今回、北海道根室市落石岬の現地に石膏キューブを積み上げて朽ちさせるのではなく、ギャラリーというホワイトキューブにそれらの銅版画を展開するにあたって、多色刷りによるイリュージョンに依拠し、辺境の霧の中で銅が豊かに朽ちていくありさまを版画工房で想像、感応しながら制作した。来夏、落石計画は再開予定であり、これら紙に刷った銅版画作品も現地に展示する予定。 モチーフとなるイメージは “ Community on the move ” というタイトルで、各地で継続してきた現地調達の木片による積み木のワークショップで参加者たちが残していった家々のかたち、記憶を収集したものであり、その土地、土地でのエピソードを織り交ぜて様々な銅版画をシリーズ制作している。
講師:川口 晴美氏(詩人) 小浜市うまれ、東京在住。福井県立若狭高等学校、早稲田大学第一文学部文芸専攻卒業。大学在学中に詩作をはじめる。1985年、初詩集『水姫』を出版。詩集『半島の地図』(2009年)で第10回山本健吉文学賞を、『Tiger is here』(2015年)で第46回高見順賞を受賞。本2022年9月、『やがて魔女の森になる』で第30回萩原朔太郎賞を受賞した。現在大学で非常勤講師として創作を指導するほか、社会人向けに詩の講座などをおこなう。『歴程』同人。