩み続けることを誓って、力強く、新たな一歩を踏み出したことを意味している。
まさに、モトヤがコンピュータ時代に対応して、「アナログ」の世界から訣別し、「デジタル」の世界で生きることを宣言した記念すべき日である。

しかしモトヤはアナログの世界を無視するのでなく、むしろそこで培ってきた知識をベースにして、そこから新しいデジタルの世界を築いていくのでなければならない。その関わりの中に明日の糧となるものがある。当資料館を開設した所以ユエンである。
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株式会社モトヤ大阪本社の2階には、「 モトヤ 活字資料館 」として、創業(大正11年)から平成8年まで営んでおりました鉛活字の製造や組版作業の様子をはじめ、今も引継がれるフォントデザインの過程を常設展示しています。
活字資料館についてのお問い合わせは、株式会社モトヤ大阪本社(担当/技術部課長 : 芳仲孝夫)までお願いします。

  モトヤ 大阪本社   〒542―0081
 大阪市中央区南船場1―10―25
 電 話 (06)6261―1931
 FAX  (06)6261―1930

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《 モトヤ 活字資料館 貴重な活字見本帳を新展示―芳仲孝夫氏情報提供 》
モトヤ活字資料館につきまして、主に貴重な見本帳を中心にショーケースでの展示を新設いたしましたので
関連資料をご紹介させていただきます。

  1. 明治末期発行 大阪青山進行堂の活字見本帳
  2. 大正末期発行 大阪青山進行堂の活字見本帳
  3. 1912年発行 米国『AMERICAN TYPE FOUDERS』社の通しナンバー付き活字総合見本帳
  4. 昭和初期発行 森川龍文堂の活字見本帳・印刷機器一覧
  5. 1950年代発行 イタリア『NEBIOLO ネビオロ』社の活字見本帳
  6. 1950年代発行 ドイツ『LINOTYPE ライノタイプ』社の活字見本帳
  7. 大正15年発行 共同印刷の花形見本帳
  8. モトヤが昭和30年代にデザイン・活字製造・輸出を行っていた、ビルマ(現ミャンマー)、タイ、サンスクリットなど、当時の東南アジア文字のデザイン原字

CDD ・ VD ・ ブルーレイ ・ 各種メモリなどのデジタルメディアは、100年後にその情報をみることができるかというと、再生機器の問題や、メディアの保存性の観点などから、それは不可能に近いとされています。
しかし紙媒体は、100年以上、いや丁寧につくられ保存状態が良ければ数百年後であってもその情報をみることができます。整理をしつつ、改めて紙媒体のすばらしさを知った次第です。
【 詳細情報 : モトヤ 活字資料館

『欧文書体百花事典』普及版 刊行記念特別連続講演会 第 4 回 <装飾は罪悪か? 花形装飾活字クロニクル>の記録

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欧文書体その後ポスター『欧文書体百花事典』普及版 刊行記念特別連続講演会(全 6 回)
第 4 回  『 装飾は罪悪か ?  花形装飾活字クロニクル 』

講 師 : 白井 敬尚
日 時 : 2014年08月24日[日] 午後1時より約3時間程度(ワークショップを含む)
会 場 : 東洋美術学校 階段教室
主  催 : 株式会社 朗 文 堂
後 援 : タイポグラフィ学会
学校法人専門学校 東洋美術学校  産学連携事務局 デザイン研究会アクティ

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たくさんのお客様を迎えて本講演会は終了いたしました。ご来場ありがとうございました。
またいつものとおり、多くの皆さまのご協力をいただきました。ありがとうございました。

イベント告知関連グラフィック製作 : 杉下城司さん
資料製作補助、会場設営、会場運営 : 東洋美術学校 アクティの皆さん
広報活動、会場設営・撤収 : タイポグラフィ学会のみなさん
小型活版印刷機 ADANA 8×5  森澤茂氏・故小池光三氏寄贈品稼動 : 活版カレッジの皆さん
使用活字/欧文 : フレンチ・ウッド 装飾活字 : いわゆる花形活字(原鋳造所ともに不詳)
会場撮影担当 : 木村雅彦さん、中村将大さん、千星健夫さん

次回 第 5 回講座は 2014年10月05日[日]
「タイプ・サイズとは何か P.S. フールニエとの関係で」講師は 山本太郎さんの担当です。
関連情報は随時<朗文堂ニュース> <アダナ・プレス倶楽部ニュース><活版 à la carte>コーナーにてご紹介いたします。

林 昆範氏講演 『中国の古典書物』 余 話

崔護『都城南荘』人面_花牡丹 人面_花蓮華

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タイポグラフィ講演会 『中国の古典書物』増刷版 刊行記念講演会
講  師 : 林 昆 範 リン・クンファン
日  時 : 2014年07月02日[水]

林 昆範さん<タイポグラフィ講演会 『中国の古典書物』増刷版 刊行記念講演会>には、ご来場、ご協力をいただきありがとうございました。 ご来場の皆さまの楽しそうな笑顔を拝見してうれしくおもいました。これもすべて、林 昆範さんをはじめ多くの皆さまのおかげでした。心からのありがとう!

ところでテキストもみずに、林 昆範さんがすらすらと竹簡に書いていた唐詩です。
朗文堂でのリハーサルの際に「この詩はたれの作ですか」と林 昆範さんに質問しました。
「著名な唐詩です」
林 昆範さんとはおよそ七年間にわたって毎週一緒にまなんできた仲ですから、こういうぶっきらぼうな返答のときは、自分で調べよということです。
なにしろ無学なもので、その詳細をしらず、口惜しいのでのちに調べました。
この詩はわが国でも禅宗の僧侶などが好んで書く唐詩で、わが国ではすこし変化して、ひろくは以下のようにして知られるものでした。
「年々歳々、花相似たり、年々歳々、人相同じからず。油斷をすれば人に笑はるゝぞ」

詩の作者は崔護サイゴ:唐代のひとです。貞元12年(796)の進士(最高官吏登用試験合格者)。あざなは殷功インコウ。 博陵(現・河北省定県)のひと。
この淡い恋をえがいた詩の事件は、『太平廣記・巻第二百七十四・情感』に録されています。

こんな詩をスラスラと書けるなど、うらやましいかぎりです。 上掲図は、漢王朝の代表書体:隷書(花牡丹)と、唐王朝の代表書体:楷書(花蓮華)で組版追試にあたったものです。書体をかえただけでずいぶん詩の響きがことなるようにおもわれました。

ところでこの唐詩は、台湾の歌姫としてしられたテレサ・テンも、「人面桃花」と題して歌っていたそうです。台湾ではおなじみのようでした。
「人面桃花」、「崔護」で検索すると、画像集もふくめてたくさんの資料に出会えます。
まず、<崔護 人面桃花 ウェブ> からお楽しみください。また<崔護 人面桃花 画像集>もお楽しみいただけます。
あるいはまた<中国版百度百科:崔護 人面桃花 画像集>には、わが国の櫻花にも似て、桃花をめでる中国の画像が楽しめます。

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林 昆範 『中国の古典書物』増刷版 刊行記念講演会の記録

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『中国の古典書物』増刷版 刊行記念講演会

講  師 : 林 昆 範 リン・クンファン
日  時 : 2014年07月02日[水]18:30 - 20:30(ワークショップを含む)
会  場 : 東洋美術学校 D棟一階 学生ホール
         162-0067 東京都新宿区富久町2-6
         地図  http://www.to-bi.ac.jp/access/
聴講料 : 1,000円(要申込登録)
主  催 :  株式会社 朗 文 堂
後  援 :  タイポグラフィ学会
         学校法人専門学校 東洋美術学校 産学連携事務局 デザイン研究会アクティ
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今回の講演会では、まず林 昆範著『中国の古典書物』の主要内容を豊富なビジュアルをもちいて再構築しました。

ついで「五体・五筆」とされる篆書・隷書・真書(楷書)・行書・草書の書き分け(書写)をつうじて、竹簡・木簡から、帛(ハク 絹布)、そして紙の登場へと、被書写媒体の変化をつうじて、古典の書物の形成と書体の変化、そしてその発展の歴史に迫りました。
ですから今回の講演会『中国の古典書物』では、活版インキのにおいにかわり、馥郁とした筆墨のかおりが立ちこめる会場になりました。

ついで中国の古典書物、そしてわが国の古典書物の配列方式(レイアウト)が、なぜ右起こしの縦組みとなっていったのかを、実際に竹簡をもちいて書写し、簡冊(竹簡を紐や糸で綴ったもの。慣用的にカンサクとする)に再現することでその謎を解明しました。

林 昆範さんは決して書家ではありません。教育者としての立場のほかに、ご自身のアトリエ、それも活版工房をもたれている本物のタイポグラファでもあります。
その林 昆範さんによって、眼前につぐつぎと書き分けられていく、中国歴代諸王朝の標準書体の墨痕 ── 会場の東洋美術学校にちなんで<東洋> ── と、竹簡にしるされて並べられていく唐詩のアーティスティック・プレゼンテーションを、ご来場者は固唾を呑んでみまもっておられました。

最後はいっきに緊張がゆるんで、著者:林 昆範さんによる『中国の古典書物』の著者サイン会でした。もちろんご持参の毛筆によってしるされました。
「お名前と、ご希望の書体をお知らせください」
林 昆範さんのリクエストに、多くの皆さんは緊張気味ながらも、それぞれのご希望書体でのサイン会。
おひとりは2002年03月25日の初版『中国の古典書物』と、いちぶを改訂して増刷した第二版『中国の古典書物』の双方に、著者の筆によるサインをいただいて大満足のご様子でした。
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『欧文書体百花事典』普及版 刊行記念特別連続講演会 第 3 回 『 Robert Granjon 』 の記録

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『欧文書体百花事典』普及版 刊行記念特別連続講演会(全 6 回)
第 3 回  『 Robert Granjon 』
講   師 :  河野 三男
日  時 :  2014年06月22日[日] 午後1時より
会  場 : 東洋美術学校 本部棟302教室
161-0067 東京都新宿区富久町2-6
地図  http://www.to-bi.ac.jp/access/
聴講料 : 各回1,000円(要申込登録)
主  催 : 株式会社 朗 文 堂
後  援 : タイポグラフィ学会
学校法人専門学校 東洋美術学校  産学連携事務局 デザイン研究会アクティ
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たくさんのお客様を迎えて本講演会は終了いたしました。ご来場ありがとうございました。
またいつものとおり、多くの皆さまのご協力をいただきました。ありがとうございました。

イベント告知関連グラフィック製作 : 杉下城司さん
資料製作補助、会場設営、会場運営 : 東洋美術学校 アクティの皆さん
広報活動、会場設営・撤収 : タイポグラフィ学会のみなさん
小型活版印刷機 ADANA 8×5 : 森澤茂氏寄贈品稼動 活版カレッジの皆さん
会場撮影担当 : 木村雅彦さん

次回 第 4 回講座は 2014年08月24日[日]
「装飾は罪悪か ?   花形装飾活字クロニクル」 講師は 白井敬尚さんの担当です。
関連情報は随時<朗文堂ニュース>コーナーにてご紹介いたします。
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<Nutrisco et Extinguo  我ハ育ミ 我ハ滅ボス ── ワークショップでの実演作品に関して>
02 03 01『欧文書体百花事典』普及版 刊行記念特別連続講演会(全 6 回)、第 3 回  『 Robert Granjon 』(講   師 :  河野三男さん)に際して、ご来場の皆さまに実演していただいたカードは、上掲の2008年アダナ・プレス倶楽部グリーティング・カードをもとに構成しています。

「 Nutrisco et Extinguo  我ハ育ミ 我ハ滅ボス 」はフランスでは著名な成句です。この錬金術に源流をもつ火喰蜥蜴サラマンドラは、フランスで活字がおおきく開花した16世紀、活字父型彫刻士クロード・ギャラモンに「王のギリシア文字」を彫刻させたフランソワ一世の紋章であり、いまなおフランス国立印刷所の紋章として使用されているものです

ですから「 Nutrisco et Extinguo 」で検索していただくと、16世紀フランスの興味深い情報に接することができますし、「画像集: Nutrisco et Extinguo 」にもさまざまな紋様が登場してきます。また音楽がお好きのかたは「 Solefald – Nutrisco Et Extinguo 」でもサウンドをお楽しみいただけます。
【参考資料 : フランス国立印刷所 火の精霊サラマンダーと 王のローマン体 ローマン・ドゥ・ロワ/アダナ・プレス倶楽部ニュース 2014. 01. 15 】
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【講演会】 林 昆範 『中国の古典書物』増刷版 刊行記念講演会

Web林講演会

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タイポグラフィ講演会   林 昆範 『中国の古典書物』増刷版 刊行記念講演会
Vignette 02 改訂版林 昆範著『中国の古典書物』は、文字の発生期から印刷術の発明へ。悠久の歴史を有する中国の書物の歴史に、気鋭の研究者が挑んだ力作です。
文字と書物は、どのように誕生し、なにを、どのように伝達してきたのか。
ヴィネット02号  『 中国の古典書物 』 林 昆範
ヴィネット06号  『 元明体と明朝体の形成 』 林 昆範
ヴィネット09号  『 楷書体の源流をさぐる 』  林 昆範
ヴィネット10号   『 開成石経 』 共著/グループ昴 スバル
へとつづいた林 昆範 著作シリーズ、最初の02号『中国の古典書物』の改訂増刷版です。

今回の講演会では、同書の主要項目を再構築するとともに、中国の、そしてわが国の古典書物の配列方式(レイアウト)が、なぜ右起こしの縦組みとなっていったのかを、実際に竹簡・木簡をもちいて書写し、簡冊(竹簡・木簡を紐や糸で綴ったもの。慣用的にカンサク)に再現することでその謎を解明します。

また「五体・五筆」とされる篆書・隷書・真書(楷書)・行書・草書の書き分け(書写)をつうじて、竹簡・木簡から、帛(ハク 絹布)、そして紙の登場へと、被書写媒体の変化をつうじて、古典の書物の形成と書体の変化、そしてその発展の歴史に迫ります。
ですから今回の講演会『中国の古典書物』では、活版インキのにおいにかわり、筆墨の馥郁としたかおりが立ちこめる会場になるとおもわれます。
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タイポグラフィ講演会 『中国の古典書物』増刷版 刊行記念講演会
講  師 : 林 昆 範 リン・クンファン
日  時 : 2014年07月02日[水]18:30 - 20:30(ワークショップを含む)
会  場 : 東洋美術学校 D棟一階 学生ホール
162-0067 東京都新宿区富久町2-6
地図  http://www.to-bi.ac.jp/access/
聴講料 : 1,000円(要申込登録)
主  催 :  株式会社 朗 文 堂
後  援 :  タイポグラフィ学会
学校法人専門学校 東洋美術学校 産学連携事務局 デザイン研究会アクティ
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 講師紹介 : 林 昆範 リン クンファン
1967年、台湾・台北市うまれ。 日本大学博士課程芸術専攻修了 芸術学博士。
台湾・中原大学商業設計学科学科長、銘伝大学助教授。
台湾・中原大学助教授、同大学文化創意研究センター主任。
タイポグラフィ学会会員。
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[講演会申込先]
株式会社 朗文堂@メールまで  robundo@ops.dti.ne.jp
件名「タイポグラフィ講演会 中国の古典書物」 お名前・人数・返信用メールアドレスを明記して、06月30日[月]までにご送信ください。 3 営業日以内にお断りの返信が無い場合は受付完了とさせていただきます。 (今回の会場は狭隘です)。
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株式会社 朗 文 堂   鈴木 孝
160-0022 東京都新宿区新宿2-4-9
電 話 03 – 3352-5070
伝 真 03 -3352-5160
email robundo@ops.dti.ne.jp
http://www.ops.dti.ne.jp/~robundo
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